大地の躍動をみる ――新しい地震・火山像―― 山下輝夫編著 坂内佑紀 目次 第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 地震はどのように起きているか 歴史からみた地震 地震の動きを考える 地震と火山の活動を測る 宇宙から地殻の動きを知る 火山噴火のからくり ――雲仙普賢岳噴火―― 第七章 火山のもと ――マグマのできかた―― 第八章 地球の内部はこうして知る ――「断層撮影」地震波トモグラ フィー―― 第九章 地球の鼓動が聞こえてきた 第一章 地震はどのように起きているか 武尾 実 地震って何? 地震の正体を探るための本格的な研究がスタートしたのは明治時代以降、欧米から日本 にやってきて初めて地震を経験した外国人教授による。 地震の原因=断層運動 地球の運動を説明した「プレートテクトニクス」の学説ともうまく合うの で、大きな説得力を持って地震学者に受け入れられていった。 断層運動とは 地球表面を覆っているいくつかのかたいプレートはお互いに動きまわって いるため、ぶつかり合ったり一方がもう一方の下に潜り込んだりすること が起こる。その際、プレート内に蓄えられた大きな歪みを解消しようとし て、プレート内部や隣り合うプレートの間で、ある面を境にして両側が上 下や左右にずれること。 地震断層をCTする 地震断層は地下深くに隠れて見えないので、病気を診断する時にCT (コンピューター断層撮影)を利用するように地震波の観測記録を利用し て地震断層の様子を知る。 地震の断層を取り囲むように様々な方向と距離で地震波 を観測することにより、断層の、どんな場所でいつ、ど のくらいの滑りを起こしているのかを知ることができる。 •どこでも好きな方向や場所での記録が手に入るわけではない。 密度の高い観測網を作っておいても、その網の外側で地震が起きると、 観測網はある限られた方向のものだけしか手に入らない。 •地球内部の構造が十分に分かっていない。 今わかっている地球構造についての知識をもとに地震断層を調べ、更に その結果が構造を調べる研究にフィードバックされることにより、精度 の良い構造が得られるといったように、異なる研究分野が相互に作用し 合いながら、地球の現象解明に向かっている。 見えた!断層の動き 現在は、どこまで詳しく地震の起こり方を知ることができるのか? 逆解析の方法 大地震が起こるとその直後に、その地震を起こした断層面及び周辺 で多くの余震が起こる。この余震の分布から、多くの場合は断層面 の広がりを知ることができる。 そこで、 このような地震の断層運動のモデルには、時には数百を 超える未知の要素(未知数)が入ってくる。 だが、1980年代以降は、日本国内や南カリフォルニア地域で大きな 地震動もきちんと記録出来る地震観測網が整備され、大地震の断層 近くで多くの記録を得ることができるようになった。他の国々でも このような地震観測網の整備が進められつつある。 こうした観測網では、地震断層を取り囲んだ数重の観測点で地震波 が記録でき、非常に多くの観測データが得られる。 どのように未知数を求めるのか? 今後の観測から 断層運動を詳しく調べる研究は、震源域近くで比較的多 くの地震波形が得られている日本国内や南カリフォルニ アの地震について行われてきた。 詳しい地震断層運動が少しずつ明らかになってくるにつ れて、地震の断層運動はきわめて複雑であり、断層面積 や平均的な滑り量などだけで特徴づけられないものであ るということが分かってきた。 地震の共通点 ほとんどの地震で、断層が一様に滑ることはなく、必ず 周りより大きな滑りを起こしたアスペリティがあり、大 きな自信になると複数のアスペリティが存在するほうが 一般的である。 更に、その地震の余震分布と滑り量の分布を比較すると、 地震の時に大きく滑った領域では、マグニチュード4ク ラス以上の比較的大きな余震はほとんど発生していない。
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