鍼灸と免疫の基礎研究に関する文献調査

全日本鍼灸学会雑誌,
2006年第56巻 5号, 767-778
2006.11.1
第 55 回
( 77 )
767
全日本鍼灸学会学術大会(金沢)
ワークショップ
鍼灸と免疫の基礎研究に関する文献調査
(社)全日本鍼灸学会研究部免疫研究委員会
東家 一雄1)、深澤 洋滋1)、笠原 由紀2,3)
奥田 学2,3)、田原 壮平3)、栗林 恒一3)
1)関西鍼灸大学
解剖学教室
2)関西医療学園専門学校
3)関西鍼灸大学
要
東洋医療学科
免疫病理学教室
旨
平成 16 年度に発足した免疫研究委員会では、過去に国内外で発表された鍼灸と免疫
に関する全ての基礎研究論文の記載内容を精査する目的で Web 上のデーターベースから
キーワード検索により 724 論文を選び、そこから実験動物対象の原著論文 52 編とヒト対
象の原著論文 42 編(そのうち英文論文 72 編、邦文論文 22 編)を抽出した。それら 94 論
文に記載された鍼灸刺激方法や実験対象、測定された免疫学的パラメーターなどについ
て詳細な検討を加えた結果、本領域の報告は極めて多様な実験条件設定の下で実施され
ていることが明らかとなり、今後のこの領域の基礎研究では相互に比較検討が可能な再
現性の高いデータを蓄積しなければならないことが示唆された。
キーワード:鍼刺激、灸刺激、免疫、基礎研究、文献調査
I.緒
言
と思われる。これ迄に本学会ではこのテーマに関
鍼灸臨床では自然治癒力の増強や生体機能のバ
して学術大会セミナー1) やシンポジウム2,3) で取り
ランスを調節する仕組み、すなわち神経免疫内分
上げ、 また、本誌で優れた総説4) や解説5) を掲載
泌相関の概念に基づく恒常性維持機構への作用に
することで最新情報や問題点を学会員に提示し、
治療効果を求めて施鍼や施灸を行う場合がある。
啓蒙に努めてきた。しかしながら国内外の研究状
その際、治療に用いた鍼や灸による刺激が自然治
況を広く見渡したとき、鍼灸刺激は本質的に生体
癒力の源となっている免疫機能に対して実際にど
(患者)の免疫機能に対して有益な効果をもたら
の程度の質的あるいは量的な変化を与えうるのか
すのか、あるいは逆に悪影響を及ぼしてしまう場
ということへの関心や疑問が施術者側に存在し、
合もあるのか、そしてその際の刺激条件やメカニ
また、そのような変化(治療効果)を患者へ説明
ズムは何か、といった点については未だ十分な検
するという側面からも鍼灸の免疫機能への作用機
討が加えられていない。また、得られた研究成果
序解明を目指す研究への期待は高まってきている
が上述の期待や疑問への回答となり得る普遍性か
筆頭著者連絡先:東家一雄 〒590-0482 大阪府泉南郡熊取町若葉 2−11−1
Kazuo Tohya 2-11-1 Wakaba, Kumatori, Sennan, Osaka, JAPAN 590-0482
Department of Anatomy, Kansai College of Oriental Medicine
E-mail:[email protected]
関西鍼灸大学 解剖学教室
768
( 78 )
ワークショップ
つ再現性に富む知見へ集約されてきているとは言
全日本鍼灸学会雑誌56巻5号
Ⅱ.調査対象および調査方法
い難く、むしろ極めて多様な研究デザインや方法
調査に使用した文献データベースは英文論文で
論を基にして行われた実験から導かれた個々の生
は MEDLINE、邦文論文では医学中央雑誌である。
体反応や現象についての所見が分散して蓄積され
抽出作業は 2004 年 11 月末日時点で同データベー
てきているように思われる。そのような状況を鑑
スに収録されている全ての原著論文を対象に行っ
みた時、鍼灸と免疫に関する基礎研究として相互
た。医学中央雑誌に収録されている会議録(学会
に比較可能な一定の情報を具備した原著論文が過
抄録)は情報の不備が多いことを考慮して除外し
去に何編発表され、それらの中ではどのような実
た。検索キーワードとしては、英文論文に関して
験方法や測定パラメーターが設定されてどのよう
は「acupuncture」または「moxibustion」に「aller-
な実験結果が導かれているのかということを改め
gy」
、
「immunology」
、
「immunity」
、
「inflammation」
、
て精査し把握することは、今後の当該研究領域の
「lymphocyte」、「macrophage」を 1つずつ組み合わ
方向性を議論する上で価値ある材料になると考え
せ、また、邦文論文に関しては「鍼」または「鍼
られる。
療法」
、「灸」または「灸療法」と「アレルギー」
、
本委員会ではこの点を軸とする一義的な活動目
「免疫」、「炎症」をそれぞれ 1つずつ組み合わせ
標を定め、これ迄に鍼灸と免疫に関して発表され
ることで設定し、結果的に同データベースより英
た国内外の基礎研究論文を対象にその記載内容の
文論文 320 編、邦文論文 404 編の 724 編の論文を
精査を行ってきた。 本稿では第 55 回全日本鍼灸
抽出した(図 1、図 2)。これら 724 論文に対しタ
学会学術大会(金沢大会)ワークショップでの発
イトルおよび抄録内容を詳細に吟味することで本
表に準じ、調査方法の概略を以下に述べた後、最
調査の目的に適った論文のさらなる抽出を行った
終とりまとめ報告を行った 2名の委員(深澤委員、
結果、最終検討の対象が 94 論文(英文論文 72 編、
笠原委員)の執筆論文を掲載し、本委員会の活動
邦文論文 22 編)に絞り込まれた。それらを実験
成果報告とする。
動物対象の 52 編とヒト対象の 42 編に分け、各々
の記載内容(実験デザインや鍼灸刺激の条件、検
索対象とされた免疫パラメーターとその測定方法
など)について精査した。
図1
データベース検索キーワードと抽出論文件数
東家
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一雄、他
( 79 )
769
Ⅲ.調査結果と考察
スは主に灸刺激に関する検討に用いられ、一方、
1.実験動物を対象とした鍼灸と免疫に関する研
マウスに比べ比較的大型であるラットは、主に鍼
究について(深澤洋滋)
刺激に対する実験に用いられる傾向があった。マ
1)国別基礎研究の取り組み
ウスの系統は、BALB/c、ICR、ddY がほぼ同程度
免疫系に対する鍼灸基礎研究は主にアジア圏で
使用され、これら 3系統で全体の 70 %を占めてい
盛んに行われている(図 3)。特に韓国ではここ
た。これらの系統が同程度使用された背景には、
数年に集中して論文が発表されていることから鍼
各系統の灸刺激に対する感受性の違いを考慮した
灸基礎研究に対する取り組みの積極性が伺える。
選択ではなく、供給されやすさや基礎実験への汎
欧米での研究は皆無ではないものの、今回抽出さ
用系統であることが主な理由であると考えられる。
れた 52 編の論文中に 3編と非常に少なく、中でも
同様にラットの場合も Wistar と SD 系が使用頻度
灸刺激に関する基礎研究については報告が認めら
をほぼ二分しており、 この 2系統により全体の
れなかった。これは場合によっては皮膚に痕跡の
90.5 %を占めることからも、マウスと同様な理由
残るような灸治療に対する理解と関心が欧米諸国
からの選択であると考えられる。
では十分に浸透していないことを反映する結果で
一般的に免疫学的研究を行う際は、免疫応答に
あると考えられる。
対する感受性の高さから雌性動物が多用される傾
2)使用実験動物種
向にある。鍼灸基礎実験における実験動物の性別
鍼灸基礎研究の実験には飼育や取り扱いが比較
は、 マウス、ラット共に雄性の使用が 70 %を越
的容易なマウスやラットが好んで使用されており、
えていた。この背景については明らかではないが、
イヌやウサギを使用した研究も散見された。マウ
実験を行う上での取り扱いの容易さが関与してい
図2
発表年別にみた鍼灸と免疫に関する論文件数の推移
770
ワークショップ
( 80 )
全日本鍼灸学会雑誌56巻5号
るかもしれない。実際、報告者は、ラットに通電
告で使用されていた。一方、灸刺激に関しては足
鍼刺激を行う際、雌性よりも雄性の取り扱いが容
三里以外では腎兪穴(BL 23)、 期門穴(LR 14)
易であることを経験している。
の使用が多く、次いで脾兪穴(BL 20)、大腸兪穴
(BL 25)、肩
3)刺激の種類
報告で使用されていた刺激は全体の約 58 %が
穴(LI 15)が用いられていた(表
1)
。
鍼刺激であり、残りが灸刺激であった。鍼刺激の
全ての使用経穴の分布を体部位別にみると、鍼
内訳は通電鍼刺激が最も多く、次いで置鍼や雀啄
刺激では体幹 32.7%、 上肢 9.0%、 下肢 58.0%で
術が使用されていた。一方、灸刺激の中には従来
あったのに対し、 灸刺激では体幹 65.6%、 上肢
の灸法とは異なる電子灸を用いた検討が 1編認め
5.7 %、下肢 28.7%であり、鍼では下肢、灸では
られた。
体幹への刺激が多い傾向が認められた。このこと
使用刺激の種類については英文論文と邦文論文
は実験に使用された動物種との関連が考えられ、
とではかなりの相違が認められ、英文論文の 72%
例えばラットではマウスよりも下肢への刺激が技
が鍼刺激を用いた研究であるのに対して、邦文論
術的に行いやすいなどの理由があるものと思われ
文では 64%が灸刺激を用いた検討となっており、
る。
欧米諸国に反して我が国における灸刺激の治療効
果に対する関心の高さが伺える。
5)通電鍼刺激条件
通電鍼刺激に使用される周波数は 2Hz が全体の
半数を占めており、次いで 2.5 Hz と 1Hz が使用さ
4)使用経穴
実験に使用された経穴は鍼刺激、灸刺激を通じ
れていた。これら 3種類の周波数が全体の 73 %を
て足三里穴(ST 36)が圧倒的に高頻度(鍼刺激
占めていることから、この周波数の選択に何らか
を用いた論文の約 29.1%、灸刺激を用いた論文の
の根拠があると考えて免疫学的指標に対する効果
22.9%)であり、鍼灸刺激の免疫系への作用に関
との関連について論文を検索したがこの周波数に
しては同経穴への刺激が最も研究者の関心を集め
選定するための強い相関は認められなかった。一
ていることが示唆された。その他の経穴は刺激の
方、比較的基礎研究が進んでいる通電鍼鎮痛に関
種類により異なり、鍼刺激では奇穴である蘭尾穴
する論文の多くは 5Hz 以下の周波数が汎用されて
(Ex-LE 7) の使用が足三里穴に次いで 9.1%の報
いた6-10)。 これは 3Hz の通電鍼刺激が脊髄内での
告で利用されており、その他、大杼穴(BL 11)、
内因性オピオイド物質のひとつであるエンケファ
命門穴(GV 4)、頬車穴(ST 6)などが複数の報
リンの放出を引き起こし、有意な鎮痛作用を引き
図3
鍼灸と免疫に関する動物実験論文の国別報告状況
東家
2006.11.1
一雄、他
( 81 )
771
起こすためである7,9,11,12)。 従って、今回の検討か
刺激回数については単回刺激が 45.7%を占めて
らは選択根拠が明らかではないが、免疫学的検索
おり、一回の鍼刺激による急性効果を見た研究が
の実験で 2Hz が多用された背景には鎮痛を引き起
大半であった(図 4)。その反面、 鍼による持続
こす周波数が参考となった可能性がある。
的な刺激が免疫系にどの様な効果を引き起こすか
通電時間については持続時間が 10 分から 120
分間までのばらつきが認められたが、全体の 44.8
%が 30 分間であった。次いで、60 分間が 27.6%、
という慢性効果についての検討が行われていない
ことが明らかとなった。
6)灸刺激条件
15 分間が 13.8%であった。臨床における通電時間
鍼刺激と異なり灸刺激の回数は三峰性に分布し
は 15 から 20 分間程度が一般的であることから、
ていた。大半を占めたのが単回刺激の 19.4%、次
動物実験の検索結果は臨床における条件とは相違
いで 5 回(16.1%)
、そして 6回および 16 回の 9.7%
が認められる。しかしながら通電鍼鎮痛おいて最
である(図 4)。これらの回数の分布から、灸刺
も強い作用を引き起こすのに必要な時間は 30 か
激については 2週間程度にわたり連続刺激を与え
ら 45 分間である10,13,14)ことから、鎮痛作用を引き
た場合についての検討も行われていることが明ら
起こすのに十分な時間をかけて刺激することで鎮
かとなった。
灸刺激において刺激強度に影響を与える因子の
痛以外の生体内の変化を検出する可能性を求めた
ひとつである艾 1壮の量は、 少ないものでは 1.5
のではないかと考えられる。
表1
動物実験に使用された経穴その他の刺激部位
鍼による実験の刺激部位
刺激部
孔最 (LU 6)
少府 (HT 8)
合谷 (LI 4)
曲池 (LI 11)
商丘 (SP 5)
三陰交 (SP 6)
行間 (LR 2)
曲泉 (LR 8)
然谷 (KI 2)
照海 (KI 6)
頬車 (ST 6)
天枢 (ST 25)
足三里 (ST 36)
京門 (GB 25)
懸鍾 (GB 39)
大杼 (BL 11)
肺兪 (BL 13)
腎兪 (BL 23)
関元兪 (BL 26)
志室 (BL 52)
足通谷 (BL 66)
命門 (GV 4)
大椎 (GV 14)
前頂 (GV 21)
蘭尾 (Ex-LE 7)
前脛骨筋
Total
灸による実験の刺激部位
英文論文
件数
邦文論文
件数
総数
%
0
1
2
1
1
2
1
1
1
1
3
0
15
1
1
3
0
1
1
1
1
3
1
1
5
0
48
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
2
7
1
1
2
1
1
2
1
1
1
1
3
1
16
1
1
3
1
2
1
1
1
3
1
1
5
2
55
1.8
1.8
3.6
1.8
1.8
3.6
1.8
1.8
1.8
1.8
5.5
1.8
29.1
1.8
1.8
5.5
1.8
3.6
1.8
1.8
1.8
5.0
1.8
1.8
9.1
3.6
100
刺激部
肩
(LI 15)
曲泉 (LR 8)
期門 (LR 14)
足三里 (ST 36)
懸鍾 (GB 39)
脾兪 (BL 20)
腎兪 (BL 23)
大腸兪 (BL 25)
関元兪 (BL 26)
膀胱兪 (BL 28)
附分 (BL 41)
命門 (GV 4)
至陽 (GV 9)
身柱 (GV 12)
大椎 (GV 14)
関元 (CV 4)
神闕 (CV 8)
腰部
傍脊柱筋部の
皮膚 4点
第 4,5 腰椎の棘
突起外方 1 cm
背部左右対称
の 6 ヶ所
Total
英文論文
件数
邦文論文
件数
総数
%
1
0
1
6
1
1
2
2
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
2
2
0
1
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
2
1
3
8
1
2
3
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
5.7
2.9
8.6
22.9
2.9
5.7
8.6
5.7
2.9
2.9
2.9
2.9
2.9
2.9
2.9
2.0
2.9
2.9
0
1
1
2.9
0
1
1
2.9
0
1
1
2.9
23
12
35
100
772
( 82 )
ワークショップ
全日本鍼灸学会雑誌56巻5号
mg から多いもので 7.5 g とその使用量に 5000 倍も
も非常に期待される結果であるが、薬物により誘
の差が認められた。この艾量は灸刺激の効果につ
発されたマウス耳介の浮腫の測定のみで評価され
いて検討する際の重要因子の一つとなるだけに、
ており、今後は他のアッセイ方法や指標も併せて
実験条件を設定する上で特に注意が必要であるこ
検討し、多角的な評価を加える必要がある。
とは言うまでもない。しかしながら今回抽出され
サイトカイン産生については IFN-γ、IL-1β、
た論文から得られた 1壮の艾量と 1経穴当たりの
IL-2、 IL-4、 IL-6、 IL-10、 IL-12 の動態が観察さ
施灸壮数や総艾量には有意な相関が見出されず、
れていた。IFN-γに関しては上昇するとの報告も
1匹の動物あるいは 1経穴に加える灸刺激量の判
あれば、減少するとの報告もあり、刺激方法との
断は実験者間で大きく異なっていることがわかっ
相関と合わせて今後さらなる検討が必要である。
た。このことは適度な温熱刺激や熱傷に近い強い
一方、IL-1βおよび IL-6 に関しては減少するとい
熱刺激を求める場合、また、艾含有成分による変
う結果が多く、IL-2 では逆に上昇するとの結果が
化を求める場合など、灸刺激に求める効果の違い
大半を占めた。このように、鍼灸刺激を行うこと
を反映しているものと思われる。
により特定のサイトカインの動態が変化すること
7)免疫学的評価法
免疫学的評価法は大別すると自然免疫(31.7%)
、
が明らかにされており免疫系への作用メカニズム
を探る点で有用と思われるが、報告数が僅かであ
細胞性免疫(20%)、サイトカイン産生(20%)、
るためにデータの相互比較検討が困難であった。
細胞表面マーカー(18.3%)、抗体産生(10%)の
細胞表面マーカーに関する検討では、ヘルパー
5つの範疇に分類することができた。
T 細 胞 と キ ラ ー T 細 胞 の 血 中 で の 比 で あ る CD
自然免疫に関する指標の中で最もよく検討され
4/CD 8 比が指標とされており、結果としては灸刺
ているのがナチュラルキラー(NK)活性であっ
激で CD 4/CD 8 比は減少傾向を見せることが報告
た。鍼刺激・灸刺激共に NK 活性への影響につい
されている。この結果は灸刺激が免疫細胞の含有
て検討がなされており、いずれも刺激後に活性が
比率を変化させるという点では興味深い結果であ
上昇することが報告されている。NK 活性が上昇
るが、その現象が刺激動物の免疫機能の変化にど
することは悪性腫瘍に対する効果として有用と考
のような影響を与えているのか、あるいは機能変
えられるが、この変化に臨床的にどの程度の重要
化の結果としての現象なのかといった点について
性があるのかについては不明である。
は検討されていない。
細胞性免疫能に関する指標では遅延型過敏症の
抗体産生能に対する検討では溶血斑形成細胞数
検討例が多く、鍼・灸刺激とも遅延型過敏症の抑
の検討が主に行われており、鍼刺激による溶血斑
制作用を有することが報告されている。この遅延
形成細胞数の増加が報告されている。このことは
型過敏症に対する鍼灸の作用については臨床的に
抗原特異的抗体産生細胞の増加を意味するため、
図4
実験動物への鍼灸刺激回数と論文数(割合)の関係
2006.11.1
東家
一雄、他
( 83 )
773
感染症に対する防御反応という側面から臨床的に
は健常成人が対象で生体の免疫系への作用を検索
も興味深い。このように鍼刺激の有効性が示唆さ
した報告であった。つまり、前者では患者に対し
れる一方で、特異的抗体の増加はリウマチなどの
てその症状の改善を目的とした鍼灸施術を行って
自己免疫疾患に対しては鍼が禁忌となることを意
その前後での免疫学的パラメーターを比較したも
味する。その意味において、正常動物を使用して
のであり、後者では鍼施術の前後における生体の
行われた実験結果に対する解釈には注意が必要で
免疫系に及ぼす効果を報告したものであった。一
ある。
論文あたり採用された対象者数は、最小 4人∼最
8)まとめ
以上のように、免疫分野における鍼灸基礎研究
大 500 人と人数にばらつきがあり、平均で 50.9 人、
また平均年齢は 36.7 歳であった。
の報告内容は、正常実験動物に鍼灸刺激を与え、
対象者を疾患別に分類すると、免疫系に支障を
その刺激により変動する免疫学的指標を測定した
きたす疾患である自己免疫疾患とアレルギー性疾
ものが大半である。鍼灸刺激により免疫学的指標
患を対象とした報告が多く、自己免疫疾患は関節
が動くことは徐々に明らかとなっているが、生体
リウマチや橋本病などの症例について15-20) 、アレ
にとってこれら指標の変動がどの程度重要なのか
ルギー性疾患は喘息やアレルギー性鼻炎などの症
についての検討が行われておらず、特に抗原特異
例についての報告21-26) がそれぞれ 6編ずつあった。
的な獲得免疫への重要性については明らかとなっ
また、自己免疫疾患とアレルギー性疾患の両方を
ていないのが実情である。また、免疫系における
対象とした報告27) の 1編を加えると合計 13編であっ
免疫学的指標の動態は、生体の状態および病態に
た。その他、感染症、悪性腫瘍、手術における症
よりその臨床的意義が大きく変化することを念頭
例がそれぞれ 2編ずつ報告されていた。
に、指標動態の解釈を慎重にすすめる必要がある。
施術に使用された経絡については、重複して使用
従って今後、病態モデル実験動物を積極的に活用
される場合はあるものの、足太陰脾経、足少陰腎
し、鍼灸刺激による免疫学的指標の変動が疾患に
経、足陽明胃経、手陽明大腸経、足太陽膀胱経な
対しどのような効果があるのかという点について
どが比較的多く使用されていた。また、部位別の
直接的に検討する必要性があると思われる。
比較では下肢 34%、上肢 24%と四肢への施術がほ
ぼ全体の 60%を占め、背部は兪穴が多く使われる
2.ヒトを対象とした鍼灸と免疫に関する研究に
ついて(笠原由紀)
ため 22%、腹部 12%、顔面・頭部が 6%であった。
施術に用いた経穴は様々で非常にばらつきが多い
近年、鍼灸治療は免疫系に支障をきたした疾患
が、その中でも使用回数別で比較すると、足三里
に対しても行われており、その効果への期待が高
穴が 43 編中 16 編と最も高い頻度で使用されてお
まりつつある。しかしながら、その効果や施術に
り、次いで合谷穴(LI 4)が 12 編で使用されてい
関する総括はなされていないのが現状である。そ
た 。 その他 、 三陰交 穴 (SP 6) が 9編、 肝兪穴
こで今回は、ヒトを対象とした研究論文として抽
(BL 13)、曲池穴(LI 11)が 6編、太谿穴(KI 3)
出された 42 編について調査し、今までに行われ
が 4編、 列缺穴 (LU 7)、 迎香穴(LI 20) などの
てきた臨床試験やヒトを対象とした実験について
経穴がそれぞれ 3編で使用されていた(表 2)。鍼
検討した。
施術方法は、四肢末梢穴を低周波、もしくは高周
報告内容を施術別にみると、現在のところ灸施
波による鍼通電で刺激したものが 16 編報告され
術よりも鍼施術に関する論文の方が多く、また国
ており、単刺、置鍼、撚鍼が 7編、耳鍼が 2編、
別に比較すると中国、日本からの報告が大部分を
特に施術方法に関する記載のないものが 13 編と
占めていた。対象者の抽出に関しては記載されて
いう結果であった。
いないものが殆どであったが、記載がある場合は
免疫学的パラメーターの測定系においては、図
大きく二つに分かれており、一方は何らかの疾患
5に示すように抗体量、リンパ球分画、NK 細胞
を有する患者が対象である臨床試験報告で、他方
の活性等が取り上げられ、それらを施術の前後で
774
表2
ワークショップ
( 84 )
性タンパク(CRP)などを指標に炎症反応も同時
ヒト対象の報告で使用頻度の高い経穴
経穴名
全日本鍼灸学会雑誌56巻5号
に測定している報告もあった。
論文件数
今回、検索した論文に記載された結果によると、
足三里(ST 36)
合谷(LI 4)
三陰交(SP 6)
肝兪(BL 18)
曲池(LI 11)
太溪(KI 3)
列缺(LU 7)
迎香(LI 20)
屋翳(ST 15)
天窓(SI 16)
肩外兪(SI 14)
腎兪(BL 23)
商曲(KI 17)
風池(GB 20)
肩井(GB 21)
陽陵泉(GB 34)
16
12
9
6
6
4
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
疾患を対象とした報告では測定された免疫学的パ
ラメーターはその殆どが改善を示していた。しか
しながら、多くの論文では統計学的解析が行われ
ておらず、また、有意差を記述していてもその解
析法が示されていない場合が多くみられた。更に
臨床試験報告においては、最も大切であると思わ
れる対象者の抽出について具体的に記載されてい
る例が少なく、対象者が無作為に抽出されている
か否かが不明な論文が殆どであるなど、残念なが
らそのデータの信頼性は非常に低いと思われた。
一方、健常成人を対象とした報告においては、施
術の前後で白血球数やリンパ球の分画の割合など
といった非特異的なパラメーターの変化を検索し
た報告が多く、特異的免疫応答を検索した報告は
比較するパターンが多くみられた。最も多く報告
ごく一部の論文のみであった。
されていたのは施術前後における血中抗体量をク
しかし、それらの中にも少数ながらランダム化
ラス別に比較するという検索例であった。また、
比較試験としてデザインされた報告もみられた。
リンパ球分画に関しても施術の前後で末梢血中の
その例として疾患を対象とした Joos らの報告24)を
CD 4 陽性細胞、 CD 8 陽性細胞の比率や各分画の
紹介する。この報告では対象者の抽出が一般の中
割合について表面マーカーを用いて検索するもの
からであることが明確に記載されており、更に呼
が多くみられた。サイトカインに関しては主に血
吸機能検査も行い施術群とコントロール群がほぼ
清中含有量の測定であったが、著者らは健常人血
同じレベルとなるよう割付けされていた。抽出さ
中リンパ球から抽出した mRNA を対象にサイト
れた被験者は無作為に 2群に分けられ、施術群は
カイン遺伝子発現の変化を検索し、報告した 。
喘息に対する治療を行い、コントロール群には喘
また、少数ではあるが、赤血球沈降速度や C 反応
息とは無関係の施術を行った。なお、この実験は
28)
図5
ヒト対象の報告における免疫学的測定項目別の論文件数
2006.11.1
東家
患者のみ施術効果を知らない単純盲目試験であっ
一雄、他
( 85 )
775
Ⅳ.おわりに
た。対象者の人数は施術群が男性 13 名女性 7名の
メカニズムの詳細は明らかではないものの、鍼
計 20 名、コントロール群が男性 14 名女性 4名の
灸刺激が生体の免疫系に直接的あるいは間接的に
計 18 名の総計 38 名、 また、 年齢に関しては、
揺さぶりをかけて様々な免疫学的パラメーターを
16∼65 歳と広範囲ではあるが、 平均年齢はほぼ
動かすことは、今回、検索された報告をみてもほ
同じレベルになるよう割付けされており、同様に
ぼ間違いないであろう。ただし、鍼灸刺激が免疫
罹患年数、呼吸機能においても 2グループ間に差
機能を賦活あるいは抑制した場合、その結果とし
がないように設定されていた。治療方法は、施術
て生じた生体作用が我々の健康の維持増進や疾病
群に関しては肺兪穴、膈兪穴(BL 17)
、合谷穴、
からの回復にとって必ずしも有益であるとは限ら
列缺穴の経穴を使用する一方、コントロール群に
ないという、免疫の持つ「諸刃の剣」としての側
関してはそれ以外(中渚(TE 3)
、顱息(TE 19)、
面も十分考慮されねばならない。今回の調査では、
率谷(GB 8)
、陽陵泉(GB 34)
)の経穴を使用し、
鍼灸と免疫の基礎研究分野では全体の報告数が少
施術回数は 1ヶ月間で 12 回の割合で行っていた。
ない上に個々の実験条件が極めて多様であること
効果のパラメーターの一つとして鍼灸治療後アン
が浮き彫りとなった。また、臨床研究ではランダ
ケートによる症状の変化を調査しており、コント
ム化比較試験としてデザインされている報告が極
ロール群においては改善を示した例と不変であっ
めて少ないという問題も克服されねばならない。
た例がほぼ同じであるのに対し、施術群は改善を
今後、この領域では得られる結果に一層の再現性
示した例が多かった。免疫学的パラメーターの評
や信頼性が求められ、鍼灸臨床に還元できる質の
価は、施術群とコントロール群ともに治療前の数
高いデータの蓄積が期待される。さらにその知見
値を基準とした治療直後の数値変化の割合を求め
は日々著しい発展を示す現代免疫学の知見とも整
て行った。 統計学的解析は Mann-Whitney の U 検
合性が保たれ、相互に比較検討が可能でなければ
定を用いている。施術群においては CD 3 陽性細
ならないであろう。そのためには、一定水準の実
胞と CD 4 陽性細胞の割合、また、試験管内での
験技術の下で安定した結果を導くことが可能な鍼
リンパ球増殖に有意差が認められ、コントロール
灸刺激の方法やアッセイ方法を含む標準的な実験
群においては CD 4 陽性細胞の割合に有意差が認
系を確立することが本領域の発展に不可欠であり、
められている。さらに血清中のサイトカインにお
かつ、研究者の急務であると考えられる。
いても同様の方法で評価し、治療後の施術群にお
いて IL-6、L-10 が有意に減少し、IL-8 が有意に増
加するという結果を報告していた。
以上をまとめると、動物を対象とした基礎研究
謝
辞
本委員会の活動に終始ご協力いただいた松尾貴
子、岡田佳子の両氏に深謝します。
論文と同様にヒトを対象とした研究においても検
索パラメーターの多くは抗原非特異的なものであ
り、特異的免疫応答を検索した報告は少なかった。
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Immunological Research Committee for Acupuncture and Moxibustion
The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion
TOHYA Kazuo1), FUKAZAWA Yohji1), KASAHARA Yuki2,3), OKUDA Manabu2,3)
TAHARA Souhei3), KURIBAYASHI Koichi3)
1) Department of Anatomy, Kansai College of Oriental Medicine
2) Kansai Vocational College of Medicine
3) Department of Immunology and Pathology, Kansai College of Oriental Medicine
Abstract
The immunological research committee for acupuncture and moxibustion, which was primarily organized in
2004, has investigated previous reports on basic research describing the immunological effect with acupuncture
and/or moxibustion treatment.
According to the on-line database, we firstly selected 724 reports by keyword searches, which were finally
narrowed down to 52 reports on experimental animal tests and 42 reports on clinical tests (72 English articles
and 22 Japanese articles) by careful sorting. Then, we analyzed information such as the condition of acupuncture and/or moxibustion stimulation, subject of the test, and immunological parameter for assessment in the 94
reports.
The findings showed that the previous research was performed under inconsistent methods that were difficult
to organize, and it is suggested that more comparable and reproducible experiments are required for the progression of this research area in the future.
Zen Nippon Shinkyu Gakkai Zasshi (Journal of the Japan Society of Acupuncture and Moxibustion: JJSAM).
2006; 56(5): 767-778.
Key words: Acupuncture, Moxibustion, Immunity, Basic research, Literature documentation