柏崎第二中学校 校内研修(実践力向上研修) ○ 研究協議 「道徳的価値の自覚」と話合い活動のポイント 1 はじめに ~道徳の授業の目標にかかわって~ 2 話し合い活動 活性化の視点 3 終わりに 平成26年6月11日 新潟県立教育センター教育支援課 教員研修班 佐藤 裕 1 ○道徳の時間の目標(学習指導要領第3章道 徳「第1目標」) 道徳の時間においては、 以上の道徳教育の目標に基づき,各教科、外 国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動 における道徳教育と密接な関連を図りながら、 計画的、発展的な指導によってこれを補充、深 化、統合し、道徳的価値の自覚及び自己の生き 方についての考えを深め、道徳的実践力を育 成するものとする。 2 「道徳的価値の自覚」で押さえておく 3つのことがら(指導書 P31) ○道徳的価値についての理解 道徳的価値が人間らしさを表すものであるため、同 時に人間理解や他者理解を深めていくようにすること ○自分とのかかわりで道徳的価値がとらえられること (自己理解) ○道徳的価値を自分なりに発展させていくことへの思 いや課題が培われること。 道徳的価値に裏打ちされた人間としての生き方の自覚 (下線部は中学校のみ) 3 ○資料を読み、ねらいとする道徳的価値について登 場人物の言動をもとに学級で「話し合う」。 このとき、道徳的価値の大切さを教え込むのでは なく、道徳的価値についての互いの考えを出し合い、 考え合うことで、自ら道徳的価値の大切さや自分と のかかわりについて気付くことができるようにする。 言い換えると、「人間としてよりよく生きる上で、大 切な道徳的価値を自分のこととして深く感じたり、 考えたりすること」(赤堀2010)である。 「自分事」にしていくことが大切。 生徒に自分自身に「問い」、「考えさせ」 「話し合い」、そして「表現活動」の工夫をする。 4 話し合い活動で、表現し考えを深める指導 (解説書P100) ○自分の考えを基に書いたり討論したりするなどの表現 する機会を充実し、自分とは異なる考えに接する中で、 自分の考えを深め、自らの成長を実感できるよう工夫す ること。 自分の考えを基に表現をする機会の充実 ・子どもに自分の考えをもたせる 「私たちの道 徳」の日常的 な活用 ・「何故、どうして」自己と、他者と対話 することで道徳的価値の自覚を深める。 ・自分の考えをまとめ、わかりやすいように 発表するなど、表現する機会を設けることが 道徳的成長を実感する機会であり、場となる。 3 「考え合い」(話し合い)を充実させるための留意点 自己内対話 ① 自分の見方、感じ方、考え方に目を 明確な発問 向けられ るようにすること 考える時間の確保 ② 自分以外の考え方に出会えるようにすること ③ 自分の見方、感じ方、考え方との ペア・ 小集団・学級で 共通点や相違点が明確になること 他者との対話 子どもの発達 段階に応じた 話し合い活動 のねらいを踏 まえる ※それぞれの考えを表現し、互いの考 えについて、ともに考える場を授業の中 に位置づける。 効果的な話し合い活動の3つの視点 6 先生は、話し合い活動において、どのような問 題を感じていますか?(学級、教科指導で) お隣の方と交流してみましょう。 どんな考えが出ましたか? 7 話し合い活動における問題点(活性化のヒント) 1 一部の子ども中心の話し合い(発言力のある子ども、反応の早い子ども) 2 ねらいからそれた話し合い、感情的な自己主張の強い話し合い 3 一問一答の繰り返し、平板で深まらない。当事者以外、話し合いに参加 しない子どもが出てくる。 4 よく考えない思いつきの発言が多く、話し合いが表面的で深まらない。 5 影響力の強い子どもの発言で、違う考えがあっても遠慮する、すっきりし ない話し合いになる 6 時間がかかる、ねらいからそれる心配から教師の意図した方向に導いてし まう。 7 話し合いのルールが身についていない。 8 何について話し合うのか、問題意識をもたないため、ねらいにせまれな い。 9 自分の感じていること,考えていることを自由に話し合う雰囲気に欠ける。 10話したがらない子どもに着目して出番を与えるような配慮が足りない。 11せっかく発言しても、それを無視するようでは話し合いは育たない。 12話をしている子どもの立場にたって聞こうとする態度が育っていないので、 8 話し合いがかみ合わず,深まらない。(順不同) 活性化の視点 6月10日 白木みどり教授のお話をヒントに ○子どもの発達段階を踏まえ (道徳的価値について子どもの実態) ○何を考えさせるか、真に考えさせたことを 踏まえて発問構成を考える。 ○子どもにどのように発信し、 一人一人の感じ方、考え方を引き出すか を考える。 ○深まった思考を表現させるのは どうしたらよいかを検討する。 誰もが答えられる質問から入る? 9 子どもの実態を踏まえてねらいを考える。(子どもの価値につ いての実態を踏まえ、子どもに今日は何を考えたらいいのかわかるように) 導入で子どもの意識を高める。 (子どもの課題意識、必要性、切実感をもたせるために、時には価値観を揺さぶっ てみよう「本当の友達ってどんな友達のことなのだろうか?」) ◎ 広がる、深まる発問を大切にする ア 発問に対する子どもの意識を予想し、多様な返答や意識が 期待できる発問を心がける。 イ 道徳資料に書かれていることや、行為を答えるだけの発問に ならないようにする。 ウ 切り返しの発問を大切にし、「どうしてそう考えたのか」「何故、 そう思うのか」を問い返す。 ※思考が深まるほど、子どもは自分自身を資料に投影し、他人 事でなく「自分事」 として考える。 ・・・「発問」とかかわる部分大きい! 活性化の視点 ア 話し合いの特質を理解させる 話すことと同時に、聞くことの大切さ 話し合いにより、自分の考えの浅さ、狭さへの気付き、感じ方、考え方が深まる。 イ 話し合いの輪を広げる 話し合っていることが自分の関係することであり、進んで 参加しようとする構えをもたせることが大切。 相づち、首をかしげる生徒も参加している、声なき声に耳を傾ける。 ウ 何について話し合うのか ねらいからそれない為に、何について話し合っているかを明確にすることが大切。 主人公のしたことか、考えか、気持ちかを明確にした 上で話し合わせる。適切な助言で軌道に乗せる。 エ 自他を尊重し合う 十人十色。自分と異なる考え、感じ方をもつ他者をより深く理解させることが大切 オ 適切な助言を 教師はコーディネータ役として、何について話し合っているか、どこがずれている か助言することも大切。 11 小集団のよさと留意点 小集団での話し合いのよさ 自分の考えが話しやすい、聞きやすい 感じ方、考えの違いについて、遠慮なく話し合うことができる 多様な考えに触れ、各自の考えが広がり、深まる学び合い 留意事項 ① ねらいからそれないように意図を明確にする ② 役割分担は、固定化しない。(全員ができるように) ③ それぞれの小集団での話し合いの内容、進度が異な るため、教師は必要と思われる小集団への助言をする。 ④ さまざまなメンバーによる小集団の編成を行う。 異なるメンバーで、意見別に集まり論拠を深めるなど ⑤ 場に応じた声の大きさで 発表 班で出てきた考えを発表するが、時間の考慮。 出された意見を整理し、共有するまとめ役としての教師の 12 役割が重要 全体に配慮したいこと ◎ 子どもに考えさせる時間を確保する。 ◎ 考えを書かせる、書いたことを手がかりに 話し合う。 ◎ 教師は子どもの考えを把握し、意図的指 名に生かし、感じ方、考え方の違いについ て話し合わせることで深める。 ◎ 話し合うことが苦手な子どもも気軽に話が できるように配慮する。 (書く活動、小集団の活用) 13 友達ってどんな存在? インターネットで調べてみました。 ○友達わとても大切な存在ですよ 自分が悩んでたりしてるとき すぐに気づくのわ友 達。 心配や励まし気遣い 友達わ本当にいいものですよ 困ってるときわ互いに助け 合い ときにわ喧嘩をして 仲直りをしてまた信頼が深くなり・・ ○いつも一緒にいて楽しくて、変な気を遣ったりはしないけどだからって傷つけたり はしない、お互いを高め合えるちょっぴりライバルみたいな存在 ○ 考えを共有できる人。 一緒にいて楽しい。 ↑的な!? ○何かあったとき互いに助け合える存在 ○正直めんどくさいけどまぁなくてはならない存在 ○それでも"ここぞ"という時には一緒にバカ騒ぎしたり、まるでいつも一緒にいるかの ように、何でも気兼ねなく話ができる、心のよりどころみたいな存在です☆ ○一緒に楽しみ、喜び、悲しみ、色んな事を共有できる人。 家族と同じかな。私は。 ○僕は今中3ですが、5年生の時から仲のいい友達がいますが、今でも仲がいいで す。相談に乗ってもらったり、乗ったりいつも話したりしてます。 本当の友達というのは、お互い信頼しあっている事だと思います。 ○わたしにとって友達は相手に遠慮しなくなったらです。 友達は学校生活の思い出を作っていく仲間でしょうか。 14 一緒にいて楽しい相手でしょうか。 みんなにとって「友達」はどういう人? 友達なら「こんなことをしてくれてあたりまえ!」 話し合い活動1 自作資料 「昭和56年3月18日の出来事 前編 後編 話し合い活動2 友達なら「こんなことをしてくれてあたりまえ!」 15 自分に向き合い、友達について書く 話し合いの評価の観点(例 北海道瀬棚町 瀬棚小) 1 教師の発問は全ての子どもに理解されているか 2 自由な雰囲気の中で話し合いが高まるように発問 が工夫されているか 3 発言の時間を十分与え、教師も共に考えようとして いるか 4 全ての子どもの発言の質をとらえ、大切に生かして いるか 5 資料の活用が話し合いの組織化に耐え、主体的に 価値把握が理解されているか 6 ねらいに即して、指導の重点化が図られているか 7 話し合いの質的内容が高く、実践意欲の高まりが 16 感じられるか。 ご静聴、ありがとうございました。 17 ここからは資料です。 18 (資料)かかわりを大切にした道徳の授業づくりの工夫 (1)話合い活動 生徒が主体的に人間としての生き方を追求し、思考を深め るためには、生徒が道徳的価値を自分のこととしてとらえ、その価値とのかか わりで深く自己を見つめるようにすることが大切である。例えば、二人一組の 対話や小集団による話合い、自分の考えをまとめて書く活動などを取り入れ、 授業形態に工夫を加え、生徒が生き生きと活動し主体的に考え、さらにその 考えを深められるようにする場面を設定することが、道徳の時間の指導効果 を高めることにつながる。(引用 中学校解説書 p.90) (2)書く活動の工夫(個別化の中で個性的な考えが深められる) 「書く活動は、児童が自らの深めたり、整理したりする機会として、重要な役 割をもつ。この活動においては、必要な時間を確保することで、児童は自分 なりの取り組み方をじっくりと考えることができる。また学習の中で、個別化を 図り、児童の感じ方弥考え方をとらえ、個別指導を進める重要な機会にもな る。」(引用 小学校解説書p88) 書くことで、発表の有無に 関わらず一人一人が授業に参加することができ る。 また自分の考えを書くために、自己と対話を行い、書いたものを見直す ことで自分の考えを深めることができます。さらに、自分の考えをまとめたワー クシートを基にグループで話し合うことができます。 導 入 展 自分なりの関心・課題意識 開 前 段 展 開 後 段 終 末 自己内対話 資料 発問 話合い (発問、 他者の 考えとの 出会い) 自分への 振り返り 資料の「山」 自 己 内 対 話 自 己 内 対 話 他者との対話 (考え合い・話合い) 素直に話す 受容的に聞く 新たな問い 自 己 内 対 話 自 己 内 対 話 中心発問で ペア →小集団 →学級 自己内対話 自分のよさ・ 課題 自分なりのまとめ 受容的な雰囲気づくり・相互の信頼関係 20 ○ 道徳の時間における話合いで大切にすること (指導書P93) ・ 「意見を出し合う、まとめる、比較するなどの目的に応じて効 果的に話合いが行われるように工夫する。」(小学校) ・「教師が適切な指導・助言を行い、話合いを効果的に展開し、 生徒一人一人の道徳的なものの見方や考え方を深めていく」 (中学校) その際、大切にする4つのこと ① 学級の生徒の実態 ② 生徒の発達段階の考慮 ③ 取り上げる資料の特質 ④ 学級の受容的な雰囲気 21 ① 学級の生徒の実態・発達的特質 ④ 学級の受容的な雰囲気 ○ 全員参加の話合い なんらかの形で全員の考えや意見が話合いに反映できるように 配慮する。 →互いが自分の考えを自由に発言できる、大切にされる雰囲気 話し合いのルールづくり 話合いの方法理解(役割分担) ○ 受容的な雰囲気づくり (多様な感じ方、考え方を引き出す学級の雰囲気) ・自分の考えを安心して話し、聞くことができる雰囲気 ・一人一人かけがえのない存在として尊重され、受容する雰囲気 ・相手を説得したり、やりこめるために話合うのではなく ・・・・地道な学級経営・人間関係づくりの積み重ね 22 ② 生徒の発達段階の考慮 ア 国語科「話し合うことに関する指導事項」で示されているよう に発達段階を踏まえた系統的な指導を イ 道徳の時間での話合いのねらいを踏まえる ウ 展開過程にペア・小集団、学級での話合いを位置づける (座席の配置の考慮) エ「自己内対話」⇔「他者との対話」の繰り返し ・個→ペア→小集団→クラスへ ・生徒の対話能力の考慮 ・自分の考えを明確にした話合い ・ワークシートの活用(小学校高学年、中学校) (自分の考えを持つ、話合い・聞き合いの視点をもつ) 23 ③ 資料の特質を考慮する ◎ねらいとする道徳的価値について生徒に何を考えさせるか。 「ねらいに係わる子どもの実態を的確に把握しないで授業をすることは羅 針盤を持たずに航海するものだ」という言葉があります。ねらいとする価値に ついて、子どもたちがどのように感じ、どのように感じ、どのように行動している のか、子どもたちをそうさせているものは何かを把握した上で授業の臨みたい ◎ 自作資料のよさ ◎子どもが 「先生が僕たちのために作ってくれたのだ」 「先生は、この資料で僕たちにどんな人になって欲しいと思って いるのだろうか」という問題意識を持って資料を読み、考える。 その他 教師の創意が生かせる 実態に即する わずらわしさ、後ろめたさがない 愛着がある × 作成は簡単ではない。少なからず技術が必要。共感を呼ぶものにならない × ねらいが強調しずき、独りよがりになりかねない × 個性が強すぎ,一般性に欠ける 24 資料 表1 道徳の時間における話し合いのねらい 小 学 校 低学年 【明確化】 ・自分の考えが分かる ・相手の考えが分かる 中学年 【共通点や相違点の明確化】 ・自分の考えと似ているところを考えてながら聞く。 ・自分の考えと違うところを考えながら聞く。 高学年 【相互補完】 ・同じ意見から自分の考えを補強する。 ・違う意見から新たな考えを発見する。 中学校 表2 【相互補完の内容が深まる】 ・相互補完をしながらも、自分の考えを広げる。 話し合いのルールづくり 聞く態度 ・最後まで聞く ・話す人を見て聞く ・うなづいたり、相づちを打ったりしな がら聞く ・自分の考えと比べながら聞く ・話す人の立場になって聞く 話す態度 ・最後まで話す ・自分の考えをはっきりさせて話す ・相手の反応を見ながら話す ・相手の話に続けて話す 25 資料 表3 話し合うことに関する指導事項(国語科) 小 学 校 第1学年 及び第2学年 互いの話を集中してて聞き, 話題に沿って話し合うこと。 第3学年 及び 第4学年 互いの考えの共通点や相違点を考え,司会や提案などの役 割を果たしながら,進行に沿って話し合うこと。 第5学年 及び 第6学年 互いの立場や意図をはっきりさせながら,計画的に話し合うこ と。 第1学年 話合いの話題や方向をとらえて的確に話したり,相手の発言 を注意して聞いたりして,自分の考えをまとめること。 第2学年 相手の立場や考えを尊重し,目的に沿って話し合い,互いの 発言を検討して自分の考えを広げること。 第3学年 話合いが効果的に展開するように進行の仕方を工夫し、課題 の解決に向けて互いの考えを生かし合うこと。 中 学 校 26 27
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