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肝臓病と日常生活の注意
慢性肝疾患と日常生活
安静と運動
肝臓病では安静が最ものぞましいのか?
食事
肝臓病では高たんぱく・高エネルギー食がよいのか?
感染予防
肝炎ウイルスは日常生活でも
感染しやすいか?
慢性肝疾患と安静,運動
過去には安静が強調されてきたが,
慢性疾患では体を動かすことも重要
寝てばかりいると健康人でも体は弱ってくる.
手術後,心筋梗塞後でも早期のリハビリ
筋肉は肝臓を補う作用もしている.
・糖分の貯留,アンモニア代謝など
安静が必要な時
肝炎の憎悪期
・GOT、GPTが特に高い時.200以上
腹水,黄疸,肝性脳症のある時
慢性肝疾患と運動
徐々に始めること.ウオーミングアップ
短期的 その日の運動の開始時
長期的 しばらく体を動かしていない時
安静が必要な時
疲れている日には,休んだり早く切り上げる.
長期的な継続が肝心.
どのような運動を始めるか.
歩行から始める.
水泳,プールでの歩行
どの程度の運動か.
心地よい疲れを感じられる程度に.
翌朝に疲れを持ちこさない程度に.
肝臓病の時にも適した運動
有酸素運動
何時までも続けられる程度
最大運動強度の50~60%
心拍数を目安とする(別表)
小汗をかく程度の速さ
・普通に会話ができる.
・やや息がはずむ.
30分間を目安とする
週末だけよりは,できるだけ毎日
以上の条件なら肝硬変中等度まで問題ない.
慢性肝炎ならもっと高い運動でもよい.
運動強度と自覚症状
相対的強度(%)
感じ方
自覚症状を基準にして運動強度を判定する方法
相対的運動 強度の
強度(%)
70
60
50
感じ方
息が切
れる
ややき
つい
比較的
らく
心拍数(拍/分)
20 30 40 50 60
歳 歳 歳 歳 歳
代 代 代 代 代
その他の感覚
150 145 140
どこまで続くか
135 125 不安.緊張.
汗びっしょり.
135 135 130
いつまでも続く.
125 120 充実感.汗がでる.
125 120 115
汗がでるかでな
110 110 いか.フォームが
気になる.
(体育科学センター資料, 1984より改変)
どうして歩行運動なのか?
過剰な運動になりにくい.
中程度の肝硬変でも問題ない.
ジョギングに比べて
膝に負担が少ない.
年配にも良い.腰痛にも有効.
生活の場が広がる.
新しい発見ができる.
道具が要らない.良い靴さえあればよい.
いつでも出来る.旅先でも続けられる.
費用がかからない.
運動療法の有無によるQOL指標の相違
PN 1)
Ex - (n =15)
Ex + (n = 14)
§
100
*
†
80
†
*
†
†
†
60
*
†
†
†
* P < .05 v PN.
† P < .01 v PN.
§ P < .05 v Ex -.
40
20
0
PF
RP
BP
GH
VT
SF
RE
MH
Data show Means +/- SE.
PN: Population norm; Ex -: 非運動療法群; Ex +: 運動療法群.
1) Fukuhara S et al. J Clin Epidemiol 1998; 51: 1045-53.
肝硬変の長期予後
運動療法の有無
X 肝不全
13
11
運動
施行
生存不明
9
X 肝がん
7
5
X 他病死
3
1
0
1
13
2
年
3
11
運動
未施行
4
X 肝がん
X 肝不全
9
X 肝がん
7
5
X 肝不全
X 肝がん
3
X 突然死
1
0
2000年8月
1
X 肝不全
2
3
4
2004年8月
運動療法施行肝硬変患者
血清アルブミン値の変化
5
4.5
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
2000
2004
N
M D
D
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
運動療法施行肝硬変患者
PT INR値の変化
1.4
1.2
1
0.8
2000
2004
0.6
0.4
0.2
0
N
M D
D
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
運動療法施行肝硬変患者
T Bil値の変化
2
1.8
1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
2000
2004
N
M D
D
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
運動療法施行肝硬変患者
血小板数の変化
35
30
25
20
2000
2004
15
10
5
N
0
1 2 3
4 5 6 7
M D
D
8 9 10 11 12 13 14
慢性肝疾患と食事
高エネルギー・高たんぱく食
高たんぱく食は高脂肪食になりがち
結果として
脂肪肝をきたし肝臓に負担となる.
アンモニアが高くなる.
炭水化物が少なくなる.
食物繊維が少なくなる.
健康のための一般的な食事の注意
穀類を主体に.
季節の野菜を多く.
食物繊維を多く(海藻,きのこ,根菜など)
脂肪はとりすぎないように.
牛乳,肉類以外の植物性蛋白質を十分とる.
なるべく全体として食べる.
精製しないもの,葉っぱや頭を除くよりは全体を.
近くで取れたものを.
遠くからのものには防腐剤,殺虫剤などが多い.
夜遅くに消化の悪いものを取らない.
腹8分目を目安に.
よくかんで食べる.
食後1時間はお風呂に入らない.
肝性脳症を伴った肝硬変での食事
たんぱくは控えめにする.
脳症時には 0.6g/kg,治まったら1g/kgへ
特に肉食は脳症を誘発しやすい.
分枝鎖アミノ酸製剤で補う.
便通を良くする.
繊維を多くとる.腸内細菌にも良い.
歩行も励行する
下剤,合成2糖類(ラクツロース,ラクチトー
ル) での調整も必要.
このような時には,自動車の運転も控える.
腹水を伴う肝硬変での食事
塩分を控える.
利尿剤を併用する.
急激な体重の減少は,体のバランスを崩す.
コントロールの悪い時には,水分も制限.
肝硬変の進行した時には,なまものも避ける.
感染に弱い.
消化にされにくい.
栄養状態の悪い肝硬変での食事
長時間空腹状態では,
エネルギー源になる糖分が不足し,
脂肪や筋肉が壊され,ブドウ糖になる.
6時間以上は空腹にしない.
夜間の炭水化物の補給が望ましい.
おにぎり、お茶漬け、クラッカー、
パンなど
就寝の早い人は,朝食を早く摂ったり,
朝食前の軽い補給を考える.
肝臓病での一般的な日常生活の注意
アルコール
基本的には肝臓病では,すすめられない.
服薬
薬の代謝が落ちる.
効き目が長く,血中薬物濃度が高くなる.
副作用もでやすい.
肝臓病での一般的な日常生活の注意
風呂
熱い風呂,長風呂をさける.
食後1時間はあける.
通勤
症状の強い時期には,できれば時差通勤を.
睡眠
不規則にはならないように.
昼間の仮眠は短時間に.
性生活(B型肝炎ウイルス)
パートナーにはワクチンを.
肝臓病での一般的な日常生活の注意
旅行
肝硬変中等度までは可能.
無理のないスケジュールで
ゆったりと.
薬を忘れないように.
・胃腸薬や風邪薬は主治医に相談して.
保険証を忘れずに.
肝炎ウイルスの感染予防のために
輸血はしない.
出血時血液付着物の処置は自分でやる.
廃棄,焼却,水洗,消毒
分泌物(唾液,鼻水)の始末と手洗いの励行
日用品の専用:カミソリ,タオル,歯ブラシなど
乳幼児との接触は特に問題ない.
食べ物の口移しはしない.
予防接種
配偶者,子供,高危険の職場
一般的な生活ではほとんど感染しない.
C型ウイルスでは夫婦間の感染も極めてまれとされている.
ハーバード大学健康食事ピラミッドの
ポイント







体重に注意する。
良い脂肪を多くとり、悪い脂肪を少なくする。
精製した炭水化物をより少なく、全粒の炭水化
物をより多くとる。
たんぱく質も健康に良いものを選択する。
野菜と果物は沢山とり、ジャガイモは控える。
アルコールは適量を。
複合ビタミン剤を念のためにとる。
The Harvard Medical School Guide to Healthy Eating
2001、WC Willett
肝硬変患者の夜間食
LEM(late evening meal)


就寝前に炭水化物を主体とした軽食(約200
kcal) をとる。
注意点





一日の総エネルギーは増やさない。
BCAAを補うことは良いかもしれない。
就寝の早い人は起床時にとるのも良い。
消化の悪い脂肪は少なめに。
問題点


夜寝る前に取ることへの抵抗感
食中毒をおこさないように
今月の推薦図書
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


米国対がん協会著 坪野吉孝訳:「がん」になってからの食
事療法 ー米国対がん協会の最新ガイドー、 法研 2002年
ウォルタ-・ウィレット著 太らない、病気にならない、おいし
いダイエット
ハ-バ-ド・メディカル・スク-ル公式ガイド
光文社 1700円
フランク・オスキー 牛乳には危険がいっぱい 東洋経済新
聞社 2003
加藤眞三: 肝臓病教室のすすめ メディカルレビュー社
2002年
加藤眞三: 肝臓病生活指導テキスト 南江堂
加藤眞三: 患者学のすすめ 春秋社