経済学入門

国際経済の基礎
国際収支表
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2007年1月18日
1
貿易黒字と赤字
貿易黒字と赤字はどのように表現されるか
 経済全体の動きから考える
 貿易は財の流れと資金の流れを生み出す

2
物とお金の動き
イチローが今川焼きをナカタに売る
 イチローの今川焼きの生産
 ナカタの今川焼きに対する支出
 イチローの今川焼きの販売から来る収入
 生産=支出=収入
 国際貿易ではお金(資産)も考える必要
 支出=外国人,収入=日本人

3
円高は海外旅行に有利

200ユーロのフェラガモの靴
為替レート
イタリア
日本
1ユーロ=200円
200
40000
1ユーロ=100円
200
20000
4
円安は輸出に有利

ヤワラちゃんは100円の今川焼きを米国に輸出
為替レート
日本
アメリカ
1ドル=100円
100円
1ドル
1ドル=200円
100円
0.5ドル
5
円安は輸入に不利

イチローは$1のスターバックスラテを日本に輸出
為替レート
アメリカ
日本
1ドル=100円
1ドル
100円
1ドル=200円
1ドル
200円
6
反対に円高はアメリカ投資に有利
アメリカのディズニー社の株やアメリカの国債
を日本から購入するとしよう
 円高になれば日本の通貨の価値が上がる
 それだけ買い物に有利になる

7
貿易黒字と為替レート
日本の対米貿易黒字=アメリカの対日赤字
 アメリカ人の日本の財への需要 >
日本人のアメリカの財への需要
 アメリカ人により多く財を販売した=
それだけの所得が増えた

8
貿易黒字と為替レート/2
増えた所得をどうするか?
 ヤワラは今川焼きからの収入を日本で使い
たい
 ドルを円に替える
 ドルを売って円を買う
 円高になる

9
貿易黒字と為替レート
貿易黒字 → 輸出代金の送金 → 円高傾向
 円高傾向 → 外国の財が割安 → 貿易赤字
傾向
 実際は貿易収支を均衡するように為替レート
が調整されるわけではない

10
貿易黒字と対外資産
ヤワラは今川焼きからの収入をそのままアメ
リカの預金とする
 あるいはアメリカ国債を購入する
 輸出した金額だけアメリカでの資産が増える
 これを日本の資本流出と言います

11
財の流れと資産の流れ
純輸出(=輸出-輸入)は対外資産の増加
を意味します
 日本の資本流出
 アメリカの資本流入

12
トヨタの自動車の輸出
日本
財の流れと資金の流れ
アメリカ
トヨタの銀行口座
トヨタ
輸出
自動車
日本の対外資産の増加
輸入
購入代金
の振り込み
Car
アメリカ人
アメリカの対外負債の増加
13
アメリカの貿易赤字
アメリカの貿易赤字は日本人よりもアメリカ人
の方が物を一杯買っていること
 経済全体で他国の物を一杯買う=
 貿易赤字になる
 資金面からアメリカに外国人の預金が増加
 預金は他に貸し出しに回る
 これを資本の流入と言う
 日本では資本の流出という

14
国全体の経済活動
GDPを学んだ.
 今回は一国の経済活動を集計して得られる
変数間の関係を見る
 貿易黒字,政府赤字,民間貯蓄にはある関
係がある
 民間純貯蓄=貿易黒字+政府赤字

15
GDPの三面等価
付加価値アプローチ(生産)
全産業の付加価値
 最終財アプローチ(支出)
消費,投資,政府購入,輸出入
 所得アプローチ(所得)
住民(労働者,企業家,地主,政府)の所得

16
国際収支表
経常収支=物やサービスの輸出入
 資本収支=資本・資金の借り貸し
 外貨準備増減=中央銀行の資産の増減
 誤差脱漏=帳尻合わせ

17
国際収支表/2
日本の国際収支
10億円
20,000
15,000
10,000
5,000
0
-5,000
-10,000
-15,000
-20,000
経常収支
1998
1999
資本収支
2000
外貨準備増減
2001
2002
誤差脱漏
18
経常収支






経常収支にはモノ,運送サービス,旅行,利子受け
取り,政府援助等が取り扱われます.
モノやサービスを輸出すればプラス
外国で観光旅行をしてお金を使えばマイナス
外国に援助をするとマイナス
こうしたすべての取引を足し合わせてプラスになれ
ば黒字.
反対にマイナスになれば赤字といいます.
19
資本収支
資本収支には日本企業による直接投資(株式
取得,資金貸借)などの企業間取引,
 債券取引,およびそれらに含まれない資産の
取引が扱われます.
 ヤワラちゃんがアメリカのマクドナルドの証券
を1億円購入したら,マイナス1億円が計上さ
れます.

20
資本収支/2
これは日本人の対外資産の増加を意味しま
すが,マイナスと記帳されるのは奇異に見え
るかもしれません.
 しかし,国際的に決まっているルールなので
仕方ありません.
 反対に日本人が手持ちの証券を売却すると
プラス.
 それは対外資産の減少を意味します.

21
資本収支/3
今度はアメリカ人のトム・クルーズが日本のソ
ニーの株を買ったとします.
 これは日本の対外債務の増加を意味します.
 このときプラスの金額が計上されます.
 反対にアメリカ人が手持ちの証券を売却する
とマイナス.それは対外債務の減少を意味し
ます.

22
収支の符号
プラス
マイナス
財サービスの輸出 財サービスの輸入
金融資産の減少
金融資産の増加
金融負債の増加
金融負債の減少
23
外貨準備増減と誤差脱漏
外貨準備増減は中央銀行の資産の増減を示
します.
 誤差脱漏とは収支表間の整合性を保つため
ののりしろと考えて無視してください.
 日本の経常収支はいつも黒字ですが,資本
収支はいつも赤字です
 外貨準備増減は赤字と黒字を計上
 経常収支と資本収支に比べ金額は小さい

24
外貨準備増減と誤差脱漏
プラス
マイナス
経常収支
黒字
赤字
資本収支
流入超
流出超
外貨準備
減少
増加
25
国際収支表の恒等式
 経常収支+資本収支+外貨準備増減
+誤差脱漏=0
 この関係式は大変重要です!
 トヨタが自動車を輸出→経常黒字↑
 資本収支↓ or 外貨準備増減↓
 日本人か日本政府の資産が増える
26
中国経済脅威論を考える/1
120,000,000
100,000,000
80,000,000
対中国輸出
対中国輸入
60,000,000
40,000,000
20,000,000
0
1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
27
中国経済脅威論を考える/2
対中輸出 (単位1000ドル)
50,000,000
40,000,000
工業用原料
資本財
非耐久消費財
耐久消費財
30,000,000
20,000,000
10,000,000
0
9年
9
19
0年
0
20
1年
0
20
2年
0
20
3年
0
20
4年
0
20
5年
0
20
28
中国経済脅威論を考える/3
30,000,000
25,000,000
繊維品
金属
化学工業生産品
鉱物性燃料
粗原料
20,000,000
15,000,000
10,000,000
5,000,000
0
9年
0年
1年
9
0
0
19
20
20
2年
3年
4年
5年
0
0
0
0
20
20
20
20
29
中国経済脅威論を考える/4
資本財の中国輸出
45,000,000
40,000,000
35,000,000
30,000,000
25,000,000
20,000,000
15,000,000
10,000,000
5,000,000
0
輸送機器
電気機械
一般機械
1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年

化学,電気一般機械にとっては良いチャンス
30
国際経済の基礎
これでこの講義は終ります
 日本の貿易構造の変化
 貿易の利益
 為替レートの役割
 国際的な経済変数間の関係
 等々を見てきました.少しは国際経済や経済
学に興味を持ってくれたならば幸いです

31