東アジア文化論

東アジア文化論
『2010年代のアジアと日本の役割』
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アジアが期待する日本の役割
アジア経済の新たな成長メカニズム
技術・資本の出し手
市場の出し手
中国
日本
日本:技術と資本の提供
アジア各国:労働力を提供
NIES
インド
かつてのアジア
輸出振興をてこに発展
日本が先頭を走り、それを追ってアセアン、中国、
NIES(韓国、台湾、香港、シンガポール)が発展する
アセアン
雁行型の成長モデル
生産の拠点
2000年頃を境に
◎中国、インドが市場の出し手として機能し始める
◎日本、NIESの大手企業は中国、インド、アセアンに対して直接投資と技術移転を続けている
◎アセアンが生産機能の拠点を提供している
それぞれの国や地域が特徴を活かしつつ互いに
連携しながら成長するモデルに移行している!
アジアが期待する日本の役割
2010年代の中国は、投資と消費(市場)では牽引役になれるものの、
アジア諸国が直面している産業のレベルアップに対する貢献は期待で
きない!
アジア諸国は産業のレベルアップを熱望しており、そこでは技術と人
材で最も発展している日本に大きな期待を寄せている。
・ 資源エネルギーの節約や環境対策
・ 技術移転、人材育成
・ インフラ開発
・ 自国製品の輸入
アジア地域への開発設計業務の
移管、研究開発拠点の設立など、
企業の技術者市場の開放に期待
国(日本)のバックアップ
も重要!!
したがって、日本は、
アジアの先導役として汗をかき、周囲の国・地域から尊敬される存在
を目指す必要がある!!
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アジア全体を左右する中国経済の発展持続性
これからのアジアの10年を考えるときには、やはり中国の発展可能性に
ついても重要な課題となる。
中国は多くの成長機会を提供してくれると同時に、そこには警戒すべき
ビジネスリスクが数多く潜んでいる。
中国の成長スピードが速すぎた分だけ、成長の陰の部分、所得の格差
や資源・環境問題が顕在化している。
財政面で余裕があり、政治的にも安定している今の時期に思い
切った改革に取り組めば、問題の多くは克服できる!!
しかしながら、成長を重視する人々と陰の部分の改革を優先する
人々との利害調整には高度な政治的能力を必要とする。
日本にとって、中国の将来を冷ややかに悲観するのではなくて、彼
らの今の努力が成功することをどう助けられるかの議論が大切。
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日本のアジア戦略・4つの視点
アジアの戦略は、業種や企業の規模によって様々であろうが、
これからの環境変化を想定すると、企業戦略を考える
共通的な視点としては、これから挙げる4つの点が考えられる
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① 中国事業拡大に向けた人材戦略
10年後のアジア最大市場は間違いなく中国である。
中国沿岸部は2億人の巨大市場に成長しており、中国で勝ち残
ることがグローバル戦略の上で非常に重要!
日本企業においては、
しかしながら、今でも解決が難しいのが人材問題である。
・ 現地での意思決定力を高めるために本社のトップ人材を中国に派遣し、
中国内の販売とアフターサービス網への投資
・ 日本人中心のマネジメントから、現地の人材をモチベートする人事制度
管理職を養成するための能力開発プログラム
・・ 消費者の好みに合う商品企画やデザインをするための
R&D(企業の研
・ 企業ロイヤリティを高めるための社内広報
究開発業務および部門)センターを立ち上げ、現地のリスクマネジメント体
制の強化が図られている。
現地任せから、日本本社の人事専門家を結集した人
材戦略が必要とされる!!
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② AFTA(アセアン自由貿易地域)後のアセアン生産体制の再構築
これからの10年間でアセアンが大きく変貌することも述べてきたが、
AFTAの実現や中国市場との連携などアセアンはアセアン内だけでなく、
アジア全体の中での生産拠点機構を再定義する必要がある。
しかし、今後アセアン域内での生産拠点の移動、中でもGMS
例えば、アセアンの工場においては、主に、グローバルな輸出生産
(大メコン圏)への生産シフトという動きが顕在化すると考えられる。
拠点としての工場と当該国の内需を獲得するための工場がある。
現在のGMSでは・・・
・松下電器産業ではマレーシア用の家電の内需型工場をタイの生産
港湾能力や通関システム
などの整備が着実に進んでおり、
拠点に移転している。
・ 通信や航空の便
・ インフラ整備
中国に隣接した「モノ作り拠点」として、
国産品よりもあまりに安く輸入品が入ればアンチダンピングなどの
問題が発生する可能性もあるし、在庫管理や物流面を考えると市場
巨大市場である中国向けの輸出生産基地としてのアセアン拠点
内での生産の意義もある。
がGMSに集中すると考えられる!!
③ アジアで勃興する新たな購買層への対応
アジアは成長が続くことで、その恩恵を受ける
若い世代を中心とした中流層の勃興が始まっている
この層を囲い込めるかどうかが企業にとって重要であるが・・・
日本系企業
高品質、高価格のイメージがある一方で、
新たなアジア中流層には古臭いマイナスイメージ
を植えつけている懸念もある
欧米系や韓国系
先進的な、センスがいいというイメージを
持たれている可能性がある
日本企業にとっては若い消費者に対するブランド浸透戦略
彼らに訴求できる商品サービス、
特にハイエンド領域での徹底した差別化が大切である
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④ アジアを俯瞰する戦略機能の必要性
俯瞰(ふかん)・・・・高い所から見下ろすこと。全体を上から見ること
これからのアジアを考えるとき・・・
マーケティング、ブランド戦略というように
アジア各国を縦割りにして経営するのではなく
アジアを広域に捉えながら経営する体制も検討すべきである。
従来の事業部やカンパニーという事業軸だけでアジア戦略を考えると
大きなアジアの変化を見誤る可能性もある!
アジアを広域に見ることのできる人材を
アジア本社的な機能、個別の国や地域だけに精通
意識的に育成することが必要!!
今後はそれでは戦略的に厳しい
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アンチ・ダンピングとは・・・
ダンピングとは、ある商品の輸出向け販売が、その商品の国内
向け販売より安い価格で行われていることを指す。
そしてダンピング販売によって、輸出された国の競合する産業が損害を
被っていることが正式な調査により明らかになった場合、その国は損害を
被っている自国の産業を救済するためアンチ・ダンピング(AD)措置をと
ることができる。
具体的には、ダンピング輸入された産品に対して、国内向け販売価格と
輸出向け販売価格との差(ダンピング・マージン)を上限とする関税(AD
税)を賦課する。これにより、ダンピング価格を正常な価格に戻そうとする
のである。