第2章 費用・便益分析の考え方の基礎

4. CBAの考え方の基礎
プロジェクトの選択基準
と
CBAの役割と限界
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1
4.1 プロジェクトの選択基準
4.2 支払い意思に関する基本的な問題点
4.3 政治プロセスにおける CBA の役割
4.4 CBA の限界:他の分析方法
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2
4.1 プロジェクトの選択基準
N
=選択候補のプロジェクトの数
Pi =プロジェクト i ( i  1, 2,, N )
Bi =プロジェクト i (= Pi )の便益( i  1, 2,, N )
Ci = Pi の費用( i  1, 2,, N )
NBi  Bi  Ci : Pi の純便益
Bi / Ci = Pi の便益・費用比
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3
意思決定ルールの実際の2つのケース
①
予算制約が無い場合
②
予算制約がある場合
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4
① 予算制約が無い場合の採否の基準
<プロジェクトの独立性と排他性>
Pi  j = Pi と Pj を組み合わせたプロジェクト
Pi と Pi は(互いに)独立ではない。
 Bi i  Bi かつ Ci i  Ci
Pi と Pj が(互いに)独立である。
= Bi  j  Bi  B j かつ Ci  j  Ci  C j
= Bi と Ci が Pj を実施するかどうかに影響されない。また、 B j と C j が Pi を実施する
かどうかに影響されない。
Pi と Pj が(互いに)排他的である。
= Pi と Pj を同時に実施することが技術的に不可能である。
=純便益の和 NBi  j ( Bi  j  Ci  j ) がマイナス(無限大)になる。
「 Pi と Pj が排他的」
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⇒
「 Pi と Pj は独立ではない。
」
5
(問題4-1)
1. 互いに排他的プロジェクトの例を挙げなさい。
2. 相互に独立なプロジェクトの例を挙げなさい。
3. 互いに独立でないプロジェクトの例を挙げなさい。
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<独立でないプロジェクトのグループ>
Pi と Pj が間接的に独立でない。
⇔「(1) Pi と Pk1 が独立でない、(2) Pk1 と Pk2 が独立でない、...
、
(n) Pkn1 と Pj が独立でない」となるプロジェクトの列
Pk1 , Pk2 ,, Pkn1 が存在する。


G =独立でないプロジェクトのグループ
⇔ Pi と Pj が G に含まれるならば、Pi と Pj は(間接的に)独立でない。
(問題 4-2)
4つのプロジェクトがあり、① P1 と P2 は排他的、② P2 と P3 は排他的、
③ P1 と P3 は独立、④ P4 はどの Pi からも独立、であるとする。このとき、
これらのプロジェクトを2つの「独立でないプロジェクトのグループ」
に分けなさい。
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(問題4-2)のイメージ図
P1 と P3 が間接的に独立でないのはなぜか。
プロジェクト1
プロジェクト2
プロジェクト3
プロジェクト4
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<全てのプロジェクトが独立である場合の採否基準>
純便益を用いてプロジェクトを評価する場合は、
Bi  Ci >(<)0 ⇒ プロジェクト i を採択(却下)
という基準で採択する
便益・費用比を用いてプロジェクトを評価する場合は、
Bi / Ci >(<)1 ⇒ プロジェクト i を採択(却下)
とすればよい。
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<独立でないプロジェクトが存在する場合の採否基準>
純便益の和を最大にするように実施するプロジェクトを選択
するためには、
1. 全てのプロジェクトを「独立でないプロジェクトのグループ」に分類す
る。
2. グループ内の排他的でないプロジェクトを組み合わせて作成される
プロジェクトの中から、純便益が最大になるものを1つ残す。
3. 2.で残されたプロジェクトのなかから純便益がプラスのものを全て採
択する。
という基準で選択すればよい。
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(問題4-3)
問題4-2の4つのプロジェクトが与えられているとき、
1. 純便益の和を最大にするためにはどのプロジェクトを
採択すればよいだろうか。
2. そのときの純便益の和は?
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i
Bi
Ci
1
2
3
4
3
5
2
4
2
3
3
1
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NBi
12
i
Bi
Ci
1
2
3
1+3
4
3
5
2
5
4
2
3
3
5
1
NBi
1
2
-1
0
3
選択するプロジェクト= プロジェクト2とプロジェクト4
純便益の和= 2+3=5
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13
(問題4-4)
1.
2.
3.
4.
5.
⇒
1.
2.
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4つのプロジェクトの候補
プロジェクト1とプロジェクト2は排他的
プロジェクト1とプロジェクト3は独立でない。
プロジェクト2とプロジェクト3も独立ではない。
プロジェクト4はどのプロジェクトからも独立である。
純便益の和を最大にするためにはどのプロジェクト
を採択すればよいだろうか。
そのときの純便益の和を求めなさい。
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(問題4-4)のイメージ図
プロジェクト1
プロジェクト3
プロジェクト2
プロジェクト4
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i
1
2
3
1+3
2+3
4
Bi
Ci
NBi
3
5
2
8
8
4
2
3
3
5
6
1
1
2
-1
3
2
3
選択するプロジェクト= 「プロジェクト1+3」とプロジェクト4
純便益の和= 3+3=6
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② 予算制約が存在する場合の採否の基準
予算額=M & プロジェクトは全て非排他的かつ独立
純便益の和を最大にするようにプロジェクトを選択するため
には、次のようにすればよい。
① プロジェクトの中から純便益がプラスのプロジェクトだけを
残す。
② ①で残ったプロジェクトの中から費用合計がM以下になる
組合せを全て考える。
③ ②の組合せの中から純便益の合計が最大になるプロジェク
トの組合せを選択する。
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便益・費用比基準
= B/Cの大きいプロジェクトから順番にその費用合計が
Mを越える直前まで採択する。
「選択したプロジェクトの費用合計=予算額」
⇒
選択されたプロジェクトは、①、②、③のプロセスで選
択された組合せと一致
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問題4-5
M=60のケースとM=50のケースについて検討しよう。
i
1
2
3
4
5
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Bi
Ci
70
52
50
48
20
30
20
20
20
30
Bi  Ci
Bi / Ci
19
問題4-5
M=60のケースとM=50のケースについて検討しよう。
i
1
2
3
4
5
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Bi
Ci
Bi  Ci
70
52
50
48
20
30
20
20
20
30
40
32
30
28
-10
Bi / Ci
20
問題4-5
M=60のケースとM=50のケースについて検討しよう。
i
1
2
3
4
5
Bi
Ci
Bi  Ci
Bi / Ci
70
52
50
48
20
30
20
20
20
30
40
32
30
28
-10
70/30
78/30
75/30
72/30
-20/30
B2 / C2  B3 / C3  B4 / C4  B1 / C1  1  B5 / C5
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問題4-5
M=60のケースとM=50のケースについて検討しよう。
i
1
2
3
4
5
Bi
Ci
Bi  Ci
Bi / Ci
70
52
50
48
20
30
20
20
20
30
40
32
30
28
-10
70/30
78/30
75/30
72/30
-20/30
B2 / C2  B3 / C3  B4 / C4  B1 / C1  1  B5 / C5
M  60
 P2 , P3 , P4を選択
M  50
 P1 , P2を選択
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4.2 支払い意思に関する基本的な問題点
① アローの一般(不)可能性定理
② 支払意思額の富の分配への依存
③ 当事者適格性(standing)について
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② 支払意思額の富の分配への依存
分配基準に関する主観的な価値観の明示:
1.
政策を効率性と分配基準の両方の観点から比較する。
(例)多目的分析(multi-goal analysis)
分配加重平均(distributionally weighted)CBA
2.
政策の結果生じる純便益の変化を、経済全体だけでなく、
資産や所得グループごとに報告する。
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③ 当事者適格性(standing)について
1. 社会の管轄権的定義(jurisdictional definition of society)
CBAでは「社会=国」とすることが多い。
2. 管轄権のある構成員(jurisdictional membership)
当事者適格性を持つ主体
=海外に居住する自国民、合法的に滞在している外国人
3. 社会的に受け入れられない選好の排除
当事者適格性を持たない選好
=それに基づく行動が法的制裁を伴うような選好
4. 将来世代の選好の考慮
CBAでは将来世代の選好を考慮する方法
⇒ ① 現在の世代の行動から将来世代の選好を予測
② 現在世代の個人は将来世代の利害を多少は考慮
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4.3 政治プロセスにおけるCBAの役割
① CBAは公的対話の関係を悪化させるか
非市場財にどのように貨幣価値を付けるかを正しく
説明することにより、CBAが公的対話の中身を低
下させるという非難に答えることができる。
(例)生命の価値vs.確率的生命の価値
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② CBA⇒民主主義を徐々に弱体化?
1.
現実の公共政策決定プロセスは「理想的な民主主義」
とは程遠いものである。
2.
CBAは公共政策決定に対して控えめな影響しか持っ
ていない。
3.
現実には、声の小さい選挙民は通常その利害をあまり
代表してもらえない。
4.
CBAは声の小さい選挙民の利害をより良く反映する場
合が多い。
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4.4 CBAの限界: 他の分析方法
① 技術的限界
② 効率性以外の目標が重要である場合
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① CBAにとっての技術的限界
<定性的なCBA(Qualitative CBA)>
1.
可能な限り多くの影響を貨幣価値に換算
2.
貨幣換算できない他の費用・便益の相対的な重要性
を定性的に評価
貨幣換算するためにどの程度の努力水準を選択す
るかは、その努力で得られる精度向上の価値とその
コストとを比較することで、判断する。
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<費用対効果分析(Cost-Effective Analysis)>
商業的漁業手法規制の例 :
c=イルカの死亡数を減少させる以外の純費用
nd=規制で回避できるイルカの死亡数
nd / c=規制の費用対効果比率
(cost-effectiveness ratio)
アナリストに依頼する顧客は、助けられる人命などへの
影響を貨幣価値に換算することを望まないことが多い。
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② 効率性以外の目標が重要な場合のCBA
<多目的分析(multi-goals analysis) >
<分配加重平均(distributionally weighted)CB>
(第18章参照)
1. 分配面で重要な特性(所得や富など)で分類さ
れたグループごとに純便益を評価
2. アナリストがグループごとの加重ウェイトを選択
3. グループごとの純便益に選択した加重ウェイを
用いて加重平均CBAを計算
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4.1 プロジェクトの選択基準
4.2 支払い意思に関する基本的な問題点
4.3 政治プロセスにおける CBA の役割
4.4 CBA の限界:他の分析方法
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