脳梗塞

脳梗塞
一過性脳虚血発作(TIA)
定義
脳の循環障害によるさまざまな症状が急速に出現し、24時間以内に
症状、徴候が完全に消失する臨床病態。
アテローマ由来の微小塞栓や脳血管不全などがその原因と考えられ
ている。約20~30%が、数年以内に脳梗塞に移行するため脳梗塞
の前駆症状と考えられている。脳の不安定狭心症と考える。
症状
1.内頚動脈系TIA
:一側上下肢の脱力や感覚障害、失語、失算、
同名半盲、一過性黒内障など。
2.椎骨脳底動脈系TIA
:種々の組み合わせの上下肢脱力感や感覚障害、
同名半盲、失調、平衡障害など。
注意 TIAとは考えにくい一過性症状
:意識障害(失神を含む)、強直性および間代性けいれん、
マーチする感覚障害、回転性めまいのみなど。
脳梗塞の分類
NINDS-Ⅲの分類、1990
発症機序のアセスメント
①血栓性(thrombotic)
②塞栓性(embolic)
③血行力学性(hemodynamic)
臨床病型のアセスメント
①アテローム血栓性(atherothrombotic)
②心原性塞栓性(cardioembolic)
③ラクナ性(lacunar)
④その他(others)
神経症状から梗塞部位を考える
内頚動脈
椎骨脳底動脈系
中大脳動脈
椎骨動脈
前大脳動脈
脳底動脈
後大脳動脈
アテローム血栓性脳梗塞
頭蓋内のlarge vesselや、内
頚動脈、椎骨脳底動脈系に
生じた動脈硬化(アテローム
硬化)が原因。
①血栓性
②血行力学性
③塞栓性
(Artery-to-Artery)
ラクナ梗塞
穿通枝動脈支配に一致した直径15mm未満の小梗塞
①lipohyalinosis(脂肪硝子変性)
高血圧での血管内皮障害から
血管壁の肥厚や変性を生じ
直径0.2mm以下の血管の閉塞し
3~7mmの小梗塞となる。
②microatheromaous
直径0.4~0.9mmの血管の閉塞
③branch atheromatous
disease(BAD)
MCAやBAのプラーク形成により
穿通枝が閉塞する。
④microembolism
心原性脳塞栓症
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活動期発症
突発完成型
心房細動
梗塞巣が大きく皮質症候を伴いやすい
皮質症候:失語、失行、失認、同名半盲など
脳梗塞の急性期治療(OCH)
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アテローム血栓性
ラクナ梗塞
心原性塞栓
アルガトロバン
(スロンノン)
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×
×
オザグレル
(オザペン)
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×
エダラボン
(ラジカット)
●
●
●
アテローム血栓性脳梗塞
選択的トロンビン阻害薬
アルガトロバン(スロンノン® )
: 48時間以内にスタート
ラクナ梗塞
血小板凝集抑制薬
オザグレルNa(キサンボン® )
:5日以内にスタート
脳梗塞一般
抗活性酸素薬
エダラボン(ラジカット)
:24時間以内にスタート
心原性脳塞栓症の急性期にはこれらの抗血小板薬、抗凝固薬の投与は控える。
ヘパリン使用はニューロコンサルトまで待つ。
使用法
スロンノン2A+ソルデム3A(500ml) ⇒ 60ml/h 計12A 投与後
スロンノン1A+ソルデム3A(200ml) ⇒ 60ml/h12時間おき 計10A投与
日本で開発された薬。明らかなエビデンスなく、日本でのみ使用できる薬
ラジカット1A+N/S 50ml ⇒ 100ml/h 12時間おき投与(2週間まで使用可) 日
本だけで小規模な二重盲検比較試験が行われ、2週間投与した後の4週目では、
全般的な神経症候の改善度が有意に高かった。
しかし、国際的な評価基準に則った臨床治験は行われていない。
日本でのみ使用できる薬。
オザペン1V+N/S 200ml ⇒ 60ml/h 12時間おき投与(2週間まで使用可)
日本だけで使われている点滴薬。約10年前に行われた日本での偽薬との対照試験で
は、投与1か月後の運動障害の改善に有用であるという結果が得られた。
しかし、国際的な基準に従った臨床試験は行われていない。
日本でのみ使用できる薬。
脳梗塞の2次予防(再発予防)
• アテローム血栓性脳梗塞
アスピリン75-150mg/day(グレードA)
• ラクナ梗塞
シロスタゾール(プレタール® )200mg/day
(グレードB)
• 心原性塞栓性脳梗塞
ワーファリン(グレードA)
PT-INRで通常2.0~3.0、高齢者は1.6~2.6
注)stroke既往のないAFを有する患者の1次予防は考え方が異なる
脳卒中治療ガイドライン2004