コアレクチャー 脳卒中 勤医協中央病院 総合診療センター 臺野 巧 [email protected] 脳卒中の警告症状 • 顔面、上肢、下肢のとくに片側の突然の脱力 や感覚障害 • 突然の錯乱、発語障害、理解困難 – 失語に気づくことができるか? • 突然の片目および両目の視覚障害 – 一過性黒内障、同名半盲に気づくか? • 突然の歩行困難、めまい、平衡感覚障害、協 調運動障害 • 突然の原因不明の激しい頭痛 – くも膜下出血 脳卒中評価ツール(院外用) • シンシナティプレホスピタル脳卒中スケール (CPSS) – 顔面下垂、上肢の脱力、言語障害を評価 – 異常所見一つ→感度59% 特異度89% • ロサンゼルスプレホスピタル脳卒中スクリーン (LAPSS) – 意識レベルの変化あり・痙攣歴・低血糖を除外し、顔 面・握力・上肢筋力の左右差 – 感度93% 特異度97% 救急車が到着したら • 初期評価 • 何を評価するか? – ABCDEアプローチ 初期評価 • • • • A:気道 B:呼吸→必要があれば補助、酸素投与 C:循環→ベースラインのバイタルサイン、心電図の評価 D:dysfunction of CNS→静脈路確保と血糖 測定、頭部CT検査 • E:全身の露出 心電図、静脈路確保、血糖測定は頭部CT検査に行く前に行っ ておくこと! 頭部CTは、救急車到着後25分以内に終わらせるべき! 問診で大切なこと • 発症時刻を明確にする • 発症時刻が明確に出来ないときは、最後に 正常だったことが確認されている時刻と発見 時刻を明確にして、カルテに記載しておくこと。 CTを撮らずにMRIを撮るのは? • どのような患者はCTではなくMRIを撮るの か? – 急がなくても良い患者! – 発症からある程度時間が経過している。(=急性 期のTPA全身投与や選択的局所線溶療法の適 応にならない) • 3時間(全身投与)から6時間(局所投与) – 症状が安定している患者 CTを撮影した後 • 出血あり – 神経内科医または脳神経外科医にコンサルト – 当院では基本的に脳神経外科のある施設への搬送(臺 野がいればコンサルト) • 出血なし – 線溶療法の除外基準のチェック – 神経学的検査を再度試行(もっと詳しく、NIHSS など) – 当院は線溶療法が行える施設ではない(施設基準あり)。 したがって、最初の段階で救急車を受け入れるかどうか の判断が必要である。→指導医との相談 acute stroke • hemorrhagic stroke – intracranial hemorrhage – subarachnoid hemorrhage • ischemic stroke SAHでは、巣症状がないのが特徴 急性期の脳梗塞をCTでは診断できないと考えるべき Acute stroke differential diagnosis – – – – – Migraine Intracerebral hemorrhage Head trauma Brain tumor Todd's palsy (paresis, aphasia, neglect, etc. after a seizure episode) – Functional deficit (conversion reaction) – Systemic infection – Toxic-metabolic disturbances (hypoglycemia, acute renal failure, hepatic insufficiency, exogenous drug intoxication) 意識障害の鑑別 • AIUEO TIPSを覚えているならそれで十分。 • 当院では頭蓋内疾患だと他院搬送になるの で迅速な区別が必要。 • ⇒血圧をもとに頭蓋内 or 全身性かの区別 が出来る分類が有用 収縮期血圧>160mmHgのときは、 ほとんどが頭蓋『内』疾患 →CTへ行く鍵:CT-TIPSで覚える • C:CVD(脳血管障害→脳梗塞・出血、くも膜下出 血) • T:Trauma(頭部外傷→脳挫傷・外傷性出血) • T:Tumor(脳腫瘍) • I:Infection(脳炎・脳膿瘍、髄膜炎) • P:Psychiatric(精神科疾患→転換障害など) • S:Seizure(痙攣・てんかん発作) – 上3つはCTで、それもNegativeなら腰椎穿刺(I)、それも ないなら病歴や脳波(PS) 収縮期血圧<120mmHgの時には、『全身性疾患』の 確率が高い 少なくとも血圧不安定ではCTは死のトンネルになるた め、バイタル安定化と鑑別診断を →内科医の腕の見せ所:MD-HINTで覚える • M:Metabolic(内分泌など→肝腎不全、電解質・内分泌(甲 状腺・副腎)・代謝(糖)異常) • D:Drug(除外診断だが全例で検討する) • H:Hypoxia(低酸素血症→心肺不全) • I:Infection(重症感染症:肺炎・尿路感染、その他敗血症) • N:Nutrition(栄養:B1/6/12、葉酸) • T:Temperature(低体温) – 静脈血と動脈血ガスは取っておき、Fever work-up(Xp・尿・血液 培養)も行い、病歴へ Clinical pearl • 麻痺がないことを証明したいときは、MMTを 使うな!バレー兆候を使え! • 下肢のバレー兆候、面倒なときはMingazzini testを!(下記B) 脳卒中の分類 • 脳梗塞 – アテローム血栓性(脳血栓) – 心原性塞栓(脳塞栓) – ラクナ梗塞 • 脳出血 – 高血圧性脳内出血 – その他 • くも膜下出血 – 脳動脈瘤破裂 – その他 アテローム血栓性脳梗塞 ラクナ梗塞 ラクナ梗塞 心原性塞栓 脳梗塞の3病型 脳出血 くも膜下出血 脳卒中の分類 • 脳梗塞 – アテローム血栓性(脳血栓) – 心原性塞栓(脳塞栓) – ラクナ梗塞 • 脳出血 – 高血圧性脳内出血 – その他 • くも膜下出血 – 脳動脈瘤破裂 – その他 皮質の症状まとめ 前頭葉 頭頂葉 側頭葉 後頭葉 優位半球 (左半球) 運動性失語 眼球共同偏視 ゲルストマン症候 群(手指失認、左右 失認、失算、失書) 観念運動失行など 感覚性失語 同名半盲 同名半盲 劣位半球 (右半球) 眼球共同偏視 半側空間失認 着衣失行 病態失認 地誌的記憶障害 同名半盲 同名半盲 *眼球共同偏視は前頭葉の障害では病側を向く。小脳の障害では病側と反対を向く *同名半盲は病側と反対側の半盲 CT診断のピットフォール • 被殻出血だと思ったら動脈瘤破裂だった。 – シルビウス裂に近い出血は要注意 • 高血圧性脳出血だと思っていたら脳動静脈奇形からの出血 だった。 • 外傷性クモ膜下出血だと思っていたら動脈瘤破裂によるもの だった。 – 病歴を詳細にチェックする。 • 単なる出血と思ったら出血性梗塞だった。 – 比較的大きな心原性塞栓の場合、出血性梗塞になることがある。 クイズです!! 答えです! • • • • • 発症から一週間経過したくも膜下出血 右シルビウス裂の描出が不良 右内頸動脈瘤がCT上認められる。 右前頭葉底部に低吸収域を認めます。 一週間前に突然の頭痛(人生最悪)、嘔吐あ ったがその後徐々に改善して、歩いて外来受 診した。受診時、頭痛はほぼ改善していた。
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