RSウイルス感染症流行年における Palivizumab使用実態の検討 齊藤明子1)、長谷川正幸2)、早川昌弘2) 、鈴木千鶴子3) 大城誠3)、家田訓子3) 、加藤有一3) 、林誠司3) 、山田恭聖3) 1)名古屋大学大学院小児科学 2)名古屋大学医学部附属病院周産母子センター 3)名古屋大学小児科関連NICU はじめに RSウイルス感染症 :乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占める 早産児や慢性肺疾患(CLD)を有する児では重症化 酸素投与などの対症療法が中心 予防が重要! Palivizumab :抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体 RSウイルスのエンベロープのF蛋白に結合(中和活性) 1998年 米国で認可 2002年 日本で認可 2005年 先天性心疾患へ適応拡大 Palivizumab 投与の適応 早産児 ・ 在胎期間28週以下で、RSV流行開始時に12ヶ月齢以下の早産児 ・ 在胎期間29-32週で、RSV流行開始時に6ヶ月齢以下の早産児 ・ 在胎期間33-35週で、RSV流行開始時に6ヶ月齢以下の早産児 (RSV感染症のリスクファクターを持つ症例) 慢性肺疾患 ・ RSV流行期の直前6ヶ月に、CLDの治療を要した24ヶ月齢以下の乳幼児 (CLD) ・ RSV流行開始時に酸素吸入を受けている2歳から4歳のCLDの児 心疾患 ・ RSV流行開始時に24ヶ月齢以下の先天性心疾患児で、血行動態に異常 のある場合 ・ RSV流行開始時に24ヶ月齢以下の先天性心疾患児で、染色体異常、 遺伝子異常やその他の先天奇形を伴う場合 ・ RSV流行開始時に24ヶ月齢以下の乳幼児で、心筋症・不整脈等を有し 循環動態に異常を示す場合 2005-2006シーズンにおける RSウイルス感染症の流行状況 人 2004 2000 2006 2005 1500 1000 500 0 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4月 対象と方法 ・ 期間:2005年9月1日~2006年4月30日 ・ 対象:名古屋大学小児科関連7施設のPalivizumab 投与症例 ・ 方法:周産期情報、Palivizumab投与の実態、RSV感染症罹患の 有無につき、医療記録より後方視的に検討 対象のプロフィール 505症例 (男児293例、女児212例) 在胎週数: 31.3±3.5(22~40)週 出生体重: 1607.0±601.5(456~3910)g 単胎352例、多胎153例 酸素投与: 426例(85.0%) 23.2±34.3日 人工換気: 275例(54.9%) 20.1±26.9日 Palivizumab 投与の適応事項 ≦GA 28W GA 29-32W GA 33-35W, リスクファクター(+) 118 156 184 早産児 458例 (86.1%) (重複あり) CLD 52例 (9.8%) 51 1 6M以内にCLD治療(+) CLD, O2(+) 心疾患 22例 (4.1%) 18 2 2 CHD, 血行動態異常(+) CHD, 染色体異常(+) その他, 血行動態異常(+) Palivizumab 投与のプロフィール ・ 期間: 2005年10月1日~2006年4月4日 ・ 回数: のべ2276回 平均 4.5±2.1(1~7)回 ・ 間隔: 平均 31.0±6.1(14~84)日 初回投与から3月まで投与し終えた症例: 91.5% (80.0~97.2%) 有害事象:2例 ・ クループ様の咳嗽、2日で改善 ・ Palivizumab 投与時啼泣しチアノーゼ、数時間で改善 RSウイルス感染症への罹患 症例 施設 入院時 修正月齢 無呼吸発作 酸素投与 人工換気 入院期間 ;期間(日) ;期間(日) (日) 1 A 2 - - - 6 治癒 2 B 0 - - - 10 治癒 3 C 3 - - - 8 治癒 4 C 5 + + ;23 + ;17 30 治癒 5 D 17 - - - 7 治癒 6 D 19 - - - 4 治癒 7 D 7 - + ;3 - 6 治癒 8 E 1 - + ;? - 10 治癒 (Median) 4 7.5 転機 RSウイルス感染症罹患のリスクファクター 罹患群 (n=8) 非罹患群 (n=497) p 性別;男児 (%) 62.5 57.9 NS 在胎週数 (week) 28.4±2.9 31.3±3.5 NS 出生体重 (g) 1379.7±488.1 1610.7±603.2 NS 単胎 (%) 87.5 69.4 NS 酸素投与の有無 (%) 87.5 85.0 NS (day) 51.7±33.8 22.8±34.2 0.027 (%) 87.5 54.4 NS (day) 37.9±23.6 19.8±27.0 NS 期間 人工換気の有無 期間 〔平均±SD〕 まとめ • 先天性心疾患22例を含む全505症例に対し、のべ2276回の Palivizumab投与を施行した • Palivizumab投与に伴う有害事象を2例に認めたが、いずれ も経過観察のみで改善した • 8例(1.6%)にRSウイルス感染症への罹患を認め、うち1例が 人工換気および集中治療を要した • 出生後の呼吸管理とRSウイルス感染症への罹患が関連す る可能性が示唆された 早産児および先天性心疾患を有する児に対する Palivizumabの投与は安全かつ有効である 調査施設一覧 名古屋大学医学部付属病院 名古屋第一赤十字病院 大垣市民病院 公立陶生病院 愛知県厚生連更生病院 岡崎市民病院 愛知県心身障害者コロニー中央病院
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