7: 新古典派マクロ経済学 ケインズ経済学の中心的な考え方(需要サイド,4章と5章のIS/LMモデル) ↑ ↓ 新古典派経済学の中心的な考え方(供給サイド) 生産要素の完全雇用 ケインズ経済学の基本的な見方: 「需要不足」が原因 i IS/LMモデル LM IS/LMモデル Y Y=f(L) L IS 労働供給 (労働力人口) Y 求職をあきらめる Ls Y Y* 生産関数 Y=f(L) 失業率 u u=(Ls-L)/Ls L* L 1 7: 新古典派マクロ経済学 生産要素の完全雇用 新古典派経済学の見方: 市場は価格調整を通じて需要と供給 の「均衡」へと導かれる。要素市場につ いても価格メカニズムが成立する。 労働市場の需要と供給は実質賃金 (W/P)の調整を通じて均衡が達成する。 均衡において,雇用量は L* で,失業は 存在しない。 失業が生まれるのは (W/P)>(W/P)* からである。いずれ実質賃金が低下し, 労働市場は均衡に到達する。 労働をはじめ全ての生産要素が完全 雇用されていれば,生産関数を通して実 質GDPも決まる。Y* は完全雇用GDPな いし潜在GDPと呼ばれている。 Y=Y* を前提としている。 ケインズ経済学の基本的な見方: 「需要不足」が原因 労働市場 (W/P) 失業 S (W/P)1 (W/P)* D L* Y 生産関数 Y Y=f(L) Y* L* L 2 7: 新古典派マクロ経済学 生産要素の完全雇用 新古典派経済学の見方: 市場は価格調整を通じて需要と供給 の「均衡」へと導かれる。要素市場につ いても価格メカニズムが成立する。 労働市場の需要と供給は実質賃金 (W/P)の調整を通じて均衡が達成する。 均衡において,雇用量は L* で,失業は 存在しない。 失業が生まれるのは (W/P)>(W/P)* からである。いずれ実質賃金が低下し, 労働市場は均衡に到達する。 労働をはじめ全ての生産要素が完全 雇用されていれば,生産関数を通して実 質GDPも決まる。Y* は完全雇用GDPな いし潜在GDPと呼ばれている。 Y=Y* を前提としている。 ケインズ経済学の基本的な見方: 「需要不足」が原因 賃金は失業が存在しても(下方に) 硬直的になる。 理由: ① 効率賃金(efficiency wage)仮説 ② 春闘による賃金の平準化で価格 メカニズム機能が完全ではない。 ③ 同業他社あるいは他産業との相 対賃金の影響で,労働者が名目賃 金のカットに強く反対する。 結果: 「潜在GDP」Y* と現実のYの間に ギャップ Y*-Y > 0 が存在するのが 普通であると考えている。 3 7: 新古典派マクロ経済学 ISバランスと利子率の決定 新古典派経済学の見方: 閉鎖経済におけるISバランス式 + ケインズ経済学の基本的な見方: 閉鎖経済におけるISバランス式 - S(Y*)=I(i)+G Yは「潜在GDP」Y* に等しい。Y* の下で 生み出される貯蓄S(Y*)は既に決まって いる。Gが外生変数として,この式より i が決まる。 新古典派理論では,ISバランス式に よって Y ではなく利子率 i が決まる。 利子率 i は貨幣から独立な「実物的」な 変数なので,財・サービスの需給均衡式 (フロー)によって決まる。 「実質利子率」は「現在財」と「将来財」の相 対価格(交換比率)である。 「将来財」の需給が一致するように決まる。 「貯蓄」は「将来財」に対する需要であり,「投 資」は「将来財」に対する供給である。 S(Y)=I(i)+G i は貨幣市場で決定されるので,こ の式から,Y が決定される。 ケインズの流動性選好理論では, 利子率 i 貨幣と債券の間の資産(ス トック)選択を通して決まる。同時に マネーサプライMにより影響を受け る。 金融政策は利子率 i の変化を通 じて実体経済に影響を与える。 4 7: 新古典派マクロ経済学 財政政策の効果 新古典派経済学の見方: 閉鎖経済におけるISバランス式 + - S(Y*)=I(i)+G Yは生産要素の存在量と技術(生産関 数)というサプライ・サイドで決まるので,Gは Yに影響を与えない。 Gの増大は100%の民間投資をクラウド・ア ウトする。 i i2 i1 ケインズ経済学の基本的な見方: 閉鎖経済におけるISバランス式 S(Y)=I(i)+G 財政支出Gの増大は総需要を増や し,乗数過程を経てYを上昇させる。 S,I S(Y) I(i)+G2 I(i)+G2 I(i)+G1 I(i)+G1 Y1 Y2 0 0 S, I S(Y*) 政府支出はあくまでも民間では供給することのできない公共財の供給を目 的とするべきで,景気を安定化するための財政政策を用いるべきではない。 Y 5 7: 新古典派マクロ経済学 貨幣数量説 新古典派経済学の見方: 閉鎖経済におけるISバランス式 S(Y*)=I(i)+G ケインズ経済学の基本的な見方: 閉鎖経済におけるISバランス式 S(Y)=I(i)+G 財政支出Gの増大は総需要を増や し,乗数過程を経てYを上昇させる。 貨幣市場の均衡式 M/P=L(i, Y) Y=Y*,i はISバランス式から決まってい マネーサプライMの変化は利子率 る。したがって, L(i, Y)=L*(定数)となり, i を変え,実体経済に影響を与えると M=L*P は考えている。 となる。MとPは完全に比例する。 これがリカードによって最初に明確な形 で述べられ,新古典派へ引き継がれた貨 幣数量説(quantity theory of money)はか ならない。つまり,物価の水準(変化率)を 決めるのはマネーサプライ(の変化率)で ある,マネーサプライの変化は比例的に物 価の変化をもたらす。 6 7: 新古典派マクロ経済学 貨幣数量説 新古典派経済学の見方: 閉鎖経済におけるISバランス式 S(Y*)=I(i)+G ケインズ経済学の基本的な見方: 閉鎖経済におけるISバランス式 S(Y)=I(i)+G 財政支出Gの増大は総需要を増や し,乗数過程を経てYを上昇させる。 貨幣市場の均衡式 M=L*P となる。MとPは完全に比例する。 マネーサプライMの変化は利子率 経済の実体面はマネーサプライから独立 i を変え,実体経済に影響を与えると に決まる。Mは名目物価(nominal price) は考えている。 を比例的に変化させるだけで,実物変数Y, ケインズ経済学においては,貨幣 i,I などに何の影響も与えない。これを,貨 は中立的ではない。 幣は実体経済に対して「中立的」であると いう。 い わ ゆ る , 貨 幣 の 中 立 性 ( neutrality money)である。これは新古典派理論の最 も基本的な考え方である。 7 7: 新古典派マクロ経済学 マネタリズム マネタリズム(monetarism)はミルトン・フ リードマン(Milton Friedman)が新古典派 理論の立場から積極的に主張した学説で ある。 - フィリップス曲線: w=f(u) 「貨幣数量説」によれば,名目賃金の上 昇率 w は,物価の上昇率と並んで長期的 にはMの成長率によって決まる。 失業率 u は,Mとは全く関係のないよう に決まる自然失業率u*に等しくなる。 従って,長期的にはwとuの間には負の 関係は存在しないはずだと考えている。 ここで,期待インフレーションw*を付け加 えたフィリップス曲線を提唱した。 w 0 u w-w*=f(u), f(u*)=0 8 7: 新古典派マクロ経済学 マネタリズム 期待インフレーションw* を付け加えたフィリッ プス曲線: - * w-w =f(u), f(u*)=0 短期的には,w*は一定であるから,所与 w のw*も下で,wとuの間に負の関係がある。 「ジョブ・サーチ理論」 インフレーションが完全に予見されてい w2 る状態では, w*=w ,u=u* になる。 ① w*=w1 だが,突然のインフレの加速で, 実際のインフレ=w2 ,w* < w2 のとき, w1 労働者は実質賃金が上昇したと錯覚し, 労働供給を増加し,uは低下する。 ② 時間経つにつれ,労働者は自分の錯覚 を気づき,期待インフレを正確に修正すると, 0 w*=w2 になる。 期待インフレ=実際インフレ ⇒ u=u* フィリップス曲線は上方シフトする。 w*=w2 w*=w1 u2 u* u 9 7: 新古典派マクロ経済学 マネタリズム 期待インフレーションw* を付け加えたフィリッ プス曲線: - * w-w =f(u), f(u*)=0 短期的には,w*は一定であるから,所与 w のw*も下で,wとuの間に負の関係がある。 「ジョブ・サーチ理論」 インフレーションが完全に予見されてい w2 る状態では, w*=w ,u=u* になる。 w3 ③ w*=w2 だが,突然のインフレの減速で, 実際のインフレ=w3 ,w* > w3 のとき, 労働者は実質賃金が下落したと錯覚し, 労働供給を減少し,uは上昇する。 ④ 時間経つにつれ,労働者は自分の錯覚 を気づき,期待インフレを正確に修正すると, 0 w*=w3 になる。 期待インフレ=実際インフレ ⇒ u=u* フィリップス曲線は下方シフトする。 w*=w2 w*=w3 w*=w1 u* u3 u 10 7: 新古典派マクロ経済学 マネタリズム 期待インフレーションw* を付け加えたフィリッ プス曲線: - * w-w =f(u), f(u*)=0 短期的には,w*は一定であるから,所与 w のw*も下で,wとuの間に負の関係がある。 インフレーションが完全に予見されている 状態では,それがどれほど高率のインフレ であっても失業率に影響を受けず(u=u*)。 長期的には,インフレーションが予見さ w3 れるので, u=u* になる。従って,長期フィ リップス曲線は垂直線になる。 予期されないインフレーションは失業率 に影響を与え,uはu*から乖離し,それに平 行して実質GDPも「潜在成長率」から乖離 0 して変動する。これが,マネタリストの景気 循環論である。 長期のフィリップス曲線 w*=w2 w*=w3 w*=w1 u* u 11
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