化学物質管理の国際的動向 と「化審法」 (財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン) 自然保護室 村田幸雄 1.国際的な化学物質管理の流れ 1992年 地球サミット、「アジェンダ21」 第19章 有害かつ危険な製品の不法な国際取引の防止を含む有害化学 物質の環境上適正な管理 2002年 WSSD、ヨハネスブルグ世界実施計画、第22項 「化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化 する方法で使用、生産されることを2020年までに達成する」 SAICM (国際的化学物質管理のための戦略的アプローチ)策定 2006年 第1回ICCM(国際化学物質管理会議) SAICM(国際的化学物質管理のための戦略的アプローチ)採択 2009年 第2回ICCM SAICMの進捗のチェック、喫緊の政策課題など 2 2.SAICMとは? 国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ Strategic Approach to International Chemicals Management • WSSDの2020年目標を達成するためのグローバ ルな政策的枠組み • 2003年より3回の準備会合を経て、2006年国際 化学物質管理会議(ICCM)にて採択 • 140カ国、各国連機関、産業界、研究者、NGO等 が策定に参画 3 3.SAICMの構成:三つの文書 ゴール 決意 方針 行動計画 2020年目標 ①「ドバイ宣言」 ②「包括的方針戦略」 ③「世界行動計画」 「地域/国内行動計画」 4 4.ドバイ宣言(ハイレベル宣言) 世界各国、各機関、団体等の責任ある立場の 人々による問題認識と2020年目標達成への決 意を含む、30項目からなる宣言 • 化学物質の適正管理は持続可能な開発に必要不可欠 • 世界の環境は汚染を受けており、何百万の健康と福祉 を奪い続けている • 社会の化学物質管理に根本的な改革が必要 • 情報、知識を公衆が入手することを容易に • 子どもや胎児を有害な化学物質の暴露から守る • 開かれた、包括的、参加型、透明な方法で実施 ・・・・ 5 5.包括的戦略方針 2020年目標を達成するために、何をどのように取り組 むべきかといった基本的方針等を取りまとめた文書 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 序 対象範囲 ライフサイクル全般、農業/工業用化学物質 必要性 従来にない強力かつ広範囲な取組が必要 目的 A.リスク削減 化学物質管理の根本的見直し B.知識と情報 全ての関係者に入手可能とする C.ガバナンス 透明性、意思決定への参加など D.能力向上と技術協力 途上国等への支援 E.不法な国際取引 Ⅴ 財政に関する考慮 既存及び新たな支援プログラム Ⅵ 原則とアプローチ 予防的アプローチなどの再確認 Ⅶ 実施と進捗の評価 4回のICCMと地域会合の開催 6 6.包括的方針戦略と化審法 A:リスク削減 B:知識と情報 ライフサイクル管理 知識/情報の整備 弱者の保護 情報の普及/入手 暴露の回避 ・特定のグループに限り用途 届出、表示義務等あり ・取扱事業者への伝達 包括的・透明・非排他的管理 ・優先評価物質選定 ・既存物質リスク評価 企業秘密の範囲 管理困難物質の禁止等 意思決定への参加 予防的取組方法 意思決定への反映 一部のPBT物質 C:ガバナンス 未然防止 リスク情報の入手 有害廃棄物 影響評価指標 部門間の統合 法規制等の強化 企業の行動規範 意思決定への参加 ・製造・輸入量届出 ・監視/優先評価物質 の有害性情報報告 D:能力向上と技術協力 回収/リサイクル 代替の促進 研究/技術促進 GHS推進 E.不法な国際取引 新たな課題 化審法に直接関連 部分的に関連 化審法の枠外 追加すべき要素 7 まとめ • いま国際社会は2020年目標に向け、SAICMという 枠組みの下で化学物質管理の改革を進めている • わが国においても、SAICMに沿うような既存の化 学物質管理政策の見直しが求められている • 「化審法改正案」は今日の社会が直面する諸課題 に向き合わず、軽微の改正で済ませようとしている • 化学物質政策の包括的な見直しを経ずに、一部の 法制度だけを切り離して作られた改正案であること に問題の根源がある 8
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