コーポレート・ガバナンスの 比較制度分析 エージェンシ理論の応用 エージェンシー理論とは エージェンシ理論の企業観 株主と経営者間のエージェンシー問題と株 主によるコーポレート・ガバナンス 債権者と経営者間のエージェンシー問題と 債権者によるコーポレート・ガバナンス エージェンシー理論とは 依頼人(principal)と代 理人(agent):例 株 主と経営者,国民と政 治家,依頼人と弁護 士,株主と公認会計 士 依頼人は代理人に対 して自己の目的を実 現することを求める。 代理人は必ずしも依 頼人の利益を実現す ることが最適とは言え ない。 依頼人と代理人の利 害が不一致 依頼人は代理人の行 動や能力をモニター する必要がある。 政治と逆選択Ⅰ 例:国民(依頼人)と 政治家(代理人)間の 契約(選挙) 契約を結ぶ以前に代 理人が自らのタイプを 選択する:逆選択 例:依頼人は代理人 である政治家の能力 に関して情報を持って いない。 政治家:有能な政治 家と無能な政治家の 2種類が存在 代理人である政治家 は選挙の前に自分の 能力はわかっている が国民は知らない。 無能な政治家: 有能な政治家: 政治と逆選択Ⅱ 選挙は不可能な政策 が受け入れられー> 無能な政治家の当選 能力の高い政治家が 選挙という市場メカニ ズムにより排除され, 無能な政治家が市場 に残る。 市場メカニズムは良 いものが市場に残り, 悪いものは市場から 排除されるが逆のメカ ニズムが働くことから “逆選択”と呼ぶ。 日本のケース:二世・ 三世議員の増大 政治とモラルハザード 選挙という契約の後,代 理人である政治家がタイ プを選択 選挙のおける公約を実現 するために努力している か否かを依頼人である国 民は監視できない。 政治家は公約実現のた めに努力しないということ を選択する可能性が大 選挙という契約の後, 代理人行動を監視で きないことから,代理 人が努力を怠ることを “モラルハザード”と呼 ぶ。 エージェンシー理論の企業観Ⅰ 利害関係者間におけ る契約の束としてエー ジェーンシー関係を捉 える 経営者ー株主 経営者ー債権者 経営者ー従業員 経営者ー顧客 経営者ー下請け会社 エージェーンシー理論で は企業を擬人化して企業 そのものに社会的責任を 問うのはおかしい。 エージェンシ理論の企業観Ⅱ コーポレートガバナン ス問題では株主およ び債権者と経営者間 のエージェンシー関係 が重要である。 株主や債権者間との 契約の不備をつく形 で非効率な経営が行 われる。 株主と経営者間のエージェン シー問題Ⅰ 株主:企業価値(株価の 最大化) 経営者:自己の効用の最 大化 株主は経営者の能力が わからない(逆選択問題) 株主は経営者の行動を 完全に監視できない(モラ ルハザード問題) 経営者のモラルハザード 問題:不必要な本社ビル の建設,自らの名声を高 めるために不採算事業へ の参入 株主と経営者間のエージェン シー問題Ⅱ 経営者による非効率 な経営を事前に抑制 するために経営者に 対する統治が必要 株主と経営者間の利 害を一致させることの 必要性 モニタリングシステ ム:株主が制度を構 築して経営者を統治 インセティブシステム: 契約により経営者に 対して効率的な経営 の動機付けを与える モニタリングシステムⅠ 通常においては株主 はトップ・マネジメント 組織(取締役会制度) に株主代表である社 外取締役を送り込み, 定期的に企業経営を 監視し,経営者に対し て規律を与える。 もし問題が発生した 場合には株主は株式 市場を通じて株式を 売却する。これは経 営者に対してシグナ ルを送ることになる。 株価の低下は株式に よる資金調達を困難 にし,信用の低下とな る。 モニタリングシステムⅡ 株主からの株式売却 というシグナルに経営 者が反応しない場合, 更なる株価の低下を もたらし,敵対的な買 収の脅威にさらされ, 実際に買収された場 合,経営陣は総退陣 となる。 インセンティブシステム ストックオプション(自 社株購入権制度) MBO(Managemen t Buy out)自社買 収 例 ソフトバンクイ ンベストメント 北尾 氏によるソフトバンク からの経営権の獲得 債権者と経営者間のエージェン シー問題 債権者と経営者間の利害 は一致しない 負債に基づく投資のケー ス 経営者および株主:ハイ リスクハイリターン プロジェクトの成功:株主 は高配当(高企業価値), 経営者はボーナス 失 敗:有限責任 債権者:ローリスク ローリターン,約定金 利と元金のみが手元 に返るだけ 経営者による投資行 動をモニターできない 利害調整の方法とし て経営者を統治する 必要性が生じる。 債権者によるコーポレートガバ ナンスⅠ メインバンクシステム 通常は大債権者であ るメインバンクは経営 に直接介入せず,企 業の投資プロジェクト の評価や信用分析 積極的な経営介入は モニタリングコストを 高め,貸出金利の上 昇につながる。 経営者は資本コストを 節約するために財務 諸表を積極的に公開 したり,銀行からの役 員の受け入れを行う などの自らの行動を 束縛するbonding 行 動をとる。 債権者によるコーポレートガバ ナンスⅡ 経営状態が悪化した 場合 メインバンクは人材の 派遣と財務内容の徹 底した見直し,さらに 不採算部門の売却や 閉鎖など実質的な経 営権を獲得する。 メインバンクからの支 持が得られない場合, メインバンクは債権の 引き上げを行い,企 業は資金繰りが悪化 し,破綻へつながる。 例 ヤオハン 東海銀 行による追い込み 米国型コーポレート・ガバナンス 米国企業:自己資本が中 心 主要株主:90年 個人:56%,年金基金:2 4% 80年代までは個人投資 家が70%前後保有して いた 個人投資家と経営者間の 利害対立が基本 株主のモニタリングシ ステム:トップマネージ メント組織に株主代表 を送り込んで経営者 を定期的に監視 米国型トップマネジメント 株主総会 選任 取締役会 選任・監督 経営会議 最高経営責任者:Chief Exective Officer 最高執行責任者:Chief Operative Officer 最高財務責任者:Chief Financial Officer 取締役会は企業の基本戦略や計画を決定 基本戦略や基本計画をCEO,COO,CFOなどの役員 によって執行される 経営の結果が再び取締役会によって監査され,最終報告が 株主総会で議論される。 米国型コーポレート・ガバナンス の問題点 株主からの過度のプ レッシャーが経営者 の短期的な株価重視 を志向する経営に向 かわせしめ,長期的 な投資が先送りされ た。 敵対的買収の増大ー >ポイズンビルの実 行 ストックオプション:エ ンロン事件やワールド コム事件などの見ら れるような不正な会計 処理を通じての株価 操作問題 日本型コーポレートガバナンス メインバンクシステム 株式の持ち合い レポートの課題 日本企業のコーポレートガバナンスの問題 点 日本企業のコーポレートガバナンスがどの ように変化したのか 日本企業のコーポレートガバナンスの優れ た点 A4 5-10枚 ワープロ入力
© Copyright 2024 ExpyDoc