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強い力の物理と核子構造
(ほんのさわりだけ)
PHENIX-spin-Jミーティング@立教大学
2014年1月8日
谷田 聖(ソウル大学)
原子よりも小さな世界
p
n
e
atom (~0.1nm)
nucleus (1~10 fm)
nucleon
(~1fm)
4つの相互作用
• 重力
– 引力のみ(?)
– 重い物体、特に天体運動などを支配
• 電磁気
– 同チャージ  斥力, 逆チャージ  引力
– 物質の性質を支配。エレクトロニクス
• 弱い力
– 原子核の b 崩壊など
• 強い力
– 原子核・核子やそれらの構造を支配
強い力—歴史
• 湯川秀樹による中間子理論
– なぜ原子核は束縛して
いられるのか?を説明
 パイオンの存在を予言(1934)
– ノーベル賞(1949)
p
+q
p
g
n
-q
おまけ:光子交換の古典論
• 1つの荷電粒子が作る電場のエネルギー
𝜖0 2
𝐸 𝑑𝑉
2
– 光(子)の衣を着ている、と見なせる
• 2つ荷電粒子があると、
𝜖0
2
𝐸1 + 𝐸2 𝑑𝑉
2
=
𝜖0 2
𝐸1 𝑑𝑉 +
2
𝜖0 2
𝐸2 𝑑𝑉 +
2
– 最後の項が相互作用の項
– 光子同士の干渉  「光子交換」
𝜖0 𝐸1 ∙ 𝐸2 𝑑𝑉
ハドロンとは?
• 強い力を感じる粒子のこと
陽子, 中性子, パイオン,…
• パイオンの発見(1947)
– 以来多数のハドロンが見つかっている
 現在では100以上
• ハドロンには規則性がある
– 原子の周期律表みたい
– 8-fold way
– ハドロンには構造がある?
クォーク模型
• ハドロンはより基本的な粒子から
出来ているに違いない。
 quarks by Gell-mann (1964)
– 核子は3つのクォークから出来ている
i.e., 陽子=(uud), 中性子=(udd)
u
d
u
– A pion is made of quark + anti-quark
i.e., 𝜋 + = (𝑢𝑑)
 軽いハドロンの規則性をうまく説明
1969にノーベル賞
反粒子? – ディラックの海
E  (mc )
2
2 2
E   mc
2
E
+m
-m
Prediction in 1928
Nobel prize in 1933
Hole = “反粒子”
電荷も何もかも反対
QCD
• QCD = Quantum Chromo-Dynamics
– 強い相互作用の真の源
Electro-magnetism (QED)
gauge theory
±e – 1 kind of charge
photon mediates
photon has no charge
-e
+e
QCD
gauge theory
RGB – 3 color charges
gluon
gluons have color charge
特徴
• クォークは (グル―オンも) 決して直接観測できない。
 ハドロン内に閉じ込められている
• Coupling constant
≪ 1: fine structure constant
+
-
+e
+
-
-
– 実は距離(エネルギー)によって変わる
– なぜ?  仮想粒子-反粒子生成
による(Debye)遮蔽効果
 長距離で弱い
( 短距離で強い)
+
+
QED: 𝛼 =
1 𝑒2
1
~
4𝜋𝜀0 ℏ𝑐 137
QCD coupling constant
• QCD: グル―オンも電荷を持つ
 反遮蔽効果
高エネルギーで弱い
Asymptotic freedom
の発見(1973)
2004年ノーベル賞
• 低エネルギーでは
as  ∞
 閉じ込めの
理由の1つ
aが大きいと何が起こる?
• QEDのようなToy modelで考える
E
+m
mass term: 2m
-m
束縛エネルギー: a2m/4
(非相対論近似)
• もし 2m < a2m/4 なら、何が起こる?
(cf. QEDではこの比は100万分の7くらい)
𝑞 𝑞 凝縮
• 真空からqを一個拾い上げる → より安定
 自発的対称性の破れ
  qq  0
• 粒子としての“Quark”は新しい真空で再定義される
– もとの質量が0でも、質量 ∝ 𝛼𝜙 を獲得する
– 3×mq~10 MeV が mp~1 GeV になる仕掛け
• 最初に南部が NJL モデルを使って示した
– 2008年ノーベル賞
• 実際のQCDはさらに複雑
(閉じ込め、グル―オン凝縮、 ...)
原子核・ハドロン物理のおもしろさ
真空の「構造」
g<gc g=gc g> gc
M
𝑞 𝑞 凝縮
• 真空からqを一個拾い上げる → より安定
 自発的対称性の破れ
  qq  0
• 粒子としての“Quark”は新しい真空で再定義される
– もとの質量が0でも、質量 ∝ 𝛼𝜙 を獲得する
– 3×mq~10 MeV が mp~1 GeV になる仕掛け
• 最初に南部が NJL モデルを使って示した
– 2008年ノーベル賞
• 実際のQCDはさらに複雑
(閉じ込め、グル―オン凝縮、 ...)
原子核・ハドロン物理のおもしろさ
核子構造
‥‥のほんのさわり
核子は何から出来ている?
• クォーク模型
– 核子=3つのクォークから出来ている
i.e., 陽子=(uud), 中性子=(udd)
質量、磁気モーメントなどを
うまく説明する
u
d
u
• スピンはどう?
– 1/2 +1/2 -1/2 =1/2 – うまくいきそうに見える
u
d
これは D+ (不安定)
u
u
d
u
核子スピンの謎
• レプトン深部非弾性散乱(DIS)実験
– クォークとレプトンの準弾性散乱
高エネルギー:摂動論使用可能
– 反応断面積がスピンに依存  スピン構造関数
DISの結果
• クォークスピンは核子スピンの20-30%にしかならない
 spin puzzle (crisis)
• では、残りは何?
– パートン模型 (based on QCD)  中川さんの話
u
d
u
グル―オンと
sea (反)クォーク
(constituent) quarks = (current) quarks + gluons
+ quark-antiquark sea
クォークの「発展」
• クォーク  「グルー場」=グル―オンの衣
グル―オン  クォーク-反クォーク対生成
𝑞
𝑔
𝑞
• 何が見えるかは距離(運動量移行Q2)に依存する。
 長距離では「衣」を着ている。
– 「Q2発展」を表す方程式=DGLAP方程式
原子よりも小さな世界
p
n
e
atom (~0.1nm)
nucleus (1~10 fm)
nucleon
(~1fm)
原子よりも小さな世界
p
n
e
atom (~0.1nm)
nucleus (1~10 fm)
nucleon
(~1fm)
クォークと
グル―オン
RHIC-spinの目指すもの
• 陽子のスピン(の残り)はどこから
来るのか?
– グル―オンのスピン?
– 軌道角運動量?
0.2-0.3
1 1
 D + DG + L
2 2
メインターゲット
DISでは見えないもの
• 直接見えるもの:電荷2
– u:d:g=4:1:0
– グル―オンは見えない
• どうやってグル―オンを「見る」?
– 強い相互作用が必要
偏極陽子コライダー
パートンのスピンの測り方
• 偏極陽子衝突 → ALLを測る
 (++) -  (+-)
ALL 
 (++) +  (+-)
= (parton pol.)2× (aLL in parton reaction)
グル―オンの寄与
• Leading Orderでのダイアグラム
gg  gg
Dg Dg

g g
gq  gq
Dq Dg

q g
qq  qq
Dq Dq

q q
• 注:実際に観測するのはパートンではなく、
fragmentationで生成されるハドロン
– いろいろなパートンが混ざる
– パートンの情報(例:どのパートンだったか、パートンがどれだ
けの運動量を持っていたか等)は隠れてしまう。
測定チャンネルの例
• Direct photon: g + q  g + q
– フラグメンテーションの影響を受けない。
– 他のプロセス (e.g.`qq  gg)の混入が少ない
• Jet, high-pT ハドロン生成
– 3つのプロセスが全て混ざる
– 全てLOなので、統計が一番多い。
 比較的少ない Luminosity で情報が得られる。
• 重いクォーク(チャーム、ボトム)
– RHICでは gg→`qq がメイン
• W: quark の flavor分解
– 例えば W+ なら`du
軌道角運動量?
1 1
 D + DG + L
2 2
• D と DG で不十分なら、軌道角運動量が必要
 陽子は球形ではない?
補足:パートン分布関数について
• パートン分布関数(PDF)
– あるパートンが運動量xを持つ確率を表す関数
– 正しくはQ2にもよる。(「クォークの発展」)
– スピン分布関数なら、前向きスピンを持つ確率から後ろ向きス
ピンを持つ確率を引いたもの
– 波動関数ではなくて、あくまで確率密度関数
 量子力学的効果は入らない
– 最近は、より複雑なものも(横運動量依存PDF、一般化PDF)
• パートン分布関数を調べるときは?
– 1個1個分離  相互作用を弱く  高エネルギーで
– 計算は相互作用を無視→摂動論で取り入れる
例:2つのパートンが同時に蹴られる効果は高次(またはツイス
ト)の効果