肥満治療の現状 現在、肥満治療は、外科治療以外では、食事療法

肥満治療の現状
現在、肥満治療は、外科治療以外では、食事療法、運動療法に、心理・行
動的側面にも十分に焦点を当てた『認知行動療法』とよばれる心理療法を組
み合わせた包括的治療法が最も効果的であるとされています。しかし、一旦
減量に成功しても、長期的にみるとその後体重が再増加(リバウンド)する
ことが多く、その点が、現在の肥満治療の最大の問題となっています。この
ように減量後の長期間の体重維持に関しては、臨床的に有効な治療法は未だ
確立しているとは言えないのが現状です。
当科での肥満の認知行動療法
当科は、日本肥満学会認定肥満症専門病院の指定を受け、肥満治療を専門
に行なっています。当科では 10 年前より肥満患者さんに対して、イギリス
のオクスフォード大学が開発した新しい『認知行動療法』を行い、減量およ
び減量後の体重維持に効果をあげてきました。これは、身体面だけではなく、
ストレスへの対処法やセルフコントロールなど心理・行動面からも患者さん
を支援しながら進めていく治療です(食事療法・運動療法にストレスマネー
ジメントも加えた包括的治療です)。
治療時間と期間
今回は、集団での『認知行動療法』であるため、1つの治療グループを 10
人前後としています。治療期間は7ヵ月(H27 年 9 月~H28 年 3 月)です。
最初の 6 ヶ月を減量期間とし、後半の 1 ヶ月を減量した体重を維持するため
のスキルを会得するための期間に設定しています。減量期は毎週1回 90 分
計 26 回、維持期は毎週 1 回 90 分計 4 回行います。診療日は火曜日または木
曜日です(いずれも 13:00-14:30)。7 ヶ月という長期間に及ぶため、その期間
定期的かつ継続的に外来通院できることが必要となります。
臨床試験について
今回の治療は、減量とリバウンド防止の肥満治療であると同時に、臨床試
験です。
肥満患者では、甘味嗜好が指摘されており、現在の肥満治療の大きな課題
となっています。肥満における味覚の特徴とそれに影響を及ぼす因子を明ら
かにすることで、肥満のより深い病態理解が可能になると考えられます。そ
こで、当科では、肥満患者さんを対象として、減量治療前後の味覚変化と睡
眠状態や抑うつ・不安・ストレスなどの心理社会的因子との関連や、味覚変
化の減量後のリバウンドへの関与を検討することを目的とした臨床研究を
計画し実施することとしました。
従って、参加者の方には、治療前後に、味覚検査や睡眠検査、採血、心理
テストなどの検査にご協力頂く予定です。
参加の基準
本研究は、肥満という診断が確定した女性患者さん(BMI* 25≦BMI<40)を対
象に行います。 自己記入式の質問紙への記入が自力で可能な方を対象とし
ています。20 歳未満 65 歳以上の方、味覚障害を指摘されている方、副鼻腔炎
の既往があり現在も症状がある方、最近半年以内に 5kg 以上の減量歴のある
方、現在、神経性大食症と診断される方、神経性食欲不振症の既往のある方、
妊娠・授乳をしている方、もしくは今後2年間に妊娠を予定しておられる方、味
覚に影響する投薬(抗菌薬、睡眠薬など)を使用している方、体重に影響する
薬(ステロイドの内服など)・サプリメントなどを服用している方、悪性腫瘍・内分
泌疾患(甲状腺機能障害、クッシング症候群など)など体重に影響を及ぼす内
科疾患に罹患しておられる方、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対して
治療を受けておられる方、現在精神疾患で治療中の方は研究に参加すること
ができません。
*
体格指数(Body Mass Index)=体重(kg)/(身長(m)) 2
例えば、体重 80kg、身長 1.58m の場合、BMI は 80÷1.58÷1.58=32.0 となります。
参加希望者は
この臨床試験に参加ご希望の方は、一度当科を受診して、詳しい治療内容
の説明を受けていただき、十分にご理解されたうえで、治療の同意が得られ
れば、9 月から治療を開始するという手順を踏みます。初回受診の際は、下
記の担当者にご連絡のうえ、予約をとっていただきご来院ください。
なお、肥満に対する当該治療は、現在の医療保険で心理療法の一つとして適
応されます。保険適応のない検査項目については、患者さんの特別な費用負担
が生じることは一切ありません。
受診予約または照会の連絡先
九州大学病院心療内科肥満外来 TEL:092-642-5323 (担当:澤本)
E-mail: [email protected]