中学校段階での 相関関係の指導 宮崎大学教育文化学部 藤井良宜 概要 • • • • 現在の学習指導要領における統計の扱い これまでの相関関係の指導 相関関係の指導のポイント 相関関係 学習指導要領における 統計的内容の取り扱い • 小学校 – グラフ表示(棒グラフ,折れ線グラフ,円グラフ) – 代表値として平均 • 中学校 – ほとんど取り扱われていない • 高等学校 – 数学基礎 – 数学B • 度数分布,中央値 • 相関係数 – 数学C 平成元年の 中学校学習指導要領 • 中学校2年生で相関関係を取り扱っていた。 – 相関図の説明 – 相関図から相関の強さを読み取る – 正の相関と負の相関 高等学校に移行してから 積率相関係数の取り扱い が始まる 中学校で相関関係を 指導するときのポイント • 相関図から相関の強さを読み取るだけでよいの か? – 内容的な深まりが必要では • 相関関係だけでなく予測という概念が必要では? – 相関と直線を使った予測との関係がこれまで扱われてい ない。 • 数学的な基礎の不足 – 中学校2年生ではまだ平方根すら出てきていない – 回帰直線を求めることは難しい GAISEプロジェクトでの提案 • 中学校段階での相関を図る指標を提案 – 積率相関係数ではなく,別の指標を • 相関図に直線を引く – 最小2乗法を用いず,別の直線を用いる 中学校での数学的基礎をベースにできることを考える。 相関を測る指標 • QCR(四分度数比) – Xの平均とYの平均を使っ て,4つの領域に分ける – A,B,C,Dの点の数をそれ ぞれa,b,c,dとする – QCRを求める (b c) (a d ) QCR abcd B A D C xの平均 Y の 平 均 例 4 1 2 5 xの平均 Y の 平 均 (4 5) (1 2) QCR 1 4 5 2 QCRの特徴 • 積率相関係数と同じような性質を持つ – -1以上1以下の値をとる – 4つの領域での符合は一致 • 標準化の考え方や平方根の考えを必要とし ない • 計算は非常に容易である。 • クロス表と同じような扱いができる 直線の取り扱い xの中央値で2つのグループに分けて,グ ループごとにxとyの平均を計算する × x,y座標が平均値となる点をプロットする × 2つの点を結ぶ直線を引く xの中央値 直線とデータのずれを評価する もちろん,この直線は回帰直線ではなく最適なものではない。 しかし,関係を見るために直線を引いてみること,直線と データのずれを評価できる点が重要である。 直線を引くことの意味 • 直線を使った予測という概念を持ち込むこと ができる • 直線を引くことで,図からおおよその値を読み 取ることが可能となる。 • 1次関数は,中学校での学習内容であり,そ れを実用的な問題に結びつけることができる。 表計算ソフトの活用 • 表計算ソフトを用いると,相関図(散布図)に 回帰直線を引くことができる • このような直線は,数学以外の教科では用い られることもある • この場合に,どのように直線を引いているの かはブラックボックスとなってしまう 高等学校との連携 • ここで取り扱った指標や直線は,中学校で取 り扱い可能なものであり,最善のものではな い。 • そのため,ここで学習を終えるのではなく,高 等学校で積率相関係数や回帰直線などの話 題へと発展させて行くことが不可欠である。
© Copyright 2024 ExpyDoc