HE染色 - 札幌医科大学

HE染色
HE染色
Hematoxylin-Eosin(HE)染色
HE染色は単に組織の形態を観察する目的で細胞核、細胞質を染色する
方法 。
細胞及び組織構造の全体像を把握する為に行う。
染色と標本の管理がよければ永久保存ができる。
細胞質
(Eosin)
細胞核
(Hematoxylin)
ヘマトキシリン
Hematoxylin(C16H14O6・3H2O)はメキシコやアメリカ大陸に茂る樹木(マメ
科/ Hematoxylon campechianum)から抽出して得られる色素で無色ま
たは淡い褐色の結晶をなし、水に溶けにくく、熱湯やアルコールには溶け
やすい。
ヘマトキシリンは酸化するとヘマテインと呼ばれる染色有効成分が得られる。
溶液を作る際には、ヘマトキシリンに酸化剤を加え、人工的に酸化促進させ
る。
ヘマテインも単独では染色性がなく、陽イオンがつくとはじめて塩基性色素
になる。
この色ラックは正(+)に帯電しているため、組織内の負(-)に帯電している
部分(リン酸基やカルボキシル基を多く含む部分:細胞核など)に結合し、
青紫色に染める。
Hematein
Hematoxylin
酸化
ヘマトキシリンの種類
使用目的によって選ばれるが, また研究者の好みもあって選択されている。
ヘマトキシリン液には多量のアルミニウム塩あるいは酸を含む酸ヘマト
キシリン液と、酸を加えない比較的中性のヘマトキシリン液がある。
前者(マイヤー、リリー・マイヤーなど)は核を選択的に染める。
染めた直後には標本全体が赤紫色を呈しているが、 これを流水洗する
だけで徐々に美しい青紫色に変わっていく。
後者(デラフイールド、ハリス、カラッチなど)は核以外の細胞質や結合織など
も染色される程度に強く染めておいてから1%塩酸アルコールなどを用い
て核だけを選択的に染め残すようにする。
前者にくらべやや手数がかかるが、 後者の方が染色質などの染まり方
が繊細であるといわれる。
エオジン
ヘマトキシリン染色の後染色として、赤色~黄色の酸性色素が使用される。
通常はエオジン染色が多く、一般にはエオジンY(水溶性エオジン)がよく用
いられている。
エオジンの色素は水溶液中でカラーアニオン(酸化されるイオン:還元剤)と
して存在し、負性荷電しているので、組織中の陽性荷電部に結合し、赤
色に染める。
組織構成成分は全般に等電点がやや低く(pH3.5~5.5)、エオジン水溶液
中では負(-)に帯電している部位が多い。そこで酢酸等の酸を少量加え
ると組織成分がより正(+)に帯電し、負(-)のエオジンが結合しやすく
なる。
ただし、酸を加えすぎると液中の水素イオンが増し、カラーアニオンの溶解
度が減少し、色素が沈殿しやすくなる。
試薬処方
• マイヤーのヘマトキシリン(Hematoxylin)
A:蒸留水 1000ml
硫酸カリウムアルミニウム 50g
B:アルコール 20ml
Hematoxylin 1g
ヨウ化ナトリウム 0.2g (酸化剤)
抱水クロラール 50g (防腐剤)
酢酸 3ml
• エオジン(Eosin)
蒸留水 100ml
エオジンY 1g
酢酸 0.1ml
染色法
流
水
水
洗
(
1
0
分
)
染色
エ
オ
ジ
ン
(
3
分
)
9
0
%
ア
ル
コ
ー
ル
1
0
0
%
ア
ル
コ
ー
ル
(
3
回
)
×
ヘ
マ
ト
キ
シ
リ
ン
(
8
分
)
7
0
%
ア
ル
コ
ー
ル
脱水系列
キ
シ
ロ
ー
ル
(
3
回
)
封
入
×
脱
パ
ラ
後
水
洗
軽
く
水
洗
透徹
封入
染色の注意点
1、脱パラフィン後の水洗はすぎると組織の染色度が低下する
のでアルコールが落ちる程度でいい。
2、ヘマトキシリン染色液の水洗は染色液が落ちればいい。
3、エオジンはアルコールには溶けにくいが水にはかなりよく溶
けるので、水や普通アルコールで洗うときは手早くやって脱
色を防ぐ。
4、切片が乾くと変色がおこり元には戻らない。
染色結果
核
青紫色
その他の細胞質、 それぞれの性質に応じ濃淡各種の赤(淡紅色)
線維、赤血球など