災害と気象学の関係に関する考察 災害との出会いの原点(院生時代) バングラデシュのキラーサイクロン(1991) 阪神淡路大震災(1995) 気象学にとっての災害、災害にとっての気象学 災害をもたらす大気現象はしばしば興味深い気象学 や災害科学の題材となる 旱魃や大雨→大規模な大気の流れの研究 集中豪雨→メソスケール対流雲の自己組織化 気象学研究は果たして防災に役に立つのか? バングラデシュのサイクロンと阪神淡路大震災から考える サイクロンとは 熱帯低気圧のうち、北インド洋などで発生し、基準ま で発達したものをサイクロンと呼ぶ 台風やハリケーンのなかま Hayashi (2008) 赤道付近の暖かい海で発生する →暖かい海面から蒸発する水蒸気が重要 赤道上では発生しない →コリオリの力による回転が重要 一般気象学第2版 北西太平洋の熱帯低気圧のうち、域内の最大風 速がある基準より強くなったもの=台風 日本の気象庁の台風 風速34ノット=17m/s (10分間の平均風速) WMOのtyphoon 風速64ノット (1分間の平均風速) 気象科学事典 北半球では左回りの渦となる(コリオリ力) 2004年8月の雲動画 デジタル台風:雲画像動画 アーカイブ 甚大な被害 寺尾 (2008) 最大の原因は高潮災害 桂ら (1992) 高潮高の推定計算結果(Chittagong) 5mの高潮 満潮時と重なる 桂ら (1992) Kutubdia 高潮高 3.8m Hatia Hatia 高潮高 4.7m Kutubdia 桂ら (1992) 台風の進行方向の右側と左側の風 危険半円(右側)と船 吹き寄せ効果 熱帯低気圧は中心気圧が低く、海面が上昇する 1hPaの気圧低下につき約1cmの割合 吸い上げ効果 桂ら (1992) 伊勢湾台風の強さと コース、地形の特徴 から、名古屋付近に おける高潮被害が 激甚化した。 危険半円 吸い上げ効果 宮澤(1999) Kutubdia 高潮高 3.8m 死亡率 18.9% 19,133/101,118 Hatia Hatia 高潮高 4.7m 死亡率 1.0% Kutubdia 2,956/300,819 参考:名古屋市南区(伊勢湾台風) 死亡率 1.0% 1,417/146,500 桂ら (1992) 自然的要因だけに解消され ない被害状況の違い 高潮の規模とリスクの関係 地域による大きな差異 何がこの違いを作ったか 災害拡大の要因は? 桂ら (1992) Kutubdia 前回の高潮被害が1897年 重点建設地域ではなかった Hatia 12基のシェルター完成 対策の意義は明白 サイクロンの襲来は予測していた(桂ら, 1992) インドの人工衛星からの雲画像は得られなかったが、 日本や米国の雲画像は入手していて、サイクロンが 迫っていることは認識していた。 海岸沿いのレーダーシステムは稼働していて、データ がダッカに転送できない問題はありつつも、サイクロ ンの襲来は認識していた。 今必要なことは気象学の発展ではない? 原因はむしろ社会の防災体制にあった シェルターの問題・情報伝達の問題 その後のバングラデシュ サイクロンSidrの襲来(2007.11) 4000人以上の犠牲者・・・だが、 バングラデシュの被害を日本の台風被害のグラ フに重ねてみる 「バングラデシュもようやく伊勢 湾台風並みになったなぁ」 ある南アジア気象研究者の言葉 桂ら (1992) 2008年2月に運用開始 今回のサイクロンの襲来に は間に合わなかった. しかし,サイクロンシェル ターとして機能し、500名 が避難した. Hayashi, 2008 地震被害と「役立つ気象学」 天気予報の威力を感じた震災直後の避難生活 雨の降るタイミングをあらかじめ予測し、被災者に雨 対策を呼びかける天気予報 復興へ向かう街の中で役に立った気象学 エル・ニーニョ/ラ・ ニーニャと台風 台風の発生位置や 強さ・コースが変わっ てくる 暖 →エル・ニーニョ/ ラ・ニーニャの予測 は日本付近の台風 予測につながる 冷 Wang and Chan (2002)
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