ワークグループ支援システム Nanpou System 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) 知識科学研究科 Project Nanpou 白川浩司・青木一郎 澁川敬之・松尾直樹 河崎さおり・藤波 努 目次 ・背景 動機 ・目的 ・アプローチ ・システムの狙い ・要求分析と機能仕様 ・システム運用の結果 ・考察 まとめ 背景・動機 背景: 〇知識の創造・蓄積・活用は、個人より複数の人間間のイ ンタラクションによってより速く推進される 〇JAISTは個人が学ぶ上では最高の環境が整備されてい るが、集団を動的に形成し、そこで創出された知の結晶 を蓄積・活用していく仕組みはほとんど整備されていない 動機: 〇共通の目標・目的を持つ仲間と出会い、自発的な行動を 積極的に行える機会を提供したい 「ワークグループ」とは? 〇共通の目標・目的を持ち、自発的に行動 (勉強会、研究会、サークルなど非公式なグループワー ク) ⇒このような活動主体を「ワークグループ(WG)」と位置付 ける 〇WG活動を活性化させることが、学生個人のみならず、 JAISTという組織においても、知識を継続的に創造、蓄積 していくために有効である 目的 〇WG活動活性化の要件 ・様々な分野からメンバが集う ・活動による新たな知見を蓄積し、閲覧・再利用する 〇本研究ではWGに関わる者にアウェアネスを提供し、いか にWG活動が活性化したかを分析する アウェアネス 〇アウェアネスとは何か? ・「気づき」という意味で、人間の存在や状況を認識させるも の。またコミュニティの境界や、膨大な情報の中から必要な 情報を気づかせるという意味でも用いる。 ○アウェアネスの例 ・存在アウェアネス :他者や情報の存在を気づかせる ・組織アウェアネス :コミュニティーの存在を気づかせる ・知識アウェアネス :組織知を気づかせる ・変遷アウェアネス :知識の時間的変遷を気づかせる ・動作アウェアネス :他人や組織のアクションを気づかせる アプローチ 〇「ワークグループ支援システム:Nanpou System」の構築・ 運用 〇対象ユーザー: JAISTの情報環境を利用できる学生・教官・職員 システムの狙い ・WGとその潜在的参加者が出会えるようにすること ・WGの知識・成果物を容易に蓄積・活用できるようにすること ・WG参加者間のコミュニケーションを支援すること システム利用者の形態別要求 事項 〇WGを主催・運営する側 ・参加者募集 ・知識の蓄積・活用 ・WG内コミュニケーション 〇WGへの参加を希望する側 ・WGの存在の認知 ・WG主催者への参加意思表示 WG参加者募集に関する要求と 対応する機能(WG主催者側) ≪要求≫ ・WG発足の提案 ・WGの存在の周知 ・参加者の募集 ・参加希望者の存在の認知 ・活動成果の公開 ≪機能≫ ・WG情報登録機能 WG情報登録・変更/成果物の アップロード ・自動メール送信機能 参加希望登録がされたとき、参加 者に対し自動的にメールが送信さ れる ・WGメンバー登録機能 参加希望者の認証/参加者名簿 WG参加者募集に関する要求と 対応する機能(参加希望者側) ≪要求≫ ・自分の欲求に合致するWG の存在の認知 ・興味のあるWGの活動状 況・活動内容の認知 ・WG主催者側とのコンタクト ・WG主催者側への参加意 思表示 ≪機能≫ ・WG情報閲覧機能 WG一覧・検索/WG詳細閲覧/ 活動実績の閲覧・ダウンロード ・WGコミュニケーション機能 掲示板 ・WG参加申請機能 参加希望登録 ・自動メール送信機能 WG主催者側に参加認証されたと き、自動的にメールが送信される WGの知識蓄積・活用に関する 要求と対応する機能 ≪要求≫ ・WG活動による成果物を集 中管理すること ・活動記録を時間順に蓄積し 変遷を辿ること ・WG活動の成果物を再利用 すること ≪機能≫ ・WG情報登録機能 WG情報登録・変更/成果物の アップロード ・WG情報閲覧機能 活動実績の閲覧・ダウンロード ・WG主催者認証機能 データの改ざん防止用パス ワード認証 WG内コミュニケーションに関す る要求と対応する機能 ≪要求≫ ・メンバー間のコミュニケー ションを効率的に行うこと ・活動状況や活動内容などの 情報をメンバ間で共有する こと ・WGのアクションに気づくこと ≪機能≫ ・WGコミュニケーション機能 掲示板/メンバ一括メール ・自動メール送信機能 WGやWG関係者の情報が 更新されたとき、参加者に対 し自動的にメールが送信さ れる 知識の自動的蓄積 〇WG活動に関する情報・成果物、メンバ情報、コミュニ ケーションの記録がシステムを使っていくうちに蓄積される 状態遷移図 デモ 約5分間 「Nanpou System」 トップページ http://tsuru.jaist.ac.jp:8000/~nanpou/index.html システム運用の結果 〇2000年12月より4ヶ月の間運用 →最初2.5ヶ月は試験的運用とした →2月中旬に正式に学内向けアナウンス ・・本格的運用 ⇒1.5ヶ月間で1110件のアクセス ・登録者のべ41名(知識科学研究科学生・教官:240人) ・登録WG数18件(活動中13件、準備中3件、休止中2件) うち勉強会・研究会11件 ・・協調して勉強することに対するニーズの高さ示す 利用者アンケート 《有効回答数:15》 〇Nanpouを利用しようと思った理由 ・自分と同じ興味を持つ仲間と活動を行いたかった → 6 ・WGの既存メンバに知り合いがいた → 6 ・WG内の情報伝達を効率的に行う手段が欲しかった → 4 〇興味のあるWGの存在を知ることができたか Yes : 12 No : 2 〇参加希望者の存在を知ることができたか Yes : 4 No : 2 〇個人情報の開示に抵抗があるか Yes : 2 No : 12 利用者アンケート(続き) 〇参加したWGに知り合いがいたか Yes : 15 No : 0 〇知り合いがいなかったとしても参加したか Yes : 9 No : 6 〇Nanpouは知識の蓄積・利用を効果的に行うシステムか Yes : 9 No : 5 〇知識の時間的変遷を感じられたか Yes : 2 No : 13 〇Nanpouから送られるメールでWGの情報更新に気づいたか Yes : 13 No : 2 〇更新情報の確認のためNanpouをアクセスしたか Yes : 11 No : 2 考察: 利用者の感想(アンケートより) ○利用者について ・グループ単位での活動意欲が高い ・グループ活動の効果的運営手段に対する需要が高い ・知り合いがいないとWGへ参加しづらい ・名前・メールアドレス程度の情報開示は抵抗を感じない ○Nanpou System に対する感想 ・参加者募集には効果的である ・知識成果物の蓄積・再利用には機能不足である ・WG内情報伝達・共有のツールとして有効である 考察: 存在に対するアウェアネス 〇「Linux勉強かい?」のように、学生の興味を惹きつける WGは早くから参加希望者が集い活動が始まった ↓ WGの目的や内容を明示的にすることで ・潜在的参加希望者にWGの存在に対するアウェアネス を提供した ・WG主催者側に参加希望者の存在に対するアウェアネ スを提供した 考察: 知識の時間的変遷に対するアウェアネス ○知識・成果物の蓄積・再利用の実績は少ない ○しかし我々Nanpou Projectの活動では、 ・共同執筆の原稿を登録・再利用し、一つの知識・成果物 として磨かれていくことを体験した ・時間順のファイルの配置が活動の変遷を辿る上で効果 的だった ↓ ・知識の時間的変遷に対するアウェアネス効果の可能性 考察: アクションに対するアウェアネス 〇掲示板・・利用少ない ・活発なWGが少ない ・システムの奥深くにあり利用しにくい ・アクションに対するアウェアネス支援機能を付加しなかった 〇一括メール・・一部のWGで利用されている ・実際に動いているWG内での通知に利用 〇自動メール送信機能・・システムへの素早い訪問を助長し、 WGに関する情報の共有がなされた ↓ ・アクションに対するアウェアネスの提供 ・参加者間のコミュニケーションを支援した まとめ 動機:知識の継続的な創造・蓄積・活用のためにWG活動を 支援する必要があると考えた 目的:WGに関わる者にアウェアネスを提供し、WG活動を活 性化すること 「存在に対するアウェアネス機能」 「知識の時間的変遷に対するアウェアネス機能」 「アクションに対するアウェアネス機能」 →3つのアウェアネスがWGの活性化を支援することを確 かめた 今後の課題 ○成果物の容易な蓄積と共有の促進 ・特定の用途に応じたフォーマットの作成 ・デジタルライブラリの構築 〇ROM (Read Only Member)ユーザーの存在 ・既存メンバに知り合いがいないと参加しづらい →利用者がWGに抵抗無く参加できる仕組みが必要 〇サービス対象の拡大 ・学外の利用者も取り込み、WGの更なる活性化 参考文献 1. アルビン・トフラー:1980 第三の波,日本放送出版協会 2. P・F・ドラッカー:1993 ポスト資本主義社会,ダイヤモンド社 3. 野中郁次郎,竹内弘高:1996,知識創造企業,東洋経済新 報社 4. 門脇千恵,爰川知宏,山上俊彦,杉田恵三,國藤進:1999, 情報取得アウェアネスによる組織情報の共有促進支援,人 口知能学会誌,Vol.14,No.1,pp.111-121 5. 藤波努,河崎さおり,五井隆浩,佐々木達也:2001,2ヶ月 で立ち上げる知識マネジメント・システム,電気学会情報シ ステム研究会「知識マネジメントと情報技術」予稿集
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