地震と防災“揺れ”の解明から耐震設計まで

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超高層ビルの実現
新知見による検証
新潟県中越沖地震と原子力発電所
壊れないから揺れない
緊急地震速報
超高層ビルの実現1-1
日本では昭和38年(1963年)まで31メートル以上
の高さの建物は建設が認められていなかった。
しかし都市への機能集中が進み建物が大型化するにつれて、
建物としての合理的な設計が難しくなり都市の立体化(超
高層ビルの建設)が避けて通れなくなった。
ところが、ある問題が大きな妨げとなった。それは従来の
ような建物の変形を抑えるような剛構造では、建物の全体
が重くなり、下層階は柱と壁だらけになるということで
あった。
超高層ビルの実現1-2
そこで、柔構造を採用した。設計方法は、武藤清さんが開発した動的設
計法を使った。これは、コンピュータで地震による建物の動きを忠実に
再現し、その結果をフィードバックして適切な揺れ方をするように設計
の修正を繰り返す方法である。
この設計法の大きな支えになったのは、日本で昭和28年
から始まった強震観測の記録の集積でわかった強震動の性
質である。実際観測された強震動をコンピューターに入力
して建物各部に発生する力を計算することで、強震動は、
建物への影響という観点からみると、一般に短周期成分を
多く含み、長周期成分が少ないという性質がわかった。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア
(Wikipedia)』
超高層ビルの実現1-3
こうして、昭和43年4月、日本で最初の超高層ビルである
霞が関ビルが完成した。
このビルは36階、高さ147メートルで当時の東京では、
東京タワーと並びひときわ人々の目を引く存在であった。
霞が関ビル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
新知見による検証1-1
超高層ビルの設計には、動的設計法が取り入れられたために、入
力する地震波が必要である。一般には、既往波という強震記録と、
サイト波という建設地点の近くで観測された強震記録を用いること
が多い。既往波としてよく用いられる記録は、エルセントロ波(M
7.0)、タフト波(M7.5)、八戸波(M7.9)の3つである。
ただし、厳密な意味では実際に建物に来る地震動と設計に用いてい
る地震荷重が繋がっているとはいえない。
そして、地震動と設計に用いる地震荷重を繋げようとする試みがは
じめて実現したのは、平成2年(1990年)東京湾の臨海部での
超高層ビルの建設のときである。
新知見による検証1-2
ここで想定された地震は、関東地震の再来や安政江戸地震型の直下地震、さ
らには東海地震などである。それぞれの地震に対して、建設地点で強震動予
測を実施し、その結果をサイト波として採用した。同様に建設地点に応じて
地震を想定し、強震動予測を行い、その結果を先の既往波やそのほかの観測
記録とともに用いて地震荷重を決めようとした。
理論が経験に先んじたという意味で耐震設計の歴史において画期的な出来事で
あったけれども、新たな問題が発生した。それは、平成15年9月に北海道で
発生した十勝沖地震(M8.0)である。この地震は、平成7年の兵庫県南部
地震後に整備された強震観測網のもとでおきた、はじめての海溝型巨大地震で
あった。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア
(Wikipedia)』
新知見による検証1-3
この地震の特徴は、観測された強震動の継続時間が長く長周期成
分が短周期成分より優勢であったところである。この地震で大きな
被害を受けたので、これを契機に長周期地震動に対する建物の構造
が再検証されることになった。
こうして、従来の耐震規定で建てられてきた建物が、実際の強震
動にどこまで耐えられるか明らかにしようとしたり、実物大の構造
物を観測された地震動で揺すり、実際に破壊させることのできる超
大型振動台が開発されたりした。
E-ディフェンス
独立行政法人防災科学技術研究所
研究センターより出典
兵庫耐震工学
実際に予測される地震動と設計荷重とを繋げるという意味で、理
想に近い設計体系をもつ唯一の構造物が原子力発電所である。
しかし、その設計方法について考えさせられる地震が発生した。それは、
平成19年7月16日に発生した新潟県中越沖地震(M6.8)である。
この地震が、東京柏崎刈羽原子力発電所を直撃し、7つあるすべての原子炉が
停止状態に追い込まれた。マスコミは、実際の揺れが設計値をはるかに超えたと
いう問題や地震を発生させた海底活断層の存在を見逃してきたことなどを指摘し
た。
KAJIMA CORPORATIONより出典
東京電力によれば発電所は、重大事故に繋がることなく無事停止し、
原子炉健屋や内部の重要機器に目立った損傷はなかったと発表した。
なぜ設計値を上回る地震動がきたのにもかかわらず建物や機器は壊れ
なかったのだろう?
それは、地震荷重の算定方法ともう一つの算定方法を併用し、大きいほうの
地震荷重で設計が行われるしくみになっていた。その算定方法とは、重要な
建物や機器に対しては、いかなる場合でも一般構造物の三倍の水平震度で許
容応力度設計をしなければならないというものである。
原子力発電所は、放射能の拡散防止のため建物内の壁の厚さを厚くしなけれ
ばならないこともあって、代表的な剛構造物である。したがって、実際に予
測される地震荷重の算定法と安全確保のために厳密に地震動と繋がらない地
震荷重が設けられていたのである。
壊れないから揺れない1-1
耐震設計の進展によって全壊する建物が減り、地震によって人々
が命を落とすことが少なくなったとはいえ、揺れによって生活や事
業の継続ができなくなる状況は依然として続いている。
そんな状況を打開するために、新しい型の構造物が登場している。例えば、制
震構造と免震構造である。これらの構造物は、建物自体が地震の揺れに立ち向
かい、
揺れをかわしたり抑えたりして建物の揺れを減らし、建物に働く地震力を抑制
して安全性を確保しようというものである。
さまざまなアイディアを整理し、理論的な基礎を明確にして、近代
的な意味での出発点となったのは昭和35年の小堀鐸字二の論文で
ある。基本的な考えは制震5原則としてまとめられる。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
壊れないから揺れない1-2
1は、磁気浮上装置などで建物を浮かせるよう
な発想で、いまだ実現した例はない。免震構造
は2の範疇にはいる構造で広い意味では超高層
ビルもはいる。2以外を制震構造という。免震
構造は、積層ゴムの実用化にともなって昭和5
8年ごろから普及しはじめた。
制震構造のビルは、平成元年に小堀鐸二に
よって東京に誕生した。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア
(Wikipedia)』
壊れないから揺れない1-3
どんな地震が来るか当分わからない。だから地震動を受け身で待って
いるよりも、やってくる地震動に対して建物の構造を変化させ、能
動的に建物の揺れを制御しようとすることや建物内に能動的にエネ
ルギー吸収機構を設け、それよって建物の揺れを制御することが必
要となってくる。もちろん地震動を算定する動的設計法と併用する
ことが大切である。
出典: フリー百科事
典『ウィキペディア
(Wikipedia)』
緊急地震速報1-1
気象庁では、平成16年2月から緊急地震速報の試験配信を実施して
きたが、平成19年10月からは一般向けの提供が開始された。
緊急地震速報とは、地震の発生の直後に、震源に近い地震計でとらえた観測
データを解析して震源位置や地震の規模示すマグニチュードをただちに推定
し、
これに元づいて推定した主要動の到達時刻や震度を各地に可能な限り素早く
知らせるシステムである。
このシステムの利点は、地震発生後に揺れを予測するという面で、震源を予
測するという作業から解放される点である。その反面、有効に活用できる時
間を確保するためには、できるだけ迅速に来るべき揺れの強さを、求めなけ
ればならない。つまり、迅速性が要求されるので、その予測精度が心配され
ている。
緊急地震速報1-2
緊急地震速報の予測法は、距離減衰式と呼ばれる簡単な経験式が用い
られている。この予測法は、マグニチュードMと震源距離Xから揺
れの強さを推定し、それをあらかじめ求めておいた対象地点の揺れ
やすさなどで補正して、揺れの強さを求める方法である。
このため過去に蓄積された多くの震度データから、対象とする地点に
揺れが来る場合、どの程度揺れやすくなるか、または揺れ難くなる
かをあらかじめ地点ごとに求めておくことで予測精度を上げようと
する試みがなされている。
強震動予測法は従来、主に耐震設計に用いることを前提に開発が進められてきた。
しかし、強震記録や震度データなど各種観測データとも組み合わせ、条件に合わせ
た改良を行うことで、その活用領域が広がる可能性があり、その一つが緊急地震速
報に合わせた活用である。
緊急地震速報1-3
気象庁
緊急地震速報についてより出典
緊急地震速報1-4
気象庁
緊急地震速報についてより出典
まとめ
この章を読んで感じたことは、合理的に理屈の
通った新しい地震予測方法だけにたよるのでは
なく、従来の地震予測法から良いところを学び、
併用させていくことが自然災害から人の命を守
る手助けになるだろうなということでした。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア
(Wikipedia)』