心理学研究法I 第2回講義

第8回授業(6/2)での学習目標
 一事例デザインとは?
 分割区画型反復測定デザインとは?
 メタ・アナリシスとは?。
一事例実験デザインとは(1)
 Barlow と Hersen (1984) によれば、19世
紀後半の生理学や心理学の初期の実験では、
一人の被験者に対して繰り返し測定を行う
ことにより、普遍的な結果を得、それぞれ
の分野に大きなインパクトを与えていたと
いう(テキスト、p.26)。
 このようないわば1事例に対する実験は、
現代流に言えば一事例実験デザイン(single
case experimental designs) のはしりに他な
らない。
一事例実験デザインとは(2)
 例えば1人の妄想患者に対して、セラピス
トが何カ月にもわたりある治療法によるセ
ラピーを施し、その効果の有無を検討する
ことがある。
 一事例実験デザインでは、原則として、特
別な実験操作を加えず標的行動の生起頻度
などの何らかの指標を測定し、ベースライ
ンとする。
 ベースラインは、その後のカウンセラーに
よる標的行動に対するカウンセリングの効
一事例実験デザインとは(3)
 基本的な一事例実験デザインには、つ
ぎのようなものがある(テキスト、p.
26下からp.27):
(1) A-B デザイン
(2) A-B-A デザイン
(3) A-B-A-B デザイン
(4) A-B-C-B デザイン
一事例デザインの概要を整理
テキスト pp.26-28
の1.3.1節を読み、
一事例実験デザイ
ンの概要を整理し
よう。
分割区画型反復測定デザイン(1)
 一事例実験デザインでは、既にみたように、一
人の患者に対して、例えば特定のカウンセリン
グの効果をみるために、あらかじめカウンセリ
ングをしない状態で、効果を見たい変数の測定
をおこないベースラインとし、ある時点でカウ
ンセリングのアクションを起こし、そこでの変
数の測定値の変化を見ることにより、カウンセ
リングの効果の有無を検討する。
 このやり方では、しかし厳密な意味でカウンセ
リングの効果を検討することには限界がある。
分割区画型反復測定デザイン(2)
 これを避けるための有力な1つの方法が、
テキストのp.28からの1.3.2節で紹介
する分割区画型反復測定デザイン分散分
析である。
 例えば佐藤は、アサーション・トレーニ
ング(assertion training)を用い、過剰適
応傾向の変化および自己主張への不安の
変化が起きるかどうかを、このデザイン
の分散分析で検討している(テキスト、
分割区画型反復測定デザイン(3)
 この実験で彼女は、アサーション・トレー
ニング
群 (AT 群)6名、及び統制群(すなわち、
トレーニングを行わない群)5名の参加者
を用いて、このデザイン分散分析を行って
いる。
 但し、彼女の実験の弱点は、AT群と統制群
の割り付けが無作為になされていない点で
ある。
 この種の実験では、本来、同トレーニング
分割区画型反復測定デザイン(4)
 AT 群には、ほぼ一か月強の間に1セッ
ション
3時間で4回のトレーニングを行った。
また、
実験の前後で、3尺度から成る過剰適
応傾
向尺度の測定も行った。
 一方、統制群に対しては、トレーニング
はお
分割区画型反復測定デザイン(5)
 このデータを分割区画型反復測定デザイン
で分析すると、2群への無作為割り付けさ
えきちんとしていれば、テキスト p.29の
表1.5にあるように、
(1)トレーニングの効果の有無
(2)時点の効果の有無
(3)尺度(3尺度)の効果の有無
(4)時点と尺度の交互作用の有無
を、きちんと統計的に検討できる。
分割区画型反復測定デザイン
の概要を整理
テキスト pp.28-29
の1.3.2節を読み、
一事例実験デザイ
ンの概要を整理し
ておこう(自習)。
メタ・アナリシスの概要(1)
 丹後(2002) によれば、メタ・アナリシス
(meta-
analysis) とは、過去に行われた複数の独立な
研
究結果を統合するための(統合できるか否か
の
検討も含めた)統計解析である。
 メタ・アナリシスは、歴史的にはある医学者
が開発
した腸チフスに対するワクチンの効果のデー
メタ・アナリシスの概要(2)
 メタ・アナリシスにおいて注意すべきキーワ
ード
(1)研究が無作為化比較試験
(Randomized
control trials, 略して RCT)か
(2)メタ・アナリシスすべき研究が、
RCT による
無作為割り付けができない場合の研
究とし
メタ・アナリシスの概要(3)
 研究が無作為化比較試験(RCT)か疫学
研究 かどうかで、メタ・アナリシスの
ための複数の研究統合のための手続き
を変えないといけない。
 メタ・アナリシスのための統計指標(
統計量)にはオッズ比 (odds ratio)、リ
スク比(risk ratio)、平均の差、ハザード
比(hazard ratio)、相関係数などがある
。
メタ・アナリシスの概要(4)
 メタ・アナリシスの例(中川、2010)
テキスト p.32の表1.7は、中川(
2010)の
非定形うつ病と性別の関係を表すもの
で、
表1.7のような分割表が幾つかの先行
研究で得られている場合、例えば同頁
の枠内
のようなSAS プログラムを用いて、簡
メタ・アナリシスの概要(5)
表1.7. Akiskal らの研究における
非定形うつ病と性別の2×2分割表
A/B
Atypical
non
計
69
141
210
female
190
202
392
計
259
343
602
male