ビスホスホネートによる顎骨壊死 予防に関する介入と

第26回 日本がん看護学会 in 島根
ビスホスホネートによる顎骨壊死
予防に関する介入と系統的文献レビュー
2012年2月12日
原三信病院 看護部 横田宜子 他
はじめに
ゾレドロン酸(ZOL)などのビスホスホネート
(BP)注射薬は,2003年に顎骨壊死(ONJ)との関
連が報告され1),2007年に米国臨床腫瘍学会
(ASCO)の多発性骨髄腫(MM)治療ガイドラインで,
ONJ予防として,BP注射薬投与前の歯科検診と継続
的口腔ケアが推奨された.ZOLはMMの治療に不可欠
であるため,看護師が中心となって計画的な医療
チームの介入を行い,予防的ケアを徹底することが
必要と考えた.2008年5月に血液内科病棟看護師20
名を対象にBP関連ONJに関する質問紙調査を行った
結果,ONJの危険性を知っていた看護師は6名で,予
防法を知る者はないなかった.
1) Marx RE. J Oral Maxillofac Surg. 2003.
目的
血液内科病棟でZOL治療するMM患者に,看護師が
中心となってASCOのガイドラインに準拠した口腔
ケアを計画的に実施する.
介入したMM患者の経過を解析し,BP注射薬に関連
するONJの予防効果について網羅的文献考察を加
えて報告する.
方法
1.看護師の顎骨壊死に関する学習(看護師20名)
2.骨髄腫患者への血液内科チーム介入
①主治医によるZOL治療の必要性と顎骨壊死のリ
スク,がん化学療法看護認定看護師による予防と
セルフケアの必要性を説明(パンフレット作成)
②ZOL投与前の歯科検診および処置
③病棟と外来看護師が継続的な口腔内チェックと
ア
セスメントを行う
方法
看護師のONJに関する学習会
血液内科医師
ZOLの効果と副作用
歯科医師
実例を通じて顎骨壊死の
実際から歯科での対策
顎骨壊死の骨露出
看護ケア,患者指導の統一
方法
パンフレットの一部
BP治療で骨量が改善した事例
(右上腕骨病変の治療前後比較)
開始前
治療開始後8ヶ月
ZOLによる骨病変の改善を判りやすい事例を用いて説明し,
治療への動機づけを行った.
方法
3.文献検索
Pubmedと医中誌Webで「BP」「ONJ」「予防
(Prevention)」をkey wordに検索,がん治療で
のBP静注薬に関する論文を網羅的に検索した.
4.倫理的配慮
患者の個人情報は匿名化し,看護師には,口頭と
書面で同意を得た.
結果−1
患者 年齢
対象患者の臨床経過のまとめ
性
別
介入時期
病型
病期
治療
高Ca血
症
事前歯科診断
歯科ケア
病棟看護師
外来看護師
ZOL回
数
転機
ブラッシング指導
口腔内チェック、移植
前歯科受診調整
口腔内チェック
24
再発後死亡
1
62
女
ZOL投与前
IgGλ
IIIA
VADx3、HD-CY、
auto-PBSCTx2
再発後Thalidmide
無
問題なし
2
59
女
ZOL投与1回終了
後
IgGκ
IIIA
VADx3、HD-CY、
auto-PBSCTx2
無
問題なし
歯石除去、セルフケ 口腔チェック、移植前 口腔内チェック、歯
ア指導
歯科受診調整
科再診受診調整
16
無増悪生存、ZOL継続
3
75
男
ZOL投与1回終了
後
BJκ
IIIB
VADx3、MP間歇
投与継続
有
軽度の歯周炎、齲歯
齲歯治療、保存的治 口腔内チェック 顎骨 口腔内チェック 顎
療
壊死部の観察
骨壊死部の観察
3
右下顎骨壊死、ZOL休
薬、腐骨除去し壊死治
癒
4
71
女
ZOL投与1回終了
後
IgGλ
IIIA
VADx3、MP間歇
投与継続
有
中等度歯周炎
歯石除去、保存的治
療
口腔内チェック、歯
科再診受診調整
19
無増悪生存、ZOL継続
5
44
男
ZOL投与1回終了
後
BJκ
IIIB
VADx2、HD-CY、
auto-PBSCTx2
無
口腔内チェック、口腔
残歯数本のみ、高度 抜歯、歯石除去、セ
ケア介入、移植前歯科
歯周炎
ルフケア指導
受診調整
他院に転院
7
無増悪生存、腎障害の
ためZOL休止
残歯3本のみ、左下 左下犬歯と第一大臼
犬歯と第一大臼歯残 歯残根の抜歯、口腔 口腔内チェック、口腔
根あり、義歯性口内 ケア、抜歯窩治癒後
ケア介入
炎
にZOL開始
死亡退院
0
VAD後の肺炎合併に
て死亡
6
75
男
ZOL投与前
7
55
ZOL投与1回終了
男 後(ZOL他院で投
与済)
口腔内チェック
IgGκ
IIIA
VADx1
無
BJκ
IIIB
VADx1、BDx1、
HD-CY、autoPBSCTx2
無
齲歯、歯肉炎
歯石除去、保存的治
療、セルフケア指導
口腔内チェック
口腔内チェック
3
無増悪生存、ZOL継続
無
重度の齲蝕、歯周炎
による急性炎症はな
し
保存的治療
口腔内チェック
口腔内チェック
3
再発、BD施行、左上小
臼歯の頬側歯肉に3m
m大の骨露出あり。
ZOL休薬。経過観察中。
無
問題なし
死亡退院
0
VAD後の肺炎合併に
て死亡
8
69
男
ZOL投与前
IgGκ
IIIA
MPx6、
MP+CY(po)x5、
MCNUx10、
VADx8、Dexa大
量x11、BDx2
9
77
男
ZOL投与前
BJκ
IIIB
VADx1
義歯調整、セルフケ 口腔内チェック、口腔
ア指導
ケア介入
ZOL: ゾレドロン酸, BJ: ベンス・ジョーンズ蛋白, VAD: ビンクリスチン/アドリアマイシン/デキサメサゾン療法,
HD-CY: シクロフォスファミド大量療法,
MP: メルファラン/プレドニゾロン療法,MCNU: サイメリン,BD: ボルテゾミブ, Dexa: デキサメサゾン, auto-PBSCT: 自己末梢血幹細胞移植
結果−2
著者
文献レビュー
報告誌
年月日
症例数
(予防有無)
疾患
BRONJ発症例数(%)
考察
予防無
予防有
固形癌
26(7.8%)
2(1.7%)
後方視的検討
多発性骨髄腫
8(26.3%)
2(6.7%)
後方視的検討
多発性骨髄腫
NA
2(22.2%)
転科前に高Ca血症などでBP
投与された後の介入例含む
固形癌
11 (5.5%)
6 (2.8%)
後方視的検討
672(予防無)
Ripamonti
Ann of Oncol
2009
115(予防有)
90(予防無)
Dimopoulos Ann of Oncol
2009
38(予防有)
横田宜子
臨床看護
2011
9(予防有)
200(予防無)
Vandone
Ann of Oncol
2011
211(予防有)
24(予防無)
古賀寛史
泌尿器外科
2011
固形癌
21(予防有)
NA, not available
18 (40%)予防有無は不明
後方視的検討
考察
ONJ発症は,BP投与前および投与中の適切なケ
アによって低減できる2).
患者がONJなどのリスクを知った上で,治療に
同意することの重要性は,2010年の日本口腔外
科学会などによるポジションペーパーにも明記
されている3).
BP治療を継続するためにも,まず骨予後改善効
果を認識させることで動機づけし,その上で看
護師がセルフケア指導などを反芻することが重
要である.
2) Ripamonti CI. Ann Oncol. 2009.
3) Yoneda T. J Bone Miner Metab. 2010.
考察
ONJについて予め充分に説明することは,ONJ
などの厳しい合併症を発症しても,患者-医療
者間の信頼関係を保ち,治療コンプライアン
スを維持する上で重要である.
日々の治療に身近に寄り添う看護師が,医療
チームの調整を図りながらONJ予防に関わるこ
とは,過度の不安を惹起せずに,患者の適切
なセルフケア継続に寄与する可能性がある.
詳細は下記をご参照下さい
横田宜子. ビスホスホネート製剤による顎骨壊死予防への
チーム介入に関する報告. 臨床看護. 37: 2011