入院患者の発熱

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J hospitalist Network
Clinical Question
分野:感染症
テーマ:診断
入院患者の発熱
作成 東京ベイ浦安市川医療センター 土屋勇輔
監修 東京ベイ浦安市川医療センター 江原淳
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78歳 男性
■ 高血圧症 心房細動 肺気腫の既往
■ 市中肺炎の診断で入院 CTRX+AZM開始
■ 3病日 解熱を認め、気道症状も改善
■ 5病日 再度38℃の発熱を認めwork-up
■ 7病日
各種培養は陰性 全身状態は良好
だが熱が下がらない
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Clinical question
一旦良くなったのになぜ発熱したのか
Agenda
・ 病院内の発熱へのアプローチ
・ 感染症は大丈夫?
・ 非感染で考えることは?
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病院内発熱へのアプローチ
入院患者の不明熱
≠古典的な不明熱
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病院内不明熱の定義
■ 急性期治療中の入院患者で38.3℃以上
■ 入院時には感染症がなく、潜伏期でも
ない
■ 3日間の適切な検査でも診断不明で、
微生物検査は少なくとも2日間陰性
Curr Clin Top Infect Dis 1991:11:35-51
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古典的不明熱
感染症
悪性腫瘍
薬剤熱
膠原病
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発熱(入院中)
感染症
非感染性
悪性腫瘍
膠原病
(薬剤熱含む)
Hospitalist. 2013; 1(2): 169-178
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院内新規発熱患者の原因
Am J Med 1993;95:505-12
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院内新規発熱患者の解析
(亀田総合病院 3年間 165人)
第85回日本感染症学会総会 東京 2011
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入院患者の感染症
Public Health Rep 2007;122:160-66
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■
アプローチ
医療介入(薬物、デバイス、カテーテル、手術創)
の関連はどうか検討
■
感染症(約半数)をまずは検索する
■
次に非感染性(1/4)の原因を検討する
■
膠原病、悪性腫瘍が入院後新規の発熱の原因に
なることはまれ
Hospitalist. 2013; 1(2): 169-178
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ルーチンで行うこと
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Top to bottomで身体診察
(特にデバイスやカテーテル、創部に注意) ■
採血・尿検査・胸部X線 ■
培養(血液+疑わしいなら尿、痰)
■
下痢があればCDトキシン
Hospitalist. 2013; 1(2): 169-178
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末梢ラインは?
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CVラインは?
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関節は?
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感染症は大丈夫?
■感染源は?他にないか?
- 膿瘍、IE、椎体炎、褥瘡、結核、忘れてない?
■ドレナージは必要?十分?
■
原因微生物は特定できているか?
■
抗菌薬の種類、量、移行性は
適切か?
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オプションとして
■
胸水、腹水があれば
刺 ■
造影CTで深部膿瘍探し ■
MRIで椎体炎、硬膜外膿瘍探し
■
髄膜炎を疑えば腰椎
■
不要な異物(Foleyなど)は除去
刺
Hospitalist. 2013; 1(2): 169-178
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非感染性で考えること
■
薬剤熱
■
偽痛風
■
血栓・塞栓症
■
輸血
■
アルコール離脱
■
内分泌(甲状腺クリーゼ・副腎不全)
■
中枢熱
■
腫瘍熱
■
心筋
塞
Hospitalist. 2013; 1(2): 169-178
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アプローチ
■
下肢に注目(DVT,結晶誘発性関節炎, コレステロール塞栓)
■
薬・点滴に注目(薬剤熱、輸血製剤投与)
■
アルコール多飲は?(アルコール離脱、急性膵炎)
■
内分泌(甲状腺機能亢進、副腎不全)
■
その他(急性心筋
塞、出血、中枢性高体温、腫瘍熱)
Hospitalist. 2013; 1(2): 169-178
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薬剤熱を疑おう
■慎重な診察や血液検査により
他の発熱の原因がない時
■薬剤投与により生じた発熱で、
原因薬剤中止後に消失する
除外診断!
Ann Intern Med. 1987;106(5):728
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原因となる薬剤
高頻度
低頻度
まれ
抗菌薬
アロプリノール
抗菌薬
βラクタム系
ヨード
アミノグリコシド
ST合剤
カルバペネム
マクロライド
中枢神経作動薬
バンコマイシン
テトラサイクリン
ループ利尿剤
NSAIDs
クリンダマイシン
SU剤
降圧剤
キノロン
抗不整脈薬
βブロッカー
リネゾリド
メチルドパ
Caブロッカー
クロラムフェニコール
麻薬
ACE-I
ビタミン剤
睡眠薬
イソニアジド
インターフェロン
リファンピシン
Med Clin North Am 2001;85:149-85
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比較三原則
■比較的
■元気
■徐脈
■CRP低値
岡田 正人. Dr岡田のアレルギー疾患大原則
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比較的徐脈
■
39℃でHR<110/min
■
40℃でHR<130/min
■体温が0.5℃上がるとHR
■37∼38℃では評価不能
10上がる
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比較的徐脈
≠薬剤熱
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比較的徐脈の原因
細菌感染症
腸チフス・パラチフス
マイコプラズマ肺炎
レジオネラ
ブルセラ病
薬剤熱
腫瘍熱
薬剤性
オウム病
野
病
スピロヘータ(ワイル病など)
リケッチア(恙虫病・日本紅斑熱)
Clin Microbiol Infect. 2000;6(12):633.
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薬剤熱の症状
皮疹
好酸球増加
比較的徐脈
■
18%
22%
11%
あれば参考になるがなくても否定はできない
Ann Intern Med. 1987;106(5):728.
■
発熱のタイミングは24時間∼数ヶ月(平均
8日)と多彩であり診断に有用ではない
Am J Med Sci. 1987;294(4):275.
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症例の転帰
■
感染性の原因はひととおりw/uしたがはっ
きりしたものはなかった
■
薬剤熱を疑い詳細に病歴聴取したところ、
入院後メインテート®が開始になっていた
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メインテート®中止後すみやかに解熱した
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Take Home message
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入院中の発熱で頻度の高いものを知る
(半数は感染症、1/4は非感染症)
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感染症はまず肺炎、UTI、SSI、CRBSI、
CD腸炎の5つをおさえる
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非感染性の原因として、薬剤熱を忘れない