地球温暖化研究プログラム 地球温暖化に関する科学的な研究を行います。特に、 1 2 3 大気中温室効果ガス濃度の地球規模観測と動態解明(観測研究) 気候変動の解明・予測、影響リスクの評価(リスク研究) 国際的な適応・緩和対策(低炭素社会研究) を推進します。 Project 全球及び東アジア域を中心とした大 気環境・温室効果ガスの観測・解析 に基づき、これらの地域での物質循 環・炭素循環の実態とその変動機構 を明らかにするとともに、将来の気候 変動影響下での温室効果ガス濃度予 測精度の精緻化を図り、将来の気候 変動の予測精度の向上に資します。 1 National Institute for Environmental Studies 温室効果ガス等の濃度変動特性の解明と その将来予測に関する研究 Project 地球温暖化に関わる地球規模リスクに関する研究 気候変動の実態の解明と将来予測の 精緻化を進め、更に気候変動に対す る地球規模の影響リスクの評価を行う ことにより、気候変動政策の立案に 資する科学的知見を提供します。 Project 低炭素社会に向けたビジョン・シナリオ構築と 対策評価に関する統合研究 世界規模での温室効果ガス排出抑制 策(緩和策)や気候変動に対する影響、 適応策を総合的に評価し、国際交渉 の実情をも考慮した実現可能な政策 オプションを提示することにより、気 候変動に対する国際的な緩和・適応 策の推進に関する科学的知見を提供 します。 Center for Global Environmental Research 2 温室効果ガス等の地上モニタリング 二酸化炭素の大気中濃度は過去 1 万 年 にわ たって 280 ppm[注]程 度でし たが、18 世紀半ばから上昇を始め、 特にここ数十年で急激に増加し現在 は 400 ppm を超えています。 研究所では北海道落石岬、富士山山 頂、沖縄県波照間島で二酸化炭素を 含めた温室効果ガスの詳細な観測を 行い、濃度変化等を分析するととも にウェブサイトからデータを発信して います。 [注]ppm とはある物質の存在体積の割合を表 し、1 ppm は 100 万 分の 1 の割 合です。した がって 400 ppm = 0.04% となります。 定期船舶を利用した温室効果ガス等のモニタリング 北太平洋航路と日豪航路において表 層海洋中の CO2 分圧観測を行い、大 気との CO2 分圧差の分布と長期変動 を明らかにします。同時に大気観測も 実施し、温室効果ガスおよび関連ガ スの緯度分布とその時間変動を明ら かにします。さらにアジア航路の船舶 を利用し、アジア諸国から発生する大 気微量成分の発生分布と経年的な変 化を探ります。 トヨフジ海運(株)所属 Trans Futute 5 自動車 運搬船 2 月、5 月、8 月および 11 月の海洋表層マイナ ス大気の二酸化炭素分圧差(ΔpCO2)の分布 を 1995∼2006 年の観測平均で示しています。 ΔpCO2 が正ならその海洋は放出源、負なら吸 収源です。 3 National Institute for Environmental Studies 地球環境の戦略的モニタリング シベリアにおける温室効果ガス等の航空機モニタリング 温室効果ガスの全球循環におけるシベリアの陸域生態系の役割を明らかにする ために、シベリアの 3 地点において航空機を利用して対流圏上部から下部にか けての温室効果ガス濃度や同位体比の高度分布とその時間変動を観測します。 シベリアにおける観測拠点 スルグート上空での各月の平均的な二酸化 炭素濃度の鉛直分布 陸域生態系炭素収支モニタリング 国内のカラマツ林観測サイト(富士 北麓、天塩、苫小牧)において、二 酸化炭素をはじめとする温室効果ガ スの収支(フラックス)を観測します。 同時に生態系の炭素循環に係わる各 種のプロセスを、直接的に、あるい は分光反射特性に基づく間接的手法 で観測します。また、観測手法の標 準化とデータ流通促進に取り組 み、 アジアにおける観測ネットワークの強 化に貢献します。 富士北麓のカラマツ林における二酸化炭素収支(2009 年) Center for Global Environmental Research 4 人工衛星による温室効果ガスの観測 航空機や地上観測でもカバーできない観測の空白エリアについ ては、人工衛星による観測が有効です。研究所は、関係機関と 協力し、大気中温室効果ガス濃度を宇宙から推定できるセンサ ーを搭載した人工衛星「いぶき」(GOSAT)の打ち上げに成功 しました。その観測データから、二酸化炭素とメタンの濃度分 布とその変動を推定し、データを提供しています。 すでに5 年間以上にわたる運用を経て、地球全域の温室効果ガ ス濃度分布と、地域別の炭素の吸収と排出の状況が把握されて います。 データを提供する GOSAT ウェブサイト http://www.gosat.nies.go.jp 温暖化影響のモニタリング(海洋・高山帯) 日本が分布北限にあたる造礁サンゴ分布と、それに共生する褐 融雪時期等に与える影響を、自動撮影デジタルカメラの画像や 虫藻の変化を海水温の変化とともに長期的にモニタリングし、 航空写真に基づいて観測・評価します。また観測手法の標準化 地球温暖化による海水温上昇の影響を評価します。 も進めます。さらに、得られた最新のデータをウェブサイトから また、高山帯において、気候変動が植物の季節変化や分布域、 広く公開し、市民の関心も高める工夫もしています。 立山室堂の最近 5 年間の季節変化(毎年同時期の比較画像) 槍ヶ岳など日本の高山帯のリアルタイム画像が 日本近海の最近 100 年間の水温上昇(気象庁海洋の健康診断表より) とサンゴ分布の北上・拡大情報 5 National Institute for Environmental Studies 見られるウェブサイト http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/mountain 民間航空機を利用した温室効果ガスの定期観測 民間航空機は毎日世界の空を飛んでいるため、これに観測装置 を搭載すればコストを抑えた上空の観測ができます。 研究所は小型で軽い高性能の装置開発に成功し、2005 年 11 月 から観測飛行を始めました。現在は 9 機が日夜世界の空を連続 観測しています。 民間航空機に 2 種類の小型観測装置を搭載 高度 10km 付近における CO2 濃度の変化 地球環境データベース 地球環境研究の支援 地球環境データベース(GED)では、地 地球環境変動を予測する大規模なモデル タをはじめ、各種データ・成果等をデー を運用し所内外の研究者に提供していま や解析支援ツールなども提供しています。 に関する温暖化予測実験などに利用され 球環境モニタリング事業による観測デー タベース化して発信しています。速報値 地球環境データベース 計算を行うためのスーパーコンピュータ す。これらは地球温暖化の将来見通しに 広報活動 地球環境問題に対する市民の理解向上 のため、研究施設の一般公開や所外イ ベント、マスメディアへの対応などにも積 極的に取り組んでいます。 ています。 スーパーコンピュータ(NEC-SX9A/ECO) Global Environmental Database http://db.cger.nies.go.jp [右上]エネルギーの大切さを学ぶ自転車発電 [右下]夏の大公開 2014「実験室ツアー」 Center for Global Environmental Research 6 表紙写真 1 1 天塩 CC-LaG サイト 2 2 ゾンデ観測(天塩) 3 地球温暖化研究棟 3 4 立山室堂山荘からの定点観測 5 地球環境モニタリングステーション—落石岬 4 5 6 6 サンゴ調査 7 土壌呼吸測定チャンバー(富士北麓) 7 8 9 8 波照間島に設置された UV 計 9 つくば科学フェスティバル(自転車発電) 10 地球環境モニタリングステーション—波照間 10 11 11 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT) 打ち上げ(種子島) 組織 センター長/副センター長/主幹/主席研究員 炭素循環研究室 地球大気化学研究室 衛星観測研究室 物質循環モデリング・解析研究室 気候モデリング・解析研究室 気候変動リスク評価研究室 大気・海洋モニタリング推進室 陸域モニタリング推進室 地球環境データベース推進室 センター内に設置されているオフィス・事務局等 国環研 GOSAT プロジェクトオフィス http://www.gosat.nies.go.jp グローバルカーボンプロジェクト(GCP)つくば国際オフィス http://www.cger.nies.go.jp/gcp 地球温暖化観測推進事務局(OCCCO) http://occco.nies.go.jp 温室効果ガスインベントリオフィス(GIO) http://www-gio.nies.go.jp GOSAT-2 プロジェクト http://www.gosat-2.nies.go.jp 国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター 〒305-8506 城県つくば市小野川 16-2 TEL 029-850-2384 E-mail [email protected] http://www.cger.nies.go.jp https://www.facebook.com/niescger 写真提供:大東正巳 編集協力:早稲田大学創造理工学部 2015 / 4
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