OPTIM 緩和ケアセミナー 家族ケア

OPTIM
緩和ケアセミナー
家族ケア
聖隷三方原病院 浜松がんサポートセンター 井村 千鶴
聖隷三方原病院 ホスピス
天野 功二
浜松医科大学医学部附属病院
山田 絵莉子
本日のメニュー
Ⅰ 緩和ケアにおける家族ケア
Ⅱ がん患者を家族に持つ子ども達のケア
Ⅲ チャイルド・ライフとグリーフケア
家族とは
家族とは,絆を共有し,情緒的な親密
さによって互いに結びついた,しかも,
家族であると自覚している,2人以上
の成員である
Friedman
家族
 家族メンバーの変化は必ず家族全体の変化
となって現れる
 家族の力は総和以上のものとなる
 家族は変化に対応して安定をとり戻そうとする
がん患者の家族の体験
家族はケアの提供者・キーパーソン
しかし,患者とともに悩み,苦しむ存在でもある
・心理的サポートの提供(家族自身の感情の抑圧)
・さまざまなケアの提供
・意思決定の共有
・経済的問題
・家族の安定の維持
・変化への適応
がん患者の家族を知る
 がん患者とその配偶者は,がんの全過程を通じて,
同じレベルの強い精神的苦痛を経験している.相互
の気持ちの理解を促進するコミュニケーションが重要
 がん患者の家族の10-30%に何らかの精神医学的な
疾患(不安・抑うつなど)が認められる
 家族の受診率は低く,サポートが十分ではない可能
性がある
 介護する家族の身体状態
免疫能の低下,心疾患,慢性的な睡眠障害が多い
がん患者の家族へのサポート
がん患者の家族
Second-order patient <第二の患者>
がんは「家族の病気」として扱われなけれ
ばならない (Holland)
End of Life -介護における家族の負担 介護のための時間とロジスティックス
昼夜を問わない介護
 身体的負荷
移動の補助など
 経済的負担
 精神的負担
悲しみ,罪悪感,怒り,不全感,不安・抑うつ
 健康のリスク
介護負担のある老齢の家族の死亡率は高い
Rabow et.al ,JAMA 2004
End of Life 家族へのサポート
- 医療者に期待される役割  家族とのよいコミュニケーション
 ケアプランを進め,意思決定をサポートする
意向や価値観について話し合う
 在宅ケアへのサポート
“家族は自分たちが何を知らないかを知らない”
 精神的負担へのサポート
家族の気持ちへの共感
 悲嘆のケア
患者が亡くなった後も家族にかかわる等
Rabow et.al ,JAMA 2004
緩和ケアにおける家族ケア
 患者・家族の希望を保つためのケア
治癒への希望・・・苦痛の緩和,安楽,good death
 ケア全面における家族へのかかわり
意思決定
患者の身体ケアへの参加
子どもたちへのサポート
 情報提供
これから起こること(体の変化,変化のプロセスなど)
 オープンなコミュニケーション
Davies B , Textbook of Palliative Nursing 2006
End of Life 家族のニーズ
 患者の状態を知りたい
 患者の側にいたい
 患者の役に立ちたい
 感情を表出したい
 医療従事者から受容と支持となぐさめを得たい
 患者の安楽を保証して欲しい
 家族メンバーからのなぐさめと支持を得たい
 死期が近づいたことを知りたい
(Hampe , S.O)
 夫婦間(患者ー家族間)で対話の時間をもちたい
 自分自身を保ちたい
(鈴木)
家族ケアのポイント
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患者・家族にとって重要なこと,ゴールを共有する
患者・家族のニーズを満たす
病状の理解・対処ができるようにサポートする
家族内のコミュニケーションを促進する
患者・家族の意思決定をサポートする
家族の悲嘆を理解し,ケアする
死や死のプロセスについて話し合う
ライフレビュー等を通じて新たな意味づけを支援する
準備することをサポートする(未整理の仕事など)
予期悲嘆
大切なひととの別れなど,喪失を予期して嘆き悲しむ
こと.死別に対するこころの準備を整え,死別が現実
のものとなった時,その衝撃や悲嘆を少しでも軽くする
のに役立つといわれる
① 第一期 感情,思考の麻痺
② 第二期 悲しみ,怒り,罪悪感
③ 第三期 死別が近いという現実への認知的対処
家族の感情を受け止め,必要な時には感情表出を促す
患者・家族の視点からのサポート
希望をコミュニケートする
・希望を共有する
どうすれば希望がかなえられるかという視点をもって
コーディネーションする
・実現可能な目標の探索をサポートする
・できることを提示する
身体症状の緩和,心理的サポート,ケア,尊厳の維持
・一日一日の生活に焦点をあてる
患者・家族の視点からのサポート
・医療者への非難 ・民間療法 ・面会に来ない家族
問題と捉えるのではなく,
言動の背景にある家族の感情に気づく
自責感,無力感,状況への怒り,否認
そばにいられない気持ち
苦しみの意味への問い
「気づいてあげられなかった」「何もしてやれない」
まとめ
 家族の個別の体験を知り,サポートする
家族それぞれのありように寄り添う
 家族の“たえざるゆらぎ”を支え続ける