•創世記 1. 名称 2. 構造 3. 内容・統一性 4. 起源 5. テキスト(ハイライト) 1.名称 • ヘ)ベレシート:はじめ • 本書の最初の言葉・・・ • ギ)ゲネセオース:経緯 • ヘ)トーレドス「これは~の歴史で ある」11回 • 2:4,5:1,6:9,10:1,11:10,27,25:12, 19,36:9,37:2... 2.構造 • 大きく分けて2部 1部 1-11章 原初史 • 創造物語、堕落、洪水物語、バベ ルの塔、 2部 12-50章 族長物語 • アブラハム、イサク、ヤコブ 2.構造 • 1‐11章の出来事は12章以下で語ら れる歴史を性格づけるものであり, 12章以下の記述のように年代的なつ ながりそのものを重視するということ はなされていない.12章以前はそれ 以降の歴史と,歴史の流れとしてで はなく歴史の事実としてつながってい る. 3.内容と統一性:単純な流れ 1.初めの歴史 1‐11章 (1)創造(1‐2章) (2)堕落(3‐11章) a.その原因(3章) b.その結果(4‐11章) 2.族長たちの歴史 12‐50章 (1)アブラハム(12‐25章) (2)ヤコブ(26‐36章) (3)ヨセフ(37‐50章) 3.内容と統一性:歴史性啓示の始点 1.序論 歴史の性格と方向―贖いの歴史の枠組み1‐11章 (1)創造の神―歴史を性格づける条件(1:1‐2:3) (2)被造の人―歴史を性格づける条件(2:4‐25) (3)約束の原理―歴史を性格づける条件(3:1‐24)(人の 罪と神のあわれみ) (4)文明の性格―人の横の関係と神(4:1‐26) (5)歴史の性格―人の縦の関係と神(5:1‐32) (6)文明の限界と更新―人の存続の条件としての契約(6: 1‐9:29) (7)文明の拡大と拡散―諸国民と神(10:1‐11:9) (8)新しい歴史への接点―選びの民の起源(11:10‐32) 3.内容と統一性:歴史性啓示の始点 2.族長の歴史―贖いの歴史の源流12‐50 章 (1)アブラハムの信仰―契約に生きる(12: 1‐20:18) (2)イサクの生涯―契約を継ぐ(21:1‐26:35) (3)ヤコブの戦い―契約による勝利(27:1‐36: 43) (4)ヨセフの栄光―契約とこの世(37:1‐50:26) 4.起源 4.起源.現在の形での創世記が,五書全体の中の一部として 意図されていることは明らかである.したがって五書そのも のの起源と別に創世記の起源だけを論じることはできない. セガールは創世記,出エジプト記,レビ記,民数記,申命記 の内容が,初めモーセによって口伝的に与えられたと考える. それをヨシュア,アロン,エルアザル(民31:26)などの助け もあって,イスラエルが荒野放浪の時に最も長く滞在したあ のカデシュ・バルネア以後に書いたことも十分に考えられる と言う.しかしながら五書そのものに,モーセが語り,モーセ が伝えたことが明言されている.さらに,モーセ時代の文書 成立は考古学的にも確立された事実であること,モーセ自 身が書く能力を持っていたということから,モーセが文書とし て残し得たことを疑う理由はない. 4.起源 またいくつかの箇所について,はっきりそれがモーセによるとさ れているなら,他の箇所についても同じことを理由なしに否 定することはできない.しかしセガールによればモーセが書 いたのではない部分も決して少なくはなく,それらはいわば, 口伝トーラー(律法)として,文書化されたトーラーと同じ権威 を持つものとして存続したと言う.そしてそれらを用いて後の 霊感された筆者が書いたのであり,文書であれ口伝であれ, そのいずれにしてもモーセから出たものであって,後代の創 作といった要素が入り込む余地は全くなかったというのであ る.こうした論議の中でセガールは五書の非モーセ的部分 の問題を解決するために口伝の役割を強調し,結果として 相対的に文書の存在の重みを軽視する結果になってしまっ ていると思われる. • 4.起源 前述の〈ヘ〉トーレドース「これは~の歴史である」が創世記の 背後のそれぞれ独立した資料の存在を意味することは事実 であろう.この場合創世記は直接には口伝よりも文書化され た資料に大きく依存していることになる.創世記記者自身の 理想や,民族の立場によって再解釈される余地があまりな い性質のものでなかったかと思われる.五書が書かれた直 接の目的は,イスラエルが神の民として,約束の地カナンで 生きるための基準を教えることであったと言えよう.しかしそ のことは,記者の知り得ない過去のことについて,備えられ ていた資料をカナン定住後の視点から解釈して書いたという 種類のものではなかった.出エジプトという出来事が後のイ スラエルにどれほど強烈な印象を与えたにしても,この出エ ジプト経験が創世記の性格を決めるということにはならない のである. 4.起源 その成立の中心にモーセの存在があったことを前提として五書 全体について考えるなら,出エジプト以下はほとんどモーセ の同時代のことである.それぞれ異なった性格の書でありな がら,直接経験したこと,聞かされたことについての書として の特徴を持っている.ただ創世記のみはモーセの時代の経 験とはかかわりのないことについての書であり,したがって 資料に大きく依存したのは当然である.つまり創世記と他の 四書とは非常に異なった成立の仕方をしているのである.し かもそのすべてが,五書としてきわめて一貫し,統一した性 格を持つものとなっているのは,筆者が全体のための壮大 な計画を持っていたことを示すのではないだろうか.後の旧 約聖書全体について見られる,多様性を含む統一性がこの 五書についても認められると言えよう. 4.起源 神との関係,動機,背景と五書,また創世記の性格を合せて考 えるなら,モーセが五書の著者であると同時に,編集者とし ての役割をも果したと考えるシュタインミューラーの立場は 真相に近いと思われる.モーセがそれぞれの民族に伝えら れたものも含めて伝承を整理し,五書の構成についての全 体的な計画に従って書いたと考えることが可能だからである. しかし,五書のすべてがモーセによるものではないということ は言うまでもない.モーセが持っていたと考えられるその計 画性こそ,書かれたものの統一性の原理であった.またそれ がモーセが聖霊によって教えられ,確認していた中心的な 事実だったのであろう.したがって五書全体にわたって内容 の大筋をモーセが書いたというより,基本的に,そして本質 的には現在の形がその時から備えられていたと考えられる. 4.起源 創世記の資料そのものはどのような起源によるのだろうか.ワ イズマンはモーセが創造以来のことについての記録を粘土 板として持っていたと言っている.彼によれば,創世記に11 回出てくる前述の〈ヘ〉トーレドース「これは~の歴史である」 という表現は代々の族長たちによって受け継がれてきた家 族の記録が存在したことを示している.文字の使用がきわめ て古い時代までさかのぼることが事実である以上,それぞれ の世代が次代に記録を伝えていったということは考えられる. 創造に関する伝承ももともとの起源がどこにあるにせよ,ど こかの段階で成文化されて継承されるようになったのだろう. しかし伝承という過程を経るかぎり,腐敗の可能性を否定す ることはできない.もともとの資料が摂理的に備えられたとし て,それが伝承の形で維持されるために重要なのは,それ を継承する人たちの状態である. 4.起源 腐敗から守るために,神は信仰による神との交わりを通して, 人々の理解をも正しく保たれたのである.アブラハムの信仰 と,彼が継承する伝承の正確性を切り離すことはできない. このような事実が積み上げられて,後の筆者が与えられたも のを彼自身に教えられたこととして書くという図式は十分あ り得るのである.資料の形成についてキドナーは繰り返し出 てくる定式的な表現や,流れるようなリズム感の存在などは, 口伝としての特徴を残していると考える.トーレドースと呼ば れた資料が,その起源は分らないながら初め口伝として形 成され,長い間父祖たちに継承され,やがて文書化されたと する考えは一応成り立つ.口伝→文書という順序そのものを 含め,断定し得るものは何もない.重要なことは,用いられ た資料よりも,それらを取捨選択させ,事実について,信仰 について,また教理について正しい識別を与え,ことばを選 ばせた聖霊の存在という事実である. テキスト:ハイライト 1. 創造物語 2. 洪水物語 3. バベルの塔 4. 族長物語 1.創造物語 • 周期説 The Intermittent-Day Theory Forming Filling 1日目 光 4日目 太陽、月、星 2日目 空と水 5日目 鳥、魚 3日目 大地 6日目 動物・人間 7日目 安息 2.洪水物語 • 「人の子」 •天使解釈(R.H.Charles) •セツの子孫、神の子のライン解 釈 •王朝・支配者解釈(M. Kline) 3.バベルの塔 • バベル: • へ)balal「混乱」からの派生? • 神への門? 人→神 • Key Word • 神が降りる • 言葉の混乱 • 不一致 4.族長物語 • アブラハム • イサク • ヤコブ 4.族長物語:アブラハム物語ハイライト 1.エジプトでの失敗12:10-20 • 族長時代のエジプト:族長時代のエジプトは,第15王 朝,16王朝のヒクソス時代である.従来の王朝の衰退に伴って, 移動民族であるヒクソスがデルタ地帯に侵入,定着した.ヒクソス はオリエント世界全体の諸民族移動の時期に歩調を合せて南下 し,エジプトを制覇するに至った.彼らはエジプトに,これまでにな かった馬や戦車,さらには青銅製の武器などをもたらした.アブラ ハムからヨセフまでの族長について,いずれの場合も関係したパ ロの正確な王名は不明である.なおエジプトの王をパロ(〈ヘ〉パ ルオー)と呼ぶが,本来パロは「大きな家」という意味であり,大邸 宅に住む者を指していたのである.第3王朝の碑文にこの名称が 使用されている.一説によればパロを王の称号に用いたのは第 18王朝以降であると言われている.したがってアブラハムの時代 にパロの称号が使われていなかったとしても,創世記の記者の時 代を反映するものとして受け止めれば,何ら矛盾することはない。 4.族長物語:アブラハム物語ハイライト 1.エジプトでの失敗12:10-20 • 構造問題 • • • • 警告 12:1-10と13:1-18の関わり 交差対句法 主役は誰か? 4.族長物語:アブラハム物語ハイライト 2.メルキゼデク物語14:18-24 • 背景:サレム • サレム (〈ギ〉Salem) 「平和,平安」を意味する〈ヘ〉シャーレーム を音訳した地名で,旧約では「シャレム」と訳出される.エルサレム を指す古称の一つ(参照詩76:2).王と祭司を兼務したメルキゼデ クは,その町の代表者としてアブラハムの戦勝に祝福のことばを述 べた(参照創14:18).彼は新約中,「サレムの王,すなわち平和の 王」と紹介されている(ヘブ7:1‐2).この地は元来カナン人が住ん だ町で(参照ヨシ10:1,15:63),その南東丘を指す「シオン」の名で も呼ばれた(参照Ⅰ列8:1,詩2:6).ここにイスラエル人が住むよう になったのは,ダビデが先住のエブス人を放逐して以後である(参 照Ⅱサム5:7,Ⅰ歴11:5).サレムという地名は,古くからこの場所 で礼拝された神の名に関係すると見る説がある.それを発展させ たエルサレムという呼称は「平和の神の聖所がある地」と理解でき る. 4.族長物語:アブラハム物語ハイライト 2.メルキゼデク物語14:18-24 • いと高き神:エル・エリヨン • シンクレティズム • 十分の1~祝福のルーツ 4.族長物語:アブラハム物語ハイライト 3.契約と割礼17:1-26 • 背景:割礼 • 〈ヘ〉ムールは「切り取る」「切り捨てる」という意味.〈ギ〉ペリテムノーは 「まわりを切る」という意味で,男性の性器の亀頭を覆っている包皮を切 開,もしくは切り捨てることである。割礼は単なる外面的肉体的な処置[2] として扱われていない。聖書の真に目指す目的は、霊的な契約の外的 なしるしである。但し<私の契約>と言われる神への従順の行為である。 また契約そのものである。割礼は、古代中東では一般に成人、または結 婚前の儀式としてアブラハム以前から広く行われていた。種族の共同体 への正式加入の儀式だったという説もある。バビロニヤ、アッシリヤ等の メソポタミヤでは知られていなかった。エジプトの石柱碑文(おそらく前2 3世紀のもの)は、120人の者が集団割礼を描写している。 4.族長物語:アブラハム物語ハイライト 3.契約と割礼17:1-26 • 包皮は、イスラエル人にとって不浄の体 現である。従って、割礼は<清浄の行為 >であり、また性病もしくは局部的疾患 (恥垢、分泌物、精液滓などによる)の抑 制または予防に役立つのである。このよ うに医学的な清浄行為としても機能して いた。 4.族長物語:アブラハム物語ハイライト 3.契約と割礼17:1-26 • 割礼の歴史:割礼の義務は、ことに捕囚後の時代のユダヤ教 において極めて重要視されるようになり、この割礼を禁止した 支配者たち(アンティコス・エピファネス、アドリアヌス)による禁 止令に対して、反乱(マカベア反乱、ファネス反乱)が起こった (旧約新約聖書大事典)。これはギリシャの影響と共に、異教 徒に軽蔑されるようになった。こうして、アンティコス・エピファネ スなどはパレッスチナで割礼を禁止し、違反者には残酷な刑を 課した。事実ヘレニズム流の生き方を望んだユダヤ人は、割礼 のしるしを隠そうとした(第一マカベヤ書1:15)。ヘレニズム流 で生きるユダヤ人にとって、ギリシャの競技は自らの危険を招 く恐れがあった。なぜならば、ギリシャにおける古代オリンピッ クにおいて、競技を許され者は男性であり、彼らは裸で競技を したからである。こうして、外的なしるしとしての割礼を、ある者 たちは隠す処置も行ったようである。 4.族長物語:アブラハム物語ハイライト 3.契約と割礼17:1-26 a. 約束の確言 ①創造論的約束(6,20節) : この物語の主題は、約束の子供に対 して「増えよ、満ちよ」という、創造に対する神の祝福がなされている。 このゆえ、アブラハムは新しい被造物の初穂としてである。彼は創造 において意図されたことをになうものなのである。彼はまさに「新しい 被造物」なのである。 ②王国的約束(6,16,20節) : 明らかに約束はアブラハムをサム エル記Ⅱ7章のダビデ的希望と結びつけている。 ③永遠の約束(7,8,13,19節) : この土地おける永遠の約束の 安寧を保証している。 ④ 相互的約束(8節) : ヤハウェとアブラハムの基本的な関係に関 わっている。このゆえ、「私は彼らの神となるであろう」という言葉で約 束は終わっている。つまり、アブラハムの子孫たちにとっては、契約上、 直接はヤハウェと結ばずとも、アブラハムが代表者としてヤハウェと契 約を結んでいるということが、有効性を曇らせていないのである。 4.族長物語:アブラハム物語ハイライト 3.契約と割礼17:1-26 b. 約束が与えるもの:今まで神がアブラハムに与えてきた約束は、17 章にはいり、更に本格的な契約へと発展する。15章18節におい て契約が結ばれるが、今回はその契約の更新ではなく、確認であ る。ここでも神の一方的な恩寵によって契約が結ばれるのである。 c. 割礼の神学的な意味:我々はこの割礼を、「神学的なメッセージ」を 「歴史的なメッセージ」以下にしてはならない。歴史的メッセージと は、その行為にとその規制に縛られ、契約を与えた神をないがしろ にし、割礼という行為そのものが一人歩きをして、割礼の有無が最 重要課題になってしまうと言うことである。まさに本末転倒である。 割礼を受けるとは、神に選ばれし共同体に属していることを意味し ている。彼らは、割礼をうけることによって、新しい神との契約の世 界に招かれたのである。このことは新約の我々にとって、およそバ プテスマに類比できよう。バプテスマを受けることにより、我々は古 い人間性が洗い清められ、新しい神の共同体に加えられるのであ る。
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