現代日本の夫婦像を読み解く - 進行する夫婦のスクリプト化 - 慶応義塾大学SFC研究所 深谷研究会 西田由紀子 1 研究の目的と意義 ■目的 複雑・多様な現代社会における、「人々の心にうちにある夫婦の意味世界」 を テクスト意味空間分析により明らかにする。 ■意義 「夫婦」という目に見えない概念について、新聞「投書」10年分のデジタルテ クストを対象に「深谷研究室開発」スクリプト分析法により析出し、社会意味 論的・実証研究の一事例として社会に示していく。 ■動機 当事者の立場にあるものとして近年、夫婦単位の新たな事象、考え方が社 会のさまざまな側面で動いていることを感取し、現代夫婦の意味世界に 焦点を当て、実像を明らかにしてみたいというのが本研究のきっかけである。 2 研究の背景と問題意識-(1) ■婚姻における現況 婚姻件数の減少・離婚率の増加・晩婚化・未婚化・熟年離婚の増加 (厚生労働省2002) ■夫婦の日常を通して見られる諸相 「いい夫婦の日」 「DINKS」 「週末婚」 「家庭内離婚」 「死後離婚」 「夫婦別墓時代」 「冷蔵庫内離婚」 「中年クライシス」などがメディアに登場 ■夫婦の分類 ・統計表における分類(核家族や親族など世帯別) ・多様なスタイル(共働き型 ・ 専業主婦と働く夫型 ・ シーソー転職夫婦型 ・ DINKS等) ■このような現況・現象は投書を通じて、どのように「人々の意味世界」に反映してい るのだろうか。 3 研究の背景と問題意識(2)-旧民法と新民法 ■研究背景(法的・社会的・経済的側面など)にある、新旧民法 における夫婦の立場の相違は重要である。 ■「旧民法」(明治民法)では男女不平等(家制度・戸主権・妻の 財産管理の能力の否定など) ■「現行民法」(1948年)では、「個人の尊厳と両性の本質的平 等を基本原理とする」また「婚姻は両性の合意のみに基づい て成立し、夫婦同等の権利を有する」 問題意識⇒旧民法時代にはみられなかった夫婦の現代像は? また現代夫婦像における旧民法の名残や影響は? 4 先行研究 ■社会構成の基礎単位は個人なのか、夫婦なのか、家族なのか。 ■「家族の個人化」を提唱する落合恵美子(2002.21世紀家族へ) 税制をはじめとして家族を基礎単位としてきたこれまでの社会から、「個人を単位 とする社会」への変化が、システム上も進行しているという論。 ■「家族は国家の基礎単位である」と提示する林道義(2002.家族の復権)旧制度の 家族制度は否定するが、家族単位思想を憲法に盛り込むべきという。 ■「夫婦家族が社会の基礎的構成単位である」と論ずる村上錦吉(1999.婚姻の法 社会学)即ち、結婚の社会性観念についての規定が憲法に言及されていないこと に異論を唱える。 5 研究の概要-(本研究のスタンス) (1)明治以降の(家制度)→戦後家族(戦後復興期)→核家族 化(高度成長期) →個人化時代 というプロセスにおいて、特に現代の核家族化、個人化が 進行する中で「夫婦」がどのように内実化されつつあるかを 探りたい。 (2)本研究は「意味づけ論」の立場からスクリプト分析を採用し、 分析対象「夫婦」のテクストを新聞投書に求め、直近10年の 大量デジタルテクストから、人々の間に無意識に、何気なく 記憶によく定着している「夫婦の意味」を析出する。 (3)本研究は大量のテクストを取り扱うについて、「デジタルテ クスト解析」と、「分析者の意味解釈」によって恣意的でない 不特定多数の人々にとっての「夫婦像」を析出する。 6 スクリプト分析法についての紹介 ■2000年深谷研究室開発の「スクリプト分析法」は言語使用分 析の具体的一手法であり、社会意味論の分析手法の中の 一つとして位置づけられる。 ■「スクリプト」は事態構成において、記憶連鎖にうめこまれた、 人々の間で比較的安定的に定着し、慣用的に使用される 「意味のまとまり」の一形態で、それが言語表現をとっている ものである。スクリプトの集合によって概念や主要な意味知 識を明らかにすることができる。 ■具体的には、大量のテクストデータをもとに、文脈における 最小の事態構成型、意味図式を抽出し、そのうち反復登場 するものをスクリプトとみなし、その集合を観察、人々にとっ ての意味の析出を行う。 7 ■スクリプト分析対象データ内訳 分析対象データ(朝日DNA Digital News Archives) による。 朝日新聞の投書欄・オピニオン「声」より最近10年間(’93年 1月1日~’02年12月31日)に収録されたデジタルテクスト言 語使用データ14,967通を分析 データ内訳 ターゲット語 夫婦 夫 妻 家族 ターゲット語を含むセンテンス 1543(件) 7382 1730 4312 意味図式 573 3497 1675 2751 スクリプト数(N=2) 186 1458 516 1010 8 ■スクリプト分析の手順■ ■分析対象となるデータファイルは 本研究では、スクリプト分析システムに含まれる 自動採取プログラム「asahidna」を利用。 ■基本的作業手順 『ターゲット語の選定』 ↓ 『データ・ファイルの作成』 ↓ 『「Analyze」プログラムの実行』 ↓ 『分析用ファイル生成「スクリプト表」』 ↓ 「動詞出現数の集計表」「形態素解析結果」 ↓ 『「スクリプト表」データの助詞別並べ替え』 ↓ 『分析者による解釈』 9 ■ターゲット語「夫婦」 4つの分析・アプローチ -スクリプト分析を軸に「夫婦」分析の内容 - 1)投稿内容・分野別 (サンプルにバイヤスがかかっていないか -投稿・テクストの検証) 2)年令・男女別 (投書・テクストの検証) 3)名詞「夫婦」を含む投書の出現頻度・社会動向との連関。 (量的) 4)名詞「夫婦」を含む投書内容の構成比・経年変化。 (質的) 4)名詞「夫婦」+助詞別(は・が・を・に・で)分析。 (助詞別傾向) 10 Ⅰ)サンプリングにバイヤスがかかって いないかを分野別グラフで検証。 ■投書の扱う分野は幅広く、 テクストは「夫婦を扱かったも の」にテーマを限定していな い。 分野別 投書掲載数 3000 2500 2000 掲載数 1500 61 94 183 117 233 118 265 30 216 211 76 177 105 455 394 1000 500 1024 861 137 111 150 196 97 171 309 207 54 171 82 325 87 134 240 180 109 265 43 199 26 202 198 210 245 386 242 217 315 506 519 1057 1187 1330 1372 753 724 0 1994 1995 1996 1997 1998 年度 1999 2001 2002 文化・科学 経済 環境・公害 スポーツ 福祉・保険 マスコミ 教育 国際 政治 社会・生活 ■新聞社の編集意図が分析結 果をゆがめていないか? ■ データハンドリングについて 夫婦をテーマとしたテクストを 扱うのではないので、殆どそ の懸念はないと考えられる。 むしろ幅広い各層の人々の 日常的言語使用データが採 取でき、かつ年齢・性別・職 業の情報も得られる。(意味づ け論テクスト) ■「声」投書年間掲載総数2700通前 後一日8通程度 一通は400字~ 500字程度 11 2)投稿率の男女別・年齢別 グラフ ■投稿率は60代がトップ 朝日新聞「 声」 年齢別 投書掲載数 1 9 9 4 年~2 0 0 2 年 ■1998年以降女性が男性を 上回る 3000 朝 日 新 聞 「 声 」 男 女 別 投 書 掲 載 数 1 9 9 4 年 ~ 2 0 0 2 年 406 2500 262 261 329 360 297 425 1800 434 1600 2000 589 508 553 554 518 559 525 1400 70歳代以上 603 60歳代 1200 50歳代 掲載数 1500 436 425 363 508 410 472 514 40歳代 30歳代 460 20歳代 男 女 800 10歳代以下 393 1000 1000 掲載数 461 435 429 414 514 469 600 460 400 495 453 500 430 392 411 390 200 387 254 0 430 118 1994 226 224 163 158 186 221 85 1995 126 187 189 0 143 108 154 199 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2001 2002 年度 1996 1997 1998 1999 2001 2002 年度 12 3)名詞「夫婦」を含む投書数の推移(1993年~2002年) ■1998年から上昇 ■2000年は1993年の4倍増 ■年間掲載総数がおおむね 一定である中での、急増であり 「夫婦」と言う単位でものを語る ことの豊富化が窺える。 名詞「夫婦」の<声>出現頻度 1993年~2002年 ■社会動向との関係を探る 450 402 400 403 93年 94年 372 350 300 250 244 名詞「夫婦」の登場数 件数 200 96年 150 100 103 116 89 122 97年 105 71 50 0 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 98年 98年 民法改正試案 国民性調査・一番 大切なもの→家族 選択的夫婦別姓 制度法案提出見送 男女雇用機会 均等法一部改正 いい夫婦の日・制定 第3次海外旅行 ブーム 13 4)投書内容にみる構成比経年変化の分析表 制度 絆 日 常 そ の 他 別姓 コミュニ ケーション 幸せ 対 子供 状況 日常 趣味 仕事 社会的 役割 帰郷 1993 0.44 0 0 0.08 0.12 0.12 0 0 0.08 0 0.16 0 1994 0.38 0.07 0 0.07 0 0.20 0.07 0.07 0 0.14 0 0 0 1995 0.23 0.11 0.06 0.12 0.06 0.12 0.06 0.06 0.06 0.06 0.06 0 0 1996 0.32 0 0.05 0.11 0 0.21 0.11 0.05 0.05 0.05 0 0.05 0 1997 0.22 0.09 0 0.09 0.26 0.09 0.04 0.04 0.09 0.08 0 0 0 1998 0.02 0.08 0.20 0.16 0.16 0.21 0.10 0.05 0.02 0 0.02 0 0 1999 0.14 0.02 0.12 0.07 0.07 0.12 0.21 0.14 0.07 0.02 0.04 0 0.0 5 2000 0.07 0.11 0.10 0.07 0.08 0.18 0.08 0.18 0.03 0.01 0.04 0 0.0 4 2001 0.08 0.10 0.20 0.07 0.13 0.07 0.13 0.15 0.04 0.04 0.03 0 0.0 1 2002 0.13 0.14 0.10 0.08 0.08 0.15 0.05 0.17 0.03 0.04 0.05 0.03 0 0 14 「投書内容にみる構成比経年変化の分析表」作成手順 1.1993~2002年[asahidna]14967通中、ターゲット語「夫婦」を含 むセンテンス1543件についてスクリプト分析 (助詞別 は・が・を・ に・で) 2.抽出された意味図式573件について動詞出現頻度の集合の傾向か ら、整理タグづけすると、概ね「制度」「絆」「日常」(その他微少)の4 区分になった。 3.さらに意味図式の前後の文脈の内容分析を行い、投書内容を基準 (分析の恣意性を排除するため)にそって分類すると13のカテゴリー に分類される。 4.さらに経年変化をみるために、年度ごとの割合をだし、投書内容の 構成比・経年変化をみる。 5.カテゴリー分類基準表は配布資料に添付。 15 「夫婦」投書の動向を構成比経年変化表にみる 前期(93年~97年) 後期(98年~2002年)における変化 1)各年の最も多い割合をしめたカテゴリー 93年~96年 →制度(うち53%が夫婦別姓) 97年~98年→絆のたかまり(子供のカテゴリーの82%が 子供いる・いない論) 98年~02年 →日常(趣味・役割・仕事・社会的活動など) 2)「前期」は姓別問題など「個人」やアイデンティティを主張 「後期」は夫婦単位での具体的行動が豊富になり、98年以 降夫婦での諸活動の拡大、増加がみてとれる。 3)投書における「夫婦像」は概ね「制度」「絆」「日常」の3要素か ら構成されている。 ■夫婦という前提を立てて日常を語ることが豊富になった■ 16 5)名詞「夫婦」+助詞「は・が・を・に・で」の出現頻度 - グラフが語る「で」「が」の急増 - ■助詞「で」-2002年は1993年の4倍増 名詞「夫婦」+助詞<は・が・を・に・で>の出現頻度をみる 45 42 40 36 35 33 30 26 「 夫婦」 +「 は・ が・ 25 を・ に・ で」 の出現件 数 20 23 19 15 15 13 10 10 8 5 5 4 3 0 1993 7 5 3 2 1 1994 9 7 が で に は を 14 12 10 9 7 5 6 5 5 5 4 4 3 3 2 2 1 0 0 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 3 2002 1 9 9 3 年~2 0 0 2 年 17 スクリプト分析例「夫婦+で」にみる「『夫婦』のスクリプト化」 ■スクリプト「夫婦+で」が最多(188件)→夫婦単位の相互行為 やコミュニケーションの増加 (例)夫婦で話し合う ■夫婦で外出系(行く・参加する・出席する・出かける・歩く、駆け つける・とまる・旅行する)30件 <新旧民法にみる「で」の相違> ■旧民法時代⇒「夫婦で」は墓参りや法事。家制度にかかわる 「対」の行動くらいしか出てこなかった。 ■現行民法→上記事例のように「夫婦で」という前提をたてると、 「制度」「絆」のみならず、日常の様々な諸活動を語ることが著 しく増加してきており「夫婦」と言う記号の内実化と、人々の間 へ広く定着しつつあることが、この「夫婦+で」スクリプトに如 実に顕著である。→本研究ではこの現象を総称し「夫婦」のス クリプト化とよびたい。 18 「夫婦」分析から明らかになったこと 1)ネットワーク化が進み大量のデジタルテクストが入手可能 になり、「夫婦」を前提として語られることが豊富になったと いう現象が解析から浮かび上がった。前述「夫婦+で」スク リプト急増がそれを象徴し語っている。 Ⅱ)「個人化社会」進行の中で、近年「夫婦」と言う単位のスク リプト化が起きていることは検証1・2・3・4・5からも明らか になった。新しい「夫婦」のあり方が探られ、内実化が図ら れてきており、このことからも「夫婦」のスクリプト化が進んで きたといえるだろう。 Ⅲ)投書解析から、夫婦を支える要素は「制度」「絆」「日常」の 3つの区分からなると捉えることができる。 19 「夫婦のスクリプト化」 以上スクリプト分析から現代は「夫婦」という単位で、 も のを語る、日常を語ることが豊富になり「夫婦」につい て語られる中身も豊富化したことがあきらかになった。 そこで本研究ではこれらの現象を総称し「夫婦のスク リプト化」と呼ぶものである。 「夫婦のスクリプト化」とは「夫婦」が日常の諸活動を 語 る単位として豊富な内容をもつようになってきたことを 意味する。 20 関連語の分析により「夫婦像」について更に迫ってみ る (夫・妻のスクリプト分析) ■「夫」スクリプト分析 主な5つのカテゴ リー ■「妻」スクリプト分析 主な4つのカテゴ リー 1)死亡系スクリプト 178件 (13%) 2)出かける・帰る系スクリプト59件(4%) (帰る・帰宅する) 3)退職系スクリプト 26件(2%) (退職する・定年退職する・辞める) 4)支え・支えられる系スクリプト19件 (Ⅰ%)(夫を支える・夫に依存する) 5)会話系スクリプト 201件(14%) *その他 66% ■ターゲット語「夫」→投稿者は妻で あり、スクリプトからは「妻」の本音。 ■元気で働く夫を望む妻 1)死亡系スクリプト 60件(12%) (失う・亡くす・先立たれる) 2)病気・入院系スクリプト24件(5%) 3)振る舞い系スクリプト47件(9%)(言 う・話す・喜ぶ・笑う) 4)依存系スクリプト19件(4%) (任せる・頼む・押し付ける) *その他 70% ■ターゲット語「妻」→投稿者は夫であり スクリプトからは「夫」の本音。 ■元気で明るい妻を望む夫 21 ■「夫」「妻」のスクリプト分析からみえること 1)「死亡系スクリプト」から見る「夫婦の絆」 「亡くす」「失う」 や「先立たれる」というスクリプトから「一対である夫婦」 が終焉する寂しさ・頼りなさ・絆がうかがえる。 2)「支える・支えられる系スクリプト」からわかる「夫と妻のパワーバランス」 夫婦は相互行為として助け合い、頼り、頼られというバランスが保たれて いる。 3)「帰る・出かける系スクリプト」「退職する系スクリプト」からわかる「大黒柱 の夫 」 4)夫のスクリプト分析から見える「強い妻」 病気,死亡で一対が変容したときに逞しいのは「妻」のほうである。 5)夫と妻のアイデンティティが示される。 社会や他者からの夫婦認定(客観的アイデンティティ)と、夫、妻相互に おいても、お互いに夫婦構成のもう一方を(夫からは妻、妻からは夫)認 識する必要がある。単位の特性から夫の自己存在証明としてのアイデン ティティが、一方の他者である妻との相互作用の過程で成立をみるし、ま た妻も同様である。 22 「家族・家庭」のスクリプト分析の特徴 ■「家族とは」同じ家に住み、夫婦、親子、兄弟など近い血縁の人々(三省堂 国語辞典) ■「家族フレーム系スクリプト」 「家族」は、「フレーム」を指定する場合と、家族の具体的メンバーを表現 する場合がある。「夫婦」は「対」であるところから、人数は固定。 「家族」は増えたり、減ったり、持ったり、ある、ないといえる。 フレーム → 家族+が+崩壊する(抽象的) メンバー → 家族+で+でかける。(具象的) ■「家族」スクリプト分析・5つのカテゴリーに分類された。 (行く出かける系・フレーム系・介護系・コミュニケーション系・死亡 系) ■家庭は夫婦や家族の拠点であることが明示される。 (家庭を持つ・両立する・守る・入る)など抽象・具象動詞から 。 ■「夫」「妻」「夫婦」「家族」の関係 「夫婦」はメンバー固定であり、死亡・離婚以外は増減しない。 「夫」「妻」は 「夫婦」の構成者で一対である。一方、家族は血縁と婚姻に よって形成される主に親族からなる集団」で、夫婦という配偶関係と親子 と言う血縁関係が基本となって広がるものである。 (槇石03年) 23 まとめと課題 (Ⅰ)進行する「夫婦のスクリプト化」 (Ⅱ)現代における「夫婦とは?家族とは?」という新しい絆の模索 (Ⅰ)夫婦というまとまり、単位を前提として夫婦の諸活動・行為内容が豊富に日常に 定着し「夫婦のスクリプト化が進行していること」をスクリプト分析から明示できた。 ・助詞別出現頻度グラフでは、98年以降、その急増が顕著であり、スクリプト化は 日常の様々な活動にまで浸透してきている。「で」や「が」の例では、かつては乏し かったスクリプトが10年で急増していることからも、夫婦という前提を立てて「夫 婦」を見つめる機会がふえたということがあきらかである。 (Ⅱ)また夫や妻の分析から、夫と妻の現代の本音が析出された。以上から核家族化 のもと、個人化の進んだと見える現代の底流で、個は個のままに、実は「夫婦と は」「家族とは?」何かの新しい単位を見直す時代に来ていることを析出できた。 「課題」 変貌する夫婦像をさらに多面的に継続研究し、内容の深化を図りたい。 24 おわりに 夫婦と言う単位・まとまりの諸行為・活動内容を新聞 投書の直近10年・大量デジタルテクストから抽出す ると、「夫婦+で何々する」が豊富に、具体的日常 に定着していくのがみえ、特に、制度や絆というあり きたりの面でなく、夫婦共同の極めて具体的な行為 や発想の日常化、スクリプト化の進行現象を実証で きた。以上この現象を総称して「進行する夫婦のス クリプト化」として意味づけ論の立場から「現代日本 の夫婦像」の一端を実証的にとらえたことを本研究 の成果としたい。 以 上 25
© Copyright 2024 ExpyDoc