生命科学特論B 第5回 感覚情報はどのように浮け取られる 和田 勝 東京医科歯科大学教養部 生得的行動の解発 鍵刺激 鍵刺激 検出機構 プログラム 発生器 行動 鍵刺激 検出機構 プログラム 発生器 行動 刺激と反応 音、光、匂いなど 外界からの刺激 受容器 個体 中枢神経系 効果器 反応 いろいろな行動 刺激の受容 刺激の受容器として感覚器をもっている 感覚器には、刺激によって興奮する感覚細 胞(受容器細胞)が多数ある 興奮に必要な最小刺激を、閾値という 感覚器によって受容できる刺激の種類 は決まっている。これをその感覚器の、 適刺激という 感覚の種と質と強さ 感覚には、異なる種(modality)がある 異なる種に対応して、異なる感覚器がある 同一の種の中にも、異なる質(quality)がある 質とは、音の高さの違いとか色の違い 質や強さ(intensity)の違いは、同じ感覚器 で受容 感覚・知覚・認知 刺激を受容し、中枢でそれを認めることを 感覚(sensation)という 質や強さを区別し、それらの時間的な経過 を認めることを知覚(perception)という いくつかの知覚を総合して、知覚されたもの が何であるかを認める中枢のはたらきを認知 (recognition)という 感覚の種類 受容器が特殊化していない感覚 受容器が特殊化している感覚 受容器が特殊化していない a)体性感覚 ①皮膚感覚...痛覚、触覚、圧覚、温度感覚 ②深部感覚...深部痛覚 b)内臓感覚 ①内臓痛覚 ②臓器感覚 感覚の種類 特殊感覚 a)味覚(taste) b)嗅覚(smell, olfaction) c)前庭覚(acceleration and gravity) d)聴覚(hearing) e)視覚(vision) ここでは特殊感覚だけに限って話を進める 感覚細胞の種類 感覚細胞が刺激を受容する様式は、大きく分け て次の2種類しかない 機械的刺激 ・・・・・ 前庭感覚、聴覚 有毛細胞 化学的刺激 ・・・・・ 視覚、味覚、嗅覚 受容体 感覚細胞の種類 感覚細胞が刺激を受容する様式は、大きく分け て次の2種類しかない 機械的刺激 ・・・・・ 聴覚、前庭感覚 有毛細胞 化学的刺激 ・・・・・ 視覚、味覚、嗅覚 受容体 聴覚 感覚器官は内耳の蝸牛管、適刺激は音 音は空気の振動 鼓膜の振動 リンパ液を介して基底膜の振動 有毛細胞 聴覚・前庭覚の感覚器 音 コルチ器官の外有毛細胞 http://www.blackwellpublishing.com/matthews/animate.html 有毛細胞 有毛細胞 有毛細胞の電気的性質 有毛細胞の受容器電位 有毛細胞の興奮 不動毛が背の高い順に曲げられる 先端の伸展受容チャネル(陽イオンチャネル) が開く Kイオン流入、脱分極 電位依存性Ca channelが開く グルタミン酸放出 EPSP 蝸牛の 構造 蝸牛を引 き伸ばした 模式図 基底膜の 構造 音の高低は 基底膜の位 置に変換 運動の感覚 感覚器官は内耳の半規管、適刺激は重力 運動はXYZ方向に分解され、半規管内のリ ンパ液の動き 半規管基部膨大部のクプラの傾き 有毛細胞 姿勢の感覚 感覚器官は内耳の前庭、適刺激は重力 姿勢は重力として前庭の卵形嚢、球形嚢の 耳石器官 耳石器官の位置のずれ 有毛細胞 運動と姿勢の感覚 三半規管の構造 リンパの動きと 有毛細胞 魚類の側線 魚類の側線(11)も同じ感覚細胞が使われている http://www2.ocn.ne.jp/~seafood/f43.html 側線の構造 側線の下には有毛細胞がある http://fig.cox.miami.edu/~cmallery/150/neuro/senses.htm#2 受容器電位の発生 受容器電位から感覚神経へ 感覚細胞の種類 感覚細胞が刺激を受容する様式は、大きく分け て次の2種類しかない 機械的刺激 ・・・・・ 前庭感覚、聴覚 有毛細胞 化学的刺激 ・・・・・ 視覚、味覚、嗅覚 受容体 視覚(眼の構造) 網膜の構造 二種類の 視細胞 桿細胞とロドプシン 外節円盤膜内のロドプシン オプシンのアミノ酸配列 ヒトオプシンのアミノ酸配列(青い部分は膜貫通ドメ イン) 1 61 121 181 241 301 1 MNGTEGPNFY VTVQHKKLRT GEIALWSLVV EGLQCSCGID ATTQKAEKEV YNPVIYIMMN 11 VPFSNATGVV PLNYILLNLA LAIERYVVVC YYTLKPEVNN TRMVIIMVIA KQFRNCMLTT 21 RSPFEYPQYY VADLFMVLGG KPMSNFRFGE ESFVIYMFVV FLICWVPYAS ICCGKNPLGD 31 LAEPWQFSML FTSTLYTSLH NHAIMGVAFT HFTIPMIIIF VAFYIFTHQG DEASATVSKT 41 AAYMFLLIVL GYFVFGPTGC WVMALACAAP FCYGQLVFTV SNFGPIFMTI ETSQVAPA 51 GFPINFLTLY NLEGFFATLG PLAGWSRYIP KEAAAQQQES PAFFAKSAAI 7回膜貫通型のタンパク質 Gタンパク連結型受容体 60 120 180 240 300 オプシンの構造推定図 レチナールの構造変換 cis-レチナール all-trans-レチナール 桿細胞に 光があたると 光によってレチナール の形が変わる レチナールが離脱 オプシンがトランスデュ ーシン(Gタンパク質)を 活性化 Naチャンネルが閉じる 伝達物質の放出止まる 桿細胞での伝達物質放出 Naチャンネルが開いているのは、cGMP がチャンネルと結合しているから 桿細胞での伝達物質放出 オプシンはトランスデューシンを活性化 し、これがPDEを活性化。その結果、 cGMPが分解される 桿細胞での伝達物質放出 パッチクラ ンプ法で直 接光を当て たとき パッチクラ ンプ法で直 接cGMPを 与えたとき 桿細胞と錘細胞の役割分担 桿細胞 明暗視を担う 閾値は低い ロドプシン 錘細胞 色覚を担う 閾値は高い(夕方になると 色がなくなる) 赤、青、緑色に対応した オプシン 桿細胞と錘細胞の分布 http://webvision.med.utah.edu/sretina.html 感覚細胞の種類 感覚細胞が刺激を受容する様式は、大きく分け て次の2種類しかない 機械的刺激 ・・・・・ 前庭感覚、聴覚 有毛細胞 化学的刺激 ・・・・・ 視覚、味覚、嗅覚 受容体 嗅覚 http://distance.stcc.edu/AandP/AP/AP2pages/Units14to17/unit16/ olfactio.htm 味覚 http://www.csus.edu/indiv/l/loom/oct19%20f05.htm 嗅覚 感覚細胞の端頂部(apical)にある繊毛に、匂い物 質に対する受容体 匂い物質の受容体は、Gタンパク質連結型 受容体の一つであった 1000以上の受容体遺伝子が見つかっている ヒトでは347が実際に機能している受容体の数 これは遺伝子全数の1%にあたるほど多数 である。 匂い物質の例 cis-jasmone l-menthol vanillin 嗅覚の受容体 匂い物質が受容体に結合すると、Gタンパク質が 活性化 アデニル酸シクラーゼが活性化 cAMPがNaイオンチャンネルを開いて脱分極 受容器電位が発生して、Caイオンが流入 伝達物質の放出 匂い物質と受容体の結合 複数の受容体へ結合し、そのパターンで匂い感覚を生じる 味覚 しょっぱさ(塩辛さ)(salty) 酸っぱさ(酸味)(saur) 甘味(sweet) 苦味(bitter) うまみ(umami) 味物質の例 glucose sucrose phenylthiocarbamide 塩辛さと酸っぱさ 塩辛さ Naイオンチャンネル(神経や筋のものとは異 なる)を通ってNaイオンが細胞内へ入る。そ の結果、脱分極が起こり、Caイオンが流入し 神経伝達物質が放出される 酸っぱさ(酸味)(saur) HイオンがKイオンチャンネルをふさぐので、 Kイオンの流出が止まり脱分極がおこり、Ca イオンが流入し神経伝達物質が放出される 甘味の受容体 甘味受容体は膜7回貫通のGPCRであった グルコースが受容体に結合すると、アデニル 酸シクラーゼが活性化される。cAMPが作られ 、PKAを活性化し、PKAがKイオンチャンネル をリン酸化して不活性化する。その結果、脱 分極がおこり、Caイオンが流入して神経伝達 物質が放出される 苦味の受容体 苦味受容体は膜7回貫通のGPCRであった 苦味物質が受容体に結合すると、フォスフォリ パーゼが活性化され、IP3が作られる。IP3は Caイオン貯蔵部位からCaイオンの放出を起こ し、神経伝達物質が放出される うまみの受容体 うまみ受容体は膜7回貫通のGPCRであった うまみ物質であるグルタミン酸がグルタミン酸 受容体(mGluR4)に結合すると、Gタンパク質( Gi)を活性化してアデニル酸シクラーゼが不 活性化される。その結果、まだよくわかってい ないメカニズムで細胞内でCaイオン濃度があ がって神経伝達物質が放出される 味覚受容体と細胞内でおこ ること 塩味 酸味 甘味 苦味 GPCRの起源は? GPCRは、光、匂い物質、味物質、ホルモン、神 経伝達物質の受容体である バクテリオロドプシンが原核生物で見つかって いる。これも膜7回貫通型のタンパク質で、光 を受けてプロトンの汲み出しを行なっている。 光のような簡単ではじめからある情報を受け 取るタンパク質が、その後、他の物質を受け 取る受容体に転用された?
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