スライド タイトルなし

感染症
様々な感染症
食中毒
発生状況 25,000~45,000人/年
近年はノロウイルスが多い
細菌性食中毒
毒素型食中毒・・・起因菌が生産した毒素による中毒
潜伏期間が短い(数時間~半日)
感染型食中毒・・・摂取した飲食物を介して起因菌が宿主中で増殖
下痢,発熱,嘔吐など,潜伏期間は12~24時間以上
ウイルス性食中毒
ノロウイルス 生カキ等が感染源,冬季に多発
ロタウイルス 小児胃腸炎
食中毒
微生物によるアレルギー様食中毒
ヒスチジン脱炭酸酵素含有菌・・・モルガネラなど
ヒスチジン → ヒスタミン
摂食後30分~1時間で発症
顔面紅潮,蕁麻疹,頭痛,発熱
生鮮食品由来寄生虫症
アニサキス
海産魚介類中に生息 → 生食により胃・腸壁侵入
トキソプラズマ
ブタ,ヒツジの生肉 → 多くは不顕性 → 垂直感染
肺吸虫
淡水産のカニなど → 呼吸器症状
毒素型食中毒
黄色ブドウ球菌
耐熱性の腸管毒素(エンテロトキシン) → 激しい嘔吐
ボツリヌス菌・・・偏性嫌気性芽胞形成菌
ボツリヌス毒素 → 弛緩性麻痺を起こす神経毒(致死率30%)
嫌気環境食品中で増殖
カラシレンコン,キャビア瓶詰め,イズシ(飯寿司)
感染型食中毒
カンピロバクター
家畜の腸内細菌,加熱不十分の肉(特に鶏肉)から感染
細菌性食中毒では最多
サルモネラ
ニワトリ,ネズミなどの腸内細菌,生卵,不衛生な食品などから感染
ウエルシュ菌(ガス壊疽菌)
偏性嫌気性芽胞形成菌
土壌や動物の腸管 → 加熱食品の放冷過程で発芽
学校給食などを介する大規模発生
感染型食中毒
腸炎ビブリオ
海産性魚介類に生息,保存の悪い魚介類を生食して感染
耐熱性溶血毒素(TDH)
腸管出血性大腸菌(O157:H7など)
ウシなどの家畜の腸内細菌,汚染された食品から感染
Vero毒素(志賀毒素) → 溶血性尿毒症症候群
セレウス菌
毒素型・・・セレウリド(耐熱性嘔吐毒素)
感染型・・・腸管内で増殖しエンテロトキシン産生 → 下痢
敗血症
大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,Klebsiellaなど
体内の感染巣 → 血中に移行し,全身感染症を起こしている状態
悪寒戦慄を伴う高熱,頻脈,呼吸促迫,乏尿
血圧低下,血小板減少
敗血症性ショック ← エンドトキシン
極めて致命率が高い → 強力な抗菌薬による迅速な治療
中枢神経感染症
細菌性髄膜炎
髄膜炎菌,インフルエンザ菌,肺炎球菌など
頭痛,発熱,嘔吐,項部硬直 → 意識障害,痙攣
無菌性髄膜炎
コクサッキーウイルスB,エコーウイルスなど
頭痛,発熱,嘔吐 → 予後良好
脳炎
日本脳炎ウイルス,単純ヘルペスウイルス
失語などの局所神経症状
呼吸器感染症
上気道感染症
咽頭炎・・・インフルエンザウイルス,アデノウイルス,化膿レンサ球菌
のどの痛み,咽頭粘膜の発赤と腫脹
扁桃炎・・・化膿レンサ球菌,黄色ブドウ球菌,インフルエンザ菌
副鼻腔炎・・・インフルエンザ菌,肺炎球菌,モラクセラ
(中耳炎)・・・インフルエンザ菌,肺炎球菌,モラクセラ
急性上気道炎(かぜ症候群)・・・ライノウイルス,コロナウイルス
呼吸器感染症
下気道感染症
気管支炎・・・インフルエンザウイルス,アデノウイルス
細気管支炎・・・RSウイルス
肺炎(定型肺炎)・・・肺炎球菌,インフルエンザ菌,モラクセラ,レジオネラ
悪寒,戦慄,膿性痰,身体症状(頭痛,食欲不振,吐き気,下痢,嘔吐)
肺炎(異型肺炎)・・・マイコプラズマ,クラミジア
症状の進行は遅い
肺結核・・・結核菌
消化器感染症
消化性潰瘍・・・ピロリ菌
感染性胃腸炎・・・ノロウイルス(冬),ロタウイルス(春)
食中毒(夏)・・・サルモネラ,腸炎ビブリオ,ボツリヌス菌
虫垂炎・・・大腸菌など
腹膜炎・・・黄色ブドウ球菌など
尿路感染症
症状:排尿痛,頻尿,尿意切迫感,下腹部痛,残尿感,血尿
膀胱炎・・・大腸菌,ブドウ球菌
発熱を伴わない
尿道炎・・・淋菌,クラミジア
急性腎盂腎炎・・・大腸菌
悪寒,戦慄,高熱などの全身症状
性感染症
Sexually Transmitted Disease (STD)
性器クラミジア
男性1位,女性1位(患者数)
淋病
男性2位,女性4位
性器ヘルペス
男性3位,女性2位
尖圭コンジローマ
男性4位,女性3位
ヒトパピローマウイルス
梅毒・・・梅毒トレポネーマ
膣カンジダ症
AIDS・・・HIV
膣トリコモナス症
母子感染症
母子感染経路
経胎盤感染,産道感染,母乳感染
TORCH症候群・・・新生児に母子感染し,先天異常
トキソプラズマ(T)・・・先天性トキソプラズマ症(脳障害)
風疹(R)・・・先天性風疹症候群(奇形)
サイトメガロウイルス(C)・・・先天性巨細胞封入体症(知能・発育障害)
単純ヘルペスウイルス(H)・・・新生児ヘルペス(脳炎)
母子感染の予防と治療
先天性風疹症候群・・・予防接種
リスク感染症の検査 → 治療,感染経路の遮断
HIV,HBV(産道感染) → 帝王切開
HTLV1(母乳感染) → 人工栄養哺育
眼感染症
ウイルス性結膜炎・・・アデノウイルス,エンテロウイルス
感染力が強く,治癒に日数を要する
細菌性結膜炎・・・黄色ブドウ球菌,肺炎球菌,インフルエンザ菌,淋菌
麦粒腫・・・黄色ブドウ球菌,表皮ブドウ球菌
日和見感染症
日和見感染症・・・健常者に対しては通常病原性を持たない微生物が,
生体の免疫抵抗性が低下した易感染性宿主に対して引き起こす感染症
抗がん剤,副腎皮質ホルモン,免疫抑制薬投与
がん患者,糖尿病患者 → 免疫力低下
院内感染症
入院患者には易感染性宿主が多く,日和見感染症を起こしやすい
菌交代症・・・菌交代現象に伴う感染症
菌交代現象
抗菌薬長期投与 → 常在菌減少 → 内在または外来の非感受性菌増殖
日和見感染による菌交代症
薬剤耐性ブドウ球菌,薬剤耐性大腸菌
緑膿菌,放線菌,Proteus,Serratia,真菌など
院内感染症
市中感染・・・医療機関外での感染
院内感染・・・病院内で起こる感染
院内感染の発生要因
感染源(患者),感染経路(患者の密集,医療業務),易感染性宿主(患者)
院内感染を起こす微生物
日和見感染菌が多い → 易感染性宿主に対して重篤な感染症
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)・・・多剤耐性菌
ブドウ球菌,腸球菌,大腸菌,肺炎桿菌,緑膿菌,エンテロバクター,セラチア
菌交代症 ← 抗菌薬の長期投与
カンジダによる真菌症
血液媒介性ウイルス感染症
AIDS,B型肝炎
院内感染防止対策
院内感染対策
ICT(infection control team,感染制御専門家チーム)
感染制御専門医師,感染制御専門薬剤師,感染制御専門看護師
1.院内感染の実態把握
2.職員教育 → 予防消毒の徹底
3.原因患者の隔離
4.抗菌薬の適正使用 → 薬剤耐性菌の発生防止
5.職員に対する細菌学的定期検査
標準予防策
感染の有無にかかわらず,患者の汗を除くすべての湿性物質
(尿,痰,便,膿)と,さらに血液,体液は感染の恐れがある
手洗い,手袋,エプロンの着用
感染経路別予防策
空気(飛沫核)感染・・・結核,麻疹,水痘など
患者を陰圧室に収容
医療従事者はN95マスクを装着
飛沫感染・・・インフルエンザ,マイコプラズマなど
患者同士を1 m以上離して収容
医療従事者はサージカルマスクを装着
接触感染・・・MRSA,多剤耐性緑膿菌,腸管出血性大腸菌など
体温計,聴診器,血圧計などを患者に専用化
医療従事者は手袋,エプロンを装着
感染性廃棄物の処理
感染性廃棄物・・・医療に関連する病原体が付着している可能性のある廃棄物
血液,血清,血液製剤が付着した器物 → 医療用手袋など
臨床検査試料
使用済みの注射器,点滴セット
手術用ハサミ,メス
感染防止措置
他の廃棄物と区別して滅菌,焼却,専門処理業者に委託
特別管理産業廃棄物管理責任者(病院)
感染症の診断
検体の採取と検査
検体の採取・・・病原体を含む組織や排泄物を無菌的に採取
光学顕微鏡による検査
グラム染色・・・(グラム陽性・陰性)細菌の判別
抗酸性染色・・・抗酸性菌の判別
異染顆粒染色・・・ジフテリア菌の同定
芽胞染色・・・芽胞形成菌の判別
分離培養検査
普通寒天培地,選択培地
純培養とその保存
分離培養 → 単一のコロニー(集落) → 同定
保存・・・スラント(斜面培地),超低温(-80℃ or 液体窒素中)
細菌の同定
コロニーの性状
大きさ,形,色,発育条件(好気~嫌気)
菌の形態
大きさ,形,配列,鞭毛・芽胞・莢膜形成の有無
生化学的性状
栄養要求性,糖・アミノ酸の分解能,酵素産生能
毒素産生性
動物や培養細胞に対する毒性
遺伝学的性状
GC含率,DNA相同性,PCR → 16S rRNA配列
免疫学的性状
分離菌の抗原性
生化学試験による細菌の同定
酸素の利用性
好気性菌 or 嫌気性菌 OF試験
溶血性
α(不完全溶血)β(完全溶血)γ(非溶血) ← 血液寒天培地
色素産生性
コロニー色素,可溶性色素 ← 固形培地
運動性
半流動高層培地,懸滴標本の顕微鏡観察
糖分解性
糖 → 酸(指示薬)・ガスの産生
硝酸塩還元性
硝酸カリウム → 亜硝酸(α-ナフチルアミンによる赤色沈殿)
生化学試験による細菌の同定
メチルレッド試験
グルコース → 酸 (メチルレッド:黄 → 赤)
Voges-Proskauer試験(V-P試験)
グルコース → アセトイン (α-ナフトール/アルカリで赤色)
タンパク質,アミノ酸の分解性:
ゼラチン液化,アミノ酸脱炭酸,アミノ酸脱アミノ,インドール産生
フェニルアラニン → フェニルピルビン酸
トリプトファン → インドールピルビン酸
トリプトファン → インドール
クエン酸利用性
クエン酸消費 → 培地のアルカリ化 (BTB指示薬:緑 → 青)
IMViCテスト・・・腸内細菌の同定
インドール産生,メチルレッド試験,Voges-Proskauer試験,クエン酸利用性
生化学試験による細菌の同定
硫化水素産生
硫酸第1鉄 → 硫化鉄(黒)
尿素分解能
尿素 → アンモニア → アルカリ化 (フェノールレッド指示薬:黄 → 赤)
カタラーゼ試験
過酸化水素 → 酸素の泡
オキシダーゼ試験
インドフェノールオキシダーゼ(ナイセリア)
シトクロムcオキシダーゼ(緑膿菌やビブリオ)
毒素産生能
細胞または動物に対する毒性 ← 特異抗体による中和
免疫学的手法による細菌の同定
莢膜膨化試験・・・肺炎球菌,インフルエンザ菌,髄膜炎菌
莢膜の膨張 ← 特異的抗血清
スライド凝集試験・・・赤痢菌,サルモネラなど
浮遊菌の凝集 ← 特異的抗血清
ラテックス凝集試験・・・大腸菌など
浮遊菌の凝集 ← 特異抗体結合ラテックス
免疫磁気ビーズ法
抗原保有菌の濃縮 ← 特異的抗体結合磁性ビーズ
血清型(serovar)分類も同様の手法で行われる
血清診断
患者血清中の病原体特異抗体の検出
抗原(菌体タンパク質など)を固定化し,免疫学的検出を行う
酵素標識抗体免疫測定法(ELISA)
ペルオキシダーゼ標識抗体 → ベンチジン発色
蛍光抗体法(IFA)
蛍光色素標識抗体で検出
ウエスタンブロット法
タンパク質を電気泳動後,標識抗体で検出
受身(間接)凝集反応
抗原結合ラテックスの凝集により検出
補体結合反応
抗原-抗体結合物による補体消費を溶血抑制で検出
病原体遺伝子,病原体抗原の検出
遺伝子増幅法
病原体特異的遺伝子のPCRによる増幅
ノロウイルス遺伝子
腸管出血性大腸菌のVero毒素遺伝子
抗原検出法
イムノクロマト法・・・インフルエンザウイルス,ピロリ菌など
標識抗体(反応抗体)-抗原
↓試験紙上を移動
捕捉抗体で濃縮 → 色付きのライン
滅菌と消毒
滅菌と消毒
滅菌・・・すべての微生物を完全に滅殺または除去すること
消毒・・・有害な微生物または目的とする対象微生物を死滅あるいは不活化し,
感染力のある病原体数を減少させること
不活化・・・ウイルスの感染力や毒素の毒力を失わせること
除菌・・・液体,気体中の微生物をフィルターなどで取り除くこと
防腐・・・微生物の増殖を阻害し,腐敗や発酵による対象物の変質を防ぐこと
防腐剤,pHの低下,塩濃度の上昇,真空パック,冷凍
殺菌・・・微生物を死滅させること(程度は問わない)
滅菌
滅菌の無菌性保証水準 → 10-6以下
100万回1回の滅菌不良
滅菌の保証
滅菌指標体(芽胞など)をともに滅菌し,その滅菌を確認
D値・・・生存する微生物数を1/10に減少させる滅菌時間
D値が小さいほど滅菌力が強い
物理的方法による滅菌
最終滅菌法・・・加熱滅菌法,照射滅菌法,ガス滅菌法
被滅菌物が最終容器または包装に収まった状態で滅菌
濾過滅菌法・・・無菌フィルターを通過させ微生物を除去
加熱滅菌法
火炎滅菌法・・・ガスバーナーの火炎中で数秒間加熱焼却
白金耳,白金線の滅菌
乾熱滅菌法・・・170~180℃,1時間(基準)
金属,ガラス器具,ガーゼ,綿,紙製品
LPSの不活化(250℃,30分)
高圧蒸気滅菌法・・・1.1 kg/cm2(1気圧)の加圧,121℃,15分
オートクレーブ,耐圧配管による高圧蒸気滅菌
最も一般的かつ確実な滅菌法
液体(培地など),耐熱性器具
物理的方法による消毒
加熱消毒法
流通蒸気消毒(常圧蒸気消毒)
水蒸気を流通させ,100℃,30~60分加熱
煮沸消毒
沸騰水中で器具を煮沸
15分間の煮沸 → 栄養型細菌死滅,芽胞生存
間歇消毒(滅菌) 完全な滅菌は達成されない可能性が高い
100℃で栄養型細菌死滅
↓ 室温で芽胞を発芽
100℃で栄養型細菌死滅
0.5~1時間/日,3~5日
低温殺菌・・・牛乳の殺菌
低温長時間法:62~65℃,30分
高温短時間法:71~75℃,15秒
超高温法:120~150℃,1~3秒
濾過による滅菌
濾過法
0.2~0.45 mmのメンブランフィルターを用いて濾過
HEPA(high efficiency particular air)フィルターによる吸排気除菌
0.3 mm以上の粒子を99.97%以上捕集
N95微粒子用マスク・・・結核菌感染予防用
0.3 mm以上の粒子を95%以上捕集
超濾過法
逆浸透法・・・逆浸透膜による浸透濾過
限外濾過法・・・限外濾過膜による濾過
ウイルス,エンドトキシンまで除去可能 → 滅菌水の製造
十字流濾過器・・・水流に対して直角方向に濾過する装置
濾過法による目詰まりの改善
照射による滅菌・消毒
放射線(ガンマ線)滅菌・・・ガンマ線,電子線,X線などによる滅菌
密封包装された物品,熱に不安定な物品の滅菌
プラスチック製のディスポーザブル器具(注射器など)
高周波滅菌・・・2,450 MHzの高周波照射で発生した熱による滅菌
アンプル充填された熱安定医薬品
紫外線消毒・・・254 nmの紫外線による消毒
DNAのピリミジンダイマー形成 → 殺菌
透過性なし
クリーンルーム,クリーンベンチ内,水の消毒
化学的方法による滅菌
エチレンオキシドガス(EOG)滅菌
生体高分子をアルキル化
芽胞,ポリエチレン包装品も滅菌可能
ガスの毒性等の問題からガンマ線滅菌が主流に
プラズマ滅菌
高真空状態下で過酸化水素噴霧
高周波やマイクロ波でプラズマ生成
45℃,75分処理
高真空に耐える物品
滅菌時間が短く,吸排気等の設備不要
消毒薬の作用と条件
消毒薬の作用
微生物を構成するタンパク質や核酸に直接作用し,不可逆的変性変化を起こす
微生物の細胞膜や細胞壁構造を破壊する
微生物の代謝障害を起こし,また微生物菌体への直接作用で殺菌する
外用であり,体内に服用した場合には極めて高い毒性を示す
消毒薬の条件
芽胞やウイルスを含む全ての病原体を滅殺できる
短時間で効果を発現し,持続性がある
血液や汚物などの有機物の混入により効果が低下しない
人体に対して毒性,刺激性が低い
化学的に安定である
器具等を腐食させたり,変質させたりしない
廃棄する場合に環境汚染を起こさない
理想的な消毒薬は存在しない → 用途に応じて使い分ける
消毒薬の効力
消毒薬の効力
3要素(濃度,温度,時間)をはじめとする様々な状況に依存する
作用濃度
濃度が高ければ殺菌力も高まるが,副作用も強くなる
作用温度
通常の消毒薬の殺菌力は,10℃高まるごとに2~3倍になる
作用時間
濃度と温度が低いほど長い作用時間を要する
有機物
一般に有機物,特に脂質やタンパク質が共存すると殺菌力が低下する
消毒薬の効力評価法
石炭酸係数・・・フェノールの殺菌力(10分間)に対する相対値
チフス菌,黄色ブドウ球菌などを使用
最小発育阻止濃度(MIC)
段階希釈した消毒液を用いた菌の増殖検定
消毒薬の選択基準
高水準の消毒液・・・アルデヒド系,過酢酸
芽胞を含むすべての微生物に殺菌的に作用し,滅菌に近い効果
毒性は強い → 生体には使用してはならない
低水準の消毒液・・・界面活性剤系,クロルヘキシジン
芽胞,結核菌,緑膿菌,エンベロープのないウイルスに無効
強い殺菌力は期待できない
生体に対する安全性は高い
中水準の消毒液・・・アルコール系,次亜塩素酸ナトリウム,
ポビドンヨード,クレゾール石けんなど
比較的殺菌力は強い
生体用,器具用,排泄物用など使い分けが要求される
消毒薬の種類と性質
ハロゲン化物類
ヨードホル・・・ヨウ素を非イオン性界面活性剤などの担体に結合させ可溶化したもの
ポビドンヨード
多くの微生物に有効
N
O xI
粘膜への使用可能
n
咽頭,口腔内の感染症,創傷の消毒
ヨードチンキ・・・ヨウ素をヨウ化カリウムとの錯体として70%エタノール溶液としたもの
刺激性 → 皮膚,創傷のない手術部位の消毒
ヨードホルム(CHI3)
組織と接触してヨウ素を遊離 皮膚創面の消毒
ハロゲン化物類
塩素ガス Cl2
Cl2 + H2O → HCl + HOCl → 活性酸素が殺菌力
水道水の消毒
サラシ粉 CaCl2・Ca(OCl)2・2H2O (カルキ)
水酸化カルシウム末に塩素ガスを吸収させたもの
井戸水,プール,下水などの消毒
次亜塩素酸ナトリウム NaOCl
刺激性が強い → 器具,環境の消毒
塩素ガスとして蒸発 → 低残留性消毒薬 → 食器,哺乳瓶
ハロゲン化物類
Cl
塩素化イソシアヌル酸
錠剤,顆粒剤
プール,下水,床汚染血液の消毒
クロラミンT
水溶液中で徐々に塩素を放出
刺激性,金属腐食性少ない
粘膜,創傷,皮膚,器具の消毒
強酸性電解水
食塩水の電気分解 → 塩素含有強酸性電解水
手指,内視鏡の消毒
O
Cl
N
N
O
N
Cl
O
トリクロロイソシアヌル酸
CH3
SO2
Cl
N
Na
クロラミンT
酸化剤
過酸化水素 H2O2
OH・によるタンパク質変性,脂質過酸化
過酢酸 CH3CO3H
強い酸化作用 → 芽胞まで殺菌
人体に使用できない,吸入毒性あり
アルコール類
エタノール C2H5OH
70~80%で最大殺菌力
注射部位や器具の消毒
イソプロピルアルコール (CH3)2CHOH
50~70%水溶液
エタノールより殺菌効果,刺激性,毒性が強い
複合消毒薬
ベンザルコニウム塩化物 + 60%エタノール
クロルヘキシジン + 60%エタノール
擦拭法(rubbing法)
まぶしつける → アルコール蒸散(手洗い不要)
アルデヒド類
ホルムアルデヒド HCHO
タンパク質,核酸と結合し,変性させる
ホルマリン(35~38%ホルムアルデヒド水溶液)
芽胞やウイルスに有効
ホルムアルデヒドガス → 密閉して室内消毒
ホルマリンアルコール → 手術器具,皮膚の消毒
グルタールアルデヒド(グルタラール) OHC(CH2)3CHO
タンパク質のアルキル化
結核菌,芽胞,HBV,HIVを不活化
人体には使用できない,吸入毒性あり
内視鏡,麻酔器具,手術器具などの消毒
フェノール類
フェノール C6H5OH
タンパク質変性,細胞質膜損傷
有機物が共存しても殺菌力の低下が少ない
排泄物,汚物の消毒
組織腐食性が強い → 人体に使用できない
クレゾール C6H4(CH3)OH
クレゾール石けん液
手指の消毒(1~2%),喀痰,糞便の消毒(3%)
界面活性剤
陽イオン界面活性剤(逆性石けん)
ベンザルコニウム塩化物,ベンゼトニウム塩化物
緑膿菌に対する殺菌力は弱い
芽胞,結核菌,大部分のウイルスに無効
無色,無臭 刺激性,毒性低い
有機物,リン酸塩共存下で効力激減
膀胱,尿道,膣洗浄,手術部位の粘膜(0.01~0.05%)
手指,皮膚(0.05~0.1%)
H3C
CH3
N+
ベンザルコニウム塩化物
CH3
Cl-
H3C
CH3
N+
Cl-
O
O
ベンゼトニウム塩化物
CH3
H3C
CH
CH3 CH3 3
界面活性剤
両性界面活性剤(両性石けん)
塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン,塩酸アルキルジアミノエチルグリシン
一般細菌,真菌に有効
結核菌に対する効果は弱い
芽胞,ウイルスに無効
器具,環境の消毒
低毒性だが脱脂作用あり
H
N
H3C
N
COOH HCl
H
N
H3C
塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン
H3C
N
H
H
N
N
H
塩酸アルキルジアミノエチルグリシン
COOH HCl
ビグアナイド系化合物
クロルヘキシジン
グルコン酸塩として使用
タンパク質,核酸の変性,細胞質膜の損傷
緑膿菌には効果が弱い
抗酸菌,芽胞,真菌,ウイルスに無効
創傷の消毒(0.05%)
手術部位,医療器具の消毒(0.5~1%の70%エタノール溶液)
低毒性,低刺激性
Cl
NH
N
H
NH
N
H
N
H
H
N
H
N
NH
H
N
NH
Cl
消毒薬の特徴
ポビドンヨード
次亜塩素酸ナトリウム
消毒用エタノール
グルタールアルデヒド
クレゾール石けん
塩化ベンザルコニウム
アルキルポリアミノエチルグリシン
クロルヘキシジン
一般
細菌
結核
菌
芽胞
ウイ
ルス
生体
金属
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
○
○
○
×
△
×
△
△
×
○
×
×
×
×
△
○
△
○
×
×
×
×
○
×
○
×
○
○
△
○
×
×
○
○
○
○
○
○
バイオセーフティ
バイオセーフティ
バイオハザード(生物災害)
研究に使用された病原微生物等がヒトに感染したり,
環境汚染によって人体に災害が生じること
バイオセーフティ(生物災害管理)
バイオハザードが起こらないように,研究における安全管理を行うこと
広義:院内感染や国際感染症による災害防止対策なども含める
物理的封じ込め
病原微生物等の実験室外への逸脱や感染事故を防ぐため,
実験室内に物理的に微生物を封じ込める方策がとられる
バイオセーフティーレベル(BSL)
レベル
分類基準
レベル1
個体及び地域社
会に対する危険
度は低い
レベル2
個体に対する危
険性は中等度だ
が, 地域社会に
対する危険性は
低い
主な対応・措置
代表例
ヒトに疾患を起こす, あるいは動
物に獣医学的に重要な疾患を起
こす可能性のない微生物
通常の微生物学実験室
を用い, 特別に隔離す
る必要はない。また一
枯草菌, 乳酸桿菌など
般外来者の立ち入りを
禁止する必要もない。
ヒトあるいは動物に病原性を有
するが, 実験室職員, 地域社会,
家畜, 環境等に対して,重大な災
害とならない病原体
実験室内で曝露されると重篤な
感染を起こす可能性はあるが,
有効な治療法,予防法があり, 伝
播の可能性は低い病原体
通常の微生物実験室を
限定した上で用いる。エ
アロゾルの発生の可能
性のある作業は, 生物
学的安全キャビネットの
内で実施する。実験中
は一般外来者の立ち入
りを禁止する。
黄色ブドウ球菌,緑膿菌,
ネズミチフス菌,アデノ
ウイルス,ノロウイルス,
ヒトパピローマウイルス,
サイトメガロウイルス, 単
純ヘルペスウイルス, 麻
疹ウイルス, ムンプスウ
イルスなど
バイオセーフティーレベル
ヒトに感染する
と重篤な疾病を
個体に対する
起こすが, 他の
危険性は高い
個体への伝播
が, 地域社会に
の可能性は低
対する危険性
い病原体
は低い
立ち入り制限された廊下, 二重ドアとエアロックにより外
部と隔離された実験室を用いる。床・壁・天井や作業台
は洗浄・消毒可能なようにする。排気系の調整を行な
い, 常時外部から実験室内に空気の流入を行なう。排
気は高性能フィルターにより除菌してから大気中に放
出する。実験は生物学用安全キャビネット, または陰圧
アイソレーターの中で行なう。作業名簿に記載された者
以外の立ち入りは禁止する。
ヒトあるいは動
物に重篤な疾
病を起こし, 罹
レベル4
患者より他の個
体への伝播が,
個人に対しても
直接または間
地域社会に対
接的に起こりや
しても危険性が
すい病原体
高い
有効な治療法
および予防法
がない病原体
実験は, 独立した専用の建物を使用し, 隔離域とそれを
取り囲むサポート域を設ける. 立ち入り制限された廊下,
二重ドアとエアロックにより外部と隔離された実験室を
用いる。床・壁・天井は耐水性かつ気密性のものを用
エボラウイルス,
い, 作業台と共に洗浄・消毒可能なようにする。常時高 マールブルグウイ
性能フィルターを通して外部から実験室内に空気の流 ルス, ラッサウイル
入を行なう。排気は二重高性能フィルターにより除菌し ス, クリミア・コンゴ
てから大気中に放出する. 排水や廃固形物は全て加熱 出血熱ウイルス,
滅菌(290℃)し, 冷却後に一般下水へ放出する。実験は 痘瘡ウイルスなど
完全機密型の生物学用安全キャビネットの中で行なう
か, またはバイオハザード用宇宙服を身につけて行なう。
作業名簿に記載された者以外の立ち入りは禁止する。
レベル3
チフス菌, コレラ菌,
ペスト菌, 炭疽菌,
日本脳炎ウイルス,
狂犬病ウイルス, ク
ロイツフェルト・ヤコ
ブ病プリオン, HIV
など