心理測定法

心理測定法
記憶②
前回のおさらい
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再生
再認
今日の予定
1.
単語リスト記憶以外の記憶の測定
2.
無意識的な記憶の測定
3.
動物の記憶の測定
1.単語リスト以外の記憶
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19世紀末以降、記憶の研究では単語リス
トが多く用いられてきた
単語でなくても図像のリストだったり。
いずれにせよ何かのリスト
自虐的に「リスト心理学」と言った人も。
相互に無関連なアイテムの羅列
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しかし、実際の生活場面での記憶は、意味
やストーリーを持ったものが多い
⇒ 意味をもったものや、物語の記憶
Bartlett(1932頃)
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物語記憶に関する初期の代表的研究
「幽霊の戦い」というインディアンの民話
⇒ イギリス人にはよく分からない話だったが、
再生させると、欧米的な解釈や構成を持っ
たものに作り変えられる傾向があった
⇒ 人は、自分に理解できないものを、自分
に理解できるようなものへと作り変えてしま
うことがある
 単語リストの再生だけでは出てこなかった
かもしれない話
アフリカ人とアメリカ人
単語リストのような機械的な記憶テスト
 アフリカ人の成績は有意に劣っており、文
明人の知能の優越性を示すものとされた
(昔はそういう研究が結構あった。他には、
白人>>黒人・アジア人とか)
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ところが・・・
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物語の記憶(特に、口伝による~)の再生
をさせてみたところ、アフリカ人のほうが成
績がよかった
アフリカでは、そもそも単語リストのように
意味のない系列を暗記するという習慣とい
うか発想がない
どういう「記憶力」が発達するかは、所属す
る文化によって異なる(他には吟遊詩人の
研究等)
余談
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言語的記憶
イメージ的(映像的)記憶
音声的記憶
色々な研究を見てみると何となく、
言葉で考える人、映像で考える人、音で考
える人・・・という風なタイプ分けができるよ
うな気がする
2.無意識的な記憶
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「思い出す」とか「思い出した」とかいう意識
を必ずしも伴わないもの
潜在記憶
手続き的記憶(技能)
潜在記憶
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プライミングの実験
例: 穴埋め問題
「ふ○ん」
少し前に「布団」という文字を見たり布団を
連想させるようなものを見たりしていると、
「ふとん」と答える率やスピードが上がる
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意識にはのぼらなくても、その人の行動に
影響を与えているようなもの
Tulvingはそれも記憶の一種とみなし、「潜
在記憶」と名づけた
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顕在記憶 ⇔ 潜在記憶
健忘症や認知症でも潜在記憶は影響され
ないことが多い
また、集中力を損なわせるような条件を課
しても、潜在記憶は影響されない場合があ
る
Remember/Know課題
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潜在記憶に似た話
簡単にいうと・・・
“Remember”・・・はっきり思い出せる
“Know”・・・見た気がする
Know正答率は妨害課題に影響されにくい
という実験結果
手続き的記憶
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宣言的記憶 vs 手続き的記憶
宣言的記憶は、口で答えられるようなもの
手続き的記憶は・・・
例:
自転車の乗り方
ボールをバットで打つ
熟練工の技
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しかし「手続き的記憶の測定」は難しい
どこまでが「記憶」でどこまでが「熟練」なの
か
「熟練」=「記憶」なのか
「上達」=「記憶」???
実は、「記憶とは何か」を考えさせられる面
白いトピックなのかもしれない
検索失敗説
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もともと「無意識的記憶」という文脈で語ら
れる理論ではないが、示唆的
「忘れる」とはどういうことか?
⇒ ①忘却説
②検索失敗説
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検索失敗説
・・・すっかり忘れてしまったように見えるも
のでも、実は記憶痕跡としては残っている。
単にその記憶を引き出してくるのに失敗し
ただけである。適切な手がかりさえ与えら
れれば検索に成功する
これまたTulvingが提唱
3.動物の記憶の測定
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動物の記憶を研究する動物実験
基本的には、
「記憶課題に成功すればエサがもらえる」
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おもな記憶課題
正刺激・負刺激の弁別学習
 系列刺激の弁別学習
 迷路学習
 遅延見本あわせ
・・・etc.
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動物の「超」記憶
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ハトの空間記憶・画像記憶
渡り鳥の地図記憶
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トリのエサ貯蔵
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・・・etc.
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一般に動物の記憶成績は人間より劣って
いると言われるが・・・
実は大抵は「人間が得意なタイプの記憶テ
スト」というだけであって、不公平なのかも
 記憶や認知の様式はさまざま
(アフリカ人とアメリカ人の比較に通じるもの
もあるかも)
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