地域医療におけるIT (情報技術)の活用

地域医療における諸問題と情報技術
の活用に関する考察
鹿児島大学法文学部経済情報学科
システム設計研究室
下園ゼミ所属
4年 林 正和
平成15年12月26日
1
Contents
1、研究背景
2、研究目的
3、研究内容
4、今後の研究予定
2
1、研究背景
 国民医療費の増大
 医療過誤
 医療格差
↓
医療を取り巻く環境の変化
3
国民医療費の増大
平成13年度国民医療費(厚生労働省統計)
・国民医療費
31兆 3234億円 (前年比3.2%の増加)
・国民一人当たり医療費
24万6100円(前年比2.9%の増加)
・国民医療費の国民所得に対する割合
8.46%(前年度 7.98%)
4
医療過誤と医療格差
 ヒューマンエラー
 ハードウェアエラー
 鹿児島県という地域特性
 医師レベル、施設レベル、無医村等
5
医療を取り巻く環境の変化




「医療」への株式会社参入
医療財源の地方委譲
保険医療制度の疲弊
医療従事者側と患者側の意識の変化
医療そのものの変容
6
2、研究目的
前述の様々な問題に対し、
 「医療におけるIT(情報技術)の導入事例・状況」
 「日本及びOECD加盟国の医療分野におけるベンチ
マーク分析」
 鹿児島の医療の現状の分析
「鹿児島IHN」の立案を目的とする。
7
3、研究内容
 OECD諸国及び日本の医療分野における
ベンチマーク分析
 医療におけるIT(情報技術)の導入状況
 鹿児島県の医療事情を踏まえた医療情報
(経営)システムの構築提案。
8
医療システム分析(OECD諸国)
 国民保健サービス(ベバリッジ)システム
 社会保険(ビスマルク)システム
 私的保険(消費者主権)システム
※OECD・・・「Organization for Economic Cooperation and
Development:経済協力開発機構」の略で、本部はフランスのパリ
にある。現在加盟国は30ヶ国。
9
国民保険(ベバリッジ)サービスシステム
 全国民を対象とし、国の一般的な租税を財源
としている。
 医療資本は国有、もしくは国家による統制が
なされる。
 OECD加盟国該当国・・・・・イギリス、イタリア
など
10
社会保険(ビスマルク)システム
 (強制的な)国民皆保険を実施。
 財源は非営利で保険基金が拠出し、基金の
財源を雇用者および個人が負担する。
 医療資本は、公的または私的な所有が混在し
ている。
 OECD加盟国該当国・・・・ドイツ、フランスなど
11
私的保険(消費者主権)システム
 民間の保険会社が運営する(もしくは個人・被
用者の集団が費用を拠出し、運用する)私的
な健康保険と医療資本の私的所有を特徴とす
る医療システム。
OECD加盟国中では、アメリカが最も典型的
な例であると言える。
12
日本の医療システム
大枠:社会保険(ビスマルク)モデル
 医療提供制度を示した「医療法」
 昭和36年に国民皆保険達成。昭和50年まで
に現行とほぼ同一のシステムが完成した。(図
表2を参照)
13
GDPに占める医療関連支出の割合及び医療に占
める公的支出割合
GDPに占める国民医療費の割
合(GDPのドル表示:単位は
10億ドル)
医療に占める公的支出
割合
アメリカ
13.90%(9762.1)
44.20%
イギリス
7.60%(1,438.1)
80.90%
10.70%(1,870.3 )
75.00%
8.00%(4762.4)
78.30%
ドイツ
日本
出展:OECDの2000年health及びmacroeconomicsカテゴリの数値より
作成
14
国民医療費(対GDP比)に見る諸分析
 アメリカが30カ国中1番目(13.9%)・・・・国策とし
ての複合医療産業としての成長。
 日本は18番目(8.0%)・・・・・人口比、および医
療市場としての視点から見ても少ない。
 OECD諸国の医療に関する公的支出は減少傾向。
 日本は双方の数値が上昇を続けていて、この後
も増加していく事が見込まれる。
15
平成13年度国民医療費と対国民所得比の年次推移(厚生労働省統計)
16
現状における日本の医療の問題点
 現行のシステムと、医療ニーズの乖離
 少子高齢化に伴う医療サービスの需要の増加
及び社会保険システムを支える現役世代の人
口の減少
 医療を財として捉えた場合、「消費」のみで、
「生産」しない点。
最大の問題は、財務(保険制度)問題と、システム
(医療供給体制)を同列に論じている事。
17
日本が抱える様々な医療問題に対して
 IT(情報技術)を積極的に利用したとIHNを、日
本、及び地域の特性を考慮した地域分散型医
療ネットワークの構築
18
医療におけるIT(情報技術)とは




オーダリングシステム
電子カルテシステム
(オンライン)レセプト処理システム
自Webサイトの開設
19
医療におけるIT(情報技術)その1
 オーダリングシステムとは ・・・・・紙に手書
きしていた伝票や処方箋内容をコンピュータに入力するこ
とによって、薬局での処方箋処理から医事会計までを電子
化したシステムの事。
↓
 会計処理時間の短縮
 転記がなくなることによる安全性の向上
 検査結果を即座に印刷・入手可能
20
医療におけるIT(情報技術)その2
 電子カルテシステムとは、診療録等の診療情
報を電子化して保存更新するシステム 。
↓
 真正性・・・ 責任と所在が明確であり、かつ改
ざんが防止されていること
 見読性・・・ 必要に応じて診療録が肉眼で識
別できること
 保存性・・・記録された情報が真正性を保ち、
見読可能の状態で保存されること
21
医療におけるIT(情報技術)その3
 (オンライン)レセプト処理システムとは、医療
機関が患者のかかった医療費を保険者であ
る市町村や保険組合に請求する明細書を電
子的に処理するシステムの事。
↓
診療報酬請求にかかる労働コスト・時間の大幅な
短縮が可能。
22
医療におけるIT(情報技術)その4
 自Webサイトの開設
↓
 自医療機関の広告
 患者医者双方のコミニュケーションツールの
可能性
23
IHNとは何か?
 IHN(Integrated Healthcare network)
日本訳:広域医療圏統合ネットワーク
 基本的に、非営利である。
 異種医療機関の垂直統合が進んだ結果、生
まれた物。
~マネジドケアの欠点を克服して生まれた物~
24
IHNの最大のメリット
1、効率経営で生み出した利益を地域(医療)に
還元し、経営の失敗は、地域住民が負担する。
2、地域社会がガバナンスを握りボードメンバー
は地域代表が務めている。
3、事業が非課税となる代わりに地域住民に無料
医療を提供。
4、利息が非課税となる債券を発行し資金調達
25
IHN構築に必要な物
 主要疾病における臨床プロトコルの構築
 医療ベンチマーキング
 +α(IHN専用のIDC構築、共同事業)
26
主要疾病における臨床プロトコルの構築
 アメリカ連邦政府は、医学関連学会の協力の
下に疾病ごとの診療ガイドラインをデータベー
ス化し、公開している物をベースにして各IHN
ごとに詳細版である「臨床プロトコル」を作成し
IHN下の医師に提供している。
27
医療ベンチマーキング
 医療における費用対効果を評価・判断する基
準を与えるツール。
 臨床系ベンチマーキングと経営系ベンチマー
キングの二つが、その主たる要素である。
28
+α
 IHN専用のIDC構築、
 共同事業(医療用寝具、検査機材)
 教育機関設立
29
地域特性の分析・考慮
 該当地域の人口、年齢分布図、気候、企業、
主要産業を考慮した上で、IHNの運営形態の
立案を始める。
30
IHNの運営形態
 1つの広域医療圏のみで事業展開する地域
密着型。
 2つ以上の広域医療圏で事業展開している
IHN集合体
 有力大学の医学部が、IHNの中核となり医療
産業集積を形成
31
鹿児島IHNの考慮すべきコンテンツ
 温泉、温暖な気候、豊かな農水産物
 鹿屋体育大学
↓
スポーツ殖産振興型IHN
32
鹿児島医療現状の分析
 資料を見てください。
33
鹿児島県における医療費の現状
・平成11年度 一人当たり実績医療費
47万2千円(全国6位)
・平成11年度 一人当たり老人医療費
95万7千円(全国8位)
対前年度伸び率 (全国2位)
34
鹿児島県内の医療施設数とWebサイト数
市町村名
医療機関数
■HPの有無
姶良郡
112
21
52
伊佐郡
5
1
3
出水郡
14
2
6
揖宿郡
23
2
大島郡
28
1
6
川辺郡
30
2
3
肝属郡
34
3
12
熊毛郡
10
2
2
薩摩郡
38
2
4
曽於郡
56
6
18
日置郡
57
2
19
市総計
879
135
294
1286
179
430
総計
■Emailの有無
 医療施設数(保険医療
機関のみ/歯科除く)
1286施設
11 (正確には1600弱)
 内Webサイト開設数
179施設
(Emailのみ430施設)
35
鹿児島県医療系サイト分析結果(PP系)
 ポータル的役割を全く果たしていない。
 アクセス数が少ない。
 更新が稀である。
 フレーム、フラッシュ等、見難さに主眼を置
いている。
36
鹿児島県医療系サイト分析結果(個人系)






サイト開設数が少ない。
スタイルシート、フラッシュ等の多用。
コンテンツそのものが少ない。
アクセス数が少ない
患者、医療従事者双方に対しての情報の欠如
産婦人科系は、比較的充実
37
鹿児島の医療系サイトの実情
 個々の医療機関が、独自に情報提供するケース
と、地域医療圏内の第三者機関が情報提供する
ケースを区別出来ていない
↓
日本医療機能評価機構のような第3者機関
の活用が少ない
38
地域分散型医療(IHN)に必要な物
 地域住民から見た情報の信頼性、利便性、
及び健康・保険に対する意識を高める仕組
みとして地域医療圏ポータルサイト的なも
のが必要
 消費者ニーズに応えることができる水準ま
で医療情報コンテンツの質量を拡充するた
めにはインフラとなるデータベース構築が
急務
39
これからの地域医療の目指すべき方向性
受動的医療から、能動的医療への転換
↓
消費から創造へ
40
御清聴ありがとうございました。
41