7 月 17 日の抄読会 佐藤剛先生:Diabetologia. (2009) June E-pub “2 型糖尿病治療は癌の発症リスクを高めるか??” The influence of glucose lowering therapies on cancer risk in type 2 diabetes 【背景】今、糖尿病界で、最も物議をかもしているのは、ヨーロッパ発のランタスによる癌リスク(特に乳 癌)上昇の論文のあいつぐ発表です。ランタスのIGF1作用から、癌のリスクが高まるんだと、ランタス以 外の某インスリンメーカーは宣伝に躍起ですが、糖尿病学会、協会では、確証が得られていないというこ とで、使用についてはこれまでどおりの使用を!という方向性が示されています。今回は、その否定的デ ータが含まれているイギリス発の論文で、2 型DM治療と発癌リスクについて検討されされた研究で、結 果の最後には、ランタスと乳癌発癌について追加検討もなされています。 【方法】62809 名の 40 歳以上発症 2 型糖尿病患者に対する retrospective cohort 研究。開始治療がメト フォルミン(Met)単独群(n=31,421)、SU単独群(n=7,439)、Met+SU群(n=13,882)、インスリン群 (n=10,067)、および使用インスリン群別の、固形癌(特に、乳癌、大腸がん、膵癌前立腺がん)の累積発 症率を検討。 【結果】SU治療は HR 1.36、インスリン治療群は HR 1.42 の、癌発症リスクの上昇が確認され、SU 患者で は、メトフォルミン使用により発症リスクが低下していた。SU/インスリン治療による癌リスクの上昇は膵 癌、大腸がんにおいて有意であり、乳癌、前立腺がんでは明らかな関連を認めなかった。注目されるラ ンタスと、乳がんリスクの関連については、本研究では有意な関連性を認めなかった。 【結論】本研究は、本邦糖尿病学会などの上記声明の基礎になっている論文ですが、今後、日本、アメリ カなど多くの国で追試がなされることになると思われます。発癌リスク上昇を示した論文だけでなく、そう でない論文、原著を読んで総合的に判断する習慣を身につけましょうという佐藤先生の御提案でした。
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