地震・津波と火山の辞典 3.火山 3.5 火山噴出物と噴火現象 3.6 火山噴火と環境 3.7 火山活動による災害 望月 麻紗樹 2008/05/28 3.5 火山噴出物と噴火現象 火山噴出物には大別して2つの形がある。 1)火山砕屑物(かざんさいせつぶつ) 火砕物 火口から粉々になって放出されるもの。 ●岩屑なだれ 野球の硬球 ●火山岩塊 ・・・64mm以上 φ72.5mm ●火山礫 ・・・64~2mm ●火山灰 ・・・2mm以下 2)溶岩流 液体状態のマグマ 3.5 火山噴出物と噴火現象 色・形 1)白っぽい。気泡が多い。 ・・・軽石 2)黒っぽい。気泡が少ない。 ・・・スコリア 3)黒っぽい。気泡がない。 ・・・溶岩 図1 図2 3.5 火山噴出物と噴火現象 火口 大きい・厚い 遠方 細かい・薄い 堆積の仕方 1)空から降ってくる。 降下火山灰 粒子の大きさが揃っており、風下に厚く堆積。 ●噴煙(火山灰+火山ガス) 大規模な噴火では成層圏に達する。 2)斜面を流れてくる。 火砕流 A)重く、噴煙になれなかった火砕物。 B)溶岩ドームの崩壊。 3.5 火山噴出物と噴火現象 火砕流 火砕流の「噴煙」。 高温の火山灰とガス。 火砕流本体から分離して、 災害を起こす。 火砕流の 本体 図3 ●火砕サージ 3.6 火山噴火と環境 ●噴煙(火山灰+火山ガス) 大規模な噴火では成層圏に達する。 ・太陽光を遮り、気候変動。 ・植物の葉に付着して枯死させ、環境変動。 大噴火で生じた二酸化硫黄や火山灰は、雪と 一緒に極域に堆積する。 →南極やグリーンランドでボーリング調査。 ●氷床ボーリング ●アイスコア 3.6 火山噴火と環境 1815年:タンボラ火山 1811年:不明 火山活動のマーカーとなる。 図4 1783年:ラーキ1783噴火 図5 3.7 火山活動による災害 多様な火山現象それぞれが、火山災害となる。 →単独のみならず、複合して災害を起こす。 1)噴出物から直接受ける災害。 2)噴出物の堆積・滞留が原因となる災害。 3)噴出に伴う現象による災害。 4)地下の状態変化による災害。 3.7 火山活動による災害 1)噴出物から直接受ける災害 a)火砕物による災害 ●火砕流・火砕サージ 高温(600℃)かつ高速(100km/h)で流下。 →火山防災マップやリアルタイムハザード マップが、対策として挙げられる。 ●火山灰・噴石 風下の広い範囲に降下。 →精密機器の故障、電波障害 火口近くでは、10t以上の噴石も。 3.7 火山活動による災害 1)噴出物から直接受ける災害 b)溶岩流による災害 高温(1200℃)だが、速度は遅い(20km/h)。 →徒歩で避難可能なため、人命への危険 は小さい。 構造物への被害は大きく、冷えて固まった 後の除去が困難。 →人工堤防等で流下方向を制御 して対応。 3.7 火山活動による災害 1)噴出物から直接受ける災害 c)火山ガスによる災害 二酸化硫黄、二酸化炭素、硫化水素が主。 →何れも人体・環境に有毒。 ●二酸化硫黄 ・・・ 水と反応し、硫酸に。 →酸性雨・酸性霧 ●二酸化炭素 ・・・ 窒息。 ●硫化水素 ・・・ 猛毒。 ※ガス自殺。 3.7 火山活動による災害 2)噴出物の堆積・滞留が原因となる災害。 a)土石流災害 岩石や流木によって大きな破壊力を持ち、 流速も速い(40km/h)。 ・平時でも起こるが、噴火時は火砕流や降灰 によって起き易くなる。 →堆積した火砕物は、長期に渡って 災害の原因となる。 →導流堤、遊砂地で、土砂を制御。 3.7 火山活動による災害 2)噴出物の堆積・滞留が原因となる災害。 b)火山灰被害 ・太陽光を遮り、視界不良を起こす。 →路面にも堆積し、交通障害を起こす。 ・航空機のエンジンの故障・停止。 例:1982年ガルングン火山。 ブリティッシュ・エアウェイズ9便 エンジン停止事故。 エンジン4基が全て故障・停止。 3.7 火山活動による災害 3)噴火に伴う現象による災害。 ●融雪泥流 火砕流や溶岩等が、積雪・氷河を溶かす。 →泥流が発生。 土石流より水分比率が多いため、流下 が速い。 ●岩屑なだれ ●津波 ●空震(衝撃波) 3.7 火山活動による災害 作用 現象 要因 因子 励起現象 物理 化学・電気 熱 大気・水質汚染 火山噴火 噴出物 の堆積・ 滞留 身体 への 影響 絶縁不良、電波障 害 - 数分~数時 間 小 大 火山灰 埋没、付着 大気・水質汚染 ○ 数分~数時 間 小~ 中 低~ 中 噴石 破壊、埋没 - 火災 数秒 大 大 火砕流・火砕サー ジ 破壊、埋没 絶縁不良、電波障 害 火災 数秒 甚大 甚大 溶岩流 破壊、埋没 - 火災 数時間~数 日 甚大 甚大 降下火砕物 堆積物の流失 土石流 破壊、埋没 - - 数分~数時 間 甚大 甚大 堆積物の滞留・浮 遊 日射量減少 遮蔽 - - 数日~数年 小 大 破壊 - 数秒~数分 小 小 電波障害 - 小 小 空震 雷 噴出に 伴う諸 現象 物的 損害 - 火山ガス 噴出物 猶予時間 山体崩壊 噴出物 岩屑なだれ 破壊、埋没 - 火災 数秒 甚大 甚大 津波 破壊、埋没、浸 水 - - 数秒~数時 間 甚大 甚大 土石流 破壊、埋没、浸 水 - ○ 数秒~数時 間 甚大 甚大 融雪泥流 破壊、埋没、浸 水 - ○ 数秒~数時 間 甚大 甚大 3.7 火山活動による災害 4)地下の状態の変化による災害。 作用 現象 要因 因子 励起現象 火山性地震 身体 への 影響 数秒 大 大 物理 化学・電 気 熱 強震動 破壊 - - 地盤の隆起・沈降 破壊、浸水 - 数時間~数週 間 大 小 地割れ 破壊 - 数時間~数週 間 大 小 地表・地下水系変 化 浸水 - 数日~数週間 中 小 泥流 破壊、埋没、浸 水 - 数分~数時間 甚大 甚大 地温上昇 - - 数日~数週 間 小 小 地下水温変化 - - 数日~数週 間 小 小 水質変化 - 水質汚染 数日~数週 間 小 小 マグマの 陥入 山体の変形 地下の状 態の変化 流体の 移動 猶予時間 物的 損害 3.7 火山活動による災害 ●火山災害への対応 多様な現象が複合し、多様な災害を起こす。 →巨大噴火でなくても、広範囲に影響。 火山近郊の都市化・観光開発により、危険度 が上昇している。 ①現象・災害の予測・予知 ②予防的事前対策 ③応急対策 ④教育・普及 図表出典一覧 スライド右下、「地震・津波と火山の辞典」表紙画像 http://www.bk1.jp/product/02969920 図1 軽石 http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Pomice_di_veglia.jpg 図2 スコリア http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Porous_scoria.jpg 図3 雲仙普賢岳の火砕流 http://www.udmh.or.jp/disaster/contents/volcano/chapter2-sec1-trd2.html 図4,5 アイスコアの解析結果 「地震・津波と火山の辞典」p132図3.23,p133図3.24
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