米国GAISEプロジェクトにおける

米国GAISEプロジェクトにおける
統計教育カリキュラムと評価方法
宮崎大学教育文化学部
藤井良宜
概要
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背景
米国の状況
GAISEプロジェクト
PreK-12の内容
日本における統計教育の方向性
今後の課題
背景
• 現在の日本の統計教育
– 統計的内容の削減
– 「総合的な学習の時間」の内容
– 学習指導要領の改訂
• 世界的な統計教育の動き
– 統計教育への関心の高まり
– 概念的な理解の強調
• リテラシーから統計的な考え方へ
米国の教育の背景
• 理数教育への危機感
– 1957年 スプートニックショック
– 1983年 危機に立つ国家
• 米国の子供たちの数学や理科の学力が世界的に劣っていることを正式
に認める
– 1985年 プロジェクト2061
• 米国科学振興協会のプロジェクト
• 1991年には「すべてのアメリカ人のための科学」を発行
• 科学的リテラシーとはなにか,を議論
– 1991年 2000年のアメリカ
• 「数学と理科の成績を2000年までに世界一にする」ことを目標とする
– 1992年 Cobb レポート
• 米国数学解のカリキュラム改善委員会内のプロジェクト
Cobbレポート
•
統計教育の改善の方向として,3つの推奨
事項を提示
1. 統計的思考力を強調すること
2. データや概念を強調し,理論的な部分を中心に
全体の内容を減らす
3. 活動的な学習を推進すること
米国統計学会の動き
• 1998年8月 米国統計学会の会長挨拶でCo
bbレポートを引用
• 統計教育の指針をWeb上で提示
• 2003年 GAISE( the Guidelines for
Assessment and Instruction in Statistical
Education)プロジェクト発足
• 2005年 GAISEプロジェクトの報告書を公表
GAISE プロジェクト
• 2つのグループの分かれて議論
– preK-12 グループ
• 高校生以下の教育を考える
今回は,preK-12グループの
報告書を中心に解説する
– college グループ
• 大学における統計入門コースを考える
• 3つの目標と6つの推奨事項
college グループに関しては,
2006年の連合大会の企画セッションで
メンバーの1人であるUtts先生に来ていただき,
その概要を説明していただきました。
GAISE preK-12 report
• 2次元の枠組み
– レベルに分類
• レベルA
• レベルB
• レベルC
小学校5年程度まで
小学校6年から中学校2年頃まで
中学校3年から高校3年ころまで
– 内容による分類
• 問題解決のプロセス
–
–
–
–
問題の定式化
データの収集
データの解析
データの解釈
• 変動の本質
• 焦点を当てる変動
レベルによる違い(1)
教師の役割と児童生徒の活動
• レベルA
– 児童・生徒の体験を重視,教師主導
• レベルB
– 児童・生徒の自主的な活動を重視,教師は支援
する
• レベルC
– 児童・生徒が問題解決のプロセスを自主的に体
験する
レベルによる違い(2)
生徒が行う調査
• レベルA
教室内の調査(全数調査としてみる)
• レベルB
標本調査を体験する(母集団を意識し始める)
必ずしも無作為抽出である必要はない
• レベルC
無作為抽出を使った標本調査を実施する
レベルBでの問題解決プロセス
• 問題の定式化
• データの収集
• データの解析
• 結果の解釈
• 統計的に解決すべき問
題の特徴を認識する
• 標本調査や比較実験を
体験する
• バラツキの数量化や分
布の比較,相関傾向
• 母集団への一般化,
Association と因果関係
の違いの認識
2次元の枠組
レベルA
レベルB
レベルC
問題解決プロセス
問題の定式化
データの収集
データの解析
結果の解釈
変動の本質
焦点をあてる変動
参考
NCTMスタンダード
preK-2 & 3-5
6-8
9-12
大まかには,NCTMの分け方とほぼ対応しているが,年齢で分けるのではなく,
生徒の経験によってどのレベルの教育を行うのかを考えて行く。
テクニックではなく基本的な概念を
• レベルB(相関の
指導について)
積率相関係数ではなく,
別の指標を導入すること
を提案
– 相関係数をどう
するのか?
– 回帰直線をどう
指導するのか?
中学生を対象とすると,数
学的な基礎が整っていない
QCR(四分度数比)
最適な直線を引くことを目指さず,
ある程度関連を表現する直線を
導入する
問題点
導入した手法が,必ずしも世の中で
使われているとは限らない
QCR(四分度数比)
• レベルBで取り扱う
QCR 
4
1
2
5
xの平均
相関係数については,レベル
Cで取り扱う
Y
の
平
均
(4  5)  (1  2)
1 4  5  2
基本的には,相関係数と同じ
ような性質を持つ
• -1以上1以下の値をとる
• 平均からの距離の変わりに個数
を使う
直線の取り扱い
xの中央値で2つのグループに分けて,グ
ループごとにxとyの平均を計算する
×
x,y座標が平均値となる点をプロットする
×
2つの点を結ぶ直線を引く
xの中央値
直線とデータのずれを評価する
もちろん,この直線は回帰直線ではなく最適なものではない。
しかし,関係を見るために直線を引いてみること,直線と
データのずれを評価できる点が重要である。
回帰直線は,レベルCで取り扱う
日本の統計教育
• 現在の学習指導要領では,あまり統計的内
容は入っていない
• 統計教育への期待は大きい
• 学習指導要領の改訂で,統計的な内容が
入ってくるのでは?
• どんな内容を取り入れて行けばよいのか?
GAISEレポートから
考えられること
• 単なるテクニックではなく,基本的な概念の理
解を図る
• 体験を重視する(実際に問題解決のプロセス
を体験する)
• ばらつきや分布の概念が重要
今後の課題
• 具体的な内容の検討
– 概念的には理解できるが,実際に実施した場合
に,どのような内容を行えばよいのか
– モデルプラン等が必要
• 教師教育への協力
– 教員自身が統計解析の経験が少ない
– 教師の教育が不可欠