格子QCDとJ-PARC ---核力プロジェクトの近未来の拡張の形(私見)--石井理修 (筑波大) 1. これまでの核力プロジェクト 2. 近未来の拡張の形 これまでの核力プロジェクト Nuclear force from lattice QCD (N.Ishii, S.Aoki, T.Hatsuda, Phys.Rev.Lett.99,022001(’07).) 波動関数からポテンシャルを構成する方法: ① 格子QCDでNN波動関数(BS波動関数)を作る。 ② Schrodinger方程式を逆方向に使って、 波動関数からNNポテンシャルを逆算する。 Schrodinger 方程式 (E H 0 ) ( x) V (r ) ( x) 利点: 波動関数から作ったために、 NN散乱実験に忠実なポテンシャルに拡張可能(後述) 様々な方向への拡張 NN 中心力 NN テンソル力 NΞ(I=1) 中心力 中心力だけでなく、テンソル力も。 ハイペロン力も容易に求まる。 (現在、NΛポテンシャルが進行中) full QCDも進行中。 軽いクォーク質量 1S 0 中心力 クォーク質量依存性が大きい。 現状では、 計算量を抑えるため重いクォーク質量を採用しているが、 現象論的応用のためには軽いクォーク質量が重要。 ★ 最近では非常に軽いクォーク質量を採用したfull QCD計算が可能になってきた。 Y.Kuramashi’s talk at lattice 2008 ★ このようなゲージ配位は 暫く待つと、JLDG/ILDGを 通して一般に公開される。 http://www.jldg.org/lqa T2Kや京速コンピュータが本格運用されるようになると、 1辺6fmのような巨大な格子上で 2+1 flavor full QCD のゲージ配位が本格的に生成可能になる(そうです)。 [物理的クォーク質量を採用しているが、chiral quark actionではない] NN散乱実験に忠実な核力(大雑把なアイデア) 様々なエネルギーのBS波動関数を同時に用いて、 energy independent potential を逆算する。 NN散乱実験にもっと忠実なポテンシャルが得られる。 ( 散乱位相差の情報がどんどん正確になる) E3 E2 E1 E0 BS波動関数の長距離における漸近形: ( r ) e i 0 (k ) sin kr 0 (k ) (s-wave) kr 我々のポテンシャルはこれらの波動関数を ⇒ 同時に再現するように構成されている。 用いたすべてのエネルギーで散乱位相差がexact に再現される。(波動関数を突っ込めば突っ込む ほど位相差の情報が正しくなる) Inelastic thresholdが開くと さらなる拡張が必要となります。 この理由により、これまでの計算は inelastic thresholdが開く前の物に制限して います。 近未来の拡張の形(私見) 近未来の拡張の形 結合チャンネルの相互作用 三体力 量子少数多体計算や核構造理論との連携 form factor (ele-mag current の行列要素) 地道な拡張・様々な拡張 結合チャンネルの相互作用 ハイパー核では異なるthreshold間のエネルギー差が小さい。(例えばΛΛーNΞだと25MeV程度) intitialとfinalで粒子が変わらないdiagonalな相互作用 NΞ ΛΛーΛΛ、NΞーNΞ ~25 MeV に加えて、off-diagonalな相互作用 ΛΛ ΛΛーNΞ も重要。 数値的には、いずれにせよ、 ΛΛの波動関数とNΞの波動関数に関する結合チャンネルのSchrodinger eqを逆解きする ことになるはず。 テンソル力の計算と類似している。 細かい点(励起状態の波動関数が必要になる)を除いて問題ないはず。 散乱理論による裏付けを与える必要がある。 ★ single チャンネルで求めたΛΛポテンシャルとの関係: ( E H 0 ) ( x ) V (r ) ( x ) どちらのやり方でも、共通のΛΛ波動関数が生成されることに注意しよう。 single チャンネルで求めたΛΛポテンシャルは、結合チャンネルの相互作用で、 NΞ sectorをintegrate outしたもの。 右のdiagramの効果が繰り込まれたようなポテンシャルである。 三体力 厳密に3体系の実験観測量をあわせるためには、3体力は必要となる。 核構造で最近3体力が話題になっている。ハイパー核でも2体力の理解が進むと次は3体力? 高密度で3体力は重要。(より現実的な状態方程式) brute forceに拡張すると、 3体の波動関数を収容するための記憶容量は、V=323の格子では約12万倍必要となる。 効率的な数値計算の方法も含めて、3体力を定式化することが必要。 やはり散乱理論による裏付けがほしい。 Form factor (ele-mag current の行列要素) 現在の我々の核力の(バリオン多体系の)枠組みで、ele-mag currentの行列要素の定式化。 deuteron等の原子核が直接格子QCDで実現した場合には、 そのform factor等が格子QCDで直接計算されるのは時間の問題。 この定式化は exactな物を目指そう。 Bethe-Salpeter方程式の枠組みでは可能である。我々の枠組みでも可能かもしれない。 中間子交換流に対応するような寄与が得られるはず。 核構造だとdeuteron の D state probabilityの議論とかに使えるが。。。 多体系の場合、厳密には多体力からの寄与があるから、あまり楽しくないかもしれない。 量子少数多体計算や核構造理論との連携 京速コンピュータに関連して、計算物理において 素核宇連携概念図 素粒子・原子核・宇宙連携での計算物理学の構築 が模索されている。 その中で進み始めた案の一つ。(肥山さんは中心人物の一人) 格子QCDによる核力 + 少数多体計算 原子核、ハイパー核 格子QCD単独で、原子核・ハイパー核を直接計算するのでは、 やれることは限られている。 --- 京速コンピュータを使っても、多分バリオン数3か4が限界。 --- keVオーダーで無数に存在する原子核励起スペクトルを格子QCDで直接考えるのは大変。 少数多体計算と連携すると扱える対象の量が増大する。(バリオン数が7から8くらい?) --- 核構造の様々な方法と連携できると扱える対象の量がもっと増える? バリオンの自由度をベースにしたやり方の方が、 直接格子QCD単独でやるより人間には分かりやすいはず。 少数多体計算の力を借りて、原子核・ハイパー核の実験観測量をあわせられるような 核力・ハイペロン力が手に入ったとして、 どのくらい状態方程式の理解に貢献できるのであろう? 物理的クォーク質量のゲージ配位が利用可能になる時までにすべての準備を終える事を目標。 地道な拡張・様々な拡張 様々なハイペロン力、様々な非中心力。p-wave。 物理クォーク質量、full QCD、巨大な空間体積等。 様々なエネルギーの波動関数を同時に使う。 meson-baryon (non-exotic channel): 計算量増大につきしばらく困難。 もっと良いラプラシアン。 様々な不定性の除去。 等 核力プロジェクトで一番必要なのはマンパワーです。 様々な方々のご協力やご支援に期待しております。 ショートパネラーは次の方々におねがいしました。 ---年齢順-- 佐々木勝一さん(東大): Nuclear-Bound Charmoniumに関連した話題。 根村英克さん(理研): 格子QCDによるハイペロン相互作用とその応用に関連した話題。 佐々木潔さん(東工大): kappa channelの pi K 散乱に関連した話題。
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