視点1情報技術による行動様式 の変化 • I.情報文化の枠組み • II.情報技術 • III.情報通信技術から生みだされた新しい 行動様式と社会様式 • IV.ライフスタイルに与える影響 • V.人間と情報技術の役割 • VI.情報に対する感性 2009/4/21 1 視点1情報技術による様式の変化 II. 情報技術・情報通信技術 • 情報技術 IT – コンピュータは高速・大量の情報処理を可能にした • 通信技術 ICT – 通信技術は高速・大量の情報通信を可能にし、コンピュータを 介した人と人のコミュニケーションを可能にした • 情報技術を使ったコミュニケーション – コンピュータを介したコミュニケーション – 人-PC-通信回線-PC-人 – 双方向のコミュニケーション 2 製造技術と情報技術 • 製造技術により作られるもの Manufacturing T. – 身体機能の延長・発達・強化 – 車、衣料、めがね • 情報技術により作られるもの IT/ICT – 脳機能の延長・発達・強化 – コンピュータによる記憶、計算 – 言語・文字・数値を扱う • 情報技術の基盤はデジタル技術 – コンピュータで情報を扱えるようになる情報技術の基 盤となる技術 3 デジタルとアナログ • アナログ – analog ← 似ている、相似である – 自然界の長さ、重さなどの単位を持つ量は、 連続的に変化する量のある1点として表現でき る – 通常は複数の点で表現することはできない • デジタル – digital ←digit 手足の指 – 指折り数える – 物質・システムなどの状態を,離散的な数字・ 文字などの信号によって表現すること。「大辞林」 4 デジタル情報とアナログ情報 • 時間 – 時間は連続してながれている – 時間は不連続な点の集まりではない • アナログ時計 – 連続した時を刻む – 日時計 • デジタル時計 – 時分秒の不連続な点で時刻を表示する – 本来の時刻は連続したアナログ情報 5 CD とレコード • レコード – http://www.anenglishmanscastle.com/Record _Groove-Microscope_View-1000x-thumb.jpg • CD – http://www.optics.rochester.edu/workgroups /cml/opt307/spr05/chris/dvd.jpg 6 デジタル情報の特徴 • コンピュータで処理できる – コンピュータと同様の特徴を持つ • 高速の情報処理が可能 – 迅速な計算や送受信 • • • • 正確な繰返し計算/処理 同一のコピーが可能 膨大な記憶容量の確保 必要なとき迅速に取り出せる 7 デジタル情報は2進数 • コンピュータ – – – – 半導体 電気をとおしたりとおさなかったりする 0と1に対応 2進数の計算が可能 • コンピュータとデジタル情報 – アナログ情報をデジタル情報に変換 – デジタル情報を2進数に変換 – アナログ情報をコンピュータで扱うことが可能 8 2進数 • 2進数 10進数 • 1 • 10 • 11 • 100 • 111 = 1 =1 = 21+0=2 = 21+1=3 =22+0 +0=4 =22+21+1=7 • 100,000 • 1,000,000 • 10,000,000 • 100,000,000 =25 =2 6 =27 =28 =32 =64 =128 = 256 9 デジタル化 • アナログ信号の標本化 – Sampling :一定区間ごとに代表値をとる – 音楽CDは1秒に44100回 • サンプリングした信号の量子化 – 有限桁数で信号の強さを表示する – 近似値とする • 量子化した値の符号化 – 量子化した値を2進数で表示する – コンピュータによる処理が可能となる 10 CD • 直径12cm – 5kmの中心から外へらせん状のピット列 – アナログデータを1と0の信号に変換 • 引用1:ピット • http://www.6moons.com/industryfeatures/eac/eac.html • EFM(Eight to Fourteen Modulation) • 8bitのデジタルデータを、1と次の1までの間に0が2以上(10個以下) 入る ように14bitのデータに変換する。 • デジタル信号の1から次の1までをT3からT11までのピットで表現。 2009/4/21 11 課題1 • Q1.アナログ情報でないものを選択しなさい。 • ①長さ ②重さ ③時間 ④CD ⑤温度 • Q2.2進数の110を10進数に変換した数字を答えなさい 。①5 ②6 ③8 ④10 ⑤11 • Q3. 2進数の 101 に 011 を加えた2進数を答えなさい。 • ①112 ②120 ③1000 ④8 ⑤101011 • Q4. 情報通信技術が生み出した新しい生活様式に該当 しないものを選択しなさい。 • •①時空間の拡大 ②メディアの多様化 • •③膨大な情報利用 ④管理・監視された社会様式 • •⑤安全性を優先した生活様式 12 視点1情報技術による様式の変化 III.情報技術から生みだされた 新しい行動様式と社会様式 • 新しい行動様式 • • • • • • • • 1.利便性の追求 2.時空間の拡大 3.情報の発信 4.膨大な情報利用 5.人間関係の希薄化 6.脳機能の拡大 7.生涯学習 8.考える時間の増加 13 1.利便性の追求 (1)情報通信 • 携帯電話 ← 固定電話 • E-mail ← 郵便 • メッセンジャ ← 固定電話 • 音楽配信 ← CD レンタル・購入 • オンデマンド映像 ← ビデオレンタル、テレビ放送 (2) Web情報 • Web閲覧 ← 個別の調査・問い合わせ • 電車の時刻・経路 ← 時刻表の調査 • 飛行機の発着時間の確認 ← 空港への問い合わせ • テーマパークのスケジュール ← 雑誌、問い合わせ 14 利便性 (続き) (3) 買い物 e-コマース B2C:アメリカにおける e-ビジネスの業種 別売上順位 Forrester retail index • 1.航空券 • 2.コンピュータ • 3.ホテル • 4.アパレル・ファッション • 5.書籍 • 6.電子機器 • 7.レンタカー • 8.ソフトウエア • 9.音楽・CD • 10.ヘルスビューティ 15 利便性の向上した生活様式 • 時間の有効利用 • 忙しい生活様式 – 空いた時間をなにに使うかを考えないと忙しく なるだけ • サービス向上のため社会やビジネスの仕 組みが変わる – 納税が銀行からコンビニへ – 銀行業と流通業務の見直し – 電子政府 16 2. 時空間の拡大 • 時間的制約のない行動様式 – 時間的制約から開放されたコミュニケーション様式の出 現 – コンピュータを介しているので何時でもアクセス可能 – e-メール・掲示板・ニュースの閲覧・チケットの予約 • 空間的制約のない行動様式 – 空間的制約を越えた安価なコミュニケーション様式の出 現 – メッセンジャー, Skype, e-メール – ネットワークを使って遠隔地間における、瞬時かつ大量 の情報伝達により、国外も国内と同じ環境におかれる. – 地球が小さくなる,情報の広域化 • グローバル化を実現 17 3.情報発信 • • • • • • • • • • • • 容易に情報発信ができる行動様式 –印刷技術から情報通信技術へ •印刷技術 –マスコミュニケーション –多数に対する1方向の情報伝達 –出版物,印刷物,本, 雑誌, 新聞, TV •情報通信技術(インターネット) –双方向の情報伝達 –個人-個人、個人-多、多-多 –メディアの多様化 •情報伝達メディアの多様化 –容易な情報発信が実現 18 容易な情報発信を実現したメディア • • • • • • • Web 電子メール メーリングリスト 掲示板 メッセンジャー ブログ,SNS,Twitter YouTube • 個人や特定のグループによる情報発信が、普通の生活 様式/行動様式となる 2009/4/21 19 4.膨大な情報の利用 • 膨大な情報が利用可能な生活/行動様式 – 独創的な知の創造は困難? • 情報を平等に使用できる社会が前提 • 情報を選択する行動様式 – 必用な情報を選択する情報行動 – 自ら考える行動様式の弱体化 • 情報を共有できる生活/行動様式 – 集合知(wisdom of crowd,collective genius) – web2.0で注目 20 5.人間関係の希薄化 • 人間の存在の希薄化 – 著者ない情報が増大 – 情報技術による情報と人の分離 • 浅く広いコミュニケーション – トラブルや意見の相違からの逃避 • 非対面コミュニケーション • 尐文字数コミュニケーション – 携帯メール情報(10文字) 21 6.脳機能の拡大 • 個人の脳機能が増幅した行動様式 • 旅行の手配 – 旅行情報の入手 – 航空券の手配 / 格安航空券 – 宿の手配/レンタカーの手配 • 買い物 – 商品情報の入手による商品の比較 – 不良品への対応 • 行政への意見 22 7.生涯学習 • 卒業後も継続して学習する行動様式 • CAI (コンピュータ支援教育) – Computer –assisted instruction – 教育・訓練・教養・趣味 • IT理解の重要性 – ITは自己学習を可能にする手段 – 常に新しい知識を得る努力が必要 • Time Consuming 23 8.考える時間の増加 • 考える時間の増加が増加する行動様式 – 大量の情報を短時間で正確に処理できることから定型 ・繰り返し作業の時間が減尐する – 手順の決まった給与・会計などの事務処理時間が減尐 – その結果,考える時間が増加する生活様式 – 例:翻訳技術の進歩により語学は学習目的から文化、 歴史を理解する手段へ • 知識基盤社会 – 現実が伴っていない – 労働効率が上がらない – 時間が余らない現実 24 視点1情報技術による様式の変化 III.情報技術から生みだされた 新しい行動様式と社会様式 • 新らしい社会様式 • • • • • • 1.効率化 2.管理社会 3.監視社会 4.バーチャルコミュニティ 5.グローバル化 6.情報公開 25 1効率化を優先した社会 • 効率化を優先した社会様式 – 移動手段の高速化 • 生産効率の向上 – 初期のコンピュータ利用 – 定常業務の電算化 – ICTの活用による労働形態の変化 • システム自体の効率化 – 複数の場所に存在する組織全体の効率化 – 物流管理(ロジスティクス) • 組織外との効率化 – 企業-企業 フォーマットの統一・標準化 – 企業-消費者 大規模店舗・レストランの調理 26 効率化の是認 • 効率的で忙しい社会が実現 – 情報の利用は経済的価値で測定 – 毎日が多忙 – 東京-大阪、東京-新潟日帰り出張があたりまえ • 勤務形態の多様化 – 社会の24時間化に対応した行動様式 • 人の評価 – 短時間で多くの仕事ができる – 決められた時間で多くの問題に答える – 新しいことより多くのことに対応できる • 無意識の是認 – 全て短時間で成し遂げることに価値がある 27 2管理された社会様式 • 管理された社会様式 • IDとパスワード – コンピュータ・センサー技術・ネットワーク技術の進歩 – ネットワークで繋がったコンピュータによる情報の送受信 – 銀行の預金の管理 • IDカード – 入室制限 28 3監視される社会様式 • 監視が是認される生活様式 – 監視カメラによる犯罪の抑止 – 生産工程の監視により工程の最適な可動を 実現 – 企業内メールのチェック • プライバシーとのバランスが重要になる – 出席管理(目的外使用の禁止,保存期間・方 法の明示) 29 4 バーチャルコミュニティ • バーチャルコミュニティの出現 – – – – インターネットコミュニティ 地域コミュニティーの衰退 機能コミュニティの増加 新しいコミュニティを基盤とする新しい社会様式 • 場の多様化 – 現実の場の弱体化とネット上の場の増加 – 家庭内に複数のコミュニティー 30 5.グローバル化 • 人や物や金や情報が国境を越えて自由に行き 交う状況 – – – – 瞬時・安価・自由な世界規模のコミュニケーション 国(物理的空間)の制約を越え自由な意見を聞ける 情報通信技術による時空間から解放 機会が均等に与えられる(実力主義) • グローバル化を受け入れざるを得ない社会様式 – 非可逆的変化 2009/4/21 31 6. 情報の公開 • 行政情報(電子情報) –国 – 都道府県 – 市町村 • 企業情報 – 不正競争防止法 – SOX法 32 視点1情報技術による様式の変化 IV.ライフスタイルに与える影響 • • • • • • 1.選択行動 2.画一化 3.思考・情報の断片化 4.皮相的な判断 5.外付け脳 6.ランキング情報の利用 33 1. 選択行動 • 膨大な情報・知識から必要な知識を引き出す – インターネットから答えを得ることを期待する • 自分で判断せず選択した情報をそのまま利用する – 考える必要がない・考えなくても済む – 意思決定は情報の選択 – 自己の存在を実感できない • 思考より選択する行動様式 – 消極的自主性、受身の生活習慣 – そのまま信じることの危険性が大きい – 便利さと安易さ 34 2.画一化 • パターン化・思考の停止・画一化 • 皆が同じものを見ている – 同じ情報を使って行動する – 類似レポートの作成 • 判断は自分考え出す行動様式が必要 – 必要な情報に近いものを選択できる – 判断は情報を基に自分で考える 35 3.思考・情報の断片化 • 情報の文字数 – – – – – 携帯メール 10文字 Twitter 140文字 Webページ100-1000文字 雑誌記事 7000-2000文字 図書情報7-10万文字 • 断片化した情報の利用 – Webページが情報の単位 – 図書・雑誌・新聞情報の利用の減尐 • 総合的な判断能力の欠如、論理的思考が困難 – 体系的に理解する力も必要 36 4. 皮相的な判断 • 基礎知識の不足からうわべだけにとらわれた判断 – 基礎知識が無くても使える情報を見出せる – 判断の放棄,選択が判断 • 関心の高い情報のみを取捨選択する – 社会全体の情報共有ができなくなる • ランキング上位の情報に注目 – 多数であることが個人の判断基準 – バンドワゴン効果の増幅 • bandwagon: パレードの先頭を行く楽隊車 – 勝ち馬効果 • 予測報道で優位な政党が圧勝する 37 5.ランキング情報を重視した ライフスタイル • 上位の情報は信頼性があり価値が高いと 判断 • 自らの価値規準による判断を停止 • 物品やサービスの購入に利用 • 多くの人が同一の行動をとる – 画一化 – レポート作成 2009/4/21 38 6.外付け脳 • 外付け脳 – – – – 必要な情報はWebから得ることができる ネットがあれば知識は最小限ですむ 知識を習得する必要がなくなる 思考の停止(自分で考えて判断することが不要) • 情報を蓄積する生活様式 • 全て使いこなせないが必要なときに取り出す – 取り出せなくなる • ライフログ 39 • • • • 記憶より記録 理解できないものは保存 処理できないものは保存 ビデオカメラ、デジカメ – 撮影後に見る時間がない – 保存情報を活用できない 2009/4/21 40 V. 人間と情報技術の役割 • 情報技術(コンピュータ)が人に優る点 – 演算:情報処理速度 – 演算:処理エラーが無い – 記憶:大量の記憶 • 人間にしかできないこと – – – – 1)目的や意志を持つこと 2)判断すること 3)学習すること・考えること 4)創造すること • コンピュータは処理手順を書けないと作業 ができない 41 人間の能力 • 1)目的・意志を持つこと – 目的を達成する自由意志を持つ – 情報を利用する目的・意志は人しか持てない – 人としての活動 • 2)判断すること – 情報を収集して自分で考え、判断し、目的達成のため に行動すること – ミクロな情報収集とマクロな理解・把握 • 個別の参考情報と体系的な知識 – アナログ的な判断 • 選択の判断ではなく、論理的・段階的に考えることのできる 判断が重要 42 • 3)学習すること – 知識を自分の知識に組み込み新しい知識に 組み立てる • 人工知能の試み – 過去の経験を基に将来の行動を修正する – 同じ間違いは起こさないように行動する • 4)創造すること – 学習した知識や経験から得られた知識を多面 的に組み合わせて新しい知識を創造すること – 新規な法則や理論を考え出すこと – 新しい価値観を創造すること 43 • 5) 価値観を持つこと – 文化に基づく価値観を持つ – 情報技術が文化と一体の側面を持つ言語の壁 を除くことは非常に困難 • 他言語の情報が利用しづらい • 単一言語で情報が足りる – 効率化とは異なる判断基準 44 課題2 • Q1.情報技術から生みだされた行動様式に該当しないものを 選択しなさい – – – – – ①浅く広いコミュニケーション様式 ②効率化優先の生活習慣 ③論理的な思考習慣 ④人間関係の希薄化 ⑤選択的な行動様式 • •Q2.情報技術から生み出された新しい行動&社会様式の弊 害に該当しないものを選択しなさい – – – – – ①パターン化・画一化した行動 ②選択する行動様式 ③効率的で忙しい社会 ④皮相的な判断 ⑤情報価値の希薄化 45 • Q3.情報技術から生みだされた社会の様 式に相当しないものを選択しなさい – – – – – ①生産効率の向上 ②Web情報の利用 ③物流の利便性の向上 ④BtoC ⑤楽曲ファイルの複製 46 参考資料 • 大岩元,他:情報技術と社会、放送大学教 材, 2005 • 中村維男,他:情報技術と社会、東北大学 出版会, 2002 • 斉藤正男,他:ITで人はどうなる、東京電気 大学出版局, 2003 • 遊橋裕泰:ハイブリッド・コミュニティ、日本 経済評論社、2007 • 池田謙一、インターネット・コミュニティと日 常生活、誠信書房、2005 47
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