2001年度 経済統計処理講義内容

時系列データの季節調整
経済データ解析 2007年度
(経済)データの種類
時系列データ
– データを時間の順序に並べたもの
– 将来の予測などに用いる ⇒ (例)2030年の山口県の人口は?
– データの発生間隔により、年次データ、四半期データ、月次デー
タなどがある
※ 四半期データ - 1年を1月~3月、4月~6月、7月~9月、10月~12月の4つに分
けたもので、それぞれを第Ⅰ四半期、第Ⅱ四半期、第Ⅲ四半期、第Ⅳ四半期とい
う。
クロスセクションデータ
– 1時点におけるデータ
– 現状把握に用いる ⇒ (例)都道府県の人口格差はどの程度
か?
– 都道府県別データ、世帯の収入階級別データ、企業の従業員規
模別データなどがある。
中国地方5県の人口
(単位:千人)
1985年
1990年
1995年
2000年
鳥取
島根
岡山
広島
山口
616
795
1917
2819
1602
616
781
1926
2850
1573
615
771
1951
2882
1556
613
762
1951
2879
1528
鳥取県の5年ごとの人口 → 時系列データ
2000年の各県の人口 → クロスセクションデータ
分析目的と利用する時系列データ
実質G D P
(
10億円)
実質G D Pの推移
東証株価(日経225種平均・終値)
(2003年7-9月)
株価指数(円)
550,000
11500
500,000
11000
10500
450,000
10000
400,000
9500
350,000
暦年
9/30
9/23
9/16
9/9
9/2
8/26
8/19
8/12
8/5
7/29
7/22
1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002
7/15
300,000
7/8
7/1
9000
日付
日本経済の長期的な変動を分析したい
⇒ 実質GDPの年次データなどの発生間隔の長いデータを用いる
株式投資をおこなうためにその変動をみたい
⇒ 日経平均株価の日次データなどの発生間隔の短いデータを用
いる
季節性を含むデータ
百貨店売上高の推移
売上高(10 0億円)
340
320
300
280
260
240
19
96
Ⅰ
19
96
Ⅲ
19
97
Ⅰ
19
97
Ⅲ
19
98
Ⅰ
19
98
Ⅲ
19
99
Ⅰ
19
99
Ⅲ
20
00
Ⅰ
20
00
Ⅲ
20
01
Ⅰ
20
01
Ⅲ
220
年・
四半期
毎年同様の変動パターン ⇒ 季節性
四半期データや月次データなどに見られる
季節性を含むデータ
⇒ 前期と単純比較すると誤った結論を導く
季節性を含むデータの簡単な分析
前年同期比
四半期データの場合
yt
100
yt 4
(問題点)平年と異なった値の前後では、前年同期
比はゆがめられる
(例) 1997年の前後
季節性をとり除くための方法
⇒ 季節調整法
⇒ 古典的時系列分析の1つの例
時系列データの成分
時系列データを構成する成分として、次の
4つのものを想定する。
1.トレンド(Trend)
経済成長などの長期的な変動
2.サイクル(Cycle)
景気循環などの周期的な変動
3.季節変動(Seasonal variation)
季節による変動
4.不規則変動(Irregular variation)
上の3つに含まれない変動
1998Ⅲ
1997Ⅰ
トレンド+サイクル
14
12
10
8
6
4
2
0
1998Ⅲ
1997Ⅰ
1995Ⅲ
1994Ⅰ
1992Ⅲ
1991Ⅰ
1989Ⅲ
1988Ⅰ
1986Ⅲ
1985Ⅰ
1983Ⅲ
トレンド
1982Ⅰ
1980Ⅲ
1979Ⅰ
1977Ⅲ
-1.5
1995Ⅲ
0
1976Ⅰ
-1
1994Ⅰ
2
1974Ⅲ
6
1992Ⅲ
8
1973Ⅰ
1
1971Ⅲ
12
1991Ⅰ
1970Ⅰ
1.5
1989Ⅲ
14
1988Ⅰ
10
1986Ⅲ
1998Ⅲ
1997Ⅰ
1995Ⅲ
1994Ⅰ
1992Ⅲ
1991Ⅰ
1989Ⅲ
1988Ⅰ
4
1985Ⅰ
1983Ⅲ
1982Ⅰ
1980Ⅲ
1979Ⅰ
1977Ⅲ
1976Ⅰ
1974Ⅲ
1973Ⅰ
1971Ⅲ
1970Ⅰ
1986Ⅲ
1985Ⅰ
1983Ⅲ
1982Ⅰ
1980Ⅲ
1979Ⅰ
1977Ⅲ
1976Ⅰ
1974Ⅲ
1973Ⅰ
1971Ⅲ
1970Ⅰ
トレンドとサイクル
1990年までの日本の経済データの多くは、周期的な上昇下降をくり
返しながら、右上がりの傾向を示している。(実質GDPのグラフを参
照)
これは、トレンドとサイクルが組み合わさったものと考えられる。
サイクル
0.5
0
-0.5
不規則変動
不規則変動は2種類のものを含んでいる。
1.比較的小さなランダムな変動
2.戦争、天災、制度の変更などによる突発的
な変動
(例) 百貨店売上高
1997年4月に消費税が3%から5%に引き上げられた。
→ この年の第Ⅰ四半期に「駆け込み需要」、第Ⅱ四
半期に「買い控え」の傾向がみられる
これは不規則変動の2番目の種類である。
時系列データの4つの成分は直接観測すること
はできない
どのように組み合わさっているかは分からない
→ モデルを仮定する
(1) 加法モデル yt=Tt+Ct+St+It
(2) 乗法モデル yt=Tt×Ct×St×It
季節調整法 原系列から季節変動Stをとり除くこと。加
法モデルを仮定した場合は yt-St 、乗法モデルを仮定し
た場合には yt/St が季節調整値となる。季節調整値をも
とめるには、
1.トレンドTCtをとり除く
2.不規則変動Itをとり除く
3.このようにしてもとめた季節変動Stを原系列ytからとり除く
yt
SIt
TCt
St
It
yt-St
または
yt/St
トレンドの抽出
系列の大局的な変動をトレンドと考える。
(トレンドとサイクルを分離することは困難なので、この2つをあわせたも
のを、以下ではトレンドとよぶ)
トレンドを抽出する1つの方法として移動平均法を用
いる方法がある。
– 移動平均法はその期と前後k期の値の平均を、1期ずつ
移動しながら平均する手法であり、k=1のとするなら、3項
移動平均である。
– 移動平均には系列の大幅な上下変動を「ならす」効果が
ある。
下の表のようなデータについて3項移動平均をと
ると、変動の幅は小さくなる。
1990
126
1991
106
1992
101
1993
108
111
105
1994
103
104 107.33
1995
111
1996
101
105
106
1997
106
94
原系列と3項移動平均
130
120
110
100
90
80
70
原系列
3項移動平均
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
1998
75
96
1999
107
四半期データの場合、移動平均としては4項移
動平均をとる。
← すべての季節の影響を「ならす」ため
移動平均の項数が偶数の場合、どの期に対応
するデータか判断することが困難である。
→ 中心化系列の利用
年・
四半期
原系列
1996Ⅰ 1996Ⅱ 1996Ⅲ 1996Ⅳ 1997Ⅰ 1997Ⅱ
257
258
263
326
282
245
4項移動平均
中心化系列
276
282.25
279
279.125
280.625
1996年第Ⅲ四半期の中心化系列は前後同数
の期の影響を受けている。
不規則変動の除去
原系列からトレンドをとり除いたものは、季節変
動と不規則変動の和となる。(SItとあらわす)
この系列SItから不規則変動を除去するための方
法として、この系列を各期ごとに集め、平均する
ことが考えられる。
さらに、この平均値の合計が0になるように調整
したものが季節変動となる。
季節調整値
原系列から季節変動を除いた系列が季節
調整値(または季節調整済み系列)となる。
季節調整値を用いれば、前期との比較を
おこなうことができる。
340
320
百貨店売上高
季節調整値
300
280
260
年・
四半期
20
01
Ⅲ
20
01
Ⅰ
20
00
Ⅲ
20
00
Ⅰ
19
99
Ⅲ
19
99
Ⅰ
19
98
Ⅲ
19
98
Ⅰ
19
97
Ⅲ
19
97
Ⅰ
19
96
Ⅲ
240
220
19
96
Ⅰ
売上高(100億円)
百貨店売上高の推移