1 2016 年 4 月 13 日 東 海大学 ヨーロ ッパ学 術セン ター 日本語教育ワークショップ 2016 春 テーマ: 複言語・複文化環境に生きる子どもの可能性探究と ネットワーク構築の重要性 -CLD 児のことばの学びを日本語の位置付けとバイリンガル教育の観点から考える- 「アラブの春」後の混乱は多くの難民を生み出し、ヨーロッパは難民の受け入れを巡っ て揺れています。移民や国境間の移動では長い経験を有する国でも国論を二分するような 問題になっています。言語や文化の違いをどう乗り越えるかが今また大きく重要な課題と なっているように思われます。 私たち日本にとってもいつまでも対岸の火事ではあり得ません。ヨーロッパの動きを注 視し、彼らの経験に学ぶべきでしょう。と言いますとコトは大き過ぎるかもしれませんが、 まず手始めに海外にいる子ども言語とその教育を巡る問題から考えてみることにしました。 複言語・複文化環境に生きる子どものことばの教育・学びにおいて,継承語/日本語と 第一言語/欧州言語のバイリンガル(二つの言語)/トライリンガル(三つの言語)教育 という観点を持つことがいかに重要かということを従来から指摘されている野山広氏(国 立国語研究所 日本語教育研究・情報センター准教授)の主張に耳を傾けてみましょう。 複言語・複文化には人々を結びつけ世界を豊かにしてくれる可能性があること。そうし た環境にいる子どもたちをいかに育んでいくべきか。適切な環境やネットワークが重要で あること。こうした観点からレクチャーとワークセッションが準備されています。 今回は日本語教育の分野に限らず、特に北欧では日本語補習校の関係者の方々にも参加 を呼び掛けることにしました。どうぞご参加ください。 ■レクチャー 「複言語・複文化環境に生きる子ども(CLD 児)の可能性と日本語の位置付け」 子どもの言語環境づくりやことばの習得過程は、その言語形成や人間形成に大きな影響を与えま す。このことから、複言語(二言語・多言語)環境に育つ子ども (CLD 児=Culturally and Linguistically Diverse Children:文化的,言語的に多様な背景をもつ子ども)の日本語(欧州 における継承語)教育に携わる場合、可能な限り、彼らのもう一方のことば(第一言語や第二言語) の発達度合いを知っておく必要があります。こうした努力・尽力が、子どもの学習権、ひいては人 権を擁護し、進路選択の幅を拡充することにも繋がると思われるからです。 レクチャーでは、まず、CLD 児の言語(ことば)の教育・学びにおいて、継承語/日本語と第一 言語/欧州言語のバイリンガル(二つの言語)/トライリンガル(三つの言語)教育という観点を 持つことがいかに重要かということを指摘、言及します。また、彼らの教育・学びの場における、 第一言語や母語(と位置付けられた言語)、日本語の位置付け、その役割の重要性と可能性につい ても展望したいと思います。 Vedbæk Strandvej 476 ∙ DK-2950 Vedbæk ∙ Denmark ∙ Tel.: 45 89 08 09 ∙ Fax: 45 89 11 18 ∙ e-mail: [email protected] 2 ■ワ ー ク セ ッ シ ョ ン, 1 「複言語環境の整備・充実に向けて:ネットワーク構築の重要性」 本セッションでは、複言語環境の整備・充実に向けたネットワーク構築の重要性について考えた いと思います。まず、日本の外国人集住地域 A に居住する日系ブラジル人生徒に対して、2007~ 2012 年まで行ってきた日本語会話と言語生活に関する縦断調査と、散在地域 B に居住するパキスタ ン出身の生徒に対して、2013~2015 年まで行ってきた同様の縦断調査結果から窺える対話と継承語 の重要性について報告します。また、CLD 児童・生徒の言語環境(ethnolinguistic vitality =EV や communication network=CN)の整備促進やエンパワメントに向けてどのような工夫が可能か、事例 や以下の論文を紹介・参考しながら、参加者の皆さんと共に考察したいと思います。 野山 広・桶谷仁美(2016)「CLD 児童・生徒の言語環境の整備と日本型多文化共生社会-社会 参加という観点から-」『異文化間教育』44 号(特集「日本型多文化共生社会とは何か」)掲載予 定 ■ワ ー ク セ ッ シ ョ ン, 2 「CLD 児のことばの学びと日本語の位置付け-継承語の観点から」 レクチャーとワークセッション1で皆さんと考えた継承語としての「日本語の位置付け」や「ネット ワーク構築」の拡充に向けた対話の重要性を踏まえながら、欧州場面で継承語として日本語を学ぶ際に 必要と考えられる識字(リテラシー)の力や、その基盤となる漢字の習得について、意見交換しながら 共に検討できたらと思います。ここでは、参考事例として、日本の夜間中学で学ぶ生徒のために四半世 紀以上かけて(現場のさまざまな経験知の蓄積等から)開発された生活基本漢字(381 字)を紹介しま す。その漢字の内容・構成を踏まえつつ、欧州で CLD 児が日本語を学ぶ際に、約 1000 字のいわゆる教 育漢字を生活から離れて学び、習得するのではなく、継承語(日本語)学習者として必要な識字(リテ ラシー)の力の基盤としての漢字の学び(数、内容・構成、教え方など)について、意見交換、考察が 出来たら幸いです。 ******** 日時: 2016 年 4 月 30 日 & 5 月 1 日(土・日) (30 日 13 時 30 分 受付開始。詳しい時間割につきましては下記をご参照ください。) 場所: 東海大学ヨーロッパ学術センター(TUEC) Tokai University European Center Vedbæk Strandvej 476 2950 Vedbæk DENMARK 電話: (+45) 45 89 08 09 メール: [email protected] 申し込み方法:3 ページ目をご参照ください。 Vedbæk Strandvej 476 ∙ DK-2950 Vedbæk ∙ Denmark ∙ Tel.: 45 89 08 09 ∙ Fax: 45 89 11 18 ∙ e-mail: [email protected] 3 時間割: 4 月 30 日(土) 13:30 受付開始 13:50 主催者挨拶 14:00~15:30 15:30~15:45 15:45~17:15 17:45~19:00 第1セッション(レクチャー)野山広氏 「複言語・複文化環境に生きる子ども(CLD 児)の可能性と日本語の位置付け」 コーヒーブレイク 第2セッション(ワークセッション①)野山広氏 「複言語環境の整備・充実に向けて:ネットワーク構築の重要性」 夕食(TUEC で夕食を用意いたします。) 5 月 1 日(日) 07:00~08:30 朝食(宿泊された方は TUEC が用意したパン・牛乳・ジュース・野菜などを 各自食堂で召し上がってください。) 09:00~10:30 第3セッション(ワークセッション②)野山広氏 「CLD 児のことばの学びと日本語の位置付け-継承語の観点から」 10:40~11:50 第4セッション(教材・教室活動の工夫・tips 集) 12:00~13:30 昼休み(TUEC で昼食を用意いたします。) 13:30~14:00 第5セッション(発表①) 14:10~14:40 第6セッション(発表②) 14:50~15:10 第7セッション(発表③) 15:20~15:50 第8セッション(「まとめの討論」と今後に向けて) 16:00 閉会 (閉会時刻は変更になることがあります) 申し込み方法 以下のリンク先にある申し込みフォームからお申し込みください。 http://goo.gl/forms/kMSSVXiVHx 参加申し込み締め切り(発表をなさる方):4月 15 日 第5・6・7セッション(発表①、②、③:研究発表、機関紹介、教材紹介など)への発表 申し込みをお待ちいたします。ご発表の内容は必ずしも今回のテーマと直接関係していなく てもかまわないことにいたします。 第4セッション(教材・教室活動の工夫・tips 集)は日頃の教室活動の経験や教材作成の工 夫などについて自由に話し合い、情報交換をする時間として設けました。 発表をなさりたい方、工夫・tips 集で取り上げてほしいテーマや課題がございましたら、そ の旨を申し込みフォームの該当欄にご記入のうえ、4 月 15 日までにお申し込みください。 参加申し込み締め切り(発表はなさらない方):4月 27 日 Vedbæk Strandvej 476 ∙ DK-2950 Vedbæk ∙ Denmark ∙ Tel.: 45 89 08 09 ∙ Fax: 45 89 11 18 ∙ e-mail: [email protected] 4 参加費:400,- DKK(2日間を通しての代金(食事代込み)です。) 宿泊費:1泊 250,- DKK 支払い方法:TUEC の銀行口座にお振り込みください。まことに勝手ながら、振り込み手数料・送金手数 料は振り込み人ご負担でお願い申し上げます。当日現金でのお支払いをご希望の方は、申 し込みフォームの備考欄にその旨をご記入ください。 デンマーク国内から:Reg .No. 1471 (Danske Bank) Account No. 4090329405 デンマーク国外から:IBAN (account number): DK3530004090329405 BIC (SWIFT-address): DABADKKK 支払い期日:4月 27 日 その他:各セッションの進行役はご参加の皆様にも分担をお願いいたします。 野山 広(のやま ひろし)先生ご略歴 国立国語研究所日本語教育研究・情報センター准教授 早稲田大学大学院及び豪州・モナシュ大学(Monash University)大学院修了。 モナシュ大学,メルボルン国際日本語学校(補習授業校),国際交流基金日本語国際センター,東京 学芸大学など,国内外の日本語教育機関の非常勤・客員講師や,文化庁文化部国語課の専門職(日本語 教育調査官)を経て,2004 年から国立国語研究所日本語教育部門(当時)に勤務。主任研究員,第二領 域長,整備普及グループ長,上級研究員等を経て 2010 年から現職。 文化庁時代から,地域の日本語学習支援や複言語環境に居る子どもの言語教育の充実に関するさまざ まな事業,会議,研修等に携わってきた。2005 年~2009 年は東京外国語大学多言語・多文化教育研究セ ンター特任研究員,2009 年 10 月~2013 年 9 月は,政策研究大学院大学客員教授を兼任していた。 専門:多文化・異文化間教育,日本語・国語教育,社会言語学,言語計画・政策研究等 編著書等(2009 年以降の最近のものと年少者関連のものを中心に絞りました。) 『「移動する子どもたち」のことばの教育を創造する-ESL 教育と JSL 教育の共振-』(2009)川上郁 雄・池上摩希子・齋藤ひろみ・石井恵理子・野山広共編,ココ出版 『日本語が話せないお友だちを迎えて~国際化する教育現場からの Q&A~』(2010)河原俊昭・山本忠 行・野山広編・著, くろしお出版 「地域日本語教育の展開と複言語・複文化主義」(2011)北脇保之編『「開かれた日本」の構想-移民 受け入れと社会統合』(pp.148-181.)ココ出版 『対話とプロフィシェンシー -コミュニケーション能力の広がりと高まりを目指して-』(2012)鎌田 修・嶋田和子編(平田オリザ,牧野成一,川村宏明,伊東祐郎,野山広著)凡人社 「地域における日本語教育支援と多文化共生-ローカルな視点から捉えるグローバル・シティズンシッ プ-」(特集:異文化間教育学とグローバル・シティズンシップ)(2015)『異文化間教育』42 号 (pp.45-58.)異文化間教育学会 *構築に関わった Web サイト「こどもの日本語ライブラリ」(http://www.kodomo-kotoba.info/) *構築に関わったデータベース「日本語学習者会話データベース 縦断調査編」 (https://nknet.ninjal.ac.jp/judan_db/) *論文・研究活動の詳細については下記を参照:http://www.ninjal.ac.jp/research/ Vedbæk Strandvej 476 ∙ DK-2950 Vedbæk ∙ Denmark ∙ Tel.: 45 89 08 09 ∙ Fax: 45 89 11 18 ∙ e-mail: [email protected]
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