音読練習20回は妥当か? 音読練習ソフトを活用した反復音読中の音読スコアの推移分析 阿久津仁史 (東京都文京区立第八中学) 飯野 厚 (清泉女学院短期大学) 鈴木政浩 (西武文理大学) 2015/10/1 1 これまでの研究成果から 阿久津・飯野・鈴木(2006)から 音読能力測定の諸問題 • 音読能力を間接的にしか測定していない • 数値化においてはその前提となる語彙力や偶発 的な発話ミス等が考慮できない • 主観的評価法の数値化の難。 肉声データ分析による多面的評価が理想だが時 間的にも人的に時間がかかる 2015/10/1 2 音読能力測定法 音読練習ソフトSpeak!(ライトハウス社)の 単語レベルの「正確さ」の判定を利用 ソフトの機能:学習者の英語音声とアメリカ英 語の発音との相違を比較した「正確さ」として 4段階で判定→音読した総語数から%表示) 「良い」%×3点 + 「普通」%×2点 + 「悪い」%x1 2015/10/1 =音読能力 3 2015/10/1 4 1回の音読スコアと習熟度との相関 阿久津・飯野・鈴木(2006) 音 読 能 力 習熟度スコア 習熟度と音読能力の関係 やや強い正の相関(r= .608, p<.01) 2015/10/1 5 阿久津・飯野・鈴木(2006)の課題 SpeaK!が算出するスコアの信頼性は? 音読の回数が1度きりだが、繰り返し読むと音読 は上手になるのか。同時通訳養成の分野では、 20回を超えると効果があると言われる(國弘、 2001)。 学齢による差はみられるのか。 2015/10/1 6 研究1の目的 同じ被験者に同程度の難易度と 考えられる異なるテキストを読 ませても、結果に揺らぎはない か? ・SpeaK!が算出するスコアの 信頼性を検証すること 2015/10/1 7 被験者および実施期間 被験者:東京都内の公立中学生 (3 年生:男子15名,女子16名) 実施期間:2007年2月 2015/10/1 8 研究の方法および手続き 英検3級2次試験10問 被験者がそれぞれの英文を音読 SpeaK!によるスコアの算出と記録 スコアの算出→阿久津・飯野・鈴木(2006)の方法を採用 10回分の点数間のα係数を算出 2015/10/1 9 結果 α係数:.92 極めて高くSpeaK!が算出するスコアの信 頼性を確認 2015/10/1 10 考察 学習者によるスコアのばらつき 高いα係数 音読スコアの高い被験者のスコアは常に高い 音読スコアの低い被験者のスコアは常に低い スコアの信頼性を検証 コンピューターとヘッドセットがあれば、短時間に多くの 学習者の音読能力を測定する環境 2015/10/1 11 今後の課題1 妥当性の検証 教師の評価との間に、相関があるかどうか (人間の耳による評価とSpeaK!の評価に 整合性がみられるかどうか) 2015/10/1 12 研究2の目的 大学生の繰り返し読みスコアとその推移 飯野・阿久津・鈴木(2007) 学齢の異なる被験者(中学生)のスコアと その推移の比較 2015/10/1 13 被験者および実験期間 被験者1:東京都内の公立中学生 (3 年生:男子17名,女子17名) 実施期間:2007年3月 被験者2:埼玉県の大学生 (1年生~3年生36名) 実施期間:2006年6月 飯野・阿久津・鈴木(2007)のデータを流用 2015/10/1 14 方法および手続き 5回各自で音読 5回 SpeaK!によるスコアの測定と記録 20回の練習と5回の測定 スコアを300点満点に換算し、平均点の算出と比較 習熟度の上位群と下位群に分け、平均値の伸びを比較 2015/10/1 15 結果 中学 大学 200 195 190 •大学生は1回目と3回 目、1回目と5回目、3 回目と5回目に有意差 あり •中学生は有意差なし 185 180 175 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 図1 中学生と大学生の平均点の推移 2015/10/1 16 CASEC Score上位群・下位群別SpeaK! Score推移 結果 ▲:上位群 ■下位群 220 210 200 190 180 170 160 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 図 2 上位群・下位群別の伸び(大学生) 2015/10/1 17 定期テスト上位群・下位群別SpeaK! Score推移 結果 上位群 下位群 220 210 200 190 180 170 160 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 図 3 上位群・下位群別の伸び(中学生) 2015/10/1 18 考察 減衰位置の違い(中学生は3回目で1度減 衰、大学生は4回目で1度減衰) →学齢により、音読に「飽きる」時期が異な るが、その後もスコアは伸びる 中学生の伸びの緩慢さ、有意差なし →テキストの難易度が低い 2015/10/1 19 教育上の示唆 練習すればするほどスコアは伸びる →SpeaK!を活用した繰り返し読みは学習 者の音読上達に役立つ 「飽きる」のが早い中学生などは、変化を つけながら音読回数を増やす工夫が必要 2015/10/1 20 今後の課題2 音読スコアの伸びが顕著な学習者の要因 音読回数と定着度の関係 繰り返し読みとIncidental learning(付随 的学習)の可能性 学習者個人の繰り返し読みとSpeaK!を 使った繰り返し読みの効果の違い 2015/10/1 21 引用文献 飯野厚(2004). 『教師の音読を伴った繰り返し読み が高校生の英文読解に及ぼす効果』 STEP Bulletin, 24, 財団法人日本英語検定協会 飯野厚・阿久津仁史・鈴木政浩(2007). 『音読ソフト を利用した音読のスコア化:習熟度との関係および繰 り返し音読におけるスコア変化の検証』. 関東甲信越 英語教育学会紀要, 21. 國弘正雄(2001).『英会話・ぜったい音読入門編』講 談社. 2015/10/1 22 プレゼンテーション資料のダウンロード先 音読指導研究会ホームページ http://langedu.dip.jp/or/ 2015/10/1 23 反復測定(ANOVA)分析結果 被験者内効果の検定 タイプ III 平 方和 ソース 自由 平均平方 度 F値 有意確率 音読回数 球面性の 仮定 1656.706 4 414.176 3.399 0.011 音読回数 x TOTAL 球面性の 仮定 738.942 4 184.735 1.516 0.201 誤差 (音読 回数) 球面性の 仮定 16569.903 136 121.838 *「Mauchly の球面性検定」で非有意だったため「球面性の仮定ができる」 音読回数に単純主効果有り。 2015/10/1 24 何回目と何回目に有意差があるのか。 ペアごとの比較(大学生) (I) 音読回数 (J) 音読回数 平均値の差 (I-J) 標準誤差 有意確率 1 2 -5.278 2.572 0.479 3 -8.917(*) 2.46 0.009 4 -8.222 3.063 0.111 5 -13.000(*) 2.769 0 2 3 -3.639 2.405 1 4 -2.944 2.425 1 5 -7.722(*) 2.481 0.038 3 4 0.694 2.562 1 5 -4.083 2.749 1 4 5 -4.778 2.457 0.602 推定周辺平均に基づく。 平均値の差は .05 水準で有意です。 多変量分散分析は有意(F(4,31)=6.393,p<.001) 2015/10/1 25 何回目と何回目に有意差があるのか。 ペアごとの比較(中学生) (I) 音読回数 (J) 音読回数 1 標準誤差 有意確率 2 -6.44 3.62 0.85 3 -5.79 3.80 1.00 4 -8.68 3.42 0.16 5 -7.79 3.78 0.48 3 0.65 3.83 1.00 4 -2.24 4.11 1.00 5 -1.35 4.32 1.00 3 4 -2.88 2.77 1.00 4 5 0.88 3.24 1.00 2 2015/10/1 平均値の差 (I-J) 26
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