精神神経科 後期研修プログラム 2015 I 研修プログラムの目的及び特徴

精神神経科 後期研修プログラム 2015
I 研修プログラムの目的及び特徴
近年、精神医療は大きく変化してきており、精神医療へのニーズも多様化してきております。また、診
断は国際分類や操作的診断が一般化されてきており、これは精神保健福祉法に関連する書類記載でも求
められています。治療に関しては EBM に基づく薬物療法や精神療法が国際的に採用されてきており、よ
り良質な医療を提供するには、これらを用いた精神医療を展開する必要があります。さらに、欧米に比
し我が国は入院治療の比率が非常に高く、地域を中心とした医療への早急な方向転換に迫られておりま
す。従って、将来、優秀な精神科医として活躍するにはこれらについての適切なトレーニングが必須で
す。
私たち千葉大学医学部附属病院精神神経科・こどものこころ診療部では連携病院との密接な協力体制の
もと、上記を満たすような研修プログラムを作成し、標準的、科学的精神医療を身に付けた優秀な精神
科医の育成に力を入れております。なお、2~3 年程度の短期間の研修も受け入れております。また、年
1回の学会旅費は教室で負担致します。
1.経験できる症例と習得できる技術
A.経験できる症例(児童思春期症例も含む)
 統合失調症
 気分障害
 不安障害(強迫症や全般不安症、社交不安症など)
 摂食障害
 症候性・器質性精神疾患(認知症やせん妄を含む)
 神経発達症
 パーソナリティー障害
 アルコール・物質関連障害
 精神保健福祉法の措置入院や医療観察法の鑑定入院症例
B.習得できる精神医療技術
 精神疾患の診断法(ICD-10 や DSM-5 の使い方、画像診断・脳波の読み方、心理検査など)
 標準的薬物療法(国際的なガイドラインに沿った薬物選択)
 治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン治療
 認知行動療法(強迫症等の不安障害や気分障害、摂食障害、統合失調症等に対する認知行動療
法)
 問題解決アプローチ(診療困難例に遭遇したときの解決方法)
 修正型電気けいれん療法(治療抵抗性の鬱病や統合失調症に対する麻酔科と協働した治療)
 リエゾン・コンサルテーション(身体科病棟または ICU 入院中の症例の診察と他科医療者への
アドバイス)等
 精神科救急
 長期入院患者の退院促進と地域精神医療
 精神科訪問看護・指導
 精神科関連診断書等の記載方法(医療保護入院や措置入院に関わる書類、自立支援医療・精神
障害者保健福祉手帳、障害者年金、保険会社に提出する書類等)
 症例報告(週一回回診時の重点ポイント報告、グループカンファレンスによる詳細な症例報告、
研究会や学会における症例報告、和文や英文による症例報告など)
2.指導体制
大学病院においては、教授、准教授、講師、助教、チーフ・レジデントの診療グループ制による集団指
導体制を実施しております。助教以上においては各々の研究領域である専門分野も含め、精神疾患全般
に対する高い臨床能力を有しており、認知行動療法や標準的薬物療法に関する十分なトレーニングを受
けた精神科医たちであり、安心して研修を受けることができます。
更に認知行動療法に関して、摂食障害の治療は英国モーズレー病院に留学経験のある子どものこころの
発達研究センターの中里特任教授などの講義やスーパーバイズを受け、世界最先端の技術を学ぶことが
可能です。また、鑑定などの司法精神医学については社会精神保健教育研究センターの五十嵐禎人教授
の指導のもとで行うことが可能です。
また、連携病院においても指導医を置くと共に、当科と密接な連携をとって指導していただいておりま
す。
3.週間スケジュール(大学病院での 1 週間のスケジュールの一例)
曜日
午前
午後
月曜日
入院診療
入院診療、Gr カンファ
火曜日
外来診療
入院診療
水曜日
実地研修
実地研修
木曜日
入院診療
入院診療・抄読会
金曜日
入院診療・クルズス
教授回診・病棟会・リエゾンカンファ、CRM
Gr:グループ、CRM:クリニカルリサーチミーティング
II 研修プログラムの責任者、連絡担当者
研修プログラム責任者:伊豫雅臣
連絡担当者:石川 雅智(医局長)電話:043-226-2297
E-mail: [email protected]
III 研修指導医
伊豫雅臣:教授 認知行動療法、精神神経薬理
中里道子:特任教授(子どものこころの発達研究センター)児童精神医学、認知行動療法、摂食障害
中川彰子:特任教授(子どものこころの発達研究センター)認知行動療法、強迫症
渡邊博幸:兼任教授(千葉大学社会精神保健教育研究センター)精神神経薬理、地域精神医療
白石哲也:特任教授、産業精神保健、老年精神医学、認知行動療法
椎名明大:講師、司法精神医学
橋本
佐:特任講師、分子精神医学、神経生理学
金原信久:兼任講師(千葉大学社会精神保健教育研究センター)画像診断
石川雅智:助教、核医学診断
佐々木
剛:助教、児童精神医学
小松英樹:助教、地域精神医療
長谷川
直:助教、リエゾン精神医学
新津富央:助教、精神神経薬理
木村敦史:助教、気分障害
鎌田
雄:特任助教、リエゾン精神医学、精神医学教育
高橋純平:助教、児童精神医学
IV
研修課程
原則として、初期研修修了後の3年目からの約5年間を後期研修期間としております。この間に複数の
専門的医療機関を経験することが重要であるため、大学病院を始め、下記にあげた研修連携病院を中心
に2ヶ所以上の機関にて研修を受けていただきます。また、この期間中、精神保健指定医取得をサポー
トし、また精神保健指定医としての初期トレーニングを提供します。修了後は本人の希望に添えるよう
対応していきたいと考えております。
例
1年目:大学、2~3年目:A病院、4年目:大学、5年目:B病院
1年目:A病院、2年目:大学、3~4年目:B病院、5年目:大学
後期研修課程は大きく 2 つに分かれています。基礎(ベーシック)課程においては一般精神医療に加え
て当科の特色ある精神医療を実践できることを目標とし、上級(アドバンスト)課程においては当科の
特色ある精神医療を実践かつ指導できることを目標としています。
V
連携病院
精神医療へのニーズの多様化に伴い、精神医療機関も、救急・急性期精神医療、総合病院精神医療、急
性期・社会復帰支援一体型精神医療、児童思春期精神医療、高齢期精神医療、薬物・アルコール精神医
療、司法精神医療など多様化してきております。従って優秀な精神科医となるには、これら複数の専門
医療機関で研修することにより、精神医療知識・技術を身に付ける必要があります。当科では下記のよ
うな医療機関と連携をとることにより、質の高い研修を実施しております。
後期研修プログラムで最初に出向する連携病院は、精神科救急、認知行動療法、クロザピン使用*のいず
れかが実施できる病院です。また、連携病院での研修中は可能な限り当科の研修登録医となり、週に 1
度当科専門外来またはこどものこころ診療部等に参加するなどの研修体制をとっております。
*)千葉県ではより多くの治療抵抗性統合失調症患者さんにクロザピンによる治療が提供できるように、
千葉大学医学部附属病院、旭中央病院、成田赤十字病院、亀田総合病院をコア・ホスピタルとした千葉
クロザピン・サターン・プロジェクトを実施しており、単科精神科病院でも積極的にクロザピンによる
治療が推進できる体制を構築しております。
連携病院群
私たちは研修や研究、人事などで下記の病院と連携を取っております。
・
救急・急性期:千葉県精神科医療センター(千葉市)、成田赤十字病院(成田市)
、他
・
総合病院:袖ヶ浦さつき台病院(袖ケ浦市)、成田赤十字病院(成田市)、亀田総合病院(鴨川市)、
旭中央病院(旭市)他
・
一体型:同和会千葉病院(船橋市)
、木更津病院(木更津市)
、木村病院(千葉市)
、さわ病院(大阪
府豊中市)
、佐藤病院(山形県南陽市)他
・
児童思春期:千葉県こども病院(千葉市)、千葉市立青葉病院(千葉市)、
・
高齢期:千葉市立青葉病院(千葉市)
VII 研究及び研修体制
当科は千葉大学大学院医学研究院精神医学、千葉大学社会精神保健教育研究センター、医学研究院附
属子どものこころの発達研究センターと密接な連携のもと、臨床研究、基礎研究を推進しております。
また、治験も積極的に受け入れることにより、治療薬開発に携わり、医療の進歩に貢献しております。
この研修期間中または研修修了後に大学院入学も可能です。更に、医学研究院附属子どものこころの発
達研究センターと連携して行っている認知行動療法研修会にも参加できます。