第10回講義 文、法 経済学 白井義昌 第10回講義の内容 物価の変動のメカニズム および 失業の問題 • 10.1 物価指数と戦後日本の一般物価水準 の推移 • 10.2 ディマンドプル・インフレーション • 10.3 コストプッシュ・インフレーション • 10.4 インフレの費用 • 10.5 失業の概念と経験則 10.1 物価指数と 戦後日本の一般物価水準 CPIとWPI • 一般物価水準を表す指標はいろいろあ る。 • 消費者物価指数(Consumer Price Index) CPI 消費財に関する物価指数 • 卸売物価指数(Whole Sale Price Index) WPI 原材料などの中間投入物に関 する物価指数 戦後日本の物価変動 • 1973、74年の物価水準の高騰 第1次石油ショック • 1970年代末から80年代初頭にかけての 物価水準の上昇 第2次石油ショック • 1980年代半ば以降低インフレ、WPIはマ イナス • 1990年代末から現在にかけてのデフレ インフレの原因 • マネタリストの考え方(貨幣数量説) • ディマンドプルインフレ • コストプッシュインフレ 10.2 ディマンドプル インフレーション 財市場における超過需要による インフレ マネタリストの考え方 • マネタリストは貨幣供給量が総需要を変化 させるもっとも重要な要因と考える。 • 名目貨幣供給量の上昇率が実質国民所得 の増加率を上回ることがインフレの原因で あると考える。 貨幣数量説 • 貨幣需要は国民所得にのみ依存すると考え る。 • フィッシャーの交換方程式 MV=PT M貨幣の流通量 V貨幣の流通速度 P物価水準 T経済全体の実質取引量 貨幣数量説:ケンブリッジ方程式 • 名目取引総額PTは名目所得PYと比例的関係 にある。 PT=PYとすると、 • フィッシャーの交換方程式は MV=PY M=(1/V)PY M=kPY とあらわせる。k=1/Vはマーシャルのkと呼ばれ ている。 貨幣数量説によるマネタリスト のディマンドプルインフレの説明 • M=kPY • 名目貨幣供給量Mの上昇率が実質国 民所得Yの上昇率よりたかければ 財市場に超過需要がおこり、物価水準 Pは上昇しなくてはならない。 利子率 LM IS LM’ r0 P上昇の効果 M拡大の効果 総生産 Y* P AD AD’ AS P*’ P* F(K,L*) Y* 総需要総供給分析でのディマンドプルインフレ 10.3 コストプッシュインフレ 費用の上昇が原因 のインフレ 費用と価格水準 • 製品一単位あたりの費用が上昇すれば 製品価格も上昇する • 経済全体の物価水準もそれに応じて上 昇する コスト上昇の原因 • 労働組合の圧力による過度の賃金上 昇 • 天然資源に乏しい国では原材料価格 の上昇(特に石油など)は費用の上昇 をもたらす • コストプッシュインフレはスタグフレー ション(不況と物価上昇の並存)の説 明に用いられる AS’ AS P AD P’0 P0 Y*’ Y* F(K,L*) ケインズ派のケース 10.4 インフレの費用 • 予想されないインフレの費用 • 予想されたインフレの費用 • インフレ税 予想されないインフレの費用 • 予期せぬ所得移転 – 利子率の例 r=i-π 実質利子率 預金者から借入者への所得移転 – 賃金の例 w=W/P 実質賃金 労働者から企業への所得移転 • 不確実性の問題 生産計画、消費計画への予期せぬ影響 予想されたインフレの費用: 靴底コスト • 予想されたインフレの場合預金保有にと もなう所得移転はない • しかし、現金保有の費用はかかる • インフレが存在するときなるべく現金をも たないようにする • したがって、預金の現金化を頻繁におこ なうようになる。この費用が靴底コストと 呼ばれる。 予想されたインフレの費用: メニューコスト • インフレによって常に価格の変更をせ まられる。この価格変更の費用をメ ニューコストという。 インフレ税 • ハイパワードマネーの増大が貨幣供給の増 大をもたらし、インフレをおこす。 • ハイパワードマネーの増大は中央銀行の負 債の増大である。インフレによってこの実質 負債額が目減りすれば、その分中央銀行以 外の貨幣保有主体がそれだけの損失を被 ることになる。この損失がインフレ税である。 10.5失業の概念と経験則 • 失業の概念 • オークン法則 • フィリップス曲線 失業の概念 • 経済における人口は就業者、失業者、非労 働力人口にわけられる。 • 就業者および失業者は就業意欲がある。 • 非労働力人口に入る主体には就業意欲は ない。 • 失業率は 失業者数 就業者数+失業者数 によって定義される Change in employment status in a typical month 非自発的失業 • 労働市場で定まっている実質賃金のもとで 働きたいと思っている人が働けていない場 合、この人は非自発的失業状態にある。 摩擦的失業 • 労働者と雇用者にはそれぞれの特性があ り、双方の希望が折り合わないことが多々 ある。双方の希望が折り合うような組み合 わせを双方が探索する間、労働者は失業 状態になる。これを摩擦的失業と言う。 構造的失業 • 慢性的に失業状態に陥っている人々が常 にいる。(能力上の問題など) • 産業構造変化、地域経済の衰退と活性化 などにともなって労働力の配置換え (reallocation)がおこる。この間労働者が失 業状態になる。 以上のように長期にわたって存在する失業 を構造的失業とよぶ。 自然失業率 • 構造的失業と摩擦的失業からなる失業者 から算出される失業率 • 現実の失業率と自然失業率の差は cyclical unemploymentとよばれる オークンの法則 • Cyclical unemploymentと総生産の間に次 のような関係がみられる Y:完全雇用状態での実質総生産 Y:現実の実質総生産 u:自然失業率 u:現実の失業率 Y-Y =2.5(u-u) Y Figure 3.16 Okun’s law in the United States: 1954-1998 フィリップス曲線 • インフレ率と失業率の間にはトレードオフ の関係が観察されている インフレ率 失業率 0 Figure 12.01 The Phillips curve and the U.S. economy during the 1960s
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