「対立」と「協調」の変遷 ~膨張する自由貿易協定~ 総合政策学部2年 三木 健吾 本日の発表の流れ 1.プロポーザルでの指摘から 2.FTA締結の意義 3.日本・シンガポール新時代経済連携協定 4.今後の研究計画 1-1.問題意識 「対立」と「協調」の変遷 →広い視点での、対立・協調関係への関心 →冷戦以降のグローバリゼーション 膨張する自由貿易協定 →今回は国家間貿易にテーマを限定 →とくに、日本のFTA戦略に焦点を当てて 1-2.目的・意義 各国の重大な関心分野となっているFTAを 見ることが、現在の経済関係、国際関係を見 る上で有効 日本のFTA戦略は、今後のアジアのリー ダーシップにも関わってくる FTAの性質上、日本にとって貿易が行いづ らくなってきた情勢を改善する必要 1-3.対象とする範囲 日本シンガポール間での事例を分析し、 今後の日本の方向性を考察する 2-1.FTA(自由貿易協定)とは 二国間および多国間で結ぶ協定で、「実質上 すべて」の貿易について関税や制限的な通称 規則を撤廃する 加盟国に同じ最恵国待遇を与える、という WTOの基本理念に反しているものの、貿易 の自由化を加速させる措置として例外的に認 められている 「実質上すべて」は90%以上とされるが、明確 な規定は無い 2-2.FTAの特徴 合意が短時間で行えるというスピード面での 優位性 →WTOの下での交渉が難航している現状 WTOで規定されていない分野についての取 り決めが含まれる →貿易自由化、環境と貿易、労働と貿易の関係 加盟国、非加盟国の双方に影響を与える 表 FTAのGDPへの影響(単位 %) 日本 日本 中国 シンガポール シンガポール シンガポール メキシコ ASEAN4 0.07 0.10 -0.05 日本 0.00 -0.01 -0.16 韓国 0.02 0.04 3.16 インドネシア 0.10 0.18 7.24 マレーシア 0.00 -0.01 2.69 フィリピン 5.76 7.04 10.40 シンガポール 0.00 0.00 6.03 タイ 0.01 0.00 9.17 中国 2-3.近年のFTAの特徴 FTAに属する加盟国の拡大 →欧州連合(EU)、北米自由貿易協定(NAFTA)、 南米南部共同市場(MERCOSUR) 経済発展段階や経済体制が異なる国々が加 盟国となっているFTAの増加 →AFTAにおいての一人当りGDP シンガポール 2万4740ドル カンボジア 240ドル FTAの内容の深化 →サービス貿易の自由化・円滑化、紛争解決等 3-1.Japan-Singapore Economic Partnership Agreement JSEPAは伝統的なFTAとは、投資の自由化、 貿易および投資の円滑化、さらには人材育 成や中小企業振興などのさまざまな分野に 及ぶ包括的な経済連携協定(EPA) 投資ルールや金融サービス、情報通信技術 に関する協力など 今後、世界各国が見本にするであろう国際的 なルールづくりに貢献 3-2.日本の政策転換 日本 GATT/WTOによる多角 的枠組み重視 世界のFTA構築によって 被っている不利益を改善 したい 外圧によって国内の構造 改革を進めたい 輸出市場の拡大 世界 FTA観が「世界貿易の自 由化を推進しWTOと補 完的である」と変化 各地域でFTAや関税同 盟などの地域貿易協定 が急速に拡大 ASEAN+3による東アジ ア共同体構想への期待 4-1.現段階での考察と仮説 日本がFTAを結ぶメリットは締結国にとって のほうが大きいのでは? →貿易立国のシンガポール、メキシコ、チリ 日本はFTAに対する意欲が薄いのでは? →WTO重視、ということではなく 日本・メキシコ間のFTA交渉が決裂したのは 戦略通りだったのでは? →構造改革の推進力として働く 4-2.今後の方針 FTA締結の意義をもっと自分なりに考える シンガポールの事例をもっと調べる メキシコとの交渉決裂も事例として調べる 政治学の観点からでは本質を議論できない マクロおよびミクロ経済学の復習 国際経済学およびゲーム理論 4-3.今後の研究計画 事例分析 提示・予測 JSEPA 日本の方向性 メキシコとのFTA 交渉決裂 ・FTA戦略(メキシコ、韓 国、チリ、タイ) ・アジアの地域統合 世界の方向性 ・FTA拡大 ・WTOの将来 5.参考 『日本のFTA戦略』、浦田秀次郎・日本経済研究センター 編、2002年 『FTAガイドブック』、浦田秀次郎編著、2002年 外務省 2003/12/08 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/ 2003年秋学期 リージョナル・ガバナンス論A講義資料 表 日本経済研究センター、2002年 日本経済新聞、読売新聞
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