音読能力のスコア化と 英語学力との相関に関する研究 鈴木政浩(西武文理大学) 阿久津仁史(東京都文京区立第八中学) 飯野 厚(清泉女学院短期大学) 大澤由加里(埼玉県立蕨高校) 2015/10/1 1 音読能力の測定の問題 ① 音読速度(渡辺1990;Shinzawa,2004) ② 単語の読み間違いを数える(Devine,1987) ③ 観点による主観的評価(京堂,1989;英検2次 試験) ④ 音読の録音データ分析(小泉,2003) 問題点:数値化においてはその前提となる語彙力や ミステイク(偶発的な発話ミス)などが考慮できないこ と、主観的評価法の数値化の難。肉声データ分析に よる多面的評価がもっとも理想だが時間的、人的に 時間がかかる 2015/10/1 2 本研究の目的 1.音読能力の数値化 音読能力 2.音読能力と習熟度の関係を探る B A C D 習熟度 2015/10/1 3 音読能力測定法 Speak!(ライトハウス社) 特徴 ①Windows XPのシステムの利用 ②学習者の英語音声アメリカ英語の発音との違 いを比較して数値化 ③テキストの音読後,即座に音読能力を数値化 2015/10/1 4 2015/10/1 5 習熟度の測定法 • CASEC(Computerized Assessment System for English Communication) • 運営会社:(株)教育測定研究所 • セクション1:語彙の知識(15問250点) セクション2:表現の知識(15問250点) セクション3:リスニングでの大意把握(15問 250点), セクション4:ディクテーション(10問250点) • テスト時間:約40分~70分 CASECホームページより転載http://casec.evidus.com/fb/index.html 2015/10/1 6 CASECホームページより転載http://casec.evidus.com/fb/index.html 2015/10/1 7 研究の方法 被験者:埼玉県内の大学生40人(1~3 年生)(男子24名,女子16名) 2015/10/1 8 手続き 1. CASECによる被験者の英語能力測定 – 1人ずつコンピューターに向かい,問題に答え る。 – 所要時間約50分 2. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 2015/10/1 Speak!による音読能力測定 英検2級2次試験のパッセージ(62語)の音読 内容理解の確認 録音方法の説明 練習をした上で本番の音読 練習とは別の英文で測定 所要時間は10分程度 ソフトウエアの判定を,記録用紙に記入して提出 9 測定に使用した英文 Childcare It is difficult for parents to work and raise children at the same time. Now, some companies are introducing a system to help such parents. This system allows employees with small children to use a childcare service at the workplace. This way, they can do their work without worrying about their children. These services are very useful for working parents. 実用英語検定試験2005年第1回2級二次試験より 2015/10/1 10 結果(1) 英語習熟度と音読能力の関係 やや強い正の相関(r= .608, p<.01) 平均値 標 準 偏 差 習熟度スコア 404.05 122.11 音読のスコア 177.73 28.08 Table 1 CASECとSpeak!の平均値と標準偏 差 (N=40) Pearson の相関係数 習熟度スコア 音読スコア! .608(**) ** 相関係数は 1% 水準で有意 (両側) Table 2 CASECのスコアとSpeak!のスコアの相関 2015/10/1 11 散布図 音 読 能 力 CASECのスコア(習熟度) 2015/10/1 12 結果(2) 習熟度の内訳と音読能力の関係 Pearson の相関係数 音読スコア CASEC SECTION1(語彙) .489(**) CASEC SECTION2 (表現) .419(**) CASEC SECTION3 (聴解) .475(**) CASEC SECTION4(書き取り) .625(**) ** 相関係数は 1% 水準で有意 (両側) Table 5 CASEC Section1(語彙の知識)とSpeak!のスコアの相関 (N=40) 語彙力・表現力・聴解力と音読能力は弱めの正相関 ディクテーション能力と音読能力は中程度の正の相関 2015/10/1 13 結果(3) 習熟度上位群と下位群の比較 平均値 習熟度スコア 音読のスコア 標準偏差 上位群 505.45 75.75687 下位群 306.35 70.56186 上位群 196.15 17.70601 下位群 160.25 25.92271 相関係数 習熟度CASEC上位(N=20) r=-.049 n.s.(有意確率 .838) 習熟度CASEC下位(N=20) r=.435 n.s.(有意確率 .055 有意傾向) Table 3 CASEC上位群・下位群のスコアとSpeak!のスコアの相関 上位群:習熟度と音読スコアには相関関係が見られなかった。 下位群:中程度の正相関(r=.435, 有意確率 .055) 2015/10/1 14 考察 • 習熟度と音読能力比較的高い相関が認め られた 音読の上手・下手は個人差要因が大きく関係する可能性が ある。 →ソフトウエアを使った音読能力および習熟度の測定はある 程度の妥当性を示しながら,学習者個々の違いを無視する ことはできないことを反映していると考えてよい • ディクテーションとの相関が最も強い 文字から音声へというmodeの音読と同じ知識ベース、すな わち音声と文字が一致した形でのメンタルレキシコン(心的 語彙)を共有してることを示唆 2015/10/1 Speakが測定する音読力は、1語ごとの正確な音声であり、 超分節音レベルのプロソディには対応していない。この機能 上特徴も、ディクテーションスコアと音読スコアの強い関係を 示す結果につながったと言えよう。 15 課題 • スコアの信頼性の問題 – 複数のテキストを音読しスコアを計測。ソフトウエアの算出するスコ アの信頼性を確認する。 – 人間の耳による評価との関係 • 範読の質と音読練習 – 教師のモデルリーディングとソフトウエアのリーディングの違い • 独立変数の設定 – 音読能力と習熟度のどちらが独立変数か – →音読による習熟度が上がるのか or 習熟度が上がると音読能力 が上がるのか • ネットワーク環境の壁 セキュリティーの問題でインストールや動作に問題が発生 2015/10/1 16 2 不要につき削除 音読に関する実証 1970’s oral miscue analysis 音読を総合的英語力のデータ 指標として扱う傾向、 羽鳥博愛(1977) 音読と読解の関係 - 峰野光善(1985) 音読とチャンク化の関係 + 京堂弘美(1989) 音読の評価とスピーキングの関係 渡辺浩行(1990) 音読指導と音読速度、読解速度 + 駒場利男(1992) PC利用音読指導 チャンク化 + 橘堂弘文(1993) 音読と学習 飯野厚(1998) 音読の長期的指導がリスニング力向上に効果、 フレーズ認識、読解には有意傾向 鈴木寿一(1998) 音読指導と読解速度、聴解力の関係 + 〃 (2000) 音読指導と読解速度、読解力 + 安木真一(2001) 音読指導とチャンク化の関係 + 宮迫靖静(2002)音読指導と英語力 阿久津・飯野・鈴木(2005) 音読がリスニングに及ぼす効 果 + 2015/10/1 17
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