Document

国際経済学
(7) 貿易の利益と関税の効果
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2010年12月6日
余剰と経済厚生の復習





消費者余剰は取引による消費者の利益
生産者余剰は取引による生産者の利益
消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間
生産者余剰は供給曲線と水平な価格線の間
経済厚生は消費者余剰と生産者余剰の和
2010/12/06
国際経済学7
2
消費者余剰と生産者余剰
価格
供給曲線
消費者余剰
1400
1100
900
生産者余
剰
需要曲線
800
数量
1
2010/12/06
2
3
4
国際経済学7
3
今日学ぶこと
1.
2.
3.
4.
国際貿易による利益はなんだろう
経済厚生から表現する
自由貿易の利益
関税を課した場合の損失
2010/12/06
国際経済学7
4
貿易政策
鎖国あるいは自足自給経済
 自由貿易
 貿易制限
 国内と国外(海外)
 需要曲線は国内需要曲線
 供給曲線は国内供給曲線

2010/12/06
国際経済学7
5
鎖国をしているときの均衡価格
価
格
供給曲線
P
需要曲線
Q
2010/12/06
国際経済学7
数
量
6
鎖国をしているときの経済厚生
価
格
供給曲線
経済厚生
P
経済厚生=消費者余剰+生産者余剰
需要曲線
数
量
Q
2010/12/06
国際経済学7
7
鎖国から開国へ
鎖国を止めて貿易を開始した
 鎖国時の国内均衡価格P > 国際価格 P*

この国は小さな国で国際価格に影響を与えない
とする.小国の仮定.
 国の規模の違い
小国: 貿易取引量が国際価格に変化を与えない
大国:貿易取引量が国際価格に変化を与える
 鎖国時の国内均衡価格を自給自足価格という
 この国際価格を世界価格とも言う

2010/12/06
国際経済学7
8
開国して,世界価格がP*
価
格
P
供給曲線
国内生産量
国内消費量
P*
輸入量
Qs
2010/12/06
需要曲線
Qc
国際経済学7
数
量
9
貿易の効果





小国の自給自足価格が世界価格より高い時
国内均衡価格の下落
国内消費の増大
国内生産の減少
輸入量の増加
2010/12/06
国際経済学7
10
国際価格P*での余剰
価格
供給曲線
生産者余剰
消費者余剰
国内消費量
P*
輸入量
需要曲線
国内生産量
Qs
2010/12/06
Qc
国際経済学7
数
量
11
国際価格P*での経済厚生(総余剰)
価格
供給曲線
経済厚生の増加
経済厚生
国内消費量
P*
輸入量
需要曲線
国内生産量
Qs
2010/12/06
Qc
国際経済学7
数
量
12
輸入の効果




世界価格が低いとき輸入が増える
国内価格は下落
経済厚生(総余剰)は増加
国内で利害関係が発生
 消費者余剰は増える
 生産者余剰は減る



消費者は得
生産者は損
生産者余剰の減少を上回る消費者余剰の増
加
2010/12/06
国際経済学7
13
世界価格P*が国内価格よりも高い
P*>P 場合を考察
 この場合も小国での効果を見る
 国内価格は世界価格に上昇する

2010/12/06
国際経済学7
14
開国して,世界価格がP*
価
格
供給曲線
P*
P
国内生産量
国内消費量
輸出量
Qc
2010/12/06
需要曲線
Qs
国際経済学7
数
量
15
貿易の効果





小国の自給自足価格が世界価格より低い時
国内均衡価格の上昇
国内消費の減少
国内生産の増加
輸出量の増加
2010/12/06
国際経済学7
16
輸出産業の消費者・生産者余剰
価
格
消費者余剰
供給曲線
P*
P
生産者余剰
国内生産量
国内消費量
輸出量
Qc
2010/12/06
需要曲線
Qs
国際経済学7
数
量
17
輸出の効果






世界価格が高いとき輸出が増える
国内価格は上昇
消費者余剰は減る
生産者余剰は増える
消費者は損
生産者は得
2010/12/06
国際経済学7
18
輸出産業の総余剰
価
格
供給曲線
経済厚生の増加
P*
経済厚生
輸出量
Qc
2010/12/06
需要曲線
Qs
国際経済学7
数
量
19
輸出の経済全体の効果

経済厚生は増加

消費者余剰は減るがそれを上回る生産者余剰
の増加
国内での利害対立

 消費者は反対
 生産者は賛成
2010/12/06
国際経済学7
20
鎖国よりも自由貿易は望ましい
国内価格と世界価格の比較で輸入と輸出の
パターンが決まる
 輸入と輸出の双方で経済厚生は増加した


しかし,消費者と生産者の間で利害の不一
致

貿易を制限する事で経済厚生を高める事が
できるか?
2010/12/06
国際経済学7
21
通商政策





財の輸出入に影響を与える政策を通商政策
(commercial policy )
様々な通商政策を見ていきます.
その極端な政策としてこの2つがあります
自由貿易 (free trade) -貿易障壁をまったく設
けていない
保護主義(protectionism)-何らかの方法で輸
入を制限している
2010/12/06
国際経済学7
22
貿易障壁
貿易障壁には大きく分けて
 関税 (tariff)
 数量割り当て
 輸出自主規制
 非関税障壁
があります.
2010/12/06
国際経済学7
23
関税

関税 tariff とは単に輸入に課される税金のこと
です.
外国製品を割高にさせて競争上不利に追い込
むことができます.
 小国の場合を考える
 ここで輸入量1単位辺りt円の関税を課したとす
る
 国際価格が100円で関税が10円ならば消費者
の購入する価格は110円

2010/12/06
国際経済学7
24
世界価格P*,財1単位当たりtの関税
価
格
供給曲線
関税後の国内生産量
関税後の国内消費量
P*+t
P*
関税後輸入量
Qs
2010/12/06
Q’s
Q’c
国際経済学7
需要曲線
Qc
数
量
25
自由貿易に比べ関税を課すと







価格の上昇
消費の減少
国内生産の増加
輸入量の減少
消費者は損
生産者は得
政府は関税収入を得る
関税収入=税率×輸入量
2010/12/06
国際経済学7
26
財1単位当たりtの関税の関税収入
価
格
供給曲線
関税収入
関税後の国内生産量
関税後の国内消費量
P*+t
P*
関税後輸入量
Qs
2010/12/06
Q’s
Q’c
国際経済学7
需要曲線
Qc
数
量
27
貿易の効果
経済全体の望ましさはどうなるか?
 経済全体の望ましさは経済厚生
経済厚生=消費者余剰+生産者余剰
 政府が入れば
経済厚生=消費者余剰+生産者余剰+税収
 関税によって経済厚生は増加するだろうか?

2010/12/06
国際経済学7
28
関税が課された場合の各余剰
価
格
供給曲線
消費者余剰
生産者
余剰
関税収入
関税後の国
内消費量
P*+t
P*
関税後の
国内生産
量
2010/12/06
関税後輸入量
Q’s
Q’c
国際経済学7
需要曲線
数
量
29
関税政策の経済厚生
価
格
供給曲線
経済厚生
関税後の国
内消費量
P*+t
P*
関税後の
国内生産
量
2010/12/06
関税後輸入量
Q’s
Q’c
国際経済学7
需要曲線
数
量
30
関税と他の制度との比較
関税によって税収が増えた
 消費者余剰が増えた
 明らかに鎖国経済よりも経済厚生が増加
 自由貿易と比べてどうだろうか?

2010/12/06
国際経済学7
31
自由貿易が望ましい
自由貿易の経済厚生>鎖国の経済厚生
価
格
供給曲線
消費者余剰
経済厚生の増分
生産者余剰
国内消費量
P*
国内生産量
Qs
2010/12/06
需要曲線
輸入量
Qc
国際経済学7
数
量
32
自習貿易が望ましい
自由貿易の経済厚生>関税賦課後の経済厚生
価
格
生産者
余剰
P*+t
P*
供給曲線
経済厚生の損失
消費者余剰
関税収入
関税後輸入量
Q’s
2010/12/06
Q’c
国際経済学7
需要曲線 数
量
33
結論





自由貿易が一番厚生が高い
保護貿易的な関税は厚生を低くする
しかし鎖国よりは望ましい
関税の厚生損失を死荷重(しかじゅう)と言う
関税は総余剰を最大にせず,死荷重を発生さ
せてしまう
2010/12/06
国際経済学7
34
まとめ




鎖国から開国で輸入が増えて消費量は増える
生産量は減る
関税を課すと政府税収が増える
自由貿易の方が保護貿易よりも経済厚生が
高い
2009/12/21
国際経済学7
35