火山噴火 第5章 火山とともに生きる

火山噴火
第5章
火山とともに生きる
総合科学専攻 2年
柏木勇登
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1.溶岩の流れを変える
2.災害は短く、恵みは長い
3.火山に親しむ
4.火山を知ろう
5.火山との共生
第5章は噴火がもたらすプラス面について多く書かれている。
本章の流れ
●減災のために溶岩の流れを変えることができる。
→アイスランドのヘイマエイ島で実際に大量の海水を放水し続けて、最後
に溶岩流を止めることに成功した例がある。
詳細
噴火が始まった約1ヶ月後から、ポンプで海水をくみ上げて1秒間に1トン
という割合の放水を24時間態勢で行い続けた。
その結果冷やされた溶岩流の粘性が増して、次第に流れの速度が遅くなっ
た。また、冷え固まった溶岩は後から流れてくる溶岩を止める役割を果た
した。さらに流れの速さだけでなく、溶岩が流れ下る方向を変えることの
も成功した。
↓
155日の努力の結果、溶岩の向きが変わってきて漁港が埋積されるという最
悪の事態は、かろうじて回避された。
ヘイマエイ島の住民は
主に漁業を生業として
いる。
1.溶岩の流れを変える(1)
●放水作戦は万能ではない?
1溶岩に水をかけると水蒸気爆発を起こすのではないか?
→陸上の溶岩流に水をかけても、爆発に至る混合状態には、まずならない。
このような混合比は、地中で圧力のかかったマグマが、直接地下水層と
接触するようなときに生ずるので問題はない。
2ハワイでも放水作戦を行ったことがある。
→残念ながら、溶岩の噴出量があまりにも大きく、多くの家屋と遺跡が飲
み込まれてしまった。
溶岩流の流量が大きな場合には、放水による阻止作戦は十分な効果をあげら
れない。
1.溶岩の流れを変える(2)
●日本での例
1983年に噴火した三宅島の溶岩流に対して、同様の試みが行われた。
放水量が十分ではなかったため、溶岩流の侵入を全面的に食い止めること
はできなかった。しかし、溶岩流の熱による住宅火災を食い止めるなどの
一定の効果をあげることはできた。
ちなみにこのときの放水量はヘイマエイ島の1000分の1であり、放水期間
も3日間(正味16時間)とかなり短かった。
↓
海が近く大量の海水を比較的容易にくみ上げられる地域では、溶岩流に対し
て放水冷却をおこなう作戦には、一定の効果が得られる。
1.溶岩の流れを変える(3)
●溶岩の流れ方の予測
溶岩を制御しようとするには、前もって
どこまで溶岩が流れ下るのかを知る必要
があります。現在ではコンピュータの上
で、溶岩の動きをモデル化することが可
能である。実際の溶岩流のもつ温度や粘
性などの物性に近い数値を仮定し、簡単
なシュミレーションを行う。その結果、
溶岩の流れる速さや、溶岩が広がる範囲
を予測することができる。
1983年の三宅島の噴火の際に流れ下った
溶岩流(図下)とシミュレーションされた
溶岩流(図上)
1.溶岩の流れを変える(4)
火山噴火の後には美しい地形が残り、観光資源となる。活火山の山麓に広
がる扇状地では、噴火が去ったあとの長い年月にわたって、火山の恩恵を
受けている。
①雲仙普賢岳(長崎県)
1995年に噴火が終息。火砕流や泥流の跡地をそのまま保存して、火山博物
館を造った。山頂に残った1億立方メートルの溶岩ドームは、「平和新
山」と名づけられ、天然記念物に指定されている。
②有珠山(北海道)
2000年に噴火が終息。噴火口や被害を受けた建物が、遺構公園として残さ
れた。ここでは自然災害をそのままの形で学ぶ「エコ・ミュージアム」と
し、観光の拠点としても活用されている。
2.災害は短く、恵みは長い(1)
火山の裾野が広がった火山麓扇状地では、長い間に養分の豊富な土壌がつく
られてきた。水はけのよい肥沃の土壌には、ブドウなどの果物や高原野菜
が栽培される。火山麓の農業は、かつて噴火で形成された地形をもとにし
て、その上に醸成された土と水から成り立っているといっても過言ではな
い。
③エトナ火山(イタリア・シチリア島)
紀元前122年に大噴火をおこし当時行われていた農業に大打撃を与えた。
しかし、噴火がおさまってしばらくした後に、この島に移植してきたロー
マ人たちは火山山麓扇状地に発達する水はけのよい土壌を利用し、ブドウ
を植えた。これがエトナ地方名産のワイン造りの始まりであったらしい。
④ヴェスヴィオ火山(イタリア・ポンペイ)
西暦79年、大噴火をおこし古代都市ポンペイを火山灰と火砕流で完全に埋
め尽くしてしまった。その後エトナと同様にローマ人たちは、養分の多い
土地にブドウを栽培した。長い時間がたち、ポンペイの記録は地上から失
われてしまった。やがて18世紀にポンペイが初めて発掘されるまで、ブド
ウ畑の下に悲劇の都市が埋もれていた。
2.災害は短く、恵みは長い(2)
火山地域が世界自然遺産に認定された例は多くある。日本では、2005年の
7月に北海道の知床半島が登録された。知床半島の中央には、いくつもの
火山が連なっており、活火山の知床硫黄山と羅臼岳も含まれている。
日本ではこれが初めてであっただが世界的にみると多くの火山が登録され
ている。
●ハワイのキラウエア火山
しょっちゅう溶岩が流れている。溶岩流の厚さは20cmほどで、その先端
は袋のように丸く膨らんでいる。木の棒を突き刺して溶岩をすくい取って
みると、棒は黒い煙を出しながらボソボソと燃えはじめる。また棒をひね
ると、水あめのように柔らかくなった溶岩が張り付いてきてしばらく冷や
すと、すくい取った溶岩の表面は固くなり、銀色に輝きだす。これは溶岩
が急に冷やされてできたガラスの輝きである。太陽に照らされたガラスは
、七色の光を放つ。表面は冷えて縮んだガラスが薄皮のように剝がれて跳
ね上がって、パチパチと音もする。
3.火山に親しむ(1)
●フランスの火山公園(シェヌ・デ・ピュイ火山群)
南北25㎞にわたって小さい山々が並んでおり、中央に約6000年前に噴火
した火山地形がみられる。シェヌ・デ・ピュイでは、南北20㎞の範囲に、
1度だけ使った火口をもつ小さい単成火山が点々と残っている。その1つに
、オープン・エア・ミュージアムという火山の博物館が作られている。火
山体の内部をつくる地層がよく見え、なかなか見られない火砕流の堆積物
も観察できる。つまり、地質現象を生で勉強できる。
特徴
単成火山
複成火山
主な例
マグマが地表に出てくる際、過去の火道を
伊豆東部火
使わないような噴火をする。1回だけの噴火 山群
阿武火山群
で火山体が形成され、このような小型の火
山体がたくさん散らばる。
マグマが同じ火道を使って繰り返し噴火す
る。同一の火口から複数回噴火しながら火
山体を形成する。
3.火山に親しむ(2)
富士山
火山の噴火は、研究者以外ほとんどの人が見たことのない現象のため、噴
火が起きたときパニックに陥りやすく混乱してしまう。自然災害の多い日
本では、市民全体の防災リテラシーを上げておくことが重要である。
●有珠山のエコ・ミュージアム
山麓には活動を止めてしまった噴火口がいくつもある。また、断層や地割
れがかつての道路を横切って、段差の地形を作っている。このような噴火
の遺物を見ながら、有珠山の活動が学べる。またエコ・ミュージアムは自
然そのままの状態を保存し、火山麓で生態系が回復してゆくさまを、時間
をかけながら観察する新しい発想の博物館である。
4.火山を知ろう(1)
有珠山が噴火してから数年の間に緑
は次第に回復し温泉街にも活気が戻
ります。それにつれて、噴火に対処
した経験も風化していってしまう。
2000年の噴火では、1人の犠牲者も
出さずに噴火の終息を迎えることで
きた。噴火前に緊急火山情報が出さ
れ、噴火の予知に成功した数少ない
事例となった。これは地元の市民たち
の有珠山に対する理解度が高かったこと
にもよる。この噴火の体験を伝えていく必要がある。
↓
小学校の副読本「火の山の響」や中学生版の副読本「火の山の奏」を出版
。
4.火山を知ろう(2)
火山の恵みの1つに、おいしい湧き水がある。雲仙普賢岳の東の麓にある
島原は、豊富な湧き水で有名。火山は高い山の周りに広大なすそ野をもつ
。このすそ野は、空から降ってきた火山灰や、火口から噴出した火砕流が
つくってきた扇状地からなる。降った雨水が地下にしみこんだあと、火山
の噴出物を通り抜ける間にきれいな水となる。
また地下深くまでしみ込んだ水は、深さ約50㎞にあるマグマに熱せられて
、地表に上がってくる。昔から川底などで自噴していた温泉である。これ
らにより今では湧き水と温泉が、島原の重要な観光資源として活用されて
いる。
これらのように「災害は短く恵みは長い」という事が世界で多く見られて
いる。
5.火山との共生