国際経済学 (7) 貿易の利益と関税の効果 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2011年12月5日 余剰と経済厚生の復習 消費者余剰は取引による消費者の利益 生産者余剰は取引による生産者の利益 消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間 生産者余剰は供給曲線と水平な価格線の間 経済厚生は消費者余剰と生産者余剰の和 2011/12/5 国際経済学7 2 消費者余剰と生産者余剰 価格 供給曲線 消費者余剰 1400 1100 900 生産者余 剰 需要曲線 800 数量 1 2011/12/5 2 3 4 国際経済学7 3 今日学ぶこと 1. 2. 3. 4. 国際貿易による利益はなんだろう 経済厚生から表現する 自由貿易の利益 関税を課した場合の損失 2011/12/5 国際経済学7 4 貿易政策 鎖国あるいは自足自給経済 自由貿易 貿易制限 国内と国外(海外) 需要曲線は国内需要曲線 供給曲線は国内供給曲線 2011/12/5 国際経済学7 5 鎖国をしているときの均衡価格 価 格 供給曲線 P 需要曲線 Q 2011/12/5 国際経済学7 数 量 6 鎖国をしているときの経済厚生 価 格 供給曲線 経済厚生 P 経済厚生=消費者余剰+生産者余剰 需要曲線 数 量 Q 2011/12/5 国際経済学7 7 鎖国から開国へ 鎖国を止めて貿易を開始した 鎖国時の国内均衡価格P > 国際価格 P* この国は小さな国で国際価格に影響を与えない とする.小国の仮定. 国の規模の違い 小国: 貿易取引量が国際価格に変化を与えない 大国:貿易取引量が国際価格に変化を与える 鎖国時の国内均衡価格を自給自足価格という この国際価格を世界価格とも言う 2011/12/5 国際経済学7 8 開国して,世界価格がP* 価 格 P 供給曲線 国内生産量 国内消費量 P* 輸入量 Qs 2011/12/5 需要曲線 Qc 国際経済学7 数 量 9 貿易の効果 小国の自給自足価格が世界価格より高い時 国内均衡価格の下落 国内消費の増大 国内生産の減少 輸入量の増加 2011/12/5 国際経済学7 10 国際価格P*での余剰 価格 供給曲線 生産者余剰 消費者余剰 国内消費量 P* 輸入量 需要曲線 国内生産量 Qs 2011/12/5 Qc 国際経済学7 数 量 11 国際価格P*での経済厚生(総余剰) 価格 供給曲線 経済厚生の増加 経済厚生 国内消費量 P* 輸入量 需要曲線 国内生産量 Qs 2011/12/5 Qc 国際経済学7 数 量 12 輸入の効果 世界価格が低いとき輸入が増える 国内価格は下落 経済厚生(総余剰)は増加 国内で利害関係が発生 消費者余剰は増える 生産者余剰は減る 消費者は得 生産者は損 生産者余剰の減少を上回る消費者余剰の増 加 2011/12/5 国際経済学7 13 世界価格P*が国内価格よりも高い P*>P 場合を考察 この場合も小国での効果を見る 国内価格は世界価格に上昇する 2011/12/5 国際経済学7 14 開国して,世界価格がP* 価 格 供給曲線 P* P 国内生産量 国内消費量 輸出量 Qc 2011/12/5 需要曲線 Qs 国際経済学7 数 量 15 貿易の効果 小国の自給自足価格が世界価格より低い時 国内均衡価格の上昇 国内消費の減少 国内生産の増加 輸出量の増加 2011/12/5 国際経済学7 16 輸出産業の消費者・生産者余剰 価 格 消費者余剰 供給曲線 P* P 生産者余剰 国内生産量 国内消費量 輸出量 Qc 2011/12/5 需要曲線 Qs 国際経済学7 数 量 17 輸出の効果 世界価格が高いとき輸出が増える 国内価格は上昇 消費者余剰は減る 生産者余剰は増える 消費者は損 生産者は得 2011/12/5 国際経済学7 18 輸出産業の総余剰 価 格 供給曲線 経済厚生の増加 P* 経済厚生 輸出量 Qc 2011/12/5 需要曲線 Qs 国際経済学7 数 量 19 輸出の経済全体の効果 経済厚生は増加 消費者余剰は減るがそれを上回る生産者余剰 の増加 国内での利害対立 消費者は反対 生産者は賛成 2011/12/5 国際経済学7 20 鎖国よりも自由貿易は望ましい 国内価格と世界価格の比較で輸入と輸出の パターンが決まる 輸入と輸出の双方で経済厚生は増加した しかし,消費者と生産者の間で利害の不一 致 貿易を制限する事で経済厚生を高める事が できるか? 2011/12/5 国際経済学7 21 通商政策 財の輸出入に影響を与える政策を通商政策 (commercial policy ) 様々な通商政策を見ていきます. その極端な政策としてこの2つがあります 自由貿易 (free trade) -貿易障壁をまったく設 けていない 保護主義(protectionism)-何らかの方法で輸 入を制限している 2011/12/5 国際経済学7 22 貿易障壁 貿易障壁には大きく分けて 関税 (tariff) 数量割り当て 輸出自主規制 非関税障壁 があります. 2011/12/5 国際経済学7 23 関税 関税 tariff とは単に輸入に課される税金のこと です. 外国製品を割高にさせて競争上不利に追い込 むことができます. 小国の場合を考える ここで輸入量1単位辺りt円の関税を課したとす る 国際価格が100円で関税が10円ならば消費者 の購入する価格は110円 2011/12/5 国際経済学7 24 世界価格P*,財1単位当たりtの関税 価 格 供給曲線 関税後の国内生産量 関税後の国内消費量 P*+t P* 関税後輸入量 Qs 2011/12/5 Q’s Q’c 国際経済学7 需要曲線 Qc 数 量 25 自由貿易に比べ関税を課すと 価格の上昇 消費の減少 国内生産の増加 輸入量の減少 消費者は損 生産者は得 政府は関税収入を得る 関税収入=関税×輸入量 関税10円で100個輸入だと関税収入は 10×100=1000円になる 2011/12/5 国際経済学7 26 財1単位当たりtの関税の関税収入 価 格 供給曲線 関税収入 関税後の国内生産量 関税後の国内消費量 P*+t P* 関税後輸入量 Qs 2011/12/5 Q’s Q’c 国際経済学7 需要曲線 Qc 数 量 27 貿易の効果 経済全体の望ましさはどうなるか? 経済全体の望ましさは経済厚生 経済厚生=消費者余剰+生産者余剰 政府が入れば 経済厚生=消費者余剰+生産者余剰+税収 関税によって経済厚生は増加するだろうか? 2011/12/5 国際経済学7 28 関税が課された場合の各余剰 価 格 供給曲線 消費者余剰 生産者 余剰 関税収入 関税後の国 内消費量 P*+t P* 関税後の 国内生産 量 2011/12/5 関税後輸入量 Q’s Q’c 国際経済学7 需要曲線 数 量 29 関税政策の経済厚生 価 格 供給曲線 経済厚生 関税後の国 内消費量 P*+t P* 関税後の 国内生産 量 2011/12/5 関税後輸入量 Q’s Q’c 国際経済学7 需要曲線 数 量 30 関税と他の制度との比較 関税によって税収が増えた 鎖国と比べて消費者余剰が増えた 明らかに鎖国経済よりも経済厚生が増加 自由貿易と比べてどうだろうか? 2011/12/5 国際経済学7 31 自由貿易が望ましい 自由貿易の経済厚生>鎖国の経済厚生 価 格 供給曲線 消費者余剰 経済厚生の増分 生産者余剰 国内消費量 P* 国内生産量 Qs 2011/12/5 需要曲線 輸入量 Qc 国際経済学7 数 量 32 自習貿易が望ましい 自由貿易の経済厚生>関税賦課後の経済厚生 価 格 生産者 余剰 P*+t P* 供給曲線 経済厚生の損失 消費者余剰 関税収入 関税後輸入量 Q’s 2011/12/5 Q’c 国際経済学7 需要曲線 数 量 33 輸出自主規制 自由貿易時の価格P1.輸出自主規制後の価格P2 米国の経済厚生は輸出自主規制で下がる 価 格 供給曲線 経済厚生の損失 消費者余剰 P2 P1 需要曲線 生産者余 剰 輸出自主規制後の輸入量 Q’s 2011/12/5 Q’c 国際経済学7 自由貿易の輸入量 数 量 34 結論 自由貿易が一番厚生が高い 保護貿易的な関税は厚生を低くする しかし鎖国よりは望ましい 関税の厚生損失を死荷重(しかじゅう)と言う 関税は総余剰を最大にせず,死荷重を発生さ せてしまう 2011/12/5 国際経済学7 35 まとめ 鎖国から開国で輸入が増えて消費量は増える 生産量は減る 関税を課すと政府税収が増える 自由貿易の方が保護貿易よりも経済厚生が 高い 2011/12/5 国際経済学7 36
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