脳血管障害画像診断のガイドライン 急性期脳梗塞 - 岩手医科大学

脳血管障害画像診断のガイドライン
急性期脳梗塞
-血栓溶解療法の適応決定における画像診断の役割-
脳血管障害画像診断のガイドラインについて
「脳血管障害画像診断のガイドライン」作成に関わるワーキンググループは、日本放射線科専門医
会・医会放射線診療ガイドライン策定事業の一環として、脳血管障害画像診断ガイドラインを「根拠に
基づいた医療 Evidence-based Medicine(EBM)」の手法に準じて策定してきました。このワーキンググ
ループは神経放射線学を専門とする放射線科専門医によって構成されています。
最近の画像診断法の進歩は目覚しいものがあり、脳血管障害の領域においても MRI の拡散強調画
像、マルチスライス CT などが出現しましたが、一方ではその適応が正しく理解されていないための混
乱も生じています。不必要な検査の実施、診断方法の不適切な選択は、その結果としての患者予後へ
の否定的な影響、あるいは医療被曝および医療費の増加等に結びつく可能性があります。脳梗塞に
対するアルテプラーゼ(rt-PA)の静脈内投与が 2005 年 10 月に認可され、今後本邦における脳卒中医
療が大きく変化すると予想される中、明確な画像診断の指針を示し、それに従って診療を進めていくこ
とが今求められています。脳卒中学会による「アルテプラーゼ静注療法適正治療指針」は画像診断に
関する記載もかなり詳細ですが、画像診断に関する包括的なガイドラインは未だ存在しません。
本ガイドライン作成に当たっては、国際的に標準的な方法とされている EBM の手順に則って作成す
ることを基本原則としました。しかし画像診断領域においては、アウトカム評価が難しい、特異度や感度
は検索可能だがどのような検査の組み合わせが有効かについてエビデンスを探すのが難しい、などの
困難性もあるため、我々専門家としての意見を「委員会意見」として併記しました。
ワーキンググループのメンバーが中心となって班会議等を組織し、急性期脳梗塞画像診断の実践的
ガイドライン策定にすでに取り組んでいます。総論としての本ガイドラインと、今後策定される各論として
の実践的ガイドラインの組み合わせにより、本邦における標準的な脳卒中診療に貢献したいと考えて
います。
今後も脳卒中診療に携わる関係各位のご意見を広く伺い、「脳血管障害画像診断のガイドライン」に
反映させていきたいと考えております。最後に、極めて多くの労力と時間を要する EBM ガイドライン策
定に奮闘してこられた全メンバーに心から感謝します。
2006 年 4 月
「脳血管障害画像診断のガイドライン」作成に関わるワーキンググループ
委員長 興梠征典
ホームページアドレス http://mrad.iwate-med.ac.jp/guideline/
本ガイドラインに関するご意見、ご感想は下記まで
807-8555 北九州市八幡西区医生ヶ丘1番1号
産業医科大学 放射線科学教室 興梠 征典
FAX: 093-692-0249
E メール [email protected]
-1-
ワーキンググループの構成
委員長
アドバイザ
副委員長
委員(五十音順)
産業医科大学
北海道大学
聖路加国際病院
岩手医科大学
東京大学
久留米大学
順天堂大学
都立荏原病院
福岡大学
聖路加国際病院
鳥取大学
杏林大学
香川大学
奈良県立医科大学
三重大学
東北大学
慶応大学
大阪大学
興梠征典
宮坂和男
沼口雄治
佐々木真理
青木茂樹
安陪等思
飯塚有応
井田正博
宇都宮英綱
岡 正樹
木下俊文
土屋一洋
外山芳弘
中川裕之
前田正幸
日向野修一
百島祐貴
渡辺嘉之
本ガイドラインで使用しているエビデンスレベル、勧告の強さ
エビデンスレベルの分類
Ia
システマティックレビュー/メタアナリシス
Ib
ランダム化比較試験
IIa 非ランダム化比較試験
IIb その他の準実験的研究
III 非実験的記述的研究(比較研究、相関研究、症例対照研究など)
IV 専門科委員会や権威者の意見
検査の有用度の階層分類
E1 技術的な有用度
E2 診断精度に関する有用度
E3 確定/鑑別診断に関する有用度
E4 治療方針決定に関する有用度
E5 患者予後に関する有用度
E6 社会的/経済的な有用度
勧告(お勧め度)の強さの分類
A
行うよう強く勧められる
B
行うよう勧められる
C1 行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠がない
C2 科学的根拠がないので、勧められない
D
行わないよう勧められる
-2-
目次
I.
4
急性期治療の現状
飯塚有応、安陪等思
II.
頭部 CT
III.
頭部 MRI
6
土屋一洋、前田正幸
8
中川裕之、外山芳弘、渡辺嘉之
IV.
10
脳循環検査
青木茂樹、井田正博、岡 正樹、百島祐貴
V.
椎骨脳底動脈系
VI.
頭部 CT の被曝
12
宇都宮英綱、興梠征典
14
日向野修一、木下 俊文
VII. 資料(エビデンス集)
更新履歴
注:
2004 年 2 月 7 日
2004 年 3 月 21 日
2004 年 4 月 5 日
2006 年 6 月 5 日
16
暫定第一版公開
暫定第一版の第一回訂正版公開
暫定第一版の第二回訂正版公開
第一版公開
「エビデンスの要約」では各文の末尾に文献番号を示す。
本ガイドラインおよび引用文献の抄録テーブルはホームページよりダウンロード可能
である。
略語一覧
ADC: apparent diffusion coefficient, AHA: American Heart Association, AIF: arterial input function,
ASPECTS: Alberta Stroke Program Early CT Score, CBF: cerebral blood flow, CBV: cerebral blood volume,
CEA: carotid end-arterectomy, CI: confidence interval, CT: computed tomography, CTA: CT angiography,
DWI: diffusion weighted image, EPI: echo planar imaging, FLAIR: fluid-attenuated inversion recovery,
HMCAS: hyperdense MCA sign, HMPAO: hexamethyl-propylene amine oxime, MCA: middle cerebral artery,
MELT: MCA-Embolism Local Fibrinolytic Intervention Trial, MRA: magnetic resonance angiography, MRI:
magnetic resonance imaging, mRS: modified Rankin scale, MTT: mean transit time, NIHSS: National
Institutes of Health Stroke Scale, OR: Odds ratio, pro-UK: pro-urokinase, PWI: perfusion weighted image,
rCBF: relative cerebral blood flow, rCBV: relative cerebral blood volume, RCT: randomized controlled trial,
rt-PA recombinant t-PA, SPECT: single photon emission CT, t-PA: tissue plasminogen activator, TTP:
time-to-peak, T1WI: T1-weighted image, T2WI: T2-weighted image, T2*WI: T2*-weighted image
-3-
I. 急性期治療の現状
要約
1. 発症 3 時間以内の虚血性脳血管障害において、rt-PA(recombinant
tissue plasminogen activator)による経静脈性血栓溶解療法で予後の
改善が認められる(グレード A)。
2. 発症 6 時間以内の中大脳動脈閉塞症において、pro-UK(prourokinase)
による経動脈的血栓溶解療法は、予後良好となる率を向上させる(グレ
ード B)。(注)
3. 上記推奨事項はガイドラインを厳守可能な経験豊富な施設で治療が施
行されることが条件である。
急性期脳梗塞の治療は、薬剤認可の問題などにより我が国と欧米諸国で現状に違いがある。
本邦においては5学会(日本神経学会、日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本神経治療
学会、日本リハビリテ−ション学会)のガイドラインが 2004 年 4 月に発表されている。また,米国心臓
協会 American Heart Association(AHA)は 2005 年に患者管理のガイドライン (Guideline for the
Early Management of Patients with Ischemic Stroke) の改訂版を発表している。このような標準化
された治療指針が今後日常診療に広まっていくと考えられ、脳血管障害の画像診断においても
標準的治療を知ることは必須である。一方で,新たな多施設共同ランダム化比較試験 RCT や薬
剤,治療法の開発も進んでいる。
急性期治療の現状
遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA)であるアルテプラーゼの静脈内投
与は,急性期脳梗塞の治療法として高いエビデンスがあり、欧米諸国ですでに認可されている。
発症3時間以内の超急性期の虚血性脳血管障害に対して、rt-PA による経静脈的血栓溶解療法
による予後の改善が報告されている。ガイドラインを厳格に遵守し,準備が整い,経験豊富な施設
で治療が行われた場合には、患者の機能予後の改善に有用であることが知られている(グレード
A)。わが国独自の臨床試験(Japan Alteplase Clinical Trial, J-ACT)の結果を踏まえて本邦におい
ても脳梗塞への適応拡大が 2005 年 10 月に認可されたのに合わせ、日本脳卒中学会においてそ
の治療指針が作成された(注)。これは本治療法が安全かつ広く実施されることを目指して作成さ
れた実践的なガイドラインであり、25 ページに及ぶ詳細なものである。
注)rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針。日本脳卒中学会医療向上・社会保険委
員会、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法指針部会編
発症6時間以内の中大脳動脈閉塞症における pro-UK による経動脈的局所血栓溶解療法は、
厳格にガイドラインを遵守した場合に、予後良好となる率を向上させることが知られている (グレー
-4-
ド B) 。本邦では、経動脈的血栓溶解療法は手技のみが認可されている。
抗血小板剤であるアスピリンの投与は軽度の有用性が認められている(グレード A)が、非拡散
型(未分画)ヘパリン(unfractionated heparin)、低分子へパリン/ハパリノイド(haparinoids)、アブシ
キシマブ(abciximab)の有効性は確認されておらず推奨されない。
Stroke Care Unit (SCU)において超急性期脳梗塞患者の管理を行うことが好ましい(グレード A)。
神経保護,血液希釈,脳浮腫対策,減圧手術,低体温治療,ステロイド投与,カルシウム拮抗剤
投与,酸素投与,線溶療法、外科的治療、血管内治療などの治療法は個々の症例に対して慎重
に遂行されなければならない。
-5-
II. 頭部 CT
推奨
1. 血栓溶解療法の患者選択基準に CT 早期虚血サインを用いるよう勧め
られる(グレード B) 。(注 1)
2. 早期虚血サインを正確に評価できる読影のトレーニングが必須である
(グレード B) 。
(注 1:CT 早期虚血サインは予後予測に有効であるが、血栓溶解療法後の予後との
関連についての科学的根拠はまだ不十分とする意見もある。)
CT は急性期脳梗塞において現在、もっとも汎用される画像診断である。単純 CT において観察
される早期虚血サイン(注)は非可逆性を意味すると認識されており、軽微ながら急性期脳梗塞の
所見として重要である。近年、発症数時間以内の急性脳梗塞に対して血栓溶解療法がひとつの
選択肢として注目されている。CT を適応判定の基準とした多施設共同ランダム化比較試験 RCT
も行われている。しかし、このような RCT が進行していく過程で CT の問題点も明らかになり、さら
に拡散強調画像との梗塞描出能の優劣が大きなテーマとなっている。他に、CT の撮影条件、画
像表示条件、早期虚血サインの定量化が画像の判定にどのような影響を及ぼすかは血栓溶解療
法の実施を左右する問題である。
注)「早期虚血サイン」として脳実質にみられる所見としては皮髄境界消失、レンズ核の不明瞭化、
脳溝の消失が知られている。
CT 早期虚血サインの有用性
急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法の適応決定に際して、特に多施設 RCT ではその汎用性
から単純 CT を基準とする場合がほとんどである。単純 CT の早期虚血サインは、血栓溶解療法を
前提として予後を判断するにあたり有用とみなされる。
CT 早期虚血サインの問題点
早期虚血サインの客観性はやや劣り、読影者間での判定のばらつきが比較的大きい。読影者
の能力によって左右され、経験の少ない者ではさらにばらつきが大きくなる。一方、拡散強調画像
は CT よりも有意に検出能が高く、さらに読影者間のばらつきが少ない。
対策
早期虚血サインを正確に評価できる読影力のトレーニングが必須と考えられる。単純 CT の早期
虚血サインの定量化や、至適な画像表示条件の採用も有用と考えられる。
-6-
委員会意見
1. 血栓溶解療法は急性期脳梗塞治療における一つのオプションであり、
その適応決定には厳密な態度が必要と考える。
2. CT 早期虚血サインは脳虚血病変の非可逆性の診断において有効で
あり、血栓溶解療法の適応決定に際しては CT を用いるのが一般的
である。
3. ただし CT は拡散強調画像よりも有意に急性期虚血病変の検出能が
低く、早期虚血サインの客観性も劣る。現時点では MRI と CT との使い
分けに関して科学的根拠に基づく推奨はできない。
4. 急性期脳梗塞における単純 CT の至適撮影条件について明確な基準
がなく、現時点では MELT Japan*の勧告が最も参考となる
* MELT Japan: http://melt.umin.ac.jp/ (Contents: CT 読影ガイドライン)
-7-
III.頭部MRI
推奨
1. 急性期脳梗塞においてMRIを行う場合は、拡散強調画像を含めるべき
である(グレードB)。
2. MRI検査により治療開始時間が遅れる可能性がある場合は、MRIを施
行しないよう考慮すべきである(グレードC2)。
3. 血栓溶解療法の患者選択基準にMRIを用いることを考慮してもよいが、
患者予後向上を示す科学的根拠はほとんどない(グレードC1)。
従来の多くのランダム化比較試験RCTにおいて、単純CT所見が血栓溶解療法の画像診断とし
ての適応基準となっている。しかし、急性期脳梗塞の診断においてMRIが有用であることは事実
であり、血栓溶解療法の適応基準としてMRIを利用することにより患者予後を向上できるか、適応
時間を発症後6時間まで拡大可能か等は興味ある課題である。
MRI撮像法による診断精度
発症6時間以内の梗塞巣における拡散強調画像の診断能は高いが、T1強調画像(T1WI)、T2
強調画像(T2WI)、FLAIR画像の検出能は不充分であるため、急性期脳梗塞診断においてMRI
を撮像する場合、拡散強調画像は必須である。
MRIによる頭蓋内出血の検出
頭蓋内出血は血栓溶解療法適応の除外因子であり、MRIの診断能が問題となる。CT・MRIを比
較した多施設前向き研究ではT2*強調画像(gradient-echo法)による血腫の検出能はCTと同等で
あり、MRIのみでも急性期血腫の検出は可能であるとしている。
しかしMRIでは新旧の血腫判定は困難な場合があり、診断に苦慮する場合はCTの追加が必要
である。血腫のMRI診断については経験により診断精度に差があるとされ、急性期血腫の読影に
も慣れておく必要がある。
MRI (拡散強調画像/灌流画像)の情報に基づいた血栓溶解療法の適応
血栓溶解療法に関するMRI報告のほとんどは、患者選択はCT所見により行われている。 MRI
所見を患者選択基準にした報告は、2005年1月の時点では一つのRCT(DIAS)に限られる。
DIASの最適量投与群では良好な結果を示し、MRIによる患者選択の可能性を示しているが、
新しい薬剤を使用し、かつ対象とされた症例も少ないため、今後さらなる検討が必要と思われる。
その他の多くは症例集積研究のエビデンスレベルにとどまっており、また治療法も静注、動注療
法が混在しており、現時点では勧告を行うための十分な科学的根拠がないといえる。
また限られた症例ではあるが発症早期での拡散異常域は再開通により可逆性変化を示すこと
-8-
や、Diffusion/Perfusion mismatchの異常域判定において観察者間の違いが大きいことも報告され
ており、標準化された評価法の確立が必要である(MR灌流画像の標準化については、現在、
CT/MR灌流画像実践ガイドライン合同策定委員会=日本放射線科専門医会・医会、日本磁気共
鳴医学会、ASIST-Japanで検討中である。http://ctp.umin.jp/)
MRIによる血栓溶解療法後の出血性合併症の予測
ADC値が低い症例では治療後の出血の可能性が高い、T2*強調画像にて無症候性の微小出
血(microbleeds)が見られた部位に一致して出血が見られた、微小出血は出血の予測に関係しな
いなどの報告がみられるが、まとまった見解は得られていない。
委員会意見
1. 治療方針決定や予後に関して拡散強調画像の有効性を示すエビデン
スが十分でない現時点においては、AHAガイドラインの記載のごとく
MRIを施行することによって治療開始時間が遅れないようにしなけれ
ばならないし、MRIを施行する際は厳密に計画された臨床研究として
行うことが望まれる。
2. 現在進行中のMRI所見を選択基準としたRCTの結果によっては、今
後緊急MRIの体制を整備する必要性が生じるかもしれない。その場合
は緊急MRI検査における安全管理体制の整備が必須である。
3. MR撮像法・評価法の標準化、血栓溶解療法の患者選択基準の確立が
重要な課題である。
-9-
IV. 脳循環検査
推奨
1. 脳循環検査は 24 時間施行可能で、かつ治療開始を遅らせることなく
施行できる場合には追加してもよい(グレード C1)。
2. 血栓溶解療法(発症 3 時間以内)における脳循環検査の意義は明らか
になっていない(グレード C2)。
3. SPECT は発症 3 時間以降の血栓溶解療法における脳出血を予測可
能である(グレード C1)。
4. CT 灌流画像、Xe-CT では被曝低減を心がけるべきである(グレード
B)。
脳循環検査は急性期脳梗塞における脳血流の評価や灌流異常の判定に用いられる。ただし、
血栓溶解療法では治療開始までの時間が予後に影響を及ぼす。従って、診断能のみではなく、
検査所要時間や治療方針決定・予後向上への効果も考慮して検査の意義を考える必要がある。
各検査の違い
MR灌流画像、CT灌流画像は24時間体制で迅速に施行することが可能な場合が多いので、発
症3時間以内にも用いられている。SPECT, Xe-CTは発症3時間以降に用いられることがほとんど
である。
SPECT, Xe-CTでは脳血流量(cerebral blood flow: CBF)の定量値や半定量値が用いられる。
MR灌流画像(灌流強調画像)ではCBFを用いることは稀で、灌流異常を表するピーク時間(time to
peak: TTP)や平均通過時間(mean transit time: MTT)を用いることが多い。また、拡散強調画像と
組み合わせたdiffusion/perfusion mismatchを指標とすることが一般的である。CT灌流画像では
CBF, MTT, 脳血液量(cerebral blood volume: CBV)の3者が用いられる。
MR灌流画像
拡散強調画像に引き続き迅速に施行することができるが、十分な安全管理体制を確立しておく必要
がある。Diffusion/perfusion mismatch は虚血ペナンブラを大まかに推定でき、最終梗塞域、重大合
併 症 、 患 者 予 後 を 予 測 す る こ と が で き る 。 発 症 3-8 時 間の 血 栓 溶 解 療 法 の 患 者 選 択 に
diffusion/perfusion mismatch を用いた報告(DIAS)があるが、発症 3 時間以内の治療適応基準に本
法を用いた質の高い臨床研究は無く、溶解療法適否決定のための具体的な指標は確立されていな
い。解析法や指標は施設や装置によって異なり、その信頼性は検証されていない。解析法の標準化
が必要である。
- 10 -
CT灌流画像
他の脳循環検査と比べ、単純CTに引き続き迅速に施行することができる。Early CT signや造影
CTAと合わせて判定することで、診断能や予後予測の精度は向上する。ただし、CT灌流画像を
治療法の選択に用いた質の高い研究はなく、予後向上の有無に関するまとまった報告はまだな
い。CT灌流画像の解析法は最近進歩したが、施設間・装置間差異は大きく、信頼性は不十分で
ある。さらなる技術的進歩と標準化が必要である。また、被曝量が一般に大きく、被曝低減のため
の低線量化や撮影条件の標準化が必要である。
SPECT
発症3-6時間の血栓溶解療法において、SPECTによるCBF半定量値は再開通後の脳内出血を
予測できる。ただし、SPECTを治療適応基準に用いた報告はない。発症3時間以内の急性期脳梗
塞に対するSPECTの意義は確立していない。治療開始を遅らせることなく施行できる場合にのみ
考慮すべきである。
Xe-CT
Xe-CT のCBF定量値の信頼性は高い。急性期脳虚血における脳組織の可逆性(最終梗塞の
範囲),病変の程度(ヘルニア,浮腫),臨床的予後(臨床スコア,転帰)と相関する,あるいはCBF
値からこれらを予測しうるとする報告は多く,また自然経過や血栓溶解療法における出血のリスク
との相関に有用との報告もある。ただし、Xe-CTが治療後の予後の改善につながったという報告は
ない。CT灌流画像と同様に被曝量は一般に大きく,低線量化への努力が必要である。
委員会意見
1. 現時点において MR 灌流画像、CT 灌流画像、SPECT、Xe-CT の中で
最適な検査法は確立していない。
他の検査との組み合わせや施設の事情を考慮の上、どの方法を用い
るか判断するよう勧められる。
2. MR 灌流画像、CT 灌流画像の検査法・解析法・評価法の標準化を急ぐ
べきである。
- 11 -
V. 椎骨脳底動脈系
推奨
1. 椎骨脳底動脈系では CT 早期虚血サインの有効性は確立していない
(グレード C2)。
2. CTA、MRA による頭蓋内椎骨脳底動脈の閉塞の診断能は高いが、患
者予後向上との関連を示す科学的根拠はない(グレード C1)。
椎骨脳底動脈系(後方循環系)脳梗塞は内頸動脈系(前方循環系)脳梗塞より発生頻度は低く、
その原因や臨床病型さらに予後においても内頸動脈系脳梗塞とは大きく異なる。原因としては椎
骨脳底動脈主幹部にアテローム性変化を伴うアテローム血栓性梗塞が多く、続いて心原性塞栓
症が多い。その他にラクナ梗塞や動脈解離、血管炎などによる脳梗塞がある。ラクナ梗塞はいわ
ゆる branch atheroma(頭蓋内小動脈アテローマ)によるものが多いとされ、通常主幹部アテローマ
を伴う。また、主幹部アテローム梗塞と心原性塞栓では、原因が異なるにも関わらず、いずれも中
脳、視床など後方循環系の末梢部に多発性梗塞を生じやすいとされている。すなわち、椎骨脳底
動脈系脳梗塞の発生機序には不明な点が多く残されており、これらの解析を進めるためにも画像
診断の果たす役割は大きいと考えられる。
椎骨・脳底動脈閉塞を疑う場合の非侵襲的診断法
CTA(CT 血管造影)と MRA(MR 血管造影)のいずれも有用性は高い。一方、ドップラーUS の
有用性は低い。CT における閉塞動脈の高吸収域化や FLAIR 像の動脈内高信号サインともに有
用性は確立していない。なお、T2 強調画像における Flow void の消失について、有用性を検討
した報告はない。
急性期における虚血巣自体の描出
単純 CT における早期虚血サインは椎骨脳底動脈系では検討されていない。MRI に関しても、
高いエビデンスの報告はないが、拡散強調画像は T2 強調画像などの通常の MR 画像よりも有効
と考えられる。しかし、内頸動脈系脳梗塞と比較すると、急性期梗塞の描出能は劣る。
SPECT の有用性は低い。
脳底動脈閉塞における血栓溶解療法
治療法の有効性に関するエビデンス自体が少なく、従ってその適応決定における画像診断の役
割は確立していない。単純 CT にて脳底動脈の高吸収サインがみられる際に再開通率が高いと
いう報告や MRI 拡散強調画像にて病変が小さいときは再潅流させることで予後は向上するとの報
告もあり、今後さらにエビデンスの収集に努める必要がある。
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委員会意見
1. 椎骨脳底動脈系においても MRI は梗塞の診断に重要な役割を果たすと
思われるが、椎骨脳底動脈系では血栓溶解療法の有効性自体が確立
していない。従って治療方針決定や予後予測の有用性に関しての科学
的根拠はほとんどない。
2. 拡散強調画像における虚血巣の早期検出能は前方循環系に比較して
劣る場合があることを知っておくべきである。
3. 臨床的に脳幹梗塞が疑われる場合、椎骨動脈が十分に含まれるように
MRA の撮像範囲を予め広く設定しておくのが望ましい。
- 13 -
VI. 頭部 CT の被曝
推奨
1. 問題意識を持って被曝低減に取り組むべきである(グレード B)。
2. 小児や若年者では検査の適応にも十分に注意を払うべきである(グレー
ド B)。
医療被曝における CT の割合は増大してきている。1994 年の放医研環境セミナーによれば、本邦に
おける 1 人1年当たりの線量は、自然放射線源から約 1.4mSv、医療被曝が約 2.4mSv で、その 3 分の1
の 0.8mSv が CT による被曝となっている。2004 年に診断X線による発癌の危険率を英国と先進 14 ヶ
国で推定したところ、日本の推定危険率が 3.2%と最も高かったというデータが Lancet 誌に掲載され、
日本国内でも医療被曝に関する社会的関心が高まってきた(注)。
なお、放射線被曝を理解する上で必要な基本的物理量や CT 被曝の記述に用いられる指標につい
ては巻末の付録に「放射線被曝についての用語集」として解説した。
注:Lancet 誌のこの検討については幾つかの問題点が指摘されており、日本医学放射線学会や日
本放射線技術学会からコメントがなされている(巻末エビデンス集の参考を参照)。
頭部 CT 被曝の問題点
CT では線量を上げるほど画質向上につながるため、被曝低減のためには CT 被曝について問
題意識を持って、被検者の体格や年齢に応じた撮影条件の最適化を推進する必要がある。
小児では、成人より低いエネルギーの付与でも、実効線量は 2-3 倍以上となることや生涯癌死
亡の危険率があがること、乳児期の低線量被曝が成人期の認知機能低下の原因となりうる可能性
もあることから、注意深い検査の適応と撮影条件の工夫が必要である。
頭部の CT では水晶体の被曝が問題となる。
stable Xe-CT や灌流 CT では同一部位が繰り返しスキャンされるため不適切な撮像条件では
被曝量が極端に多くなる可能性がある。
CT の被曝低減法
CT の被曝を低減するには、診断のための目標とする画質を設定し、管電圧、mAs を下げる、ヘ
リカル CT ではピッチを上げる、などを考慮する。ヘリカル CT ではピッチを増加することで被曝を
低減でき、オーバーラッピングが有用な例では、ヘリカル CT による被曝低減は顕著となる。CT ア
ンギオの条件設定で考慮するべきである。
小児では現在一般的に行われている成人とほぼ同様な条件での撮影に比べ、30-40%の被曝
量低減が期待できるとされる。頭部 CT では被検者の頭部の最大前後径を測定して条件を決める
方法も有用とされる。mAs を通常の 50%程度まで下げた低線量 CT でも診断できる画質の CT 画
像が得られるとの報告もあり、症例によっては、低線量 CT の適応も考慮に値する。一方、線量を
ぎりぎりまで低下させた場合、急性期脳梗塞の診断などごく軽度の濃度差を評価する場合などで
- 14 -
は、診断能に影響する可能性もあり、適応に応じた条件設定も必要と思われる。
水晶体の被曝は supraorbito-meatal line を基準面とするなどスキャン角度を工夫することで低
減させることが出来る。また、側頭骨 CT でも水晶体を含まないような断面でも十分に診断可能で
ある。頭部 CT で眼窩の直接被曝が避けられない場合には市販の眼球シールドの使用も効果が
あるかもしれない。
灌流 CT では管電圧を 120kVp から 80kVp に下げることで、被曝量を 2.8 分の 1 に低下させつ
つ、より高い増強効果が得られるという報告がある。また、灌流 CT 画像を撮影するサンプリングレ
ートを減らすことも被曝低減につながり考慮に値する。
委員会意見
1. 現時点では、単純 CT,CTA, CT 灌流画像、Xe-CT についての至適撮
影条件や被曝線量の明確な目安がなく、さらに検討が必要である。
2. CT 灌流画像や CTA では,MDCT を考慮した至適撮影条件の検討を行
う必要がある。(注)
(注:The Advanced Medical Imaging Laboratory (AMIL)が運営する CTisus で提唱し
ているプロトコールなどが参考になる。www.ctisus.com)
- 15 -
VII. エビデンス集
1. 急性期治療の現状
◆経静脈性血栓溶解療法(発症 3 時間以内)
・ 3ヶ月時点(p=.3)での死亡率に有意差はない (Ib) [1]。
・ 24 時間(p<.006)と3ヶ月時点(p=.008)での良好な予後が得られる確率が有意に高い(Ib) [1]。
・ 症候性頭蓋内出血の発生率(6.4%)はプラセボ(0.6%)に対して有意に高い(P<.001) (Ib) [2]。
・ 頭蓋内出血が発生する頻度は心筋梗塞患者に血栓溶解療法を行った場合よりも高い(Ia) [2]。
・ ワーファリンまたはヘパリンの投与により凝固能の亢進がある場合には血栓溶解療法の適応とならな
い[2]。
◆経静脈性血栓溶解療法(発症 3 時間以降)
・ 出血率が上昇し症状の改善は見られない (Ib) [4]。
◆経動脈性局所血栓溶解療法(本邦未承認:手技のみ保険収載)
・ 中大脳動脈閉塞症,発症6時間以内における pro-UK による局所血栓溶解療法は症候性頭蓋内出
血の発生頻度を上昇させるものの,90 日後に予後良好となる率を向上させる (p=0.04)(Ib)[5]。
・ 血糖値が 200mg/mL を超えると局所血栓溶解療法における症候性出血の危険因子となる (Relative
risk 4.2, OR 1.013, 95%CI 1.003-1.023, p=.022)(Ib)[6]。
◆抗血小板療法・抗凝固療法
・ アスピリンはわずかな程度であるが、死亡率と要介護率に有意な低下(12/1000 人)をもたらす
(OR .94, 95%CI 0.91-0.98)(Ia) [8,9]。
・ 発症 48 時間以内のアスピリン投与は完全回復(10/1000 人)を増す (OR 1.06, 95%CI 1.01-1.11,
(Ia)[9]。
・ アブシキシマブ(abciximab)は良好な回復を示す傾向があるが有意差は出ていない (Ib)[10]。
・ 非拡散型ヘパリン(unfractionated heparin)は短期的にも長期的にも予後の改善に寄与しない (Ia)
[11,12,13]。
・ 低分子へパリン/ハパリノイド(haparinoids)の3ヶ月後の予後の改善に有効性はない(Ia)[11]。
◆Stroke Care Unit (SCU)
・ 一般病棟に比べ死亡率は低下する (OR .86, 95%CI .71-.94, p=.005, Ia) [14]。
・ 一般病棟に比べ死亡または施設での介護の率は低下する (OR .80, 95%CI .71-.90, p=.0002, Ia)
[ 14 ]。
・ 一般病棟に比べ死亡または要介護の率は低下する (OR .78, 95%CI .68-.89, p=.0003, Ia) [14 ]。
◆その他
・ 神経保護,血液希釈,脳浮腫対策,減圧手術,低体温治療,ステロイド投与,カルシウム拮抗剤投
与,酸素投与,線溶療法、外科的治療、血管内治療などのその他の治療法で明らかな有用性は確
認されていない。
・ 国内ではエダラボンが承認されているが、質の高いエビデンスはない。
・ アンコード、アルガトロバン, アブシキシマブなどについて RCT の結果が待たれる。
- 16 -
◆文献
1) The National Institute of Neurological Disorders, and Stroke rt-PA Stroke Study Group: Tissue
plasminogen activator for acute ischemic stroke. New Engl J Med 1995;333:1581-1587
2) Adams HP, Brott TG, Furlan AJ, et al: Guidelines for thromblytic therapy for acute stroke: a suppliment
to the guidelines for the management of patients with acute ischemic stroke: statement for healthcare
prefessionals from a special Writing Group of the Stroke Council, American Heart Association.
Circulation 1996;94:1167-1174
3) Adams HP, Adams RJ, Brott TG, et al. Guidelines for the early management of patients with ischemic
stroke: a scientific statement from stroke council of the American Stroke Association. Stroke
2003;34:1056-1083
4) Clark WM, Wissman S, Albert GW, et al. Recombinant tissue-type plasminogen activator (alteplase) for
ischemic stroke 3 to 5 hours after symptom onset: the ATLANTIS study: a randamaized controlled trial.
JAMA 1999;282:2019-2026
5) Furlan A, Higashida R, Wechsler LR, et al. Intra-arterial prourokinase for acute ischemic stroke: The
PROACTII study: A randomized controlled trial. JAMA 1999;282:2003-2011
6) Kase CS, Furlan AJ, Wechsler LR, et al: Cerebral hemorrhage agter intra-arterial thrombolysis for
ischemic stroke. The PROACTII trial. Neurology 2001;57:1603-1610
7) Berge E, Sandercock P: Anticoagulants versus antiplatelet agents for acute ischaemic stroke (Cochrane
Review). in The Cochrane Library 2002:Issue 4
8) Coull BM, Williams LS, Goldstein LB, et al: Anticoagulants and antiplatelet agents in acute ischemic
stroke. Stroke 2002;33:1934-1942
9) Gubitz G, Sandercock P, Counsell C: Antiplatelet therapy for acute ischaemic stroke (Cochrane Review)
in The Cochrane Library 2002:Issue 2
10) The Abciximab in Ischemic Stroke Inesigators: Abcixmab in acute ischemic stroke: a randomized,
double-blind, placebo-controlled, dose-escalation study. Stroke 2000;31:601-609
11) Counsell C,Sandercock P: Low-molecular-weight heparins or heparionids versus standard unfractionated
heparin for acute ischaemic stroke (Cochrane Review) in The Cochrane Library 2002:Issue 4
12) Gubitz G, Counsell C, Sandercock P, et al: Anticoagulants for acute ischaemic stroke (Cochrane Review)
in The Cochrane Library 2002:Issue 2
13) Saxena R, Lewis S, Berge E, et al: Risk of early death and recurrent stroke and effect of heparin in 3169
patitents wth acute ischemic stroke and atrial fibrillation in the intenational stroke trial. Stroke
2001;32:2322-2337
14) Stroke Unit Trialists’ Collaboration: Organized inpatient (stroke unit) care for stroke (Cochrane Review)
in The Cochrane Library 2002:Issue 2
2. 頭部 CT
◆CT の早期虚血サイン判定における読影者間のばらつき
・ 読影者間での一致率はやや不良である(6 段階評価の下から 3 番目 kappa=0.22) (III, E2) [1]。
・ 熟練医の方が研修医よりも鋭敏度・特異度とも高く、読影者間のばらつきは低い(熟練医:鋭敏度
61%、特異度 65%、interrater variability 0.51、研修医:鋭敏度 46%、特異度 56%、interrater
variability 0.38) (III, E2) [2]。
・ 単純 CT の早期虚血サインを定量化したスコア法である ASPECTS は、1/3 MCA rule と比べて読影
者間のばらつきが低く(kappa=0.67-0.82 vs. 0.26-0.76)信頼性が高い(III, E5) [3]。
・ 広範な早期虚血変化検出において読影者間のばらつきは ASPECTS よりも 1/3 MCA rule の方が低
い(III, E5) [4]。
◆急性梗塞病変における CT と拡散強調画像の検出能比較
・ 拡散強調画像は CT と比べて、検出能が有意に高い [2,5-8] 。
- 17 -
発症 6 時間以内の超急性梗塞に対して熟練医では鋭敏度 CT 61%、DWI 91%、特異度 CT 65%、
DWI 95%、研修医では鋭敏度 CT 46%、DWI 81%、特異度 CT 56%、DWI 100%であった (III,
E2) [2]。
発症 6 時間以内の超急性梗塞について拡散強調画像の鋭敏度 100%、特異度 100%に対して、
CT の鋭敏度 55%、特異度 100%であった (III, E2) [8]。
拡散強調画像は CT と比べ、早期虚血変化に鋭敏で、読影者間の一致率も高い。CT では MCA
領域の 1/3 を超える早期虚血変化での一致率が低いので血栓溶解療法を施行する際には限界が
あり、拡散強調画像を使う方がよいことが示唆された(III, E2) [7]。
◆CT での早期虚血サインと予後との相関
・ 早期虚血サインの存在は患者の予後と相関する (III) [9-12]。
しかしながら HMCAS の独立的な prognostic value はない (III, E5) [9]。
・ 早期虚血サインは予後との相関はない [13]。
・ ASPECTS>7 ではコントロール群と比較し経動脈的血栓溶解療法によって、介助なしの機能予後が
3 倍期待できる (III, E5) [14]。
◆急性期梗塞に対する CT の至適撮影条件
・ スライス厚、スキャン時間、電圧などの CT の撮影条件に関して、標準化されたプロトコールや前向き
臨床的研究はない。MELT Japan (MCA-Embolism Local Fibrinolytic Intervention Trial)の勧告
(http://melt.umin.ac.jp/ct/ct_gl01.htm)は参照すべきものと考えられる。
◆画像表示条件の影響
・ 標準ウインドウ幅/レベル(80/20)と比べて、可変ウインドウ幅/レベルでは 6 時間以内の超急性梗塞に
ついて有意な検出能向上を認めた(鋭敏度 57%, 特異度 100% vs. 鋭敏度 71%, 特異度 100%,
ROC 解析 p=0.03, one-tailed z test) (III, E2) [15] 。
◆文献
1) Dippel DW, van Beest Holle M, van Kooten F, et al: The validity and reliability of signs of early
infarction on CT in ischaemic stroke. Neuroradiology 2000; 42:629-633
2) Fiebach JB, Schellinger PD, Jansen O, et al: CT and diffusion-weighted MR imaging in randomized
order: Diffusion-weighted imaging results in higher accuracy and lower interrater variability in the
diagnosis of hyperacute ischemic stroke. Stroke 2002; 33:2206-2210
3) Barber PA, Demchuk AM, Zhang J, et al: Validity and reliability of a quantitative computed tomography
score in predicting outcome of hyperacute stroke before thrombolytic therapy. Lancet 2000;
335:1670-1674
4) Mak HKF, Yau KKW, Khong PL, et al: Hypodensity of >1/3 middle cerebral artery territory versus
Alberta stroke programme early CT score (ASPECTS) Comparison of two methods of quantitative
evaluation of early CT changes in hyperacute ischemic stroke in the community setting. Stroke
2003;34:1194-1196
5) Fiebach J, Jansen O, Schellinger P, et al: Comparison of CT with diffusion-weighted MRI in patients with
hyperacute stroke. Neuroradiology 2001; 43:628-632
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in acute stroke: study in 691 patients at presentation to the emergency department. Radiology 2002;
224:353-360
7) Hill MD, Rowley HA, Adler F, et al. Selection of acute ischemic stroke patients for intra-arterial
thrombolysis with pro-urokinase by using ASPECTS. Stroke 2003;34:1925-1931
8) Urbach H, Flacke S, Keller E, et al: Detectability and detection rate of acute cerebral hemisphere infarcts
on CT and diffusion-weighted MRI. Neuroradiology 2000; 42:722-727
- 18 -
9) Saur D, Kucinski T, Grzyska U, et al: Sensitivity and interrater agreement of CT and diffusion-weighted
MR imaging in hyperacute stroke. Am J Neuroradiol 2003;24:878-885
10) Manelfe C, Larrue V, von Kummer R, et al: Association of hyperdense middle cerebral artery sign with
clinical outcome in patients treated with tissue plasminogen activator. Stroke 1999; 30:769-772
11) Marks MP, Holmgren EB, Fox AJ, et al: Evaluation of early computed tomographic findings in acute
ischemic stroke. Stroke 1999; 30:389-392
12) Moulin T, Cattin F, Crepin-Leblond T, et al: CT signs in acute middle cerebral artery infarction:
predictive value for subsequent infarct locations and outcome. Neurology 1996; 47:366-375
13) Wardlaw JM, Lewis SC, Dennis MS, et al: Is visible infarction on computed tomography associated with
an adverse prognosis in acute ischemic stroke? Stroke 1998; 29:1315-1319
14) Patel SC, Levine SR, Tilley BC, et al: Lack of clinical significance of early ischemic changes on
computed tomography in acute stroke. JAMA 2001; 286:2830-2838
15) Lev MH, Farkas J, Gemmete JJ, et al: Acute stroke: Improved nonenhanced CT detection-benefits of
soft-copy interpretation by using variable window width and center level settings. Radiology 1999;
213:150-155
3. 頭部MRI
◆拡散強調画像・灌流画像を用いた血栓溶解療法後の機能予後推定
・ DIAS(desmoteplase in acute ischemic stroke)の結果 (Ib,E5)
Part 1: Desmoteplase投与量固定の25mg,37.5mg,50mg.Part 2: 体重補正を行った投与量
(62.5µg/kgで開始し90µg/kgから 125µg/kgまで)とプラセボ群との比較。
Part 1は治療群のICH発生率(26.7%)が高く中止。Part 2では治療群のICH発生率は2.2%。再灌
流は125µg/kg群10/14(71.4%)とプラセボ群2/10(20%)間に有意差あり(p=0.0012)。90日後予後良
好例はプラセボ群18.2%に比べ、125µg/kg群60%は有意に有効であった(P=0.0028)[1]。
・ 血栓溶解療法(経静脈性)を行った2編では、相反する結果である(III,E5)。
2
DWI/PWIミスマッチ症例で治療群と未治療群との間にNIHSS7以上の改善(χ =8.1, p<0.01)、自立
2
予後(χ =4.6, p=0.03)で差を認め、有意に治療群の予後がよい[2]。
DWI/PWIミスマッチ比やDWI, PWIでの異常域の体積は機能予後(modified Rankin Scale<2)と
相関を認めない[3]。
・ 静注t-PA投与後にMRIで虚血病変を評価し、DWI/PWIミスマッチ例にさらに動注を追加することに
より機能予後の改善がみられる (III,E5) [4]。
・ DWI/PWIミスマッチ比と最初NIHSSとが逆相関(r=-0.74, p=0.03)し、経動脈性血栓溶解療法による
血流改善比は1ヶ月後のNIHSSと逆相関(r=-0.83, p=0.01)した(III,E5) [5]。
・ DWI/PWIミスマッチの評価について (III,E2)
視覚的評価における評価者間信頼度は0.68 (95% CI, 0.52 to 1.0; SEM=21.6%),評価者内信
頼度は0.80 (95% CI, 0.47 to 1.0;SEM=16.9%)。
トレース法での評価では評価者間信頼度は0.66 (95% CI, 0.45 to 1.0; SEM=26.2%),評価者内
信頼度は0.94 (95% CI, 0.81 to 1.0;SEM=10.9%)であった[6]。
◆MRIによる頭蓋内出血の検出
・ CT を基準とした MRI の診断能は specificity 100%, sensitivity 100%, binominal CI of sensitivity:
97.07 to 100%であった。学生では平均 sensitivity 95.2%, specificity 95.5%と低い(IIa,E2)[7]
・ 急性期 focal stroke symptom 患者連続 200 症例を対象とし、25 例で CT,MRI 共に急性期出血を認
めた。4 例は MRI のみで急性期出血を認め、全例虚血部の出血性変化であった。3 例は CT のみで
- 19 -
急性期出血を指摘し、MRI では古い血腫と診断された。1 例は少量の SAH が検出され、MRI では
指摘されなかった。52 例に MRI でのみ慢性期出血を認め、CT では指摘困難であった。急性期血腫
の読影者間の一致率は CT の方が高かった(IIa,E2)[8]
◆MRIによる出血性合併症予測
・ 症候性出血群では、DWI volumeには差を認めなかったが、ADC coreの値が有意に低かった(ADC
-6
2
cut-off level=300×10 mm /s以下、感度100%、特異度71%、陽性尤度比3.4、陰性尤度比0)(III,E4)
[9] 。
-6
2
・ 多変量解析の結果、出血群(症候性、無症候性共に含む)ではADC値550×10 mm /s以下のボクセ
ル絶対数が有意に多かった(Odds ratio 1.176;p=0.042) (III,E4) [19]。
・ T2*WIにて無症候性の微小出血が見られた部位に一致して、血栓溶解療法後に症候性出血が認
められた症例あり[11]。しかし、微小出血の見られた群、見られなかった群間に統計学的有意差はな
いとの報告も見られる(III,E4) [12,13]。
◆参考1:主なランダム化比較試験
NINDS:The National Institute of Neurological Disorders & Stroke rt-PA Stroke
ECASS I & II:The European Cooperative Acute Stroke Study I & II
ATLANTIS:Acute Noninterventional Therapy in Ischemic Stroke
PROACT II:The Prolyse in Acute Cerebral Thromboembolism Trial II
◆参考2:MRI (拡散強調画像・灌流画像) による血栓溶解療法の適応指針
(Schellinger PD, et al: Imaging-based decision making in thrombolytic therapy for ischemic stroke
present status. Stroke 2003; 34:575-583より一部改変)(IV)
発症3-6時間では、MRI(DWI&PWI)あるいはCT-Perfusionにて梗塞域、虚血域を評価したうえで血栓
溶解療法を行うべきである。 その基準として
1. DWIで中大脳動脈(MCA)領域の33%以下の梗塞症例では治療を行う。
2. DWIでMCA領域の50%以上が侵されている症例では血栓溶解療法は行わない方がよい。
3. 議論中であるが現在我々の施設では以下の症例対しては経静脈性血栓溶解療法は施行しない。
a. 血管閉塞はあるがPWI/DWI(またはCT/CTA/CTA-SI)ミスマッチのない症例
b. ミスマッチはあるが、血管閉塞のない(遠位MCA領域)梗塞
c. 血管閉塞もミスマッチもはっきりしない症例(ラクナ梗塞)ミスマッチも血管閉塞もあるが、DWI(CTA-SI)
病変がMCA領域33%か50%の間にある症例
4. MCA領域梗塞で外側線状体動脈より末梢側の閉塞でミスマッチのある症例では、経静脈的または経
動脈的のいずれかあるいは両方が適応である。
5. 内頸動脈末梢部または近位MCA閉塞で、ミスマッチのある患者は再開通を図るべきである。
◆参考 3:DIAS における MRI 診断基準
(Hacke W et al: The Desmoteplase in Acute Ischemic Stroke Trial (DIAS): a phase II MRI-based 9-hour
window acute stroke thrombolysis trial with intravenous desmoteplase. Stroke, 2005; 36: 66-73 より MRI 所
見のみを抜粋)
対象項目(inclusion criteria)
・ 少なくとも 20%の PWI/DWI ミスマッチがあること (視覚評価による)
・ 半球皮質に異常が及んでいること
除外項目(Exclusion criteria)
・ 脳内出血がある
・ くも膜下出血がある
- 20 -
・
・
・
・
・
DWI での異常が MCA 領域の 1/3 以上である
灌流異常がない
同側の MCA,ACA 閉塞のない、ICA 閉塞症例
何らかの異常により DWI/PWI ミスマッチを正確に評価できないとき
MRI が禁忌である症例
◆文献
1) Hacke W., Albers G., Al-Rawi Y., et al., The Desmoteplase in Acute Ischemic Stroke Trial (DIAS): a
phase II MRI-based 9-hour window acute stroke thrombolysis trial with intravenous desmoteplase. Stroke,
2005; 36: 66-73.
2) Parsons M.W., Barber P.A., Chalk J., et al., Diffusion- and perfusion-weighted MRI response to
thrombolysis in stroke. Ann Neurol, 2002; 51: 28-37.
3) Rother J., Schellinger P.D., Gass A., et al., Effect of intravenous thrombolysis on MRI parameters and
functional outcome in acute stroke <6 hours. Stroke, 2002; 33: 2438-2445.
4) Suarez J.I., Zaidat O.O., Sunshine J.L., et al., Endovascular administration after intravenous infusion of
thrombolytic agents for the treatment of patients with acute ischemic strokes. Neurosurgery, 2002; 50:
251-259; discussion 259-260.
5) Uno M., Harada M., Yoneda K., et al., Can diffusion- and perfusion-weighted magnetic resonance
imaging evaluate the efficacy of acute thrombolysis in patients with internal carotid artery or middle
cerebral artery occlusion? Neurosurgery, 2002; 50: 28-34; discussion 34-25.
6) Coutts S.B., Simon J.E., Tomanek A.I., et al., Reliability of assessing percentage of diffusion-perfusion
mismatch. Stroke, 2003; 34: 1681-1683.
7) Fiebach J.B., Schellinger P.D., Gass A., et al., Stroke magnetic resonance imaging is accurate in
hyperacute intracerebral hemorrhage: a multicenter study on the validity of stroke imaging. Stroke, 2004;
35: 502-506.
8) Kidwell C.S., Chalela J.A., Saver J.L., et al., Comparison of MRI and CT for detection of acute
intracerebral hemorrhage. JAMA, 2004; 292: 1823-1830.
9) Oppenheim C., Samson Y., Dormont D., et al., DWI prediction of symptomatic hemorrhagic
transformation in acute MCA infarct. J Neuroradiol, 2002; 29: 6-13.
10) Selim M., Fink J.N., Kumar S., et al., Predictors of hemorrhagic transformation after intravenous
recombinant tissue plasminogen activator: prognostic value of the initial apparent diffusion coefficient
and diffusion-weighted lesion volume. Stroke, 2002; 33: 2047-2052.
11) Coutts S., Frayne R., Sevick R., and Demchuk A., Microbleeding on MRI as a marker for hemorrhage
after stroke thrombolysis. Stroke, 2002; 33: 1457-1458
12) Derex L., Nighoghossian N., Hermier M., et al., Thrombolysis for ischemic stroke in patients with old
microbleeds on pretreatment MRI. Cerebrovasc Dis, 2004; 17: 238-241.
13) Kidwell C.S., Saver J.L., Villablanca J.P., et al., Magnetic resonance imaging detection of microbleeds
before thrombolysis: an emerging application. Stroke, 2002; 33: 95-98.
4. 脳循環検査
a. MR 灌流画像
◆MR 灌流画像による虚血、DWI/PWI mismatch の検出
・ 造影灌流画像は conventional MRI(T2WI, PDWI, T1WI)より早期に虚血を診断できる[1,2,3]。
(DWI+PWI 89%, conventional MRI 53%,χ2=26.938, p=0.0006 [3])
・ 灌流異常は拡散異常と同等かそれよりも広い範囲に存在する(PWI/DWI mismatch)。DWI/PWI
mismatch の中で最終梗塞に増大する[4-37]
・ DWI/PWI mismatch の症例で最終梗塞が増大すると神経症状も悪化する[7,2035,37]。
- 21 -
・ 発症早期ほど PWI/DWI mismatch の率は高い [8,31,38]。
・ 皮質枝領域の diffusion perfusion mismatch 領域は高次機能異常をきたしうる[39-41]。
◆MR 灌流画像の適応
・ 前方循環系の閉塞が疑われる場合が MR 灌流画像の対象となる。
・ TIA 症例でも灌流異常が起りうるが、MR 灌流画像を施行する意義は示されていない[44]
・ 臨床的なラクナ症候群において塞栓性 striato-caspsular infarction を診断可能とする報告があるが[7]、
通常はラクナ梗塞では診断能に限界がある[43]。
・ FLAIR の血管内閉塞が灌流異常域を示し、造影灌流画像の適応判断の一助となる[45]。
・ T2*強調画像における中大脳動脈分岐部よりも近位側の susceptibility sign は内頸動脈から右中大
脳動脈の血栓性閉塞を表し、その 83.9%に中大脳動脈領域に灌流異常を認めたことから前方循環
系の造影灌流画像の適応判断の所見となりうる[46]
◆MR 灌流画像解析パラメータの比較と意義
・ Transit time(TTP、 MTT)の延長域は rCBV, rCBF 異常域よりも広い範囲に存在する[19] とくに非可
逆的な領域,梗塞領域では著明に延長する[13、47]。
・ TTP6 秒以上の延長領域の 75%が梗塞の閾値となり、4 秒以下は梗塞に陥らない。TTP4 秒以上の
延長は神経学的予後(ESS score)と相関する(r=-0.88, p<0.001)、TTP=4 秒は機能的予後の閾値とな
る [47]。
・ 15O-water PET による CBF 20 mL/100 g per min 以下の領域との比較では,TTP4秒以上の延長領
域がもっとも感度と特異度が高い(84%/77%)[49]。
・ TTP 延長が大きい(秒数)症例では血栓溶解療法後の開通率が低く、TTP 延長領域が大きい症例
では、神経学的予後も不良である[35]
・ MTT4 秒以上(r2=0.86, P<0.001)または 6 秒以上(r2=0.85, P<0.001)の延長が梗塞に進行する閾値と
なる [13]。
・ devconvoluted MTT が最終梗塞の感度が高く、内頸動脈狭窄例では最終梗塞と相関する[12]。
・ MTT 延長域は perfusion CT による rCBF34%異常低下域と一致する(r=0.946, P<0.001)[48]
・ 梗塞領域は rCBF が低下している。rCBF の低下域は梗塞に進行する
[12,15,16,23,26,30,47,50,51]。
・ Deconvoluted rCBF 健常対側比 50%以下で有意に ADC が低く(p=0.04) 拡散異常域が大きく
(P=0.001) 灌流異常(MTT 延長)域が大きく(P=0.01)神経学的予後(NIHSS score)が不良 (P=0.02)
であった[10]。
・ rCBF 健常対側比 0.59 以下、 対側比 MTT 延長 1.63 以上が梗塞の閾値が梗塞の閾値である。
rCBF は rCBV や MTT よりも penumbra の感度、特異度が高い[19]。
・ rCBF 健常対側比 48%以下が梗塞と閾値となる(感度 88%、特異度 66%)[27]。
・ 健常対側比で rCBF0.36 以下、 rCBV0.53 以下、ADC0.85 以下、拡散画像信号比 1.23 以上では可
逆的な領域はない(梗塞になる)。また rCBF 比 0.79 以上では梗塞に陥らない(可逆的である)[52]。
・ ADC は発症から経時間的に低下し、CBF 閾値 21 mL x min(-1) x 100 g(-1)。 以下で ADC の急激
な低下を生じる。発症 4 時間以内と比較して時間が経過すると(4.5~6.5 時間)では閾値が上昇する
(15 mL x min(-1) x 100 g(-1) vs. 24 mL x min(-1) x 100 g(-1))[47]。
・ 血栓溶解療法後の hyperperfusion(rCBV, rCBF の上昇)では梗塞に進行し、溶解術前の ADC が低
く、溶解療法前に有意な灌流異常(rCBF 低下、 rCBV 低下、 rMTT 延長 )を認めた(P<0.0001)
[12]。
・ rCBV は循環予備能の代償(毛細血管の反応性拡張と側副循環)により上昇するが、予備能の限界
を越えて灌流圧が低下すると rCBV は低下する[25]。梗塞領域では rCBV が著明に低下している。
- 22 -
rCBV の低下域は梗塞になる[6,12,19,21-23, 25,26,48,51,53,54,55]。
・ 発症 6 時間以内の rCBV 低下は Tc-99mHMPAO SPECT による rCBF 低下に良好に相関(MR
rCBV=0.25+0.91xCBF, r2=0.54, p<0.0001 [53])。
・ rCBV 低下域が DWI 異常域とともに最終梗塞と相関する(感度 74%, 陰性的中率 81%, 特異度
100%, 陽性的中率 100%, [5])。
・ rCBV の低下は SPECT による rCBF の低下と一致し梗塞に進行する (MR rCBV=0.26+0.78 xCBF,
r2=0.43, p<0.0001) [53]。
・ 対側比 rCBV87%以下の低下では梗塞の閾値となる(感度 83%,特異度 82%)[23]。
・ rCBV からは可逆性の閾値は設定できないとする報告もある[16]。
・ ただし rCBV については急性期虚血状態では循環予備能、側副循環の程度により上昇してから低
下、梗塞にいたるので、異常の定義を明確にし、時間を細分した検討が必要である[16,22,55,56]。
・ arterial input function(AIF)測定による deconvolution 法により、正確な評価が可能となると報告されて
いるが [11,57-60]、MR 灌流画像における方法論の標準化はされていない。
・ AIF の測定部位により得られるデータに差異がある[20]
・ 更に Bolus delay 補正(bolus delay correlation)の有用性が報告されている[57]。
・ その他のパラメータとして cerebral blood flow heterogeneity (FH)[34]や、cerebral blood flow
index(CBF index)[50] delayed perfusion(DP)[61], residue function[60]による報告がある。
・ FH は神経症状を相関する[34]
・ CBF index 異常病変容積は最終梗塞容積と相関する。[50]
・ DP は脳虚血超急性期の側腹部血流、rCBV を反映する[61]
◆MR 灌流画像による血栓溶解療法の適応の決定
・ DWI/PWI mismatch の存在が溶解療法の適応となりうる[4,7,9,18,27,32,35, 37,38,57,60, 63-68]。
・ 術前の可逆的、非可逆(treatable or non-treatable, salvageable or non-salvageable, viable or
non-viable)の評価方法とその閾値についての報告はまだない。
・ 経静脈性血栓溶解療法の再開通率は DWI/ PWI (TTP) mismatch 比と相関する(r2=-0.49, P=0.01)
[4]
・ ECASS II, NINDS criteria を用い、造影灌流画像を施行した(DWI/PWI mismatch は 86.3%に認め
た)多施設非ランダム化試験があり、再開通率は溶解群で高く(溶解群 66.2% vs 非溶解群 32.7%,
p<0.001) 、 機能的予後(mRS)も良好であった(P=.00016)。 DWI/PWI mismatch の有用性を結論し
ているが、灌流画像の解析因子も不明であるし、適応決定の詳細な解析がない[62]。
・ 経静脈血栓溶解療法直後の初期評価に造影灌流画像を用い、DWI/PWI (TTP) mismatch が残存
する症例に経動脈溶解療法を追加施行し、経静脈単独よりも、神経学的短期予後 (24 時間後、120
時間後の NIHSS score)改善をみた(p<0.05)が、出血性梗塞も回避できなかった[9]。
・ DWI / PWI (TTP) mismatch 症例に血栓溶解療法を施行したが、溶解群と非溶解群で NIHSS score
に有意差を認めず、症候性の出血合併 hemorrhagic transformation は溶解群に多く,神経学的予後
不良であった[18]。
・ 3 時間以内群と 3-6 時間群で灌流異常容積(TTP 延長)に有意差はなく、経静脈性血栓溶解療法後
の最終梗塞の容積にも有意差はなく、6 時間以内までを血栓溶解療法の適応となりうるとする報告が
ある[38]
・ Ostergaad による Tmax 6 秒以上、もしくは 8 秒以上が penumbra と比較して梗塞になる非可逆的な
core の閾値となる[60]。
・ DIAS(Desmoteplase in Acute Ischemic Stroke Trial)では、発症 3-9 時間で DWI/PWI ミスマッチ症例
を対象に経静脈性に desmoteoplase 125 g/kg を投与し、再開通率および 90 日予後に有意差を得
た(再開通率:プラセボ群 19.2% vs 投与群 71.4% (P=0.0012)予後良好:プラセボ群 22.2% vs 投与
- 23 -
群 60.0% (P=0.009))(II)[69]。
・ 血栓溶解療法の適応に rCBV、rCBF を用いた報告はない。
・ CEA の適応、術後評価に拡散強調画像、造影灌流画像を用い、CEA 後に灌流異常の改善を認め
た症例報告があるが CEA 適応決定のエビデンスになりえていない[5]。
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b. CT 灌流画像
◆脳梗塞検出の感度、特異度
・ single slice perfusion CT の急性期脳梗塞を疑われた患者の感度は、89% [1],93% [2,3], 95%[4]とか
なり高い(III, C1)。
・ 最近では Multimodal CT として,単純 CT, CTA, perfusion CT を組み合わせて評価する場合もあり,
単独のものより感度,予後予測とも向上するという報告がある[5] (III, C1)。
◆予後予測
・ 定量的 CT 灌流画像を用いて、虚血域、梗塞巣の区別すること、最終梗塞域の予想、予後を予想す
る点での報告は近年、とくに 2002 年以降に多い[2,6,7,8-11, 12] (III, C1)。
・ 対側比で 70%以上の低下は梗塞[15]という報告や、CBF34%以上低下域を虚血域・その中で
CBV2.5ml/100g 以上低下域を梗塞巣とする基準での予後予想と拡散強調像、 CT 灌流画像との一
致との報告[8,9]や,梗塞体積の一致[6,7]などがある(III, C1)。
◆検査法
・ Perfusion CT の方法は,1 から数スライスの同一部位を 1 分ほどスキャンしつづけて,time-intensity
curve から解析する方法が主流で,理論的には CBV, CBF, MTT が算出可能である。
・ ほかに,全脳を 3-5 相撮影する手法[3,6],特定のタイミングで全脳を撮影し CBV のみを得る方法
[15]なども用いられ,それらでも MRI と比較して同等との報告[6]や,予後予想に有用であったとの報
告[13,15]がある。
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c. 脳血流 SPECT
◆無治療例(発症 6 時間以内)
・ 血栓溶解を行っていない症例では、CBF 対側比 52%以上で有意に梗塞となっていない(III)[1]。
・ 無治療あるいは非開通例では CBF 対側比 63.7±6.5%の領域が梗塞にならない(III)[2]。
・ 梗塞部の CBF は対側比 4-45%、定量値 1.7-20ml/100g/min、梗塞周囲の非梗塞部は対側比
52-104%、定量値 20-52ml/100g/min である(III)[3]。
・ 梗塞部の CBF は対側比 0.48±0.14、梗塞周囲の非梗塞部は対側比 0.75±0.10 であった(III)[4]。
◆血栓溶解療法(3 時間以内)
・ 発症 3 時間以内の再開通では、虚血病変の可逆性は発症からの時間と CBF の両方が関与してい
る(III)[5]。
・ 発症 2.5 時間後に再開通した症例では低い CBF 対側比(40%)でも梗塞になっていない(III)[6]。
◆血栓溶解療法(3-6 時間)
・ 血栓溶解後に再開通した症例では、CBF 対側比 50%以上(III)[5]、CBF 小脳比 55%(III)[7,8]で
梗塞になっていない傾向があり、発症からの時間に影響を受けない。
・ すぐに再開通しなかった症例でも、CBF 対側比が 70%以上では梗塞にならない(III)[6]。
・ 急性期血栓溶解療法で救われるのは限られた範囲の CBF 低下を示す病変(CBF 小脳比 0.55 –
0.75)である(III)[9]。
・ CBF 小脳比が 35%以下では出血性脳梗塞が有意に多い(III)[10]。
- 28 -
・ 発症 5 時間以内の再開通では CBF と発症からの時間が病変の予後に影響しており、CBF 小脳比
が 35%以上なら梗塞にならない傾向がある(III)[10]。
◆文献
1) Hatazawa J, Shimosegawa E, Toyoshima H, et al: Cerebral blood volume in acute brain infarction: a
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intra-arterial thrombolysis in acute ischemic stroke by initial SPECT. Stroke 1994; 25:298-303
d. Xenon CT
◆CBF 定量値と臨床予後の関連
・CBF<15 の領域は不可逆梗塞に陥る(n=32) (III)[3].
・CBF<15 では,高度の浮腫,ヘルニアが有意に多い(n=20) (III)[4]
・CBF<6 の領域が最終梗塞の範囲に対応(n=20) (III)[5].
・CBF<6 でも 90 分以内に再疎通した領域は可逆性の場合がある(n=1)[6].
・脳ヘルニア発生症例,非発生症例の平均 CBF はそれぞれ 9, 18(n=20) (III)[7].
・TIA 症例,梗塞症例の平均 CBF は,それぞれ 35.4,17.3(n=53) (III)[8].
・大脳基底核の低吸収例,MCA 主幹閉塞例では有意に CBF 低値(n=20) (III)[9]
・CT に CTA, Xe-CT を追加することで,予後の予測能向上の可能性(n=51) (III)[10]
◆出血リスクとの関連
・CBF<8 の領域は血栓溶解後の出血リスクが高い(n=20) (III)[7].
・Acetazolamide 負荷テストの追加により出血性梗塞発生の予測率が向上.しかし最終予後の予測に
は不適(n=19) (III)[3].
- 29 -
◆CBF の半定量値と臨床予後の関連
・Core の CBF 値にはばらつきが多いが,Core と Penumbra の CBF 比が予後と相関(n=51) (III)[11].
・CBF の対側半球比と臨床予後(NIHSS スコア)が相関(n=50) (III)[12].
◆他のモダリティとの比較
・Xenon は,マイクロスフェア法,オートラジオグラフィー法などの実験的 CBF 計測法との対比において
も,低 CBF から高 CBF まで広い範囲にわたり定量性に関する信頼性が高い(IV)[13].
・SPECT,CT 灌流画像などとの相関が高いが,灌流領域により異なる(III)[14,15,16,17].
・PET との相関は不良であり,その原因は PCO2 にあるものと考えられる(III)[18].
・Xe-CT の CBF と,CT 灌流画像で得られる MTT との間に有意の逆相関(III)[19,20,21].
◆その他
・対側大脳半球,小脳半球の CBF も同時に低下(III)[22].
◆文献
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9) Firlik AD, Kaufmann AM, Wechsler LR, et al. Quantitative cerebral blood flow determinations in
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5. 椎骨・脳底動脈系
◆椎骨脳底動脈閉塞を疑う場合の閉塞の確認
・ 脳底動脈閉塞に関する CTA の鋭敏度は 95%である(Ⅲ、E3)[10,12 ]。
・ スクリーニング検査として MRA は有効であるが、頭蓋内椎骨動脈の病変の評価には注意が必要で
ある(Ⅲ、E2) [8]。
頭蓋外椎骨動脈閉塞の陽性的中率(78%)、陰性的中率(99%)、尤度比(16.5)
頭蓋内椎骨動脈閉塞の陽性的中率(74.5%)、陰性的中率(90.5%)、尤度比(8.5)
脳底動脈閉塞の陽性的中率(73%)、陰性的中率(100%)、尤度比(6.4)
・ ドップラーUS の診断能は低い(鋭敏度;35%)(Ⅲ、E3)[12 ]。
・ 単純 CT による椎骨脳底動脈の高吸収サインに関して、鋭敏度、特異度を算出できる報告はない。
・ MRI の FLAIR 法による閉塞動脈の高信号サインは、後方循環系では偽陰性となり、有用性はない
(Ⅲ、E2)[7]。
◆椎骨脳底動脈系の超急性期脳梗塞における拡散強調画像の有用性
・ 報告例が限られる。
・ 発症 24 時間以内においては拡散強調画像のほうが T2強調画像よりも診断能が高い。しかし、必ず
しも拡散強調画像での信号変化が T2強調画像や FLAIR 像より先行するとは限らない(Ⅲ、E2.3) [5、
6]。
・ NIHSS score と病巣体積には相関がない(Ⅲ、E3)[5 ]。
・ 発症 5 時間以内においては DWI の虚血巣検出能はテント上の検出能よりも低い(Ⅲ)(E2) [1]。
・ 延髄の病巣は他の部位(橋、中脳、視床)より同定しにくい(Ⅲ、E2)[1 ]。
◆椎骨脳底動脈系の急性期脳梗塞における SPECT の有用性(Ⅲ、E2)[17]
・ 発症 24 時間以内の後方循環系虚血における SPECT の感度は CT にくらべて低い。
・ CT、 MRI、 SPECT における感度の比較
- 31 -
SPECT:43%(脳幹部: 0%、視床:14%)
CT:68%(脳幹部:33%)
MRI:93%(脳幹部:91%)
◆病型(アテローム血栓性、心原性塞栓症、ラクナ梗塞)の鑑別
・ ラクナ梗塞は、いわゆる branch atheroma (頭蓋内小動脈アテローマ)によるものが多い(Ⅲ、
E3)[ 4 ] 。
・ 主幹部アテローム梗塞と心原性塞栓は、いずれも中脳、視床など後方循環系の末梢部に多発性梗
塞を生じやすい(Ⅲ、E3)[ 3 ]。
・ 心原性塞栓では前方循環系にも虚血巣を認める頻度が高い(Ⅲ、E3)[9]。
◆脳底動脈閉塞における血栓溶解療法の適応決定における画像診断の役割
・ 治療前の CT 所見が陽性か陰性かは、予後および出血の発生と関係しない(Ⅲ、E2)[15 ]。
・ 拡散強調画像で病変が小さいときは再灌流させることで予後は向上する(Ⅲ、E2)[2]。
・ 発症からの時間とは独立しており time window の関与は少ない(Ⅲ、E2) [2,18]。
・ 再開通率は CT で脳底動脈の高吸収サインが見られることと相関する(Ⅲ,E4)[1]。
◆文献
1) Arnold M, Nedeltchev K, Schroth G, et al: Clinical and radiological predictors of recanalisation and
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16) Brandt T, Knauth M, Wildermuth S, et al: CT Angiography and Doppler sonography for emergency
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6. 頭部 CT の被曝
◆CT 被曝の概要
・ 本邦における 1 人1年当たりの線量は、自然放射線源から約 1.4mSv、医療被曝が約 2.4mSv で、そ
の 3 分の1の 0.8mSv が CT による被曝となっている。
・ 多列検出器 CT(MDCT)の進歩・普及により、医療被曝における CT の割合が増大してきている
(20,22,38)。
・ CT のうち頭部検査の占める割合は成人で約 40%、小児では 80%である(38)。
◆小児 CT 被曝における問題点
・ 小児でも成人と同様な機器メーカの勧める撮影条件で CT 撮影がなされている場合がある。また、小
児の場合、線量を低くしている施設でも技師が経験的に行っていることが少なくなく、ばらつきも大き
い(4, Ib, E1)。
・ このような条件で撮影された場合、放射線により付与されるエネルギーは小さいものの、実効線量と
しては成人の 2-6 倍になると言われる(11,14,22, IIb-III, E1)。
・ 小児 CT では成人に比べ生涯被曝の危険度が有意に増加し、米国で年間 500 人の小児が CT の被
曝により将来がんで死亡すると概算した報告がある。(1, IIb-III, E6)
・ 乳児期の低線量被曝が成人期の認知機能障害の原因となる可能性を示唆する研究があり、頭部
CT による被曝でも、この原因となりうる線量に達する可能性がある(7, IIb, E6)。
◆被曝による発がんのリスク
・ 発がんの可能性については数学モデルによる予想がされている。5 歳の小児で 100mGy の体部の
被曝で致命癌発生率は 1.2-1.5%上昇、15 歳の女児に対する同様な被曝で乳ガンが 0.3%増加し、
35 歳未満の女性で乳房に 10mGy の被曝で 14%乳ガンが増加すると推定される。胎児被曝でも白血
病や他の悪性腫瘍の発生率上昇が理論上は指摘されている(22, IIb-III, E1,6)。
・ Xe-CT や灌流 CT では繰り返しの撮影が必要なため不適切な条件での撮影では被曝量が多くなる
可能性があり、前者については発癌増加の可能性を指摘する報告もある(26, III, E1)。
◆頭部 CT での水晶体被曝
・ 頭部 CT では、スキャン角度の不適切などにより、不必要な水晶体被曝がなされている可能性がある。
- 33 -
(15,23, III, E1)
◆Xe-CT および灌流 CT における被曝の問題点
・ stable Xe-CT や灌流 CT では同一部位が繰り返しスキャンされるため被曝量が多くなる。
・ 被曝低減については灌流 CT について以下に述べる若干の検討がなされているのみで、これらの至
適条件についての十分な検討は未だなく、撮影条件の標準化が必要である。
◆CT 被曝と他の医療被曝の比較
・ 通常の腹部 CT における表面線量は、胸部単純撮影の 200-300 倍、頭尾方向の乳腺撮影の 20-30
倍、腹部単純撮影の 10-20 倍となる(22)。
・ 一方、実効線量では、頭部 CT では頭蓋骨単純撮影の 29 倍、胸部 CT では胸部単純撮影の 400
倍となる(13)。
X 線検査における主な医療被曝(皮膚線量)(35)。
検査の種類
皮膚線量(mGy)
30-70
頭部 CT
20-50
胸部 CT, 腹部 CT
200-600
CT 透視(1 分あたり)
0.2-0.3
胸部単純撮影
3-4
腹部単純撮影
10
透視(1 分あたり)
0.1
<参考> 国際線旅客機(往復)
X 線 CT 検査と単純 X 線撮影による典型的線量(13)。
X 線 CT における実効線量(mSv)
単純撮影における実効線量 (mSv)
2
0.07
頭部
頭蓋骨
8
0.02
胸部
胸部 (PA)
10
1.0
腹部
腹部
10
0.7
骨盤
骨盤
7
注腸造影
◆CT 被曝の目安(診断参考レベル)
・ 医療被曝は、被検者が自分自身の診療の為に受ける放射線被曝であり、医師の判断と防護の最適
化を前提としているため、線量限度が規定されていない。
・ 装置の違いや施設間における被曝量の格差が必要以上にならないために、局所線量や被曝量の
目安があると望ましい。
・ European Guidelines on Quality Criteria for CT(http://www.drs.dk/guidelines/ct/quality/)では CT の
診断参考レベル(reference dose value)を設けている(5,13,35)。また、小児における目安なども提唱
されている(13.28)。
成人患者の CT 検査に対する診断参考レベル(文献 5 から抜粋)
CTDIw (mGy)
部位
DLP (mGy・cm)
60
1050
頭部 CT
35
360
顔面・副鼻腔
30
650
胸部 CT
腹部 CT
骨盤 CT
35
35
- 34 -
780
570
小児患者の頭部 CT 検査に対する参考線量(文献 28 から脳 CT のみ抜粋)
CTDIw (mGy)
部位
患者年齢(歳)
DLP (mGy・cm)
40
300
脳
<1
60
600
脳
5
10
70
750
脳
・ 日本放射線技師会医療被曝ガイドライン委員会医療被曝ガイドライン(36)では CT による医療被曝
低減目標値が提唱されている。
検査部位
撮影法
ファントム内の中心線量*(mGy)
頭部
コンベンショナルスキャン
40 (直径 16cm)
腹部
コンベンショナルスキャン
11 (直径 30cm)
腹部(胸椎)
CT 透視(10 秒当たり)
3.2(直径 30cm)
*アクリル製円筒形ファントム
◆参考
“診断用 X 線による発がんリスク”の論文に関するコメント(2004 年 3 月 10 日)
社団法人 日本医学放射線学会
日本では診断用 X 線によってがんが 3.2%(年間 7587 件)増える可能性があるという論文 (Amy
Berrington de Gonzalez, Sarah Darby: Risk of cancer from diagnostic X-rays: estimates for the UK and 14
other countries. Lancet 363:345-351, 2004)がメディアでも報道されて注目を集めている。論文では、X 線診
断 は大きな利益をもたらすこと、診断による被ばく量は通常少なく、個別の発がんのリスクはきわめて小さい
ことが最初に記されているが、診断用 X 線の被ばくによって、9 種のがん(食道、胃、結腸、肝臓、肺、甲状
腺、乳房、膀胱、白血病)など放射線で誘発され得るすべてのがんが 75 歳までの期間に発生する確率を、
英国と先進 14 か国について推定している。
この論文の根拠は、公表されている X 線診断の頻度、線量データ等を用い、英国の年齢別データ等に
当てはめて計算した集団実効線量から、発がんのリスクを、放射線防護体系において採用されている直線
しきい値なし仮説に基づいて推定したものである。しかしながら、X 線診断のように、10〜50 mSv 以下の低
線量被ばくによる発がんの可能性、および発がん率の推定法には、いまだ定説がないことも事実である。
この論文が指摘した重要な点は、日本の X 線検査数が世界でも飛び抜けて多いこと、日本の CT 台数
は、人口あたりの比較で他の 14 か国の平均の 3.7 倍も多いことである。また日本の年間の CT 総件数の統
計が得られなかったとも述べているが、この点はまもなく明らかとなる(註 1)。日本では、CT 装置の普及率が
高いこと、および健康保険制度による医療機関受診の容易さが検査数の増加をもたらしているのは事実で
あり、それだけに利益を受ける人々の数も多いと考えられるが、不必要な検査の増加は避けなければならな
い。
個々の X 線検査のリスクはきわめて小さいが、検査を依頼する医師を含め、放射線診断に関わるすべ
ての医師および医療従事者は、放射線が発がんのリスクを増やす可能性があることを正 しく認識し、撮影
の条件、範囲、回数などに留意し、可能な限り線量低減に努力すること、そして X 線検査を受ける個人に、
より大きな利益がもたらされるよう、適切な診療を行うことが必要である(註 2)。これは特に小児や若年者の検
査において重要である。
註 1) 西澤かな枝、他、 CT 検査件数及び CT 検査による集団実効線量の推定。日本医放会誌
2004;64:151-158 (38)
註 2) 画 像 診 断 ガ イ ド ラ イ ン -2003( 日 本 放 射 線 科 専 門 医 会 ・ 医 会 、 日 本 医 学 放 射 線 学 会 編
www.jcr.or.jp)などが参考となる。
- 35 -
LANCET 論文に関する一連のマスコミ報道について
(Vol.60 No.3)日本放射線技術学会
医療分野において放射線の果たしている役割は大きく、疾病の診断だけでなく治療手段としても広く用いら
れています。一方、国民が受ける放射線源の中で医療放射線の占める割合が最も多いこともよく知られてい
る事実です。1 月 31 日に発行された英国 LANCET 誌に「Risk of cancer from diagnostic X-rays: estimates
for the UK and 14 other countries 診断 X 線検査による発がんのリスク:英国と他の 14 カ国における推定」が
掲載され、内外に波紋を投げかけましたが、2 月 10 日の読売新聞に「国内がんの 3.2%検査被ばく原因」と
紹介されたことで読者の関心を呼ぶとともに、「15 カ国で突出 CT 普及影響か」との見出しは、病院で CT 検
査を受けた国民の不安を掻き立てる状況が生じています。また、この件は、いくつかの新聞や TV 報道でも
取り上げられました。 確かにわが国は、国民一人当たりの医療被ばくが世界で最も多く、CT の稼働台数は
1 万台を超えており、世界の約 1/3 がわが国で稼働しているとも言われております。その結果、大血管や末
梢血管などの血管造影検査の多くが DSA から MDCT に移行し、患者さまへの侵襲度が大幅に低減してい
ます。また、肺がん検診などにも利用され、従来の胸部 X 線画像では捕らえることが不可能だった微細な病
変まで描出可能となり、国民の健康福祉に貢献しています。 このように、新しいモダリティの出現に際して
は、従来の検査法との整合性を図るとともに、最適な検査法を確立してきました。 日本放射線技術学会に
おいては、疾病に対応した放射線診療装置の有効な利用方法、 および利用に際しての放射線被ばく最適
化の研究を推し進めるとともに、毎年、市民公 開シンポジウムを開催し、医療放射線の有効利用と被ばくの
最適化を国民に理解して頂く努力をしてきた経緯があります。会員各位におかれましては、今後も一層 CT
など放射線診療装置の有効利用と放射線被ばくの最適化の実践に努められることをお願いします。また、
新聞報道に関連して放射線診療装置の有効利用が阻害され、本来、患者が受ける利益が損なわれること
のないよう配慮するとともに、問いかけには誠意を持って対応して下さい。
◆文献
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- 37 -
◆放射線被曝についての用語集
I. 放射線防護のために用いられる基本的物理量
1. 照射線量 exposure(記号 X) と空気カーマ air kerma (K)
A.照射線量、空気カーマともに X 線・ガンマ線の場を表す量。
B.従来、照射線量が用いられていたが、ICRP(国際放射線防護委員会) Publication
74 (1997) にて空気カーマが使用され、放射線防護に使用される防護量や実用量
が、空気カーマからの算出量となった。日本でも 2000 年の放射線障害防止法関係
法令の改正で、空気カーマが取り入れられた。
C.照射線量は「光子が空気中で電離作用により発生させた電荷の量により表される線
量」で、単位としてかつてはR(レントゲン)が用いられた。SI 単位系では C(クーロ
ン)/kg である。
D.カーマ kerma(kinetic energy of charged particles released in material の略)は、「物
質中で非荷電粒子放射線が相互作用により発生させた二次荷電粒子に与えた初
期運動エネルギーの総和」と定義される。単位はグレイ(Gy)または J/kg である。空
気中で測定したカーマ量を空気カーマという。このカーマ量は二次電子が放射する
制動 X 線によるイオン電荷を無視できる(エネルギーが極端に大きくない,あるいは
極端に小さくない)場合は,その物質の吸収線量に等しい。
E.空気カーマ 1Gy = 29.7mC/kg = 115R (1R=0.000258 C/kg,)
2. 吸収線量 absorbed (radiation) dose (記号 D)
放射線照射により、ある物質の単位質量あたりに与えられた平均エネルギーの量で、
単位は Gy または J/kg である。
3. 線量当量 dose equivalent (記号 H)
A. 放射線による生物学的影響を考えるときの基本量は、吸収線量だが、中性子線や
アルファ線などは同じ吸収線量であっても X・γ線と生物学的影響の程度が異な
っている。そこで放射線の種類やエネルギーによらず、放射線が人体に及ぼす影
響を同じ尺度で扱うための量として線量当量が考え出された(国際放射線単位測
定委員会 ICRU が 1962 年に導入)。
B. 吸収線量(D)と放射線の種類とエネルギーによって決まる補正係数(線質係数 Q)
との積として得られる。
C. SI 単位は吸収線量と同じ J/kg であるが、吸収線量(D)との混同をさけるため、シー
ベルト(Sv)が用いられる。
4. 等価線量 equivalent dose (記号 HT)
A. 放射線の種類やエネルギーによらず、放射線が人体に与える影響を表現するため
に 1990 年に ICRP が導入した量。
B. 放射線の線質によって重み付けされた臓器・組織の平均吸収線量であり、臓器・
組織の平均吸収線量(DT)と放射線荷重係数(WR)の積として得られる。
C. 単位は Sv である。
D. 線量当量が着目したある1点における値であるのに対し、等価線量は臓器・組織
全体にわたる吸収線量の平均を示す。人体における放射線の確率的影響を評価
するには等価線量が、放射線防護のためのモニタリングの点では線量当量が用い
られる。
5. 実効線量(旧 実行線量当量) effective dose(記号 E) (effective dose equivalent, HE)
A. 臓器・組織によって放射線に対する確率的影響の生じる確率や質は異なるため、
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等価線量が同一であっても違いが生じてくる。そのため、全身被曝したときの影響
を評価するために考案されたのが実行線量である。
B. 各臓器の等価線量(HT)に組織荷重係数(WT)を乗じ、それらの総和として得られ
る。
C. 単位は Sv である。
#これらの基本的物理量の解説については、http://www.jaeri.go.jp/dresa/dresa/index.htm が参考に
なる。
II. CT の局所線量や被曝を表すための指標(19,33,34,35.37)
CT のスライスの体軸(z 軸)方向の線量分布曲線(線量プロファイル)は、X線ビームのコリメーション
の不完全さや光子の照射物内での散乱により、実効スライス厚の範囲外に広がっている。そのため、
連続する多断面の撮影では、撮像断面の線量に加え、実効スライス外に伸びた裾野の線量が上乗せ
され、単一断面の撮影に比べ線量が高くなる。この影響を含めた CT の被曝線量を評価するために、
幾つかの CT 独特の指標が考案されている。ここでは、multiple scan average dose (MSAD), computed
tomography dose index (CTDI), dose-length product (DLP)について解説する。
1. MSAD (multiple scan average dose)
ある範囲を多断面でスキャンした場合の
スキャン間隔当たりの平均線量を表した
のが MSAD であり、以下のようにして定
義される。
MSADN ,I
1
=
I
∫
I /2
− I /2
DN ,I (z)dz
I はスキャン間隔、DN,I はある範囲を断面厚 T,間隔 I で N 回スキャンしたときの体軸方向の
線量プロファイルを示す。単位は通例 mGy を用いる。
2. CTDI (computed tomography dose index)
MSAD が多断面のス
キャンシリーズの平均
線量を元に得られるの
に対し、CTDI は1スキ
ャン(1回転)あたりの
吸収線量を示す。多
断面を撮像したときの
隣接断面の裾野の線
量を考慮して、CTDI
は 1 スキャンあたりの
線量プロファイルの積
分値として定義される。
即ち、CTDI の定義式
- 39 -
は以下のようになる。
1
CTDI =
nT
∫
A
−A
D (z)dz
T はスキャン時の実効スライス厚(MDCT では1列 [DAS]あたりのスライス厚)、n は 1 スキャ
ンで得られる断面数、D は1スキャンの時の線量プロファイルである。単位は通例 mGy を用
いる。
実際には、CTDI は円柱型アクリルファントム(頭部用:直径 16cm, 体幹用:直径 32cm)にペ
ンシル型電離箱を挿入して測定される。
CTDI には以下に示すように幾つかの種類があるので、混同しないように注意する。
A. CTDIgeneral
上式にて A=∞としたもの。1スキャンでの線量プロファイルに対して、頭側から尾側までの
無限長を積分する。実際には無限長を測定できないので、以下の指標が提唱された。
B. CTDIFDA
1984 年に FDA(Food and Drug Administraion)が規定したもの。上式で A=7T として求め
たもの。連続する7断面を実効スライス厚と間隔を同一にして撮影して測定し、1スキャン
当たりのプロファイルについて、14 断面厚分の範囲を積分して求める。通常測定に用いら
れる 100mm の電離箱を使用した場合は 7mm 厚の断面のみが適応できる。
C. CTDI100
1999 年に IEC (International Electrotechnical Comission)で規定したもの。7mm の断面に
限定されないように考え出されたのが、100mm の電離箱の範囲全体をスキャンして求める
CTDI100 である。上式で A=50mm とする。
3.CTDIw
A. 管球が1回転してスキャンする時、被検者の線量は辺縁と中心で異なるため、これを考慮
して CTDI100 にその重み付けを加えたもの。
B. 中心部の線量 (CTDI100)c の 1/3 と表面から 1cm の深さの辺縁の線量(CTDI100)p の 2/3 の
和として計算される。
C. CTDIw を mAs (管電流 mA とスキャン時間 s の積)で除したものを normalized CTDIw
(nCTDIw)と言う。
4. CTDIvol
A. ヘリカル CT や MDCT で、ピッチが1以外の時に評価できるように、1cm 当たりの線量に換
算した CTDIw を volume CT dose index (CTDIvol)と呼ぶ。n は検出器の列数(1 スキャン
で得られる断面数)、T は実効スライス厚(MDCT では1DAS 当たりのスライス厚)、Δd は
管球1回転当たりの寝台移動距離を示す。
CTDIvol = CTDI w ×
nT
1
= CTDIW ×
∆d
pitch
#ここで言う pitch は beam pitch である。pitch には beam pitch (collimator pitch とも呼
ばれる)と detector pitch の2つの定義がある。beam pitch は管球1回転当たりの寝台移動
距離をビーム幅で除した値(上記の記号を用いるとΔd/(nT))、detector pitch は管球1回転
当たりの寝台移動距離をスライス厚で除した値(Δd/T)である。シングルスライス CT ではど
ちらも同じ(n=1)であるが、MDCT では異なるので注意が必要である。最近では pitch とい
うと beam pitch を指すことが多いが、混乱することがあるので、明示して使用する必要があ
- 40 -
る。
5.DLP (dose length product)
A. CTDI が管球1回転当たりの線量であったのにたいし、DLP は検査全体の被曝量を評価す
るために用いられる指標で、CTDI とスキャン範囲の長さの積として得られる。
B. CTDIw をもとに計算されるもの DLPw と呼ぶ。単位は通例 mGy・cm である
DLPw = CTDIw x length(conventional scan の時)
DLPw = CTDIvol x length(helical scan の時)
(length は撮影範囲の長さを cm で表したものである)
6. 実効線量(effective dose)
A. CT における実効線量を求める最も簡便な方法としては、DLPw から実効線量を推定する
係数(表)を乗じる方法がある(8, 33, IIb-III, E1)。
表 DLPw から実効線量を推定する変換係数
変換係数(mSv/mGy・cm)
部位
Hidajat N *
EGQCCT **
0.0028
0.0023
頭部
0.0062
0.0054
頸部
0.0190
0.0170-0.0190
躯幹
* Hidajat N et al. の検討による(8)
** the European Guidelines on Quality Criteria for Computer Tomography (EUR
16262 EN, May 1999,文献 5) available at:
http://www.drs.dk/guidelines/ct/quality/index.htm
# 実効線量の計算例
通常の頭部 CT でシングルスライスヘリカル CT にて 120kVp, 300mAs, 5mm 厚、ピッ
チ1で 16cm で撮影した場合を考える。CTDI100 は中心、辺縁ともに 40mGy とする。
この場合 CTDIw は 40mGy となるので、DLPw は以下のようになる。
DPLw = 40 [mGy] x 1/1 x 16 [cm] = 640 [mGy・cm]
実効線量は上記の表の EGQCCT の頭部の変換係数 0.0023 を乗じて、1.47 mSv
となる
B. より正確な実効線量を求めるには、イギリスの ImPACT (Imaging Performance Assessment
of CT scanners)が提供する MS-Excel 形式のマクロなどがある
(http://www.impactscan.org/ctdosimetry.htm)。
[参考] ヘリカルスキャンのスキャン範囲と撮影範囲のズレについて
ヘリカルスキャンではスキャン範囲の両端は画像再構成に必要なデータが十分に得られない
ため、画像が再構成できない。そのため画像再構成が必要な範囲より広い範囲をスキャンする
必要がある。シングルヘリカル CT ではスキャン範囲と画像出力範囲の差はそれほど大きくなか
ったが、MDCT で多列化が進むとこの差が無視できないほど大きくなり、被曝範囲は撮影した
い範囲より広くなる。例えば、ヘリカルスキャンでは頭部 CT で水晶体被曝を避けるために水晶
体のすぐ上部までを撮影範囲に設定しても、巻き始めビームにより水晶体が被曝されてしまう可
能性がある。
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