第9回 情報デザイン(1) 情報デザインの考え方 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 [email protected] 1-1 情報デザインの捉え方 • 情報:状況に応じた適切な判断を下したり, 行動をとったりするために必要な事象のこと (テキスト p.18). – 定義の中に人間の活動が入っている. – 処理をする人間を考えることなしに,情報を定義 することは難しい(あるいは無意味). – 「情報とは」で google 検索してみましょう. • デザイン:行おうとすることや作ろうとするもの の形態について,機能や生産工程などを考え て構想すること.意匠,設計.図案.(テキスト p.18) • 複雑で難解なものを,より明確化し,使いや すく便利にするための考え方や技術(旧テキ スト). 情報デザインとは? • 人々が効果的に情報を使用し,社会活動をよ り円滑に行えるよう,前もって準備する手法と その実践のこと(テキスト p.18). • あふれている情報を精選し,一定のルールや レベル内で,価値あるわかりやすい表現内容 に編集や変換を行い,人々の共有する情報 にまで仕上げる一連の作業で,中心的な動 力のように働くもの.(旧テキスト) 情報デザインを学ぶ理由 • 変化の激しい知識基盤社会(あるいは,高度 情報化社会)おいて,新しい未知の課題に対 応するため.(テキスト p.19 の図参照) – 情報収集の方法を知り,収集した情報を整理して 課題を理解する. – 課題解決方法の計画と実行.成果の検証. – 情報の可視化による他者との情報共有. 1-2 情報社会とデザイン • 現代は情報革命の時代 • 情報過多の高度情報化社会では,誰でもが わかるように整理,表現,表示された情報が 切実に必要とされている. – 情報不安症:自分が理解していることと,理解し なければならないと思い込んでいることとの ギャップが引き起こす不安症状. – デジタルデバイド:情報環境や機器を利用できる かどうかによって生じる格差. 情報デザインの目的 • 誰でもが情報を利用できるユニバーサルデ ザインの観点から,デジタルデバイドのない ユビキタス社会の実現を目指す – ユビキタス(ubiquitous):「いつでも,どこでも,誰 でも,何でも」が恩恵を受けることができる環境や 技術 • ユーザの立場に立ってデザインする,ユーザ 中心設計 モノのデザインからコトのデザインへ • モノのデザイン:触知可能(タンジブル)な「か たち」を作る. • コトのデザイン:「モノ」を通して,「ヒト」がどの ような「コト」を経験するのかを考えた,エクス ペリエンスデザイン. – コミュニケーションをデザインする – サービスをデザインする 1-3 情報とコミュニケーション • コミュニケーション:送り手と受け手の間で情 報をやり取りすること. • データを整理することで,理解可能な情報と なる. • 情報は,受け手が知識や経験に基づいて解 釈することで,新たな知識となる. – コンテキストについての知識共有が必要. • 知恵とは,実践を通して知識が昇華されたも の. コミュニケーションの歴史 • 文字の発生以前にも,絵画や絵文字によって, 時間・場所の制約を超えた情報伝達が行わ れていた. • 文字を扱うようになり,コミュニケーションは飛 躍的に拡大した. • 15世紀にグーテンベルクによって活版印刷術 が発明され,情報の流通量が増大した. • 新聞や雑誌といったマスメディアが誕生した. 高度情報化時代のコミュニケーション • IT(ICT)技術の利用. – 新しい情報機器 – 通信技術の発達 • 双方向のコミュニケーション – 情報の送り手と受け手の役割が固定されない. – SNSなど,ネットワーク型のコミュニケーション. – アマゾンの「おすすめ」のような,相手に応じた情 報を提供するコミュニケーション. 1-4 情報デザインの活用 • ビジネスにおけるナレッジマネジメント:必要 な情報を全員が理解できるよう,知識の共有 化,明確化を行う. – オリエンテーション:仕事の発注者と受注者によ る初回の打ち合わせ.参考:「新人ウェブディレク ターに教えたい。オリエンテーションとヒアリング」 – プレゼンテーション:提案を伝える. – プロジェクトにおける情報共有 • インフォメーショングラフィックス:図を効果的 に利用することで,情報伝達を容易にする. コミュニケーションデザインの手法. – 案内図,ピクトグラム • 道具の操作性を高めるインタラクションデザ イン • サービスのデザイン:製品やシステムの使い 方全体をデザインする. ピクトグラム • 北京オリンピックでのピクトグラム(象形文字 風) • 東京オリンピックでのピクトグラム(日本で最 初のピクトグラム) 1-5 情報デザインの作業とプロセス • • • • 情報の収集と整理(分析力) 問題解決と発想(論理力) 情報の構造化と表現(表現力) 情報の伝達と評価(提案力) 2-1 モラルの必要性 • ネチケット(ネットワークでのエチケット)を身 に着け,安全で円滑なコミュニケーションを行 う.情報社会に正しく参画する. – セキュリティ:パスワード管理,個人情報の管理, 不正アクセスやウィルスへの対策 – メールの作法 – ツイッターやブログでの情報発信の作法 • 第1回から第3回の講義スライド参照. 2-2 情報社会におけるルール • 情報コミュニケーションにおいては,ネチケッ トやモラルの他に,遵守(じゅんしゅ)しなければ ならない法令がある. – 個人情報保護法 – プロバイダ責任制限法 – 著作権(第2回の講義スライド参照) 組織としてのルール • 企業や学校などの組織では,セキュリティポ リシを定める.項目例: – インターネットに接続するPCには,ファイル共有ソ フトをインストールしない. – USBメモリで情報を持ち出さない.etc… – ICTを利用した教育を行うときには,セキュリティポ リシを定めておくべき.しかし,現状では,熱心な 教員個人の裁量で行う実践が先行してしまうこと もある. ディスカッション • 身のまわりにあるもので,デザインに問題が あるために使い方がわかりにくいものはあり ませんか? • 予想(メンタルモデル)と異なった動作をする ものはありませんか? • グループで例を出し合ってみましょう. 参考資料:「貼り紙で不便が分かる」(読売新聞2013年6月9日朝刊)
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