禁煙運動発足30周年記念 第17回 日本禁煙推進医師歯科医師連盟 学術総会 パネルディスカッション 「禁煙外来で使える心理療法」 - 認知行動療法 - 日本大学医学部附属板橋病院心療内科 中村 晶子 今回の発表内容 ・タバコがやめにくい原因 ・認知行動療法 ・当科の禁煙プログラム ・禁煙外来で活用できるコミュニケーション法 タバコがやめにくい原因 ・ ニコチンへの依存(身体的依存) ・習 慣 ・ 当事者の持つ背景 やめたいけれどやめられない -本当はやめたくない?(自己統制機能不全) Ⅰ.無意識レベル ・精神分析的な考え方。 ・外界依存性;不安感、不全感などの代償行為として 目先の行動をとりやすい。 ・乳幼児期の親子関係不全があると、無力感が生まれ やすく自己評価が低くなり、基本的な安心感が欠如 しやすい。 ・口唇愛期(乳幼児期)と言い、そのころに問題を持っ ているとそのレベルに退行しやすく、唇からものが 離しにくくなると言われている。 唇の快感が精神的飢餓感の代償となる。 ・認知行動療法の自動思考の考え方も無意識レベルと考えられる。 Ⅱ.意識レベル ・認知・行動 認知行動療法 (Cognitive Behavior Therapy:CBT) 認知行動療法は、当事者の自助力の回復や促進を目的とす る教育的な心理療法である。 うつ病の治療法として出発した認知療法と行動療法(学習 理論)から発展したものがあるが、現在はそれらをひっくる めて総称することが多い。 この療法は、現在、うつ病や不安障害などの精神疾患や健 常者のストレスマネジメントなどに幅広く活用されている。 しかし、治療法として用いる際には、この方法を理解する能 力レベルや情緒を抑える力が必要である。 実際には問題となっている認知(思考・イメージ)や行動 をアセスメントし、悪循環から抜け出すためのコーピングを 検討・実施し、効果を検証していく。(町沢 2004、伊藤 2007) 認知行動療法の基本モデル 個人 環境 気分・感情 状 況 認 知 他 行 動 者 身体反応 環境と個人との 相互作用 個人における 相互作用 (認知行動療法 べてる式 : 伊藤絵美 他 2007 医学書院より) ぐるぐる思考 タバコが やめられない どうしよう 悪循環を断ち切るために 発想を転換する イライラする どうせできない に違いない ポン やってみなけ ればわからな い。とりあえず やってみよう ♪♪ 禁煙スケジュール アセスメント ・ 生化学検査 ・ 生理機能検査 ・ 心理学的検査 ・ インテーク面接 から得た資源の 分析 ニコチン置換療法による禁煙 必要に応じた援助的方略により患者の認知・行動変容を目指す 効果測定 ・アセスメント時と 同等の検査 ・心理療法的フォ ローアップ (ノバルティス) 非機能的思考記録用紙 状 況 感 情 食後、 イライラ ついタバコを 吸ってしまう 自動思考 理性的反応 例 結 果 -自動思考・ 感情の確信度- どうせやめら やめられない 半分くらいか れないに違い かどうかは、 ない やってみない とわからない 例 下山晴彦監訳 認知行動療法入門 2004 金剛出版 東京 より 禁煙外来で活用できる コミュニケーション法 心理療法にとって大切な「傾聴・受容・共感・尊重」などの基本的態度を基盤 に、認知行動療法の「開かれた質問法」をエッセンスとして加えていただいたら、 いかがだろうか? 一般的な開かれた質問に、より具体的な答えを引き出す工夫をしていただく。 たとえば、「禁煙の調子はどうですか?」と質問するところを 「この一週間の禁煙の様子は?(状況)」 「その問題が起きたとき、どんな考えが浮かびましたか?(認知)」 「そう考えるとどんな気分でしたか?(気分・感情)」 などのように、具体的に質問していくと、会話がより具体的になり、当事者・ 治療者間で問題解決の糸口がみつかりやすいかもしれない。 具合のよくなった原因 ①治療者が患者に向けるおしつけがましくない暖かさ と関心 ②患者が自分自身の問題を理解するのを治療者が 助けてくれた ③自分を理解してくれる人物を信用して話すことがで きること ④今まで避けてきたことに直面するよう励まされたこ と (新版 心身医学 1994)
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