デフレ・スパイラル 2009年以降の事例から 長谷川 正 2309805 目次 1.デフレ・スパイラルとは 2.デフレの原因 3.デフレ・スパイラルのメカニズム 4.デフレ・スパイラルへの政策対応 牛丼の値段(すき家) • 現在 280円 • 2007年 350円 主な物価の上昇率(前年同期比) (%)10 8 6 4 GDPデフレーター 国内企業物価 消費者物価 2 0 -2 -4 -6 -8 -10 (資料)内閣府「四半期別GDP速報」等 (年/四半期) 1.デフレ・スパイラルとは ・デフレ:デフレーション(deflation) 物価が持続的に下落すること ・スパイラル(spiral) 螺旋(らせん) 物価下落と景気低迷の悪循環 デフレ・スパイラルの概念図 総需要減少 物価下落 総需要減少 物価下落 総需要減少 2.デフレの原因 景気が悪いから=総需要が総供給に比 べ少ないから 売れないと物価は下がる (%) 企業(製造業・大企業)の設備判断DⅠ・人員判断 DⅠと国内企業物価上昇率(前年同期比) 25 (%ポイント) 50 設備判断DⅠ 20 人員判断DⅠ 40 国内企業物価上昇率(左目盛) 15 30 10 20 5 10 0 0 -5 -10 -10 -20 (年/四半期) (注)設備判断DI、人員判断DI:「過剰と判断する企業の割合」-「不足と 判断する割合」 (資料)日本銀行「ホームページ」 3.デフレ・スパイラルのメカニズム (その1) 牛丼の値段 1時間で売れる牛丼の数 アルバイト料 (2人、1時間当たり) すき家の利益 アルバイト料で 買える牛丼の数 3年前 350円 10杯 1,900円 現在 280円 10杯 1,800円 1,600円 1,000円 2.7杯 3.2杯 950円/350円 900円/280円 すき家から個人へ所得が移転 すき家はアルバイト人員数・店舗数を抑制 (その2)金融資産・負債 (1)個人から企業に200万円を貸している場合 ・個人 金融資産200万円 ・企業 金融負債200万円 (2)物価が10%下落すると ・個人 金融資産は実質的に220万円に増加 ・企業 金融負債は実質的に220万円に増加 企業(借手)から個人(貸手)に20万円だけ所得が移転 試算:デフレの企業部門への影響(2009年) (1)試算方法 ①企業収益への影響 =売上高(08年度)*産出価格変化率(09/1~09/12) -売上原価(08年度)*投入価格変化率(09/1~09/12) ②純金融負債額への影響 =純金融負債額(08/12)*国内企業物価変化率(09/1~09/12) (2)試算結果(兆円) 企業収益への影響 純金融負債額の実質的変 化額 合計 17兆円減少 11兆円増加 28兆円 (参考) 企業部門の経常利益 2007年度:53兆円 2008年度:35兆円 企業部門から家計部門への所得移転の効果 ・企業 所得が1億円減少 設備投資が0.75億円減少 ・家計 所得が1億円増加 消費が0.63億円増加 景気は悪化 4.デフレ・スパイラルへの政策対応 「すでにデフレ・スパイラルに陥っている局面」 での政策対応 効果の大きい対応策はない 金融政策:効果は限定的 財政政策:赤字拡大策は不可能 「平時」での政策対応 ・インフレーション・ターゲッティング政策の採用 日本銀行は、物価上昇率、例えば消費者 物価上昇率目標を2~4%とする。 ・名目賃金を物価下落に応じて調整すること は、結果的には労働者の痛手を軽減すること になる。 ・物価変動に応じて金融資産価格・利子率を調 整する。
© Copyright 2025 ExpyDoc